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第34歩目 はじめての魔物部屋!雇用契約3日目


前回までのあらすじ


魔物部屋にひしめく魔物の数に戦慄する主人公

□□□□ ~現状把握~ □□□□


ダンジョン46階層 魔物部屋


「アテナ!無事か!?」

「アテナさん!返事をしてください!」


魔物がひしめく魔物部屋に突入した俺とラズリさんは、がむしゃらにアテナのいる場所へと突き進んだ。


そして、部屋の隅に追い詰められていたアテナを救出したのだが.....


「・・・」


アテナはぐったりと地面に横たわっていた。

綺麗なワンピースも泥だらけになっていて、返事を返してこない。


ま、まさか.....手遅れだったか!?

これじゃまるで.....


「へ、返事がありません。まるで屍のようです」

「あんた、なに言ってんの!?縁起でもないこと言うな!」


.....でもごめんな、アテナ。

実は俺もラズリさんと同じことを思ってしまったよ。


心の中でアテナになんとなく謝っていた俺だが、今は予断を許さない状況になってきている。


───ドゴッ!

───バンッ!

───ビシッ!


俺に向かって、猛攻をしかけてくる魔物達。


「ぐぅ!!」

「アユムさん!大丈夫ですか!?」


全く大丈夫じゃない。

物理耐性Lv.3があるとは言え、痛いものは痛い。

しかもこの数.....捌ききれるかどうか。


「俺が盾になりますので、ラズリさんはアテナを看てやってください!」

「わ、わかりました。無理はしないでくださいね」


俺は二人の盾になるよう前に出て魔物と対峙する。

幸い部屋の隅に位置しているため、一気に襲ってくる魔物の数は限られる。


一息入れて魔物を見据えると、全部で5種類の魔物がいるようだ。


木のおばけのような魔物は枝を伸ばして攻撃してくる。

こうもりのような魔物はふわふわしているだけだ。

豚にしか見えない魔物はひたすら体当たりをしてくる。

某RPGに出てくるようなバブルなスライムも豚同様だ。

猿のような魔物は初めて見る。ボス猿らしきものがいる。


しかし、のんびり観察している暇はないようだ。

魔物達が動き始めた。


───ゴクッ。


俺は息をのむ。


さぁ!残酷なショーの始まりだ!



□□□□ ~迫り来る脅威~ □□□□


縦横無尽に迫り来る枝を払いのける。

もちろん全部を払いのけることはできない。

だから体を盾にしてでも枝を受けきる。


要は俺の後ろにいるアテナやラズリさんに当たらなければいいだけだ。


───ビシッ!


「ぐっ。めんどくさい魔物だな!」


木のおばけのような魔物はやっかいだ。

部屋の隅で戦っている利点を活かしきれない。


隅に陣取っているので、通常は90度範囲でしか魔物は襲ってこない。

そうなると、大体2~3匹がいいとこだ。

実際目の前には豚とバブ○スライムだけしかいない。


でも木のおばけのような魔物は、豚達の後方から枝を伸ばして攻撃してくる。

まるで180度範囲から攻撃を受けている感覚だ。


豚が体当たりをしてくる。

体当たりなんて避けられるが、後ろに行かせる訳には行かない。

俺は豚を剣で押し止めつつ、バブ○スライムをファイアーボールで屠る。


バブ○スライムには物理系攻撃は効かない。

左手で魔法を発動しながら魔物を処理していく。


右手は豚を、左手はバブ○スライムを相手にしていれば当然.....


───ビシッ!

───ビシッ!


「い、いってぇ!」


狙い済ましたかのように枝が伸びてくる。


魔物のくせにこの連携.....侮れない!


侮れないと言えば、今だに攻撃をしてこない初見の猿も気になる。

群れを従えてじっくり俺を観察しているかのようなボス猿。

ひたすら不気味な存在だ。


.....とその時、ラズリさんが叫んだ。


「アユムさん!魔法がきます!」

「ま、魔法!?どいつが!?」


───ヒュオオ!


風を切り裂くような音が聞こえたと思ったら、俺の腕にはうっすらと切り傷ができていた。


これはヴィント!?まさかこうもりか!?

いつもは瞬殺していたから気付かなかったが、魔法も使うのか!


豚やバブ○スライムを凌ぐだけでも大変なのに、遠距離攻撃をしてくる木とこうもり。やっかいだ。


魔法はどうやって防いだらいいのかわからないので、ひたすら肉壁になるしかないだろう。

今のところ防げないのは枝と魔法だけだ。


「ブヒィ!」

「せいっ!」


豚の体当たりを足で捌く。蹴られた豚が後退した。


「・・・」

「ファイアーボール!」


暗殺者の如く静かに忍び寄るバブ○スライムを燃やして屠る。


───ビシッ!

「ぐっ!」


無数の枝を剣でいくつか払いのけ、残りは体で受ける。


───ヒュオオ!

「ぐぅっ!ラズリさん!大丈夫ですか!?」

「は、はい。こちらはなんとも.....」


こうもりの魔法は誰を狙っているのかわからない。

万が一があっては困る。

だからいちいち確認する必要がでてくる。


それにしても.....


