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歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~  作者: なつきいろ
第7章 躍進 -乙女豹アルテミス編-
327/349

第268歩目 十連ガチャその後!


 前回までのあらすじ


 あーあr(・ω・`;)

 


 side -アルテミス-



「フェンリル! フェンリルはどこだい!」


 アユムっちが去って以降も、あたしはまだどこか気分が高揚していたよ。

 惚れた男に久しぶりに会えた喜びと惚れた男の思いがけない気遣いが嬉しくて。


「ふぅ......まさか、このあたしがね」


 正直、自分でもびっくりするような心境だね。

 恋だの愛だのとは無縁だとばかり思っていただけに。


 ただ、アユムっちのこととなると、ニケちゃんが女神らしからぬ行動を取るようになる気持ちが少しは分かった気がするよ。まぁ、あたしはまだそこに至るほどじゃないんだけどね。


『お呼びでしょうか、アルテミス様』


 しばらくすると、音を立てることもなく現れたフェンリルが静かにかしずく。


「あぁ。明日、あたしは下界に行くことになったよ」

『それは重畳。ただ......よろしいのですか?』

「パパのことかい? 別に構いやしないよ」


 あたしは現在謹慎を言い渡されている身さ。恐らく、後数万年はこの調子だろうね。

 言うなれば、籠の中の鳥のようなもの。天使の輪を失った天使にも等しいかも。


(いや、ここは敢えて囚われの姫といこうかね? 一応、王子様も出来たことだし。あひゃひゃひゃひゃひゃw)


