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歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~  作者: なつきいろ
第7章 躍進 -乙女豹アルテミス編-
332/349

第272歩目 いいから黙って頷いておけ!


 前回までのあらすじ


 あれー? 私はー(。´・ω・)?



 ニケさんをなんとか宥め、アルテミス様の6日間滞在も無事決まった。

「さぁ、これから楽しい楽しいデートの始まりだ!」といきたいところだが......。


 チラリと後方を見遣る。


「アルテミスお姉ちゃん、よかったねー! 私に感謝してよー(o゜ω゜o)」

「何言ってるんだい。アテナっちは何もしていないだろ?」


 そこに居るのは、トラブルメーカーのアテナと悪戯大好きアルテミス様。


 どう考えたところで、このまま二人を残してデートになど行けるはずがない。

 まず間違いなく何かしらの騒動を引き起こすだろう。それも災害クラスの。

 それは『人はいずれ死ぬ』という自然の理よりも明らかだ。


 何か手を打たなければ......。


「歩様? デートに行かれるのではないですか?」


 しかし、俺がそんな心配をしているとは露とも知らないニケさんは大層不満顔。

 アルテミス様に奪われまいとギュッと組まれた腕には力が入っていた。ちょっと痛い。


「俺もそうしたいのですが、さすがに二人を残して......というのは不安なんですよね」

「そうですか? 確かにヘカテー様とアルテミス様が心配なのは分かりますが、アテナ様も居らっしゃることですし、何も問題はないかと」

「いや、心配なのはアテナとアルテミス様なんですけどね?」


 どんだけアテナを信頼しているんだよ!?


 思わず突っ込みそうになったが、グッと我慢。

 ニケさんが、アテナに心酔しているのは今に始まったことではない。

 突っ込むだけ無駄だ。馬耳東風。馬に念仏である。


 但し、俺とニケさんの間にある共通認識がアルテミス様なのは間違いない。


「ちょっと、ちょっと、二人とも! あたしを何だと思っているんだい!?」

「まっーたくー、アルテミスお姉ちゃんはさー ┐(´ー`)┌」

「いや、だから、アテナもだって」

「 Σ(・ω・*ノ)ノ」


 とりあえず、この二人を何とかしないことには安心してデートになんて行けやしない。



 ■■■■■


 

「アルテミス様、これが俺の魔動駆輪(マイホーム)です」


 考えた結果、俺が安心してデートに行く為には最低でも二人の監視役が必要だ。

 一応ヘカテー様が居ることには居るが、正直当てにならないというか頼りない。

 そこで、俺とニケさんの為の人柱になってもらおうと魔動駆輪にやって来たわけだ。


 勝算は十分にある。

 アテナにはドールを、アルテミス様には秘中の秘をぶつける予定でいる。


「おかえりなのだ!」

「おかえり。遅いじゃないか」

「おぅ。ただいま」

 

 出迎えてくれたモリオンとインカローズに帰宅の挨拶を済ます。

 そして、モリオンにはアルテミス様を、インカローズにはニケさん達を簡単に紹介する。


 ちなみに、インカローズにはニケさん達のことを『知り合いのお貴族様』という形で紹介するつもりだ。これは少し考えがあってのことである。


「アルテミス様、こいつらはモリオンとインカローズです。俺の新しい仲間ですね」

「あぁ、知ってるよ。子竜に、山賊女だろ? 神界で見たからね」

「神界で?......あぁ。そう言えば、水晶で見れるようにしたんでしたっけ」

「そういうこと」


 ペロッと舌舐めずりして、二人を値踏みするアルテミス様。

 それは、まるで新しいおもちゃでも見つけたかのように目をキラキラとさせている。


(......まぁ、そうなるよなぁ)


 どうやら、モリオンとインカローズは悪戯の標的となってしまったようだ。

 恐らく、アルテミス様は頭の中で「どのようにイジってやろうか」と目まぐるしく考えているに違いない。


 こうなってしまった時のアルテミス様は無敵の神様だ。

 神々の頂点に立つゼウス様の言うことすら聞かず、ポセイドン様の寵愛を失う程の。


 故に対処の仕様はない。

 モリオンとインカローズは安らかに成仏して欲しい。なむー。


「アユム! アユム!」


 俺が二人に静かに合掌していると、最愛の姉(ヘカテー様)との再会の喜びを分かち合っていたモリオンが、珍しく神妙な面持ちで尋ねてきた。しかも、モリオンらしいおまけ付きで。


「......へぇ、いい度胸じゃないかい」

「お、おま!? なんてことを!」


 今すぐ、アルテミス様を指差すのはやめろ! 

