第222歩目 主人としてのけじめ!
前回までのあらすじ
国境関所ゲルゴナに到着したけど・・・?
□□□□ ~暴走の背景~ □□□□
「......すまぬ。主」
「気にするな」
いまだ青い顔をしながら、俺におんぶされる形で申し訳無さそうに謝罪してくるドール。
今回の魔動駆輪暴走事件の原因は単なる『酒酔い』でしかない。
関所の向こう側から漂ってきた酒の匂いでドールが酔ってしまったのだ。
そして、酒に弱いドールは運転中にそのままダウン。
その時に運悪くアクセルを踏みっぱなしの状態になってしまったらしく、今回の一連の流れとなった訳だ。
「............本当にすまぬ。主」
「そう気にするなって。......というか、俺も気付いてやれなくて悪い」
正直、迂闊だった。
俺達一行が向かおうとしていた国はドワーフ達が治める国だ。
酒大好き人間の集まりで、出会い頭の言葉が必ず「よし、呑もう!」の人々達。
だからこそ、町全体から昼夜を問わず酒の匂いが漂ってくるのは当たり前の現象だった。
そう、かつて立ち寄ったことのある『荒野の宿場町ガタツ』のように・・・。
(ガタツに立ち寄った時は、ドールはまだ仲間になっていなかったもんなぁ)
その後の所謂ドール加入後のフルールからフランジュ間の旅に関しては、ドールが酒に弱いことは甘酒で判明していたので、今思えばナイトさんも晩酌をする時は何気に気遣ってくれていたのかもしれない。
ナイトさんは仕事バカな点を除けば、そういう気遣いのできる唯一の常識人でもある。
改めて、ナイトさんの細部に至るささやかな気遣いと優しさには感謝せずにはいられない。
(そうだな。後でお礼の手紙を出しておくか)
そして、フランジュでナイトさんと別れて以降の旅では『一人で呑んでも楽しくないから』という理由のもと、俺も酒を控えていた。
(そういえば......久しぶりに呑んだのは異次元世界の現地勇者とだったか?)
そういう訳で完全に油断していた。
ドールが酔ってしまう可能性を考慮する義務が俺にはあった。
だから、今回はドールのせいではない。
全ては俺に責任がある。
なのだが───。
「..................すまぬ」
「......」
ドールからは一向に謝罪の言葉が鳴り止まない。
俺の背中で、まるでうわ言のようにぶつぶつと何度も何度も謝罪し続けている。
きっと、責任感というか忠誠心の強いドールは失態を犯した自分を許せないでいるのだろう。
(ここは時間が解決するのを......いや、何か手柄を立てさせるまでは待つしかないか)
今は待つ他ない。
なんだったら、シュンと萎れてしまっているドールの尻尾を慰めてあげてもいい。
しかし、俺の両手は既に埋っていた。
「歩! 歩! ゲルゴナ名産『フロッグ饅頭』だってー! あれ食べたーい( ´∀` )」
「『フロッグ饅頭』って、お前......。まんまカエルじゃん」
フロッグ饅頭。
ゲルゴナの名産品で、見た目がカエルらしきもののお腹に餡を包み込んだ饅頭らしい。
なぜ見た目がカエルらしきものなのかは全く不明だ。
というか、あのカエルらしきものは本物のカエルではなく小麦粉であることを祈りたい。
それぐらい完全に再現された一級品のゲテモノ名産品である。
「あのぶにゅぶにゅした感触がたまらないんだよねー(*´μ`*)」
「......いやいや。饅頭なんだし、ぶにゅぶにゅはしないだろ。ナイトさんの作ったカエルの唐揚げじゃあるまいし」
「そーなのー(。´・ω・)? じゃー、ほんとーかどうか食べてみたーい!」
「......ダメ」
「ぶー(´-ε -`)」
ぶー垂れるも、手をガッシリと繋がれていて身動きできずにいるアテナ。
もう一度言うが、俺の両手は既に埋っている。
一手はおんぶしているドールを支える為に。
もう一手はお上りさん状態で迷子になりかねないアテナと手を繋ぐ為に。
