表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~  作者: なつきいろ
第7章 躍進 -乙女豹アルテミス編-
291/349

第233歩目 響く■■のお告げ!


 前回までのあらすじ


 みーんな魔勇者になりすぎー! ちゃーんと働けーヽ(`Д´#)ノ



───ブゥゥウウン。


「うわっと!?」

「あーははははは( ´∀` )」


 背中からアテナの楽しそうな声が聞こえてくる中、俺は懸命にそれを避けていた。

 そう、まるで某悪の帝王が使うデスビ○ムのような、避けづらく、技の出が速い【()()()()()】を───。


「紫だけにー?(o゜ω゜o)」

「黙ってろ! 忙しいんだから!」

「クリ○ンのことかーーーヽ(`Д´#)ノ」

「お前のことだよッ!!」


 今、俺が対峙しているのは敵の指揮官とおぼしき魔物である。

 幸か不幸か、魔勇者本人が出向いてきている訳ではないようだ。


 この指揮官とおぼしき魔物の姿形は黒馬のそれである。

 ただ、馬の額には長い角───螺旋状によじれた角があるのが特徴的だ。

 例えるなら、かの有名な一角獣であるユニコーンの黒馬版みたいなものである。


 そして、この指揮官とおぼしき魔物もまた死骸兵だった。

 他の死骸兵同様、【鑑定】は不可能で、炎みたいな幻影を纏っている。

 ただ、他の死骸兵と異なるのは、炎の幻影が赤色ではなく紫色だということだ。


 ちなみに、それを見たガイヤさんが思わず、「俺達のお株を奪われたぁ!?」と口にしていたが、なんとも悲しい心の叫びである。


(それにしても......なんでこいつだけ紫色なんだ?)


 紫色と言えば、昔から『特別な色』または『権威の象徴』だとか言われている。

 ということは、この指揮官とおぼしき魔物は他とは異なる特別な魔物なのだろうか。


 実際、赤色の炎の幻影も不気味ではあったが、紫色のそれは赤色以上に不気味さが際立つ。

 いかにも高貴な魔物、特別な魔物といった感じだ。


───ブゥゥウウン。


「......っと! あぶね!?」


 再び飛んできた【紫色の光線】を、身を翻して辛うじて避ける。


 早くはあるが、避けられない速度ではない。

 油断さえしていなければ、なんとか被弾せずに済むといったところだ。


「......ッたく! おちおち分析もできやしない!」


 そう、油断さえしていなければ......。


 以上のことから推測できるのは、指揮官とおぼしき魔物の強さが『俺と同等』もしくは『俺よりも少し格上』だということである。


 まさに、ここからは油断ならない一進一退の攻防が繰り広げられることだろう。


「あーははははは( ´∀` )」

「......そう思っていた時期が俺にもありました」


 俺が【紫色の光線】を避ける度に、()()()()繰り広げられる大回転。


「ぐるんぐるーんo(≧∇≦)o」

「......」


 別に、花びらの大回転ではない。

 いや、考えようによっては花びらなのかもしれない。


 なんたって、アテナは俺の首にぶら下がったまま、俺が【紫色の光線】を避ける度に生じる遠心力を利用して、まるで回るプロペラのように俺の体の周りをぐるんぐるんと回っているのだから。


「あーーーーー」

「......」

「ゆーーーーー」

「......」

「むーーーーー( ´∀` )」

「......」


 アテナのかわいい顔によって、何度も何度も瞬間的に塞がれる前方の視界。

 アテナの揺れる大きい果実によって、何度も何度も一時的に奪われる俺の理性。


(こんなん、「油断するな!」というほうが無理があるだろッ!!)


 かの有名なちび皇帝の『真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である』とはよく言ったものだ。


 つまり、無能という言葉がぴったりなアテナが邪魔で邪魔で仕方がない。

 かと言って、『紅蓮の蒼き戦斧』にアテナを押し付ける訳にもいかない。


 なんたって───。


「......お前邪魔だから、カクタスさん達と一緒にいろよ」

「やーだよーヽ(o・`3・o)ノ」

「はぁ......? なんで?」

「歩の側が一番安全に決まってるからじゃーんΣヾ(´∀`*」

「......」


 なんという圧倒的ヒロイン力。

 こうまで信頼されてしまったら、ちょろいヒーローにならざるを得ないだろう。


「ちゃーんと私を守ってよねー(`・ω・´)」

「お、おぅ! 任せろ!!」

「あーははははは! アテナちゃん、だいかいてーーーーーんo(≧∇≦)o」

「言ってることとやってることが違うだろ!? お前は敵の味方かよ!?」


 奇しくも、俺はいま(アテナ)(魔物)から同時に攻められることに───。



 こうして、最終決戦は混迷をきたしていくのだった。

 


 ※※※※※

 


「くそッ! これじゃ、全く近寄れないぞ!」


 指揮官とおぼしき魔物の角から繰り出される【紫色の光線】が絶え間なく飛んでくる。


───ブゥゥウウン。

───ブゥゥウウン。

───ブゥゥウウン。


 俺はそれをトーンタンタンとまるで踊っているかのように避けまくった。


 その様は戦場をヒラヒラと舞う一匹の蝶───。


 と、ここまでは結構余裕ありそうに見えるが、実は必死だったりする。

『紅蓮の蒼き戦斧』の目もあることから、無様な姿を見せる訳にもいかない訳だ。


 ただ、辛うじて被弾せずに済んではいるものの、これでは根本的な解決には程遠い。

 まさに、一種の膠着状態と言ってもいい状況に陥っていた。


(こうなったら、アテナを......)