 酷い目に合うのはモリオンだが、俺にも累が及ぶんだぞ!?


「......モリオン、人を指差したらダメなんだぞ? 今すぐやめるように」


 言いたいことは山程あるが、俺は努めて冷静に諭すことにした。


 別にモリオンが悪いんじゃない。

 無知が、俺の教育不足が悪いのだ。


「そうなのだ?」

「そうだぞ。また一つ賢くなったな? えらいぞ!」

「なのだ!」


 かわいく万歳して「のだー!」と嬉しそうに微笑むモリオン。かわいい。


「よしよし。それで、どうした?」

「そうなのだ。こいつからは、ア......ア......お姉ちゃんと同じ匂いがするのだ」

「......こいつ、だって?」

「こいつもやめて!?」


 さすがに、恐れ知らずというか無礼が過ぎる。

 仮にこの場にドールがいたら、きっとモリオンを叱りつけていたことだろう。

 まぁ、ドールもアルテミス様に無礼を働いたことは棚上げにして。


 とりあえずツーアウトではあるけれど、モリオンには全く悪気がないことを(言わば、アテナみたいなもんだと)説明して、アルテミス様には俺から謝罪する。


「あたしは今気分が良いからね。特別に許してやるよ」

「ありがとうございます」


 気分が良いのは、恐らく6日間滞在の件だろう。本当に助かった。


「子竜もそうだけど、竜族は相変わらず傲慢だねぇ。たかが酒の肴の分際でさ」

「竜族が酒の肴って......。そんなこと言えるのはアルテミス様ぐらいですからね?」

「肴は肴さ。それ以上でもそれ以下でもないね」

「アユム、『さかな』ってなんなのだ?」

「ん? モリオン風に言うと、ご飯だな」

「我、食べられちゃうのだ!?」


 基本的に竜族ともなれば、その強さ故に捕食者側となる。

 だから、自分が捕食されるなんて夢にも思っていなかったんだろう。

 それが食べられてしまうと聞いたことで、ぶるぶると震え出すモリオン。


(恐怖するところがそこかよ!?)


 でも、そういうところがかわいい。


 確かに竜肉は絶品だ。噛めば肉汁が溢れ、味は癖もなくジューシー。

 ただ旨いだけではなく、心身を整える効果もあり、『薬用肉』とも言われている。

 さすがに不老不死とまではいかないが、長寿間違いなしの『キングオブ肉』なのである。


 故に酒の肴に限らず、ご馳走の類いとなる。

 以前、アルテミス様より戴いた竜肉は王侯貴族に大人気だったらしい(コシーネさん談)


 だからと言って、酒の肴目的で竜族を狩ろうとは決して思わない。

 まず滅多に見掛けないし、そんなことをしていたら命が幾つあっても足りないからだ。


 閑話休題(それはそうと)


「モリオン、同じ匂いってなんだ? さすがに、アルテミス様ほどアテナは臭くないぞ?」

「......アユムっち、あっちで少し話そうか」

「ひッ!?」


 つい本音が!


「い、いえ、俺はアルテミス様の臭いが大好きなんですけどね? 本当ですよ?」


 ただ、アテナがそこまで臭いかと言うと、それはそれで異議を唱えたい。

 なんたって、アテナの体は俺が毎日洗ってあげているからな。それはもう隅々まで。

 だから、臭いどころか良い匂いがして当然で、アルテミス臭と同一視されるのは甚だ心外だ。


「アルテミス様の臭いが大好き......。私のは、私の匂いはどうなのですか!? 歩様!」

「ニケさんの匂いも大好きですよ! えぇ、大好きですとも!!」


 だから、変な横槍はしないでもらえませんかね!? 

 話がややこしくなりますから!


「おやおや、妬けるねぇ。あたしの臭いが一番だったんじゃないのかい?」

「......ノ、ノーコメントで」


 ここで、その答えを出せる訳がない。

 まぁ、アルテミス様もそれを分かった上での発言なんだろうが......。


(この女神様(ヒト)、本当にタチが悪いなッ!)


