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歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~  作者: なつきいろ
第7章 躍進 -乙女豹アルテミス編-
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第226歩目 初めてのお披露目!


 前回までのあらすじ


 紅蓮の蒼き戦斧の皆さんは自由な方々らしいです!



「ふんッ! ざまぁないね!」

「..................自業自得」


「HAHAHA」


 嵐は過ぎ去った。

 

 結果は───。


 改めて言うまでもないだろう。

 所詮、人の身で自然を相手にするほうが初めから無理があったのだ。


(いつの世も人間とは自然に淘汰されるだけの存在なんだなぁ......)


 プスプスと音をたててフロッグ饅頭のようにこんがりと焼かれた......なんなら男臭い匂いもあげているカクタスさんとルチルさんを見てしみじみとそう思う。


 しかし、俺はこの時勘違いをしていた。


「......竜殺し様」

「..................ん」


 餓えた猛獣の獰猛な4つの視線が突き刺さる。

 

「ヒェ......」


 そう、嵐はまだ過ぎ去ってなどいなかった。

 狩りはまだ終わってなどいなかったのである。


(......いや、ここからが本番だということか?)


 じりじりと迫ってくるケセラさんとジャスパーさんに恐怖を抱かざるを得ない。

 俺の【感知】スキルが「こいつらはやべぇ」とビンビンに訴えかけてきている。


「......(ごくッ)」


 俺は決断を迫られていた。


 このまま無謀と知りつつも、大いなる自然に抗うか。

 はたまた、これも運命だと諦め、おとなしく自然に淘汰されるか。


 そして、悩んだ末に辿り着いた答えは───。



 ※※※※※



「ようこそ、魔動駆輪(わがや)へ」


 扉を開けると、そこに広がるは(ドラゴン)でもゆったりな広々としたリビングルーム。

 それを見て、()()「どひゃ~!」と驚く『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバー。


 先程まで待っていてもらった小部屋を見せた時以上の驚きようでちょっと鼻が高い。


「どひゃーってー、ユア・ストーリーかーいΣヾ(´∀`*)」

「そういうブラックジョークはやめろッ!」


 結局、悩んだ末に『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバーを本宅へとご招待することにした。



挿絵(By みてみん)



 当初は内部の件を考慮して、魔限監獄にでも泊まってもらおうかと思っていた。


 一応、魔限監獄でも、ケセラさんとジャスパーさんが待望している温泉はある。

 それに、監獄ではあるものの、監獄と言わなければ分からないだろうということで。


「こ、これほどとは......」

「いやはや、これは......」

「こ、これはすごいねぇ......」

「..................言葉が出ない」


 しかし、『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバーの様子を見て、気が変わった。


 俺が何よりも恐れていたのは詮索されること。

 この尋常ではない光景に探りを入れられて、しつこく付きまとわれることだ。


「さすがは竜殺し様ですね!」

「誠、英雄にのみ許された栄華でありますな」

「本物の『竜殺し』は伊達じゃないねぇ」

「..................勇者様の力は凄い」


 だが、『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバーは「『竜殺し』(の力)だから」「勇者(の力)だから」ということで、この超常現象ともいうべき魔動駆輪の内部を納得してくれている。


 言葉は悪くなるが、こういうお気楽思考ならば大歓迎である。


 俺としても自慢の逸品である魔動駆輪を自慢したい気持ちは大いにある。

 わざわざ客室まで用意したのは、それの表れだと言ってもいい。


 しかし、詮索されることだけはどうしても避けたかった。

 嫉妬されたり、目をつけられでもしたら非常にめんどくさいからだ。


(とりあえず、勇者はともかく、この世界の住人なら大丈夫そうかな?)

 

 俺はダウンしているドールをソファーで休ませ、自慢がてらに魔動駆輪の内部を『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバーに紹介していくことにした。


「まず最初にご紹介するのは───」

「お菓子BOXだよねー( ´∀` )」

「そうなのだ! 我はお腹が減ったのだ!」


「それの説明は必要ないだろ......」


 サクラにお菓子作成の許可を出してちびっこ組を黙らせる。

 案内が必要とは言え、ドール一人をソファーに放置しておくのもかわいそうだしさ。


「まず最初にご紹介するのは───」

「温泉だろ!? 温泉しかないよねぇ!」

「..................温泉しかない」


「お、落ち着いてください」


「ふんす!」と、ケセラさんとジャスパーさんの鼻息は荒い。


 早く温泉に入りたい気持ちは分からなくもないが、もう少し待ってほしい。

 まずは絶対的に必要なことから説明していきたい。


 それは───。


「まずはトイレについて説明しますね。やり方もお教えしますのでついてきてください」


 これって割りと重要な気がする。

 生理現象は如何ともし難いものだけに。


「いやいやいや。竜殺し様、場所さえ教えてくれたら十分ですから」

「そうでありますな。我らは子供ではない故に説明は不要ですぞ」

「竜殺し様はあたし達をバカにしてるのかい?」

「..................説明いらない」


 口々に不満を漏らす『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバーを宥めて説明を断行する。


「「「「すいせんしき?」」」」

「はい。ですから、説明が必要なんです」


 この世界のトイレはボットン式が普通だ。

 それは高級宿であっても変わらない。


 一方、うちの魔動駆輪のトイレは水洗式である。

 トイレの様式そのものが全く違うのだから、説明は絶対的に必要だ。


「───と、まぁ、このように使用していく訳です」


 俺は『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバーに、おまるを卒業した子供に初めてトイレの使い方を教えるかの如く懇切丁寧に伝えていった。