アテナは目を離すと、あっちにフラフラ~こっちにフラフラ~とするので、姿を見失わない為にもこうして手を繋いでおく必要がある。
本当はドールに任せたいところなのだが、今はダウン中なので仕方がない。
「『フロッグ饅頭』おいしそうなのだ」
「......え? モリオンもイケる口なのか?」
「......アユム。ダメなのだ? 我もお腹が減ったのだ」
「......ダメ」
「の、のだぁぁぁ」
指をくわえ、過ぎ去る『フロッグ饅頭』をジーッともの欲しそうな目で見つめるモリオン。
それでも、アテナと繋いだ手を離さない辺りはとても良い子である。
俺が言った、「アテナとの手を離さないように」をちゃんと守っているのだろう。
「後で買ってあげるから、それまでは我慢しろ」
別に意地悪をしている訳ではない。
俺だって『フロッグ饅頭』はともかく、新しい土地の初めて見る食べ物には興味がある。
フランジュとは違った建物の造り、珍しい魔道具なんかを見ると心が踊り出しそうになる。
「血迷うな! お前達に『後で』なんかある訳ないだろ!」
「......」
しかし、今はそんなことをしている余裕が一切ない。
のんびりと観光していられるほど、俺達には自由が許されない状況となっている。
「ぺちゃくちゃとくだらないことを話してないでさっさと歩け!」
「す、すいません......」
こうして、俺達一行は衛兵さんにしょっぴかれるままに大通りを進んでいく。
□□□□ ~暴走の結果~ □□□□
俺達一行は自警団の詰所へとやってきた。
理由はともあれ、魔動駆輪を暴走させたのは事実だ。
そして、多くの人々に恐怖と被害を与えてしまったのもこれまた事実。
故に地球だったら警察に、ここ異世界だったら自警団に連行されるのは当然の流れである。
「......わ、妾が説明するのじゃ」
「いいから休んでろ」
俺としても、ここは口達者なドールに頼みたいところだが、半病人には酷なことだろう。
【ヒール】をかけても依然として良くならない以上は安静にしていてもらいたいところだ。
それにしても、終始ドールがこの調子では、恐らくだがカルディアに滞在中はドールをあてにできない可能性が非常に高いのではないだろうか。
(......俺、何気にピンチじゃね? いや、今までが頼り過ぎだったのか?)
まぁ、最悪の場合はアテナを頼ればいい。
快く協力してくれるかどうかは別としてさ。
「まっかせなさーい( ´∀` )」
───ぷるんッ。
アテナが胸をドンッと叩くと、その大きなおっぱいが揺れた。
「た、頼む。......(ちらっ)」
「「「おぉ!」」」
俺と衛兵さん達の視線が、アテナの揺れるおっぱいへと自然に集まる。
俺はともかく、衛兵さん達も大きなおっぱいが好きなんだな。
「ご、ごほん。......座れ。今から取り調べを始める」
「はい」
促されるままに座るも、何やら衛兵さん達からの視線が痛い。
いや、どうやら視線だけではないようだ。
「チッ! リア充は爆ぜろ!」
「イエス! ロリータ!! ノー! タッチ!!」
「犯罪者のくせに両手に花とかいいご身分だなぁ?」
「......」
俺としてはいつも通りに───といっても、今回は半死状態のドールを膝上に、左右にはアテナとモリオンを座らせただけのなのだが......。
(そ、そう見えるのかぁ。そうだよなぁ。HAHAHA)
これは非常にマズい。
誤解を説くために大人しく連行されたというのに、更に印象を悪化させてしまっている。
その後、取り調べが始まるも険悪な状況は変わらなかった。
「お前達は何者だ?」
「冒険者です」
「冒険者......だと? 幼女を連れてか?」
「何も悪いことは無いはずですが? それに、この子達は戦えますし」
「戦える......あぁ、そういうことか。昨夜はお楽しみが過ぎて事故を起こしたという訳だな」
お、お楽しみって、どんな勘違いをしているんだ?
