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歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~  作者: なつきいろ
第7章 躍進 -乙女豹アルテミス編-
278/349

第220歩目 とある休日の一日④! side -ヘリオドール- ※修正済み


 前回までのあらすじ


 ご褒美ホールド発動!



「......くぅッ♡」


 頭のてっぺんから足の爪先にまで感じる、痺れるような快感の波。

 ふわふわと夢心地ながらも、押し寄せてくる快楽の渦と尽きることのない幸福感。


 妾は、愛おしそうにギュッと抱き締められた主の大きな体の中で、もう何度目とも分からない数を既に果てていた。


「......はぁ......はぁ......はぁ」


 それでも、まだまだ満たされてなどいなかった。

 己の欲望を満たす為には、腰の動きを止めることなどできるはずがなかった。



 ※※※※※



 妾の主はとても優しい。

 正直、溜め息が出てしまう程にお人好しでもある。


 そんな主だからこそ、妾が苦しむ姿を見てはいられなかったのであろう。


 いつの頃だったか......。

 随分と大昔に断った案件を、再び主が持ち出してきたことがあった。


「なぁ? やっぱり何か手伝えることはないか?」

「無いと言うておろう。そこまで気になるならば、妾を抱けば良いではないか」

「いやー。それ以外で出来ることだって、きっとあるはずだぞ?」

「......ふんッ!」


 正直、我が主と言えど、張り倒してしまおうかとも思った。

 心配してくれるその気持ちは嬉しいのだが、唯一の解決策には消極的ときた。


 そして、その消極的な理由は決まって「初めてはニケさんの為に」の一点張りである。

 本当に妾の手伝いをしたいのかどうか理解に苦しむ。


 これで、ニケ様とさっさと事を済ませてしまっているのであればまだ良いが......。


 段階がどうのとか、まだ早いだとか、訳の分からないことを言っている始末。

 さすがの妾も開いた口が塞がらないというか、呆れ果ててものも言えない。


 ただ、主が方便ではなく心の底から妾を何とかしたいと思ってくれているからこそ、もやもやするというか余計に腹立たしくもなる。


(......というかの? 童貞にそこまでの価値は無いと思うのだがのぅ?)


 そんなこんなで、妾と主の赤月の日における試行錯誤が始まることとなった。



 ただ、主はわりかし本気な様子ではあったが、妾は「主がそれで満足するなら......」と多少なりとも冷ややかであったことは否めない。


 

□□□□ ~獣人族にとって~ □□□□


 ある時、発情という精神状態の詳細を知った主から、こんな提案が出された。


「何かこう、ドールにとって精神を抑えられるものとかってないのか?」

「精神を抑える、とな?」

「発情は所謂興奮状態なものだろ? だったら、その状態を抑えればいいはずだ」


 興奮......とは少し違う。

 治癒魔法でも癒すことのできない一種の呪いに近いものである。


 まぁ、それでも多少なりとも効果はあるのかもしれないが......。


「そうだのぅ......主の匂いとかは割りと落ち着くのじゃ」

「......え? 俺の匂い?」

「うむ。獣人族の多くは匂いに敏感なものなのじゃ。好いた匂いならば尚更だのぅ」


 その中でも『マーキング』と呼ばれる行為は最も重要なものの一つとなる。


 マーキングとは『自分の匂いを対象物に染み込ませ、この対象物は自分の所有物であるということを内外に知らしめる行為』のことである。動物の間では縄張り争いなどに使われていたりする。


 しかし、獣人族ともなると『マーキング』には違った意味合いが出てくる。


 一種の求愛行動とも言うべきか。対象物に自分の匂いを染み込ませるだけではなく、自分にもまた対象物の匂いを染み込ませるように行動したりする。


 マーキングするついでに、自分もマーキングされることに幸せを感じるのだ。


 当然、妾も主にマーキングしつつされつつして、主が妾の所有物である証を日々残している。

 まぁ、主のほうは姉さまの匂いでほとんど上書きされてしまうのだが......。


「そ、そうか。俺の匂いか......。う、うーん。じゃあ、こうしよう。赤月の日だけは特別に、ドールを抱き締めて寝てみるとかはどうだ?」

「よ、良いのか!?」


 これは、主を誰にも(特に姉さま!)邪魔されずに独占(マーキング)できる絶好の好機!