 具体的には───。


 便座に座って催すこと。

 催した後はちゃんと流すこと。

 ウォシュレットの使用はご自由に。


 と、いったところだ。


「この水洗式......というやつは良いですな! 痛くないのが実に良い! ははは!」

「そ、そうですか」


(......ルチルさん、それ笑えないやつです)


 多分、あれなんだろう。

 あれとボットン式は最悪の相性だからな。


「特にカクタスさんとルチルさんは立ったままするのは控えてください。それと、これは皆さんにですが......催した後の後始末は次に使用する人の為にもきっちりとお願いします」


 別に、汚されても、そのままの状態であっても、なんら問題はない。

 トイレ自体、サクラの24時間フルサポートで常に清潔さが保たれているのだから。


 まぁ、だからといって、サクラに甘えていい訳ではない。

 できることは可能な限り自分達で行うべきだ。


「歩は真面目だねー(・ω・´*)」


 ここで、()()()()()()お菓子を頬張っているアテナが登場。


「......普通のことだけどな?」

「私なんてー、ぜーんぶサクラ任せだよー! サクラがやってくれるからねーヽ(o・`3・o)ノ」


 いくらサクラの24時間フルサポートで常に清潔さが保たれているとは言え......。

 食べ滓を撒き散らすは、トイレは全てサクラ任せとか、本当にやりたい放題である。


 俺はアテナのもち肌の頬にソッと手を添える。


「お前はちゃんとしろッ!」

「ふぇぇええん。ごめんなさーい(´;ω;`)」



 ※※※※※



 アテナに雷を落として、再び魔動駆輪の案内に戻る。

 いよいよケセラさんとジャスパーさん待望の温泉を紹介する番だ。


「ここが当車自慢の魔天温泉となります」

「「「「おぉ!」」」」


 姿を見せた大浴場に、ただただ感嘆の声を漏らす『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバー。


 気持ちは分からなくもない。


 この魔天温泉はヘカテー様渾身の作である。

 いつも利用している俺ですら、いまだに驚かされるぐらいだ。


「ここは24時間いつでも開放してありますので、好きな時に入って頂いて結構です」

「に、24時間いつでも!? ほ、本当かい!?」

「..................まるで天国」


 衝撃の事実を聞いたと謂わんばかりに声を裏返すケセラさん。

 ジャスパーさんは至って平然......でもないな。なんだかうっとりとしている。


(やっぱり伝えて正解だったな)


 一応、『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバーには2Fの客室を利用してもらうつもりだ。

 客室には部屋風呂もあるのだが、大浴場である魔天温泉も使いたいことだろう。


「あッ! でも、ここは混浴なので、そこだけはご了承ください」

「こ、混浴!?」

「むむむ」


 今度はカクタスさんが声を裏返した。

 ルチルさんは......なんだか難しい顔をしている。


(ですよねー......)


 カクタスさんが声を裏返す気持ちは分からなくもない。


 混浴は男の憧れだ。

 ロマンであると言ってもいい。


 しかも、しかもだ!


 カクタスさんからすれば、女性として見てないケセラさんやジャスパーさんはともかく、顔と体だけは女神級のアテナと風呂を共にできる可能性があると分かれば、男として否が応でも盛り上がらない訳にはいかないだろう。


(まぁ、例え一緒になったとしても、アテナの裸は絶対に見せないんですけどね?)

 

 それだけは絶対の絶対だ。

 アテナの裸を(男が)見てもいいのは俺だけだと約束したからな。


「あんたらは風呂には興味がないんだろ? だったら関係ないじゃないか」

「......はぁ? これだけの代物だぞ? 入らなきゃ損だろ」

「入りたきゃ部屋のに入りな。あんたら男連中はここを使用するんじゃないよ」

「横暴だ! 第一、竜殺し様はどうするんだよ!」


 ケセラさんとカクタスさんの口論はますます熱を帯びていく。


「竜殺し様は特別さ。なんだったら、風呂だけじゃなく(ねや)も共にしたいぐらいだよ」

「なん......だと!?」

「ジャスパーもそうだろ?」

「..................そこまでは無理」

「聞いたかい? ジャスパーも良いってさ」

「..................良いとは言ってない」


「......」


(あの、勘弁してください。気持ちは嬉しいのですが、そこに俺の意思は存在しないのでしょうか?)