「そのロリコン野郎が、ゲルゴナへ何をしに来た?」
「ロ、ロリコン野郎!?......い、いえ、観光がてら───」
「ほほぅ。幼女達と雰囲気を変えての変態冒険を楽しんでいると? 羨ましいなぁ、おい」
「......」
無用な混乱を避ける為、俺が『竜殺し』であることは黙っていようと思っていたが......このままだと、変態野郎だと思われていては、いつまで経っても事の真相を聞いてもらえない可能性がある。
というか、これも迂闊だった。
俺が『竜殺し』であることはあまり知られてはいない。
『竜殺し』の知名度は高くとも、それが俺であることは知られていないという訳だ。
それは衛兵さん達の態度からしても明白である。
仮に俺が『竜殺し』だと知っていたのなら、例え犯罪者であろうと多少なりとも敬意を払って接してくることだろう。それが無いということは......。
つまり、俺を『竜殺し』だと分かっていない可能性が非常に高い。
(うーん。困ったなぁ)
本来なら、こういう無用なトラブルを避けるべく、なるべく早く冒険者ギルドに顔を出すようにしている。
冒険者ギルドならば、俺が『竜殺し』であることを分かってくれる。
そして、そこから噂で『竜殺し』来訪の情報が町全体に広がったりするものなのだ。
そうなれば、衛兵さん達の態度もまた変わったものになっていたかもしれない。
しかし、今回はそれをする時間すらも無かったのが悔やまれる。
(とりあえず、俺が『竜殺し』であることを伝えたほうがいいかな?)
権威を笠に着るのは好きではないが、ここは話を聞いてもらうためにも仕方がない。
「あのですね。俺は『竜殺し』でして───」
「あー! あー! それは逆効果だよーr(・ω・`;)」
「え? なん───」
アテナに真意を訊ねようとするも、既に遅かった。
「き、貴様! 不敬にも『竜殺し』様の御名を騙るなど......!!」
「『竜殺し』様は竜族を撃退された豪の者! 貴様のようなロリコン野郎ではないわ!!」
「最初から怪しいと思っていたんだ! 貴様、もしかして魔王の手先ではあるまいな!?」
「えぇ......」
肩をわなわなと震わせ、怒り心頭血走った目で俺を睨み付けてくる衛兵さん達。
アテナの言う通り、『竜殺し』発言は逆効果だったようだ。
険悪だった雰囲気が、今では修復不可能なレベルにまで悪化してしまっている。
しかし、なぜ『竜殺し』発言は逆効果だったのだろうか?
「そんなこともわかんないのー? 歩ってバカだねー! あーははははは( ´∀` )」
「ぐぅ!? ど、どういうことだ?」
「あーははははは( ´∀` )......(ちらッ)。あーははははは( ´∀` )......(ちらッ)」
「......」
こ、このクソ駄女神、うぜぇ......。
「......『竜殺し』とは英雄そのものなのじゃ。......市井の希望、憧れでもあるのじゃ」
「ド、ドール!? 大丈夫なのか!?」
「......そんなことも言うておられまい」
「そ、そうだな。それで?」
「......それが仮にも犯罪者である妾達が名乗ってもみよ。......激怒するに決まっておろう」
「あぁ、なるほど」
英雄だから、希望や憧れだから、犯罪など犯すはずがないという勝手な倫理観という訳か。
確かにそんなものがある以上、『竜殺し』の名を出すのは控えるべきだった。
「もはや取り調べの必要などないのではないか?」
「そうだな。暴行罪と不敬罪で処罰してもいいかもしれない」
「待て待て。もしかしたら斥候かもしれないぞ? ここは拷問してでも真実を吐かせよう」
だが、もはやそんな悠長なことを言っていられる場合でもないようだ。
ひしひそと相談している衛兵さん達から漏れ出している会話内容からは、俺が本物の『竜殺し』であることを証明できないと極刑が待ち受けることに決まりそうである。
(どうする!? どうする!? どうやって俺が本物の『竜殺し』だと証明してみせる!?)
本物の『竜殺し』を証明するものなんて全くない。
また、衛兵さん達の誰かが【鑑定】スキルを取得していれば話は早いのだが、誰も取得していないからこそこうして疑われている訳で......。
(クソッ! 名案が浮かばない! こうなったら......)