 だから、神界内ですら自由に出歩くことを許されてはいないのさ。

 ただただ、部屋にてつまらない仕事を真面目にしろと厳命されているよ。


「もううんざりさ。毎日がまるで地獄のよう。本当にここは神が住まう神界かね」

『......』

「幾らなんでもこれじゃ、あたしがかわいそうだとは思わないかい? 本当に息が詰まりそうだよ」

『ご心中お察しします』

「それに、今回あたしは言われた通りに仕事をするだけさ。誰にも文句は言わせないよ」


 仕事を真面目にしろと言われたのだからそうするだけ。

 仕事だから仕方がなく降臨するのであって、何も遊びに行く訳ではないのさ。


 そう、()()()()()()パパでさえ文句を言えない訳だw


『畏まりました。供は必要でしょうか?』

「うーん。そこなんだよ」

『と、言いますと?』

「今回は恐らくニケちゃんもいるだろうからね。あたしがアユムっちを独占する訳にもいかないのさ。そんなことをしたら殺されちまうからね」

『ニケ様、ですか』

「あぁ、心配には及ばないよ。あの事はすっかりと忘れているはずさ」


 あの事とは、付き神(ニケちゃん)最高神(あたし)に反逆するという前代未聞の大騒動のことさ。

 原因はニケちゃんの勘違いと嫉妬心だったけれど、それでも多くの神々を驚かせたね。

 あの忠実無比で規定の鬼である女神がまさか、と。


 故に、ニケちゃんは神界を騒がせた罰として一部の記憶を失った。

 当然、当事者であるあたしやフェンリルも迷惑や被害を被った一人となる。

 あたしはパパから謹慎を言い渡され、フェンリルは他の神獣達から非難の的にと。


 しかし、それはもはや過ぎ去った出来事に他ならないのさ。

 だから、心配する必要はどこにもないし、心配そのものをする意味も全くない。


「とりあえず、フェンリルも準備だけはしておきな。アテナっちのお気に入りなんだろ?」

『畏まりました』

「それと、下りる前に()()を用意するよう九十九尾に伝えておきな」

『あれ、ですか? もはや不要なのでは?』

「そっちじゃないよ」

『これは失礼しました。あれですね。委細承知しました』


 全てを理解したフェンリルは来た時同様、音を立てることもなく姿を消した。


 うんうん。余計なことを言わず、ただあたしの言うことに素直に従う。

 それに、愚か過ぎず賢過ぎず、愛獣(ペット)ってのは本来こうじゃなくちゃね。

 アテナっちのお気に入りとは言え、フェンリルは()()使い道がありそうだ。


 全ての準備を終えたあたしは手元の水晶を調整した後、覗き込むことに。


「おぉ! 知らない間に狐以外にもたくさん増えているじゃないか! これは楽しみだね!」


 そこに映るは、下界に戻ったアテナっちにアユムっち。

 そして、そんな二人を取り巻く愉快な仲間達の姿だった。


「子竜に、大勢の女共(にんげん)か。いいね! いいねぇ!」


 アユムっちと会った時とは違う意味で心がときめく。

 今すぐにでも降臨したい、人間という未完成の器の中に交じって(たの)しみたいと心が弾む。

 それはまるで渇いた大地に水が染み込み潤していく、まさにそんな爽快で気持ちの良い気分。


「さぁてと、どんなことをしてからかってやろうかね? あひゃひゃひゃひゃひゃw」



 ■■■■■



 side -ニケ-



「はぁ..................」


 大きな溜め息を一つ。

 それと同時に自分の体を抱き締めることに。


「......」


 少し震えているのが分かります。


 先程まで体に残る歩様の温もりと匂いに包まれ、しばし幸せな余韻に浸っていました。

 久しぶりに歩様に会えた喜びと歩様に愛されているという心の安らぎを噛み締めながら。


 しかし───。


 幸せであるほど、どうしても不安で仕方がない気持ちもまた膨れ上がってくるのです。

 理想の女性と言われても拭いされない不安感。大丈夫だと思っても晴れない憂鬱感。

 神界でも「模範的な神」と言われている私をしても、往々にしてままならぬものです。


「はぁ..................」


 再び大きな溜め息を一つ。


「ニケ様、いかがなされましたかな?」


 そんな私の様子に気付いたバットが近付いてきました。

 な"ーやテディなどは全くといっていいほど気付いていないのに、本当に目敏いです。

 本当は一人になりたかったのですが、気付かれてしまったのならば仕方がありません。


「聞きたいのですが、本当に私は歩様に嫌われてはいないでしょうか?」

「先程まではとても仲睦まじかったようにも見受けられましたが......なぜ、そう思われるのですかな?」

「......不安なのです。歩様はお許しくださいましたが、私は無礼を......いえ、わがままを言い過ぎたのではないかと。歩様に失望されてはいないでしょうか?」


 思い起こすは歩様の屈託のない笑顔のみ。

 その笑みに嘘偽りがないことは分かっています。

 それでも、あまりにも醜い姿を見せてしまったように思われてなりません。

 お許しはあっても、失望されてしまったとあっては居ても立っても居られないのです。


 しかし、バットからの返事はあっさりとしたものでした。


「杞憂ですな」

「そうですか? なぜ、そう言い切れるのですか?」

「言っていたではありませんか。わがままを言われるのは嬉しい、と。ご安心ください。彼は心の底からニケ様を愛されていますぞ」

「......」


 それは分かっています。

 愛されているという自信も確信もあるのです。

 しかし、どうしてでしょう。幸せであればあるほど不安の種が尽きません。

 ほんの些細なミスが原因で、歩様の寵愛を失ってしまうのでは? と怯えてしまうのです。


(はぁ......私は本当にめんどくさい女神ですね。仮に、こんなことを私が思っていると歩様に知られでもしたら、それこそ......)


 そう考えるだけで、不安で、恐怖で、絶望感で身が凍る思いです。

 いくら負の感情に勝利しようとも、震えが止まる気配は一向にありません。


「......ふむ。まだご納得されていないご様子ですな」

「......」

「ニケ様はあれではないですかな? 彼との間に確かな愛が欲しいのではありませんか?」

「確かな愛、ですか?」


 確かに、それを得られれば安心できることでしょう。

 何事にも決して揺らぐことのない、歩様との確かな愛を得られれば。


 しかし、それが何なのかは皆目見当がつきません。


「既に彼から愛の言葉を告げられ、接吻も済まされた。となれば、あれ以外にはありますまい」

「あれ、とは?」

「ニケ様も知識としてはご存知のはず。男女の睦み合いです。平たく言えば、体を重ねることですな」

「!?」


 思わず、息を呑んでしまいました。


 一応バットの言う通り、雑誌を通じてその知識を得てはいます。

 そして、私としてもそれを考えなくはありませんでした。

 デート中の折、歩様が(心の内で)望まれていた時もありましたので。


「古来より、男女の睦み合いによって『男は性欲を満たし、女性(にょしょう)は愛を感じる』とも言われておりますからな。彼との間に確かな愛をお求めならば、これをおいて他にはございますまい」


「な、なるほど。雑誌の特集で大きく掲載される訳ですね」


 ただ、それを行うのは別に良いのですが、一つの懸念事項が───。


「歩様の心の内はどうあれ、言い出されないのならば望んでいない、ということではないのですか? 私は歩様のお心に寄り添いたいのであって、望まれていないことをするつもりはありません」


「それは違いますな」

「その根拠を示しなさい」

「彼はいまだ童貞の身。童貞というものは自分から(いざな)うに勇気がいるものなのですぞ」

「そう、なのですか? 望んでいたとしてもですか?」

「その辺りの男の心情は、女性(にょしょう)には少し理解しづらいものかもしれませぬな」

「そ、そうですか。不思議なものですね」


 神獣ではあっても男性(オス)であるバットがそういうのならばそうなのでしょう。

 人間の感情がよく分からない私などよりも、元人間だったバットの言葉のほうがずっと信憑性があります。

 ここはそういうものだと素直に受け入れましょう。


 となれば、解決策は一つです。


「ならば、私からお誘いすれば万事解決ですね」

「それはそれで考えものですな」

「どういうことですか?」


 歩様が誘いづらいというのなら私から。

 これのどこに問題があるというのでしょうか?

 最も効率的かつ理に叶った方法のように思えてなりません。


 正直、バットの助言はとても助かってはいるのですが......。


 私は歩様との間に決して揺らぐことのない確かな愛が欲しいのです。

 それなのに......何だかまどろっこしくて、とても不快な気分になってきました。


 それとも、これもバットの言う、女性には理解しづらい男性の心情とやらなのでしょうか?