 それに仮の話として、小柄なジャスパーさんなら百歩譲って良いとしよう。

 ただ、腹筋(シックスパック)バッキバキで大柄なケセラさんが相手だと、俺の歩さんがもげられてしまいそうで怖いんですが......。

 

 俺はヒュンと縮こまった歩さんを思わず隠してしまった。


「へ、へんッ! お前達がなんと言おうと俺は入る! 男の一念なめんなよ!」

「......へぇ。いい度胸じゃないか。まぁ、入ってきたら───。ね? ジャスパー」

「..................温泉の素にする」


「それ、サクラで浄化されちゃいますから!」


 混浴と告げた時点で、こうなることはなんとなくだが分かってはいた。

 女性陣が少し横暴な気もするが、カクタスさんには涙を飲んでもらいたい。



 ※※※※※



 その後も魔動駆輪の案内は続いていく。

 意外なことに、ケセラさんがマジカルキッチンに興味を示したのには驚いた。


「あたしゃ、こう見えても料理は得意なんだよ」


 なぜか力こぶを作って料理とは関係のない謎アピールをするケセラさん。

 腹筋(シックスパック)だけではなく、上腕二頭筋も素晴らしい隆起をしているのはもはやご愛嬌だ。


「へ、へー。意外ですね。......って、すいません。意外は失礼でしたね」

「そんなこと気にはしないよ。竜殺し様もあれかい? 料理が得意な女のほうが惹かれるのかい?」

「まぁ、できないよりかはできたほうが良いですよね」

「そうかい。そうかい。男はやっぱりそういうもんなんだね。いつの世も胃袋と玉袋を掴む。これが最強の兵法ってことだね。カッカッカ!」

「玉袋!?」


 あまりにも豪快過ぎる。

 というか、さすがに掴まれたら痛いような気も......。


「..................転がすほうが良い」

「ジャスパーさんも何を言ってるの!?」


 なんというか、カクタスさんが言っていた意味が分かった気がする。

 ケセラさんにしても、ジャスパーさんにしても、あまりにも羞恥心が無さすぎる。


(......いや、今更か)


 ラズリさんも、護衛仲間のお姉さん達も......。

 もっと言うのなら、この世界で出会った女性のほとんどが積極的過ぎる性分だった。

 恥じらいを持っていたのは、人との関わりが希薄だったナイトさんぐらいなものだ。


(完全な男女平等主義世界って、こういうものなのかもしれないなぁ)


 ちなみに、ケセラさんの料理の腕前は思った以上に素晴らしかった。

 母親直伝と豪語するだけあって、体格(みため)のガチさとは異なり優しい味だった。


 勝手に順位付けするのは失礼にあたるだろうが......。


 スカイさん>ラズリさん>>ニケさん>ゼオライトさん>ケセラさん>>ナイトさん


 こんな感じ?

 ナイトさんの評価が極端に低いのは、料理というか酒の肴しか作れないからだな。


「言ったろ? あたしゃ、こう見えても家庭的な女の子なのさ」

「......いやぁ、さすがに28歳で女の()はきついですよ」

「あ"あ"?」

「ヒェ......」



 これがフラグとなったのだろうか。

 この日から5日後、俺は本物の嵐を迎えることとなった。




 次回、本編『嵐、到来』!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今日のひとこま


 ~流儀~


「え? 竜殺し様自ら体を洗ってくれるのかい?」

「そだねー(・ω・´*)」

「そうなのだ!」

「..................驚きの事実」


「まぁ、一応そうなっていますね」

「あたし達は自分で洗えるんだけど......やってもらったほうが良いかねぇ?」

「......はい?」

「..................決まりなら仕方がない」


 この人達は何を言っているのだろうか?


「いやいやいや。ケセラさんとジャスパーさんは自分で洗えるんですよね? だったら───」

「『郷に入れば郷に従え』って言うだろ? あたし達は冒険者。覚悟はできているさ」

「..................ケセラの言う通り」

「何の覚悟!? ねぇ、何の覚悟なの!?」


「ほら、早く洗っておくれよ」

「こらー! 最初は私なのーヽ(`Д´#)ノ」

「あれま。洗う順番も決まっているのかい」

「..................興味深い」


「えっと......本当に良いんですか?」

「構いやしないよ。たかだか体を洗うぐらい。ね? ジャスパー」

「..................こんな経験二度とできない」

「はぁ。まぁ、良いと言うなら洗いますが......」


「まずはあたしを洗っておくれよ」

「では、失礼をば(......臀筋(でんきん)と腹筋すげー!)」

「人に、男に洗ってもらうというのはなんだか落ち着かないねぇ」

「でしょうね。俺もなんだか落ち着かないです(......胸はやわら───いや、厚いなぁ)」


 ケセラさんを洗った感想は全てがカッチカチだった。

 女性を洗っているというか、まるでビルダーを洗っているようで......。


 あッ! でも、(各所の)匂いだけは素晴らしかったです!


「..................次は私」

「では、失礼をば(......うほー! お尻もお腹もぷっにぷにだぜー!)」

「..................触り方が慣れてる」

「ぶふっ!? ま、まぁ、アテナ達を毎日洗ってますから(......胸は───胸はどこ?)」


 ジャスパーさんを洗った感想はモリオンに近かった。

 ただ、モリオンとは違って、大人な部分と悶えている点が妙にエロかった。


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