「それで落ち着けるなら良いと思うぞ? ものは試しだ。今度の赤月の日にでも試してみよう」

「し、仕方がないのぅ。主がそこまで言うのなら、付き合ってやらぬこともないのじゃ!」


 赤月の日の発情はそんな甘いものではない。

 どうせ失敗することは分かっていたが、これを口実に運良く主を襲えれば儲けもの。


 そんな下心満載な気持ちで赤月の日に挑むことになった。



 そして、結果はお腹に鈍痛を感じて、翌日に目を覚ますこととなる。



□□□□ ~そのものの名は~ □□□□


 その後、幾度かの赤月の日と(詳細は省くが)幾度かの失敗を経ることとなる。


「う、うーむ。腹が痛むのぅ。......また強硬手段に出たのじゃな?」

「わ、悪い。今回も失敗だったよ」


 元より、主に抱かれること以外に解決策はないのだから当然の結果とも言える。

 というか、何度も他に解決策は無いと言っているのに、主の諦めの悪さというか頑固さは少し異常だとも思う。


「いいや。他の解決策もきっとあるはずだ。今度は成功させてみせる!」

「ハァ......。頑張るのぅ。まぁ、期待はせぬが、妾も協力するとしようかの」


 ただ、赤月の日になると妾の為だけに主が必死になってくれる。

 そんな、主の体だけではなく主の思考すらも独占できるという事実が、妾の体を喜びに震わせた。


 それに、この時間は妾にとってもなかなかに楽しいものである。


 解決策うんぬんよりも、主とともに何かを作り上げていくという一体感。

 普段は消極的な主が積極的で、妾も奴隷として強制的にではなく自発的に行える共同作業。


 それは『主は奴隷のことを想い、奴隷は主の(願いの)為に尽くす』という、妾の奴隷理論(かんがえ)にも合致する素晴らしい結果でもあった。


「ちょっと思い付いたことがあるんだが......」

「言うてみよ」


 だが、楽しい時間はそう長くは続かないものだ。

 いいや、妾は主の奴隷だからこそ続いていくのかもしれない。


「───どうだ? 試してみる価値はあると思うぞ?」

「うむ。今までとは発想が逆なのじゃ。......良かろう。これも無駄だとは思うがやってみるが良い」

「いやー。これはイケる気がするんだよなぁ」


 結果、まさかの事態を迎えることとなる。

 つまり、主に抱かれる以外の解決策が見つかったという訳だ。


 主の努力の結晶、遂に完成した究極形態。

 これを、主は『ご褒美(だいしゅき)ほぉるど』と名付けた。


 実際、妾にとっては本当にご褒美もので、発情の満足(餓え)を100%満たしてくれるとは言わないまでも、80%近くは満たしてくれる優れた方法でもある。


 主のちょっとした気付きが魅せた奇跡の産物とも言えるものだ。



 そして、今宵も、妾は主の『ご褒美(だいしゅき)ほぉるど』でよがり狂うこととなる。



□□□□ ~その1・奴隷道とは死ぬこととみつけたり~ □□□□


(※ここからは発情したドールと冷静に解説するドールをお楽しみください)





(諸事情により文章をカットしました)





 先程果てたばかりだというのに、時置かずしてまた果ててしまった。





(諸事情により文章をカットしました)





 それでも、体の疼きは一向に治まる気配がない。

 妾は体の疼きを治めるべく、再び秘所を主の膝にあてがって一心不乱に腰を振り始めた。





(諸事情により文章をカットしました)





(これぞ、これ! これもまた堪らぬのじゃッ!!)