「まだご経験がないから実感できないのでしょうが、男女の睦み合いは女性(にょしょう)にとっても重大時。軽々しく口にすることは相成りませんぞ。下手したら、はしたないと思われるかもしれませんな」


「そ、それだけは絶対にいけません! 歩様に嫌われてしまいます!」

「ですから、彼も望んではいても言い出しにくいのです」


 そして、バットはこう続けました。

 彼もまたニケ様と同じ気持ちなのですぞ、と。


 そこまで教えられて、初めて歩様の苦しいお心内を知ることができました。

 何事も効率を図るだけでは上手くいく訳ではないのですね。勉強になりました。


 しかし、では、どうしたら良いのでしょう?

 恐れるばかりでは、いつまでたっても歩様との間に確かな愛を育むことができません。


(こんな時、アテナ様さえいらっしゃれば、スパッと解決策をご提示頂けるのですが......)


 あぁ、もう! 

 もどかしいやら、焦れったいやらで、私はどうしたらいいのでしょうか!?


「そんなに難しいことではありません。彼がいつも言っているではありませんか。シチュエーションが大事だと」

「シチュエーション......」

「そういう雰囲気に持っていけば良いだけのことですぞ。さすれば、ニケ様からお誘いされても決してはしたないなどとは思われません」

「な、なるほど。そこまで断言する以上、バットには良い雰囲気にする手立てがあるのですね?」

「手立てというほどのものではありませんが、少し行えば効果はあるでしょうな」

「では、その方法を教えなさい」


 その後、バットとの打ち合わせは降臨する直前まで続きました。




 今日のひとこま


 ~もう一つのその後~


「いやに遅いねぇ、竜殺しとおちびちゃんは」

「何を言うておる。いつもこれぐらいかかるものなのじゃ」

「そうなのかい?」

「そうだと言うておろう。静かに待っておれ」


「(すんすん)......ん?」

「どうしたんだい?」

「今微かに主と姉さまの匂いがしたのじゃが......」

「何か気になることでもあるのかい?」


「いや、姉さまの匂いは間違いないのだがの? 主の匂いがどうにも......」

「竜殺しじゃないってことかい?」

「うぅむ。主の匂いであってそうではないものとしか言えぬの」

「なんだい、そりゃ?」


 そう言われても困る。妾でもよく分からぬのだがの。

 ただ、主の匂いと一緒に()()()()()も含まれておるとしか......。


「ただいま。ドール、インカローズ」

「なんだ、やっぱり竜殺しだったじゃないか」

「ん? どういう意味だ?」

「いやさ、狐のおちびちゃんがね、ちょっと」


「ドール?」

「......本当に主で間違いあるまいな?」

「俺でなくて何だって言うんだ?」

「い、いや、それにしては雰囲気というか強さそのものが全く違っておっての」


「お! さすがはドールだな。その通り、俺は強くなったぞ」

「じゃが、強くなったとかいう次元の話ではないようにも思うがの?」

「まぁ、色々とあってな。詳しくは飯の時にでも話すよ」

「うむ。ならば楽しみにしていよう。それはそうと......主、少し良いかの?」


「なんだ?」

「姉さまとは別の女子(おなご)の匂いもするのぅ。どういうことじゃ?」

「は? なんのことだ?」

「妾の目は誤魔化せても、鼻まで誤魔化せるとは思わぬことじゃな」


「うーん? アルテミス様やニケさんの匂いじゃないのか?」

「違うのじゃ。お二人の匂いはしっかりと覚えておるからの」

「じゃあ、エリス様だ。もしくはメドゥーサ様だな」

「エリス様はともかく、メドゥーサ様は違うと断言できるのぅ」


「どうしてだよ?」

「初めて聞いた名からすると、主にとっても初のお方であろう?」

「まぁ、そうだな。それが?」

「それが主の頭からぷんぷんと匂いが漂うほど懇意の仲になったとは到底思えぬ」


「!!!......そ、そうとも言えないぞ? さ、最後の見送りの時なんて激励をくれたほどだしな」

「はぁ..................。主、往生際が悪いのじゃ」

「い、言い掛かりだ!」

「ほぅ? 素直に吐いたほうが良いと思うがの?」


「は、吐くもなにも何のことやらさっぱり」

「ふむ。ならば後悔するが良い」

「!?」

「この匂いはの、エリス様のものなのじゃ。しかも、相当濃い匂いじゃのぅ。メスの匂いそのものなのじゃ。ふむ......仮に接触したならば密着状態といったところか」


「お、おま!? ニケさんが見ているかもしれないだろ!?」

「だからじゃ。だから、素直に吐けというたのじゃ。やましいことがないならば隠す必要はあるまい?」

「よ、余計な心配をさせたくないということもあるだろ!?」

「つまりは、何かがあったという訳じゃな? 主、何があったか話してくれるのであろうな?」


 これ以上、主に余計な虫がつくことだけは許せぬ!

 ここはニケ様と共に図ってでも虫の排除に努めねばッ!!


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