 しかし、タチが悪いのは何もアルテミス様に限ったことではなかった。


「歩、歩。それってさー(o゜ω゜o)」

「なんだよ?」

「心の内をしゃべっちゃうとー、ニケを傷つけることになるからー(。´・ω・)?」

「お、おま!? それだと誤解されるだろ!? というか、時事ネタやめいッ!!」

「そうなのかい? なんだか照れるねぇ。あひゃひゃひゃひゃひゃw」

「そ、そんな......。私が一番ではないのですか!? 歩様!」

「ほら、誤解された! アテナが変なことを言うから!!」

「ちゃーんと答えればいいだけじゃーん! あーははははは( ´∀` )」


 せっかく、ノーコメントでお茶を濁そうと思ったのに......。

 普段はポンコツなのに、こういう時だけは機を見るに敏なアテナが憎たらしい。

 

 しかし、悪いことはまだまだ続くようで、アルテミス様の口角が悪魔の口のようにきれいな弧を描いた瞬間、俺の背筋はゾッとした。


「あたしはね、アユムっちに臭いを嗅がれるのは別に構いやしないよ。さすがに『もう慣れた』からね。いつでも好きに嗅いだらいいさ。そういう『約束』だからね。そうだろ?w」

「ちょっ!? アルテミス様!? 何、ぶっこんでるんですか!?」

「......もう慣れた?......そういう約束?..................歩様、それはどういうことでしょうか?」

「ひぃぃ!?」


 この後、滅茶苦茶デートの時間が減った。



 ■■■■■



 アルテミス様の見境のない悪戯にも困ったものだ。

 再びニケさんを宥め終えると、何やらインカローズが質問したそうにしていた。

 実にらしくない態度だが、お貴族様相手にさすがに遠慮しているのだろう。


 いや、恐らくは『あれ』が原因なのかもしれない。ハァ......。


「どうした?」

「いや、こんなこと聞いてもいいのかねぇ」

「遠慮しなくてもいいぞ」

「じゃあ......。そこのちっこいのはともかく、そっちの二人とはどういう関係なんだい?」


 インカローズの言葉に、ニケさんとアルテミス様それぞれが別の反応を示した。


 ニケさんは端正な眉をピクリと動かした以降はキリッとした済まし顔に。

 それは、己が絶対の彼女であるという自信とそうであるはずとの不安を懸命に押し隠す姿、そう宣言されることを今か今かと待ち受けている姿にも見て取れる。


 対して、アルテミス様は呆れるばかりの清々しい笑顔に。

 それは、好奇心旺盛で心をときめかす少年のような姿、俺が何と答えるのか楽しみで楽しみで仕方がないといった姿にも見て取れる。


(ハァ......。また何か企んでいるんじゃないだろうな? もう勘弁してくれ)


 一向に反省する様子が見られないアルテミス様にちょっとうんざり。

 どう答えたところでイジられる運命なら、もはや諦める他はないだろう。


「ニケさんは俺の彼女で、アルテミス様はただの知り合いだ」

「今は『まだ』ね。あひゃひゃひゃひゃひゃw」

「ま、まだ!? 歩様!?」

「......ニケさん、いい加減にしてください。アルテミス様の場合、あれもそれもこれも全て冗談ですから」

「も、申し訳ありません。......あ、あの、もしかして怒っていらっしゃいますか?」

「いえ、別に」

「そこは「キレてないですよ」でしょーがーヽ(`Д´#)ノ」

「やかましいわッ!」


 怒ってなどいない。嫉妬されることも鬱陶しいとは思わない。

 ただ、もう少し信じて欲しいというか、ニケさんがあまりにも情緒不安定過ぎる。


 いや、仮に怒りの対象があるとすれば、それは───。


 俺は泣きそうになっているニケさんから、諸悪の根源たるアルテミス様へと視線を移した。


「うん? なんだい?」

「......」

「ヒュー♪ ヒュー♪ ヒュー♪」


 剣呑な視線に気付いたアルテミス様は、白々しく口笛を吹いてやり過ごそうとしている。

 さすがにやり過ぎたという認識はあるようだ。一応、これも惚られている効果だろうか?