こうなったら、頼れる相棒であるドールさんに縋る他はない。
「......すまぬ。気持ち悪くて考えがまとまらぬ」
「おおぅ......」
そう思っていたのだが、敢えなく撃沈。
まさに絶対絶命。四面楚歌。万事休す。
手に汗を握る状況とはこういうことを言うのだろう。
「アユム。......ヤるのだ?」
「ヤりません」
俺の異変に気付いたモリオンの提案を一蹴。
確かにあの時はそう言ったが、それは最後の手段だ。
ここはなるだけ穏便に済ませたい。
「......(ちらッ)」
「あーははははは( ´∀` )」
そうなると、頼れるのはこいつしかいない。
「......アテナ、どうしたらいい?」
「んー? なにがー(。´・ω・)?」
「なにがー(。´・ω・)?じゃねぇよ!? 話を聞いていなかったのか!?」
アテナだから仕方がないとはいえ、本当にこいつは相変わらずだ。
このままだと、俺だけではなくアテナも極刑送りになることぐらい分からないのだろうか。
「だいじょーぶ! 私はいじめる側だからねー(`・ω・´) 」
「そういうことを聞いてるんじゃない。この状況をなんとかしろ」
「んー? 歩は困ってるのー(。´・ω・)? 」
「あぁ、困ってる。ドールもこんな調子だしな」
「ふーん。頼れるのは私だけー?(・ω・´*)」
「そういうことだな。衛兵さん達が処分を決める前までにはなんとかしたい」
アテナと見つめ合う。
最近はドールに頼りきりだったが、久しぶりの本気のお願いだ。
俺が本当に困っていることをアテナに伝える必要がある。
「(´・ω・`)」
「......頼む」
俺とアテナの視線が絡み合う。
アテナの瞳の中には俺しか映らないほどに、アテナの瞳を独占する。
すると───。
「えへへー(*´∀`*)」
「な、なんだよ?」
頬を桜色にほんのりと淡く染め、八重歯を覗かせながらにぱー☆と微笑むアテナ。
正直、かなりかわいい。
思わず見惚れてしまいそうになってしまった。
(ハァ......。ちゃんとしてれば可愛い子なんだけどな~。胸大きいし)
とりあえず、こんな笑顔を見せるぐらいだ。
協力体制に入ったと見ていいだろう。......そうだよな!?
「いいよー! まっかせなさーい( ´∀` )b」
「助かる! それで、どうすればいい?」
「簡単だよー! 論がダメなら証拠を見せればいいんだよー(o゜ω゜o)」
「証拠......? 本物の『竜殺し』を証明するものなんて何もないぞ?」
「いやいやいやー! あるでしょー┐(´ー`)┌」
「もったいぶらずに言え」
「それは───Σヾ(´∀`*」
「おぉ! その手があったか!!」
早速アテナの提案通りに一つのある物を衛兵さん達に差し出す。
それはギラギラに輝く一つのカード。
そんじゅそこらでは目にすることすら敵わない銀色のカード。
「なッ!? こ、これは!?」
「おいおいおい。マジかよ。初めて見たぞ、俺は......」
「ま、まだだ! まだ本物と決まった訳じゃ!!」
「どうぞ。本物かどうかご自由にお調べください。俺達はここで待たせてもらいますので」
衛兵さん達も、その銀色のカードを見てあわてふためいている。
ある者は「銀色のカードとか初めて見た。すげー!」と真偽のほどすらまだ判明していないのに、俺に尊敬の眼差しを向けてくる者。
またある者は、アテナから「お菓子よろしくねー! あーははははは( ´∀` )」と言われ、急いで市場にお菓子を求め買いに行く者。
また別のある者は「そ、その余裕......本当に本物!? た、確かめに行ってくる!」と言い残して、慌ててとある場所へと向かっていく者。
などなど。
犯罪者を取り調べる空気から一変して、まさかまさかの『竜殺し』一行を歓待する雰囲気が徐々に出来上がりつつあった。
(ハァ......。こういうことになりかねないから、『竜殺し』であることはできるだけ隠しておきたいんだよなぁ。......とはいえ、今回ばかりかは信じてもらう為にも仕方がないか)
確認しに行った衛兵さんが戻るまで、俺は半死状態のドールの尻尾をもふもふする。
シュンと萎れてしまっていても、ドールの尻尾の触り心地は最高だ。もっふもふ~。
「ドール、体調はどうだ?」
「......ダメじゃな。......頭がぐわんぐわんするのじゃ」
「そうか。遠慮せずに休んでろ」
「......すまぬ」
(うーん。この件も考えないといけないよなぁ。問題は山積みだぞ?)