 この主考案の『ご褒美(だいしゅき)ほぉるど』はとても素晴らしい。

 あらゆる欲求を同時に満たしてくれるのだから、赤月の日に限らずとも毎日して欲しいぐらいだ。



 例えば、『主の胸へと妾の顔を押し付ける』この行為。

 これは主からしてみれば、妾からの接吻を防ぐ意味合いが強いらしい。


 しかし、妾からしてみれば別の意味合いがある。

 

 実は、これをされると息苦しくて意識を失いそうになる。

 有酸素運動も同時に並行しているので、下手をすると窒息死してしまいそうにもなる。


 だが、それがまた実に良いッ!





(諸事情により文章をカットしました)





 果てるとともに、妾によって引き裂かれる主の衣服と主の背中に突き立つ妾の爪。


 それだけではない。

 どこからか漂う、ほのかに香る乙女の匂い。


 非常に恥ずかしいことだが、そ、その......。


「ッ!!」

「......ひゅー......ひゅー......ひゅー」

「......いててててて。......こ、これはまた盛大にやってくれたな。替えの着替えとシーツを用意していて正解だったよ」


 ともかく、この窒息死してしまいそうになるという状況が堪らなく心地よい。


 ()()()()()()()()()()()()()()という、謂わば『奴隷を従える強き者である主人が、従うべき運命の奴隷である弱き者を威厳と力で持って征服する』という、最も原始的で最も野性味溢れる主従関係が、妾の体に「これでもかッ!」と刻み込まれていくような錯覚(しあわせ)を覚える。

 

 奴隷(わらわ)の命は主人(あるじ)のもの。

 そう魂に強く刻み込まれるだけで、妾はこの上もない快楽を得るのだ。



(それにの? 仮に主の胸の中で死ねるというのなら、それは本望というものなのじゃ!)



□□□□ ~その2・見方を変えれば~ □□□□


 主から窒息死させられそうになるほど強く抱き締められるのも悪くはない。


 主の匂いを堪能でき、しっかりとマーキングもできる。

 その上、原初的な主従関係を体に刻み込まれるので良い事尽くしである。


 しかし、それだけでは体の疼きを治めるにはまだまだ不十分だ。

 こう言ってはなんだが、もっと直接的な強い刺激を体が求めてしまう。


 だって、そうであろう?

 妾の体は主に抱かれることを望んでいるのだから。


 その問題を多少なりとも解決してくれたのが主の提案であり、それを形にしたのが『ご褒美(だいしゅき)ほぉるど』でもある。


「......はぁ......はぁ......はぁ」


 全身汗だくとなり肩で息をしている状態だが、その動きを止めることは決してしない。

 すっかりと体が快楽を覚え、自分で慰めるよりも無意識的にそれを求めてしまうのだ。


 主が妾にしてくれた提案、それは───。


「ちょっと思い付いたことがあるんだが......」

「言うてみよ」

「ドールの体を拘束するだけじゃなくて、俺からも色々としてみるとかどうよ?」

「......ほぅ。それはとても興味深いのぅ」


 これまでは、妾の動きを封じてやり過ごそうとしてきたが、結果は失敗だった。


 当然だ。赤月の日の妾の体は本能的にも最も刺激を求めている状態なので、妾の動きを封じるだけではそもそも意味がないし、それでやり過ごせるほど甘くもない。


 故に、主のほうから積極的に動いてくれるというのはとても魅力的ではある。


「具体的に何をしてくれると言うのじゃ? 主のことだからの、この期に及んで妾を抱く......ということではないのであろう?」

「当たり前だ。別のことだよ」

「そう......か」


 それでも、妾を抱いてくれる気にはならないようだが......。


「あのな。これは色々と試行錯誤中に気付いたことなんだが......」

「もったいぶるのぅ。早よう言わぬか」

「自分でするよりも他人にしてもらうほうがかなり気持ち良いんだよ」

「ほぅ?」

「だから、俺の体を使え。自分で慰めないで、俺の体を使って慰めろ」

「なッ!?」


 大真面目な顔をして、突拍子もないことを言い腐る主。


 たかがそれしきのことで、妾が、妾の体が満足するとは到底思えない。

 第一、主の体を使って良いとはいえ、結局は慰めることに変わりはないのだから。


 だが、主が「試してみる価値はあると思うぞ?」と強く勧めるものだから、奴隷として主人の顔を立てる意味でも騙されたと思って試してみることに。


 すると───。





(諸事情により文章をカットしました)