な、なんだこの連携!?これが魔物なのか!?

まるで人が指示してるかのような戦い方だぞ!?


魔物の猛攻は完全には凌ぎきれない。

状況は極めて不利だ。


でも一つだけ確信した。


これならなんとかなるかもしれない。


豚もバブ○スライムも徐々に数を減らしている。

俺はかなりきついがそれだけだ。


しかし、そう思っていた俺を嘲笑うかのような事態が起きた。


「キキィー!」


突如一際大きい鳴き声がしたと思ったら、


「きゃあ!?」

「ラズリさん!?どうしました!?」


振り向くと、ラズリさんが猿に襲われていた。と同時に、


───ドゴッ!

───バンッ!

───ビシッ!

───ヒュオオ!


俺が振り向くのを見計らったかのように繰り出される猛攻。


「ぐはっ.....ラ、ラズリさん。大丈夫ですか?」

「私はなんとも.....アユムさんが振り向くと同時に魔物が引き上げていきましたから」


俺が振り向いたと同時に引き上げた?

なんだその陽動作戦は!?


あきらかにおかしい。

同じ種類の魔物同士なら連携も或はあるかもしれない。

でもこの場にいる魔物は混成だ。

そんなことが可能なのだろうか。


もし可能だとするなら.....

魔物の知能も案外バカにできないのかもしれない。


ダンジョンに潜る資格がAランクからというのも頷ける。

俺でさえこんなに苦労しているのだから、他のPTではひとたまりもないだろう。


また魔物の猛攻が始まった。


蹴って、魔法を放って、払いのけて、盾になる。

ひたすら繰り返される俺と魔物の活劇間。

そして、俺が一息入れようとすると必ず起こる大音響。


「キキィー!」


───キィキィ!

───キィキィ!


複数の猿が、木のおばけのような魔物の枝からラズリさんに襲い掛かる。


「きゃあ!?またです!アユムさん!」

「またか!」


俺がこのまま振り向かなければそのままラズリさんを襲い、そして俺が振り向いたと分かると、


───ドゴッ!

───バンッ!

───ビシッ!

───ヒュオオ!


「ぐはっ.....」

「アユムさん!」


他の魔物に合図して、一斉に俺に攻撃をさせる。


こんなことを何回も繰り返していれば、嫌でもこの連携を指示している黒幕に気付く。

バカなアテナでもわかるだろう。


「.....え?アテナさんでも?」

「・・・」


ラズリさんの疑うような視線が突き刺さる。


「.....すいません。嘘つきました。多分わからないと思います」


アテナはアテナだからなぁ。

この黒幕の正体はきっとわからないはずだ。


ラズリさんの問いに答えながら黒幕を見る。


「キキィ~」


俺と目が合うといやらしく口角を上げて笑うボス猿。


この魔物の群れを見事に統率しているのはボス猿なのだ。

ボス猿が細かく指示を出して、俺を追い詰めていたらしい。

どうやって他の魔物に指示を理解させているのかはわからない。


でも一つだけ確実に言えることがある。


「な、なんですか?」

「このボス猿は♂だと言うことです」

「.....へ?♂?当たり前なのでは?」


基本的にボス猿は♂が多いだけだ。


「♀もなるときがあるんです。でもこのボス猿は確実に♂です」

「なんで分かるんですか?」

「至って普通に有能だからですね」

「はぁ.....?」


ラズリさんが分からないのも無理はない。

俺も信じたくはないが、アテナから聞いた話だとそうらしい。


「あのボス猿を倒した暁には♂である証を見せますね」

「そんなの見たくありませんよ!どうせなら.....」

「?」

「ア、アユムさんのを見せてもらいたいです(ポッ)///」

「あんた、なに言ってんの!?」

「い~じゃないですか~!私は彼女なんですから~!」


契約期間中の彼女だろ!少しは緊張感を持てよ!



ラズリさんはどんな状況でもブレない。



次回、アテナ死す!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


時はスカイさんと出会った時


「はぁ.....」

「んー?ため息ついてどうしたのー?歩」

「スカイさんもすごいなって思ってさ」

「バインバインだもんねー」


「なんの話をしてんだよ!?.....ま、まぁ、確かに大きいけどさ」

「歩は大きいのがいいのー?でもニケはちっちゃいよー?」

「ニケさんはちっちゃくない。普通だ」

「普通ー?ラピスと変わらなくないー?」


「黙れ。ニケさんはラズリさんとは違って、少なくともぺったんこではない」

「そうー?同じように見えるけどー?」


アテナからしたら大体の女性が小さく見えるんだろうな!

この女神級おっぱいが!


「てか、なんの話をしてんだよ!?」

「おっぱいでしょー?」

「違うわ!なんでアテナとおっぱい談義しなきゃいけないんだ!」

「じゃーなにー?」


「性格だよ、性格!」

「んー?それは仕方ないよー?」

「はぁ?仕方ないってなんだよ?」

「だってーこの世界の女性は基本的におかしいんだもーん!」


「.....マジ?」

「まじー!(にぱー☆)」


かわいい.....じゃなくて!基本的におかしいってなんだよ!?


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