カルディアはドワーフ達が治める国だから、ドールがダウンしてしまうのも無理はない。
とはいえ、カルディアの次はトルガストに向かう予定であり、そこもまたドワーフ達が治める国だ。
恐らく、再びドールがダウンしてしまうのは火を見るに明らかである。
(トルガスト行きは止めて、ギルザートにでも行くか?......でもなぁ、トルガストには災厄の一匹であるゴーレムが居るらしいしなぁ)
俺が正統勇者になる為には勇者としての力量を示す必要がある。
要は、災厄の魔物のいずれかを討伐しないといけないということだ。
そういう点では、シンフォニアに向かう途中に居るゴーレムは狩りやすい対象でもある。
というか、今更だが、俺は他の災厄がどこに居るのか全く知らなかった。
つまり、トルガストを回避する訳にはいかないという訳だ。HAHAHA。
(キャベツさんに、他の災厄の情報も聞いとくんだったァァアアア!)
正直、痛い。
ゴーレムうんぬんはどうでもいいが、ドールの智謀にしばらく頼れないのは痛すぎる。
となると、その間アテナに頼ることになるのだろうが......。
「マズーい! 他のお菓子か『フロッグ饅頭』持ってこーいヽ(`Д´#)ノ」
「ひ、ひぇ......。しょ、少々お待ちください!」
「......」
あいつは色々と問題がありすぎる。
いつでも気軽に頼れるドールとは雲泥の差だ。
(......ドールの酒酔い体質ってなんとかならんのかな?)
そんなことを考えながら、しばらく待つと───。
───ズザザザザザッ!
一人の衛兵さんが自警団の詰所に勢いよく飛び込んできた。
その姿格好は教本の手本としたいぐらいに美しく、見事なジャンピング土下座であった。
そして───。
「も、もももも申し訳ございません! 竜殺し様!」
───ガンガンッ!
頭から血を流し、何度も何度も地面に頭を打ち付けて謝罪する衛兵さん。
その姿を見る者全てが唖然とし、固唾を飲んで成り行きを見守っている。
「き、貴公が本物の竜殺し様であることを確認致しましたァァルァアアアア!」
「そうですか。それはよ───」
「て、ててえいぇ手前共の今までのぶぶぶぶ無礼、平に平にご容赦くださいませェェェ!」
「お、おおぅ。......お役目だったん───」
「めぇぇえええそおうもありませぇぇええん! ほ、ほほほほ本当に申し訳ございませんでしたァァルァアアアア!!」
「......」
わざとか?
わざとじゃないんだよな?
何はともあれ、俺の銀色に輝く冒険者カードは、俺が本物の『竜殺し』であることの証明に役に立ったようだ。
(......ふぅ。これで一件落着かな?)
次回、本編『再び』!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日のひとこま
~ヤる? ヤらない?~
「コォラ! 貴様らか! 今回の首謀者共は!!」
「......あー。えっと、すいません。俺達で間違いないです」
「神妙なり。取り調べを行う。大人しく捕縛されろ」
「すいません。抵抗する気は一切ないのですが......」
「なんだ? 変なことはするなよ?」
「仲間の一人が病気でして、可能なら担架を......」
「認められないな。お前らよりも怪我人を優先する」
「で、ですよねー。でしたら、おぶる形でいいでしょうか?」
「......ふむ。それほどの重病人か。なら特例として認めてやろう」
「感謝します。アテナ、モリオン、準備しろ」
「ヤっていいのだ?」
「ヤっちゃダメです。......いいか? 大人しくするんだぞ?」
「大人しくヤるのだ?」
「大人しくヤるってなに!? ダメだって言っただろ!」
「あいつら、ド......ド......お姉ちゃんをいじめたのだ! いじめは許さないのだ!!」
「いやいや。ドールはいじめられてないぞ」
「そうなのだ? いじめられたから危ない運転したんじゃないのだ?」
「全然違う。単純に酔っただけだ。だから、ヤっちゃダメ」
「分かったのだ。でも、あいつらがアユムやお姉ちゃん達をいじめたら許さないのだ!」
「ありがとう。でも、俺がいいと言うまでは大人しくしていること。約束だぞ?」
そうだよな。モリオンは竜族なんだよな。
ちんまいからつい忘れそうになるが、人間なんか屁でもないんだよな。