 ()()()、黒い考えが頭をよぎる。


 このままでは、いずれ【紫色の光線】を被弾してしまうことだろう。

 一発喰らっただけで死ぬ訳ではないが、それでもこの戦いの勝利の鍵を握っているのは俺だ。


 やはり、ここは不安要素のある賭けには乗らず、慎重を期すべきだろう。

 だって、俺が負けてしまっては元も子もないのだから。


(......とすると、最強の盾であるアテナを盾代わりにして突っ込む、という手も───いやいやいや。さすがにそれはアテナがかわいそうだ)


【紫色の光線】によってできた、抉られた地面を見て、そう思う。


 確かに、アテナならば【紫色の光線】を被弾しても確実に大丈夫だろう。

 それは『全ダメージを1で抑える』という女神のワンピースの特性上、間違いない。


 しかし、『被弾しても問題ないこと』と『怪我をしないこと』は同義にはならない。



 ─────────────────────────────────。

 


 一応、アテナだって女の子ではある。

 ダメージを全て1で抑えられるからと言って、怪我をしないわけではない。


 それに万が一、一生ものの消せない傷などさせようものなら、それこそ───。


「どーしたのー(。´・ω・)?」

「......なんでもない。というか、邪魔!」


 眼前を塞ぐアテナを、まるで獅子舞で大きく振りかぶるような要領で背中へと押しやる。


───ブゥゥウウン。


「......シッ!」

「おおぉぉおおおお! すごーい、歩ー! あーははははは( ´∀` )」


 そして、目の前まで迫ってきていた【紫色の光線】を寸でのところで避けることに成功した。


「ふぅ。今のは危なかった。なぁ、せめて邪魔だけはしないでくれよ......」

「だいじょーぶー、だいじょーぶーヽ(o・`3・o)ノ」

「......」


 確信した。確実に【紫色の光線】に対して、耐性というか慣れが生じてきている。

 幾度か避け続けてきたことで、【紫色の光線】に体が順応してきているようだ。

 

───ブゥゥウウン。

───ブゥゥウウン。

───ブゥゥウウン。


 しかし、いかんせん指揮官とおぼしき魔物が繰り出してくる【紫色の光線】の技の出が早く、側に近寄りたくとも近寄ることが全くできない。


 かと言って、魔法で攻撃しようとすると───。


「ファイア───」


───ブゥゥウウン。


「......チィ! あの光線、厄介過ぎ!!」


 俺の詠唱よりも段違いの速度で【紫色の光線】は放たれてくる。

 そして、その都度(魔法行使に必要な)詠唱とイメージが中断され、再びそれらをし直さなければならなくなる。


 つまり、遠距離からの攻撃では分が悪く、接近戦にこそ活路があると言う訳だ。


 だが、体がせっかく【紫色の光線】に慣れたというのに接近する術が全くない。

 俺には接近戦しか活路がない以上、このままではいつまでも経ってもジリ貧だ。


 となると、ここは───。

 

「......アテナ。どうしたらいい?」

「歩ならー、よゆーよゆーヽ(o・`3・o)ノ」

「......」


 先程の「だいじょーぶー、だいじょーぶーヽ(o・`3・o)ノ」の一件から、なんとなくだが分かってはいた。


 もはや、このくそ駄女神は力を貸す気はないらしい。

 いや、アテナからすれば、この程度のことは力を貸す程のことでもないのかもしれない。


(今の俺でもなんとかなるということか? だけど、どうやって......?)

 

 まさに万事休す。

 絶体絶命、四面楚歌。


 俺は『前門の魔物、後門のアテナ』に追い詰められていた。

 

 と、その時。



 ─────────カ?──────────────────────。



 何かが聞こえた......気がした。


「アテナ、何か言ったか?」

「ううんー。なーにもー(・ω・´*)」

「そうか......」


 どうやら気のせいだったようだ。


 それとも、疲れていて幻聴でも聞いたのだろうか。

 魔物の相手とアテナのお守りだけでも大変なのに、幻聴とかは勘弁して欲しい。


 しかし、しばらくすると───。



 ─────────イカ?─────────────────────。



「まただ。また何かが聞こえた。......一応聞くが、何も言っていないよな?」

「またー? 私は何も言ってないよー。てかさー、つかれてるのー?(´・ω・`)」

「主にお前が原因だけどな?......というか、そんなかわいそうな人を見る目をするなッ!」


 アテナの態度にはイラッとくるものの、今度はハッキリと謎の声が聞こえた。

 いや、正確には『()()()』と表現するほうが正しいのかもしれない。



 ─────────欲シイカ?───────────────────。

 