 とりあえず、この場が波乱となるのだけは防げたが、重い雰囲気が漂うことに。

 だが、そんな暗い雰囲気を吹き飛ばすような出来事が突如起こる。


「ほら! 何をボサッと突っ立ってるんだい! あんたらもだよ! 早くしなッ!」

「「「はーい! マイ・首領(マム)!!」」」


 インカローズの一喝を合図に、敬愛する首領と同じように一斉に跪く騎士団員達。


 その一糸乱れぬ統率された動きは一見の価値あり。

 まるで時代劇のお殿様入場シーンを見ているかのような錯覚に陥る。


「うぉ!? な、なんだ!?」

「な、何事です!?」

「な、なんだい!?」


 その光景に、俺だけではなくニケさんとアルテミス様も口をあんぐり。


 なぜ、インカローズ達がいきなりそんな行動を取ったのかは不明。

 また、約40名が一斉に跪いている光景は得も言われぬ圧迫感があった。


 そして、それに続く3つの小さな影。


「へへー<(_ _)>」

「へへー、なのだ!」

「アーちゃんとモーちゃん、違うよー。そこは「ははー」だよー?」

「ははー<(_ _)>」

「ははー、なのだ!」

「ははー☆」

「......」


 うん。この3人はこのままでもいいかな。仲良く遊んでいるし、何やら楽しそうだ。

 これにドールも加わってくれたら、凄く場が和みそう。まぁ、絶対に無理だろうけど。


 俺は3人の楽しそうな姿を横目で楽しみつつ、インカローズに改めて尋ねた。


「えっと、何してんの? お前達」

「何って、敬礼に決まってるだろ?」

「何をしているのかを聞いているんじゃなくて、なんでいきなり敬礼しているのかを聞いているんだが?」

「いや、当然のことじゃないか」


 インカローズが「何言ってんの?」と首を傾げる。

 それに対して、俺も「何言ってんの?」と首を傾げ返した。


 何が当然なのかがさっぱり分からない。

 こういう時、異世界人との間で認識の違いを改めて感じる。


(あれか? お貴族様に対しての礼儀というやつか?)


 しかし、インカローズ達は元山賊。

 権力への媚びみたいなものには嫌悪感があると思ったんだが......。

 そもそも、そういう分別が出来るのならば、山賊などには堕ちなかったはずだ。


(じゃあ、なぜ?)


 いつまで経っても要領を得ない様子の俺に、インカローズが口を開く。


「そ、そっちのお貴族様は竜殺しの彼女なんだろ?」

「......」


 インカローズが()()()()指差す先に居るのは愛しのニケさん。

 それに対して、ニケさんの瞳が昏く光る。


(というか、お前も人を指差すな! 紹介済みなんだから名前で呼べよ!)


 いや、確かに呼びにくい気持ちは十分に理解出来る。怖いもんな?

 呼べたとしたら、それこそ真の勇者だとも思う。怖いもんな?

 仮に、俺がインカローズの立場だったら絶対に無理だ。だって、怖いんだもん。


 それでも、モリオンの教育に悪いからやめて欲しい。


「そうだぞ。それが?」

「だったら、竜殺しの未来の正妻様な訳だ」

「......」

 

 未来の正妻様という言葉に、ニケさんの端正な眉がピクリと反応した。


「あたいらは元山賊だからね。お貴族様への礼儀なんか知らないんだよ。だけど、そんなあたいらでも首領は絶対というルールぐらいはある。だから、今のあたいらの主人である竜殺しの正妻様なら、敬礼ぐらいするのは当然のことだろ?」


「なるほど」


 上下間系に厳しい体育会系のノリだろうか。

 実に山賊らしい単純明快なルールだ。

 まぁ、反抗的な態度を取られるよりかはよっぽどマシかな。


 と、その時、ニケさんが嬉しそうに口を開いた。


「ふふ。立場をわきまえた素晴らしい判断です」


 その言葉と同時に、インカローズに掛けられていた圧が急速に弱まった。


 何を隠そう、ニケさんは紹介時よりずっと圧を掛けていたのだから驚きだ。

 原因はまず間違いなく『俺の初めてのダンジョンデートを奪った憎い敵』だからだろう。


 ただ、そんな静かに怒れるニケさんが圧を掛ける以上の派手な制裁が出来ずにいたのは、ひとえに俺が側に控えていたからこそだと思う。ドールの時と同じようなものだな。


 そういう意味では、早々にインカローズを紹介出来て正解だった。

 そして、インカローズもまた、今のニケさんに対してナイスな行動に出たと思う。


「ふふふふふ! そう、私こそが歩様の『正妻』なのです!」

「「「ははー!」」」

「ははー<(_ _)>」

「ははー、なのだ!」

「ははー☆」


 情緒不安定だったからこそ、『正妻』という言葉がクリーンヒットしたのだろう。


 ニケさんのご機嫌はすこぶる良い。

 そんなニケさんを見ると、俺も何だか嬉しくなってきた。


 ただ、俺がどんなに「大丈夫ですよ」と言葉を尽くすよりも、インカローズの「正妻様」のたった一言で問題を解決出来てしまったことには少しショック。


 つくづく思う、言葉選びって大切だよなぁ。


「やれやれ。相変わらずチョロい女神だねぇ、ニケちゃんは」

「余計なこと言わないでくれますか!?」


 言葉選びが大切だって言ってんだろ! 

 アルテミス様も言葉を選んで!!


 俺はくわっと目を見開いて、そう訴えた。


 一方、インカローズにも一つのお裁きが下される。


「あなたの罪は赦しがたい大罪です」

「大罪? 何のことだい?」

「......(くわっ!)」


 さすがに、それではインカローズには何のことだが分からないはず。

 それでも、俺は「いいから黙ってろ!」と目を見開いて、そう訴えた。


「ですが、その殊勝な心掛けにより、この度は恩赦と致しましょう。感謝しなさい」

「あ、あぁ」

「これからもそうあるように。いいですね?」

「だから、何の───」

「......(くわっ!)」


 困惑するインカローズに、俺は再び「いいから黙って頷いておけ!」と目を見開いて、そう訴える。


 神様達(アテナは除く)のご機嫌を損ねる行為はバカのすることだ。

 何のことだか分からないことでも、賛同しておくことこそが賢い選択に他ならない。


 もうこれ以上、俺の楽しみを邪魔しないでくれよぉ!


 


 今日のひとこま


 ~お前も我のお姉ちゃんなのだ!~


「結局、同じ匂いってなんだったんだ?」

「同じ匂いは同じ匂いなのだ!」

「それが分からんと言ってるんだよなぁ」

「そう言われても、我も困るのだ」


 モリオンも困るんかい!


「(すんすん)......やっぱり全然違うよな?」

「こらー! 勝手に嗅ぐなー! しつれーでしょーヽ(`Д´#)ノ」

「失礼? どの口が言うんだ? お前の存在自体が失礼だろ!」

「ふぇぇ(´;ω;`)」


「アルテミス様はどういうことか分かりますか?」

「そんなの分かる訳ないだろ? 子竜に聞きな」

「いや、聞いても分からないから尋ねたのですが......。何、言っているんですか?」

「あぁ? 何か言ったかい?」


「ひッ! 何でもありません! ニ、ニケさんはどう思いますか?」

「そうですね。匂い、というのは何かの喩えという可能性はありませんか?」

「何かの喩え、ですか。良い線いっているかもしれないですね」

「あくまで予想ですが、大きく外れているとも思えないんですよね」


 鋭い考察、素敵です。


「となると、考えられることは......」

「アテナ様とアルテミス様は血の繋がった御姉妹です。だから匂いが似ていると、こう考えられませんか?」

「おぉ! さすがはニケさん!」

「ふふ。お誉めに与り光栄です」


「そうなのだ?」

「お前が聞くんかい!」

「我は分からないのだ。でも、ア......ア......お姉ちゃんと同じ匂いがするのだ!」

「ふーん。まぁ、ニケさんの言う通りなんじゃないか? 知らんけど」


「じゃあ、こいつは、ア......ア......お姉ちゃんのお姉ちゃんなのだ?」

「こいつはやめて!? というか、いい加減に名前を覚えろよ」

「ちゃんと覚えているのだ! ヘカテーお姉ちゃんなのだ!」

「ヘカテー様だけな?」


「どうでもいいのだ!」

「どうでも良くはないだろ!? さすがにアテナがかわいそうだぞ?」

「アユム、うるさいのだ! お前はお姉ちゃんのお姉ちゃんなのだ?」

「あん? 確かにあたしはアテナっちの姉だけど、それがどうしたんだい?」


「じゃあ、お前も我のお姉ちゃんなのだ! よろしくお願いします、なのだ!」

「はぁ? あたしが子竜のお姉ちゃんだって? どういうことだい?」

「すいません、アルテミス様。モリオンはアテナの妹ということになってるんです。それに姉妹が増えるのがよっぽど嬉しいのか、片っ端から姉を作りまくってるんです」

「ふーん。そういうことかい」


「申し訳ないですが、ごっこでも良いので付き合ってあげてください」

「いやいや。面白そうじゃないかい。あたしは新しい妹を歓迎するよ」

「ありがとうございます。きっとモリオンも喜ぶに───」

「子竜! お姉ちゃん命令だよ! 酒を今すぐ持ってきな!」


「我はモリオンなのだ!」

「あぁ、そうかい。じゃあ、子竜。酒をさっさと持ってきな」

「アルテミス様も名前で呼んであげて!?」

「どうでも良いだろ? それよりも酒さ! 早くしな! お姉ちゃん命令だよ!」


 それ、妹じゃなくて下僕扱いですよね?

 あんたら姉妹はもう少しだけ妹思いになれよ!


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