「......お前は誰だ? どこにいる? 俺に何を言いたい?」

「どーしたのー? ほんとーにバカになっちゃったー?r(・ω・`;)」

「......」


 実際、アテナには謎の声が全く聞こえてはいないようだ。


 それもそのはず。

 謎の声は俺の頭の中で何かを伝えようとしてきているのだから。


───ブゥゥウウン。


 すると、突如指揮官とおぼしき魔物から放たれた【紫色の光線】が視界に映る。

 本当は謎の声との対話に注力したいが、指揮官とおぼしき魔物がそれを許さない。


「......シッ!」

「ぐるんぐるーんo(≧∇≦)o」


 不意を突かれはしたが、【紫色の光線】をなんとか紙一重のところで避ける。

 但し、『紅蓮の蒼き戦斧』には華麗に避けているように見えるよう偽装しつつ。


「......どっせーい!」

「おおぉぉおおおお! すごいすごーい! あーははははは( ´∀` )」


 そして、アテナの大回転を獅子舞のごとき大きく振りかぶるような行為でいなし、俺は謎の声と(頭の中で)対話を続けた。

 これ以上声を出して対話していたら、アテナにかわいそうな人扱いされかねないからな。


(......お前は誰だ?)


 ─────────『力』ガ欲シイカ?───────────────。


(力......だと? その前にお前は誰なんだよ?)

 

 ─────────ドウシタ? 『力』ガ欲シクハナイノカ?─────。


(......)


 全く対話にならない。

 いや、もしかしたら、謎の声は端から対話なんてする気がないのかもしれない。


 ─────────ドウシタ? 『力』ガ欲シクハナイノカ?─────。


 ─────────ドウシタ? 『力』ガ欲シクハナイノカ?─────。


 ─────────ドウシタ? 『力』ガ欲シクハナイノカ?─────。


 謎の声はただただ一方的に(ささや)いてくるのみ。

 甘美とは到底言えず、この世のものとは思えない禍々しい声で。


(......)


 しかし、その声には───。


 ─────────アレヲ殺セル『力』ガ欲シイノダロウ?──────。


 ─────────アレヲ殺セル『力』ガ欲シイノダロウ?──────。


 ─────────アレヲ殺セル『力』ガ欲シイノダロウ?──────。


 更に、謎の声は一方的に(ささや)いてくる。

 この世のものとは思えない禍々しい声は、それはもう聞くに堪えないものだ。


(......)


 しかし、その声には逆らい難い何かがある。


 ─────────人間、我ト契約セヨ───────────────。


(ケイ、ヤ、ク......)



 しかし、その声には従わざるを得ない何かがある。


 ─────────人間、我ニ血ヲ捧ゲヨ──────────────。


(チヲ、サ、サ、ゲル......)



 そして、その声には甘美で魅力的な耳障りの良い何かがきっとある。


 ─────────強大ナ『力』ガ欲シクハナイカ?─────────。


(キョ、ウ、ダ、イ、ナ、チカ、ラ......)



 ─────────何者ニモ負ケナイ『力』ガ欲シクハナイカ?────。


(ナニ、モ、ノ、ニモ、マ、ケ、ナ、イ、チカ、ラ......)



 ─────────ソウダ、我ト契約スレバ最強ダ──────────。


(サイ、キョ、ウ......)



 もはや、何が何だか分からない。


 意識はちゃんとあるのに......。

 体はしっかりと動いているのに......。


 自分が自分ではないような不思議な感覚。


 俺は謎の声に、謎の声から出された魅力的な提案に、ただただ耳を貸すばかり。

 俺は謎の声に、謎の声から出された魅力的な提案を、ただただ復唱して頷くばかり。


 そして───。


 ─────────ソウダ、我ト契約スレバ最強ダ──────────。


 ─────────ソウダ、我ト契約スレバ最強ダ──────────。


 ─────────ソウダ、我ト契約スレバ最強ダ──────────。


 謎の声が畳み掛けてくるように、俺の頭の中で何度も何度も(ささや)き出した。

 それは俺の心の内に秘められた願望を、まるで謎の声が代弁しているかのように。


 ─────────ソウダ、我ト契約スレバ最強ダ──────────。


(オレ、ハ、サ、イ、キョ、ウ......)


 何度も何度も。



 ─────────ソウダ、我ト契約スレバ最強ダ──────────。


(オレハ、サイ、キョ、ウ......)


 何度も何度も何度も何度も。



 ─────────ソウダ、我ト契約スレバ最強ダ──────────。


(オレハ、サイキョウ......)


 何度も何度も何度も何度も何度も何度も。



 ─────────ソウダ、オ前ハ最強ダ!!────────────。


(俺は最強だ!!)



 そして、俺と謎の声は同時に叫んだ。


「アイテムボックス、オープン!」


 ─────────アイテムボックス、オープン───────────。



 今ここに、■■の契約がなされようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