 すっかりと病み付きになってしまった。


 主は特に何もしていない。いや、妾が主の体を利用しやすいように、妾の股の間に滑り込ませたほうの足の膝を少しだけ曲げてくれているぐらいだろうか。


 たったそれだけのことなのに、とてつもない快楽が押し寄せてくる。

 自分で慰めるよりも遥かに気持ちよく、そして大いなる満足感を得る。


 まさに「自分でするよりも他人にしてもらうほうがかなり気持ち良い」の通りだった。





(諸事情により文章をカットしました)





 だが、人間とは業の深い生き物である。


 そろそろ二桁台に突入すると思われるほど果てると、徐々に刺激に慣れ始めてくる。

 今の刺激では、今の満足感では、体が「これでは不十分だ」と不満を訴え始めてくる。




(諸事情により文章をカットしました)





 妾の物足りなそうな気配を察して、ようやく状況を把握し始める主。


 主には見えてはいないだろうが、この時の妾の表情はとても切ないものになっていた。

 もっと多くの快楽を得たいと、もっと長く満足感を感じていたいと、そう願い必死に腰を振り続け主に縋っていた。





(諸事情により文章をカットしました)





 高鳴る鼓動に、激しく荒ぶる呼吸。

 もはや我慢の限界で、上の口も下の口も大洪水状態だ。

 

 そして、遂にその時はきた。


「ルアァ! これで止めだッァァアアア!!」


 主の静かな号令(おたけび)を皮切りに始まった最後の戦い。


 頭から背中へと移動してきた主の片手によって、妾の背骨ごとへし折ろうとする強烈な抱き締め攻撃。

 ずっと沈黙を保っていたが、妾の秘所へとあてがわれていた主の右膝による苛烈で無慈悲な波状攻撃。


 そして、極めつけは───。


 頭から移動してきた主のもう片方の手によって、まるで雑草を引き抜くかの如く容赦ない力で引きちぎらんばかりに引っ張られた妾の2本の尻尾。





(諸事情により文章をカットしました)





 それが止めとなって、妾は大きく体を痙攣させたまま意識を失い眠りこけることとなる。


「......ふぅ。おつかれ、ドール」

「......すー......すー......すー」

「それにしても、今回も長い戦いだったなぁ」

「......すー......すー......すー」


 21時より開始した妾と主の戦いが終わったのは深夜3時頃だという。

 ということは、6時間近くも主は妾の為に頑張ってくれていたということだ。


 しかも、日課である散歩を疎かにしてまで......。


「......ドール。少しでも主人として役に立てたかな、俺?」

「......すー......すー......すー」


 その後は眠りこけてしまっていて、どうなったかまでは分からない。ただ......。


「......ふわぁ~。さすがの俺も疲れたよ。ウォーキングは......もういいっか。おやすみ、ドール」

「......すー......すー......すー」


 まるで耳と尻尾をなでられているような心地よい感触。

 発情の時とはまるで違う、壊れ物を扱うような優しくも抱き締められている愛しい感覚。


 それらを朧気ながらも感じられていたような気がする。



 こうして、妾と主の共同作業である赤月の日は終わりを迎えた。

 いいや、妾と主の戦いはまだまだ始まったばかりである。


 だって、赤月の日はこれからも続いていくのだから......。

 


 次回、本編『国境』!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今日のひとこま


 ~色々な試行錯誤~


 これは『ご褒美ほぉるど』が誕生する前のお話。

 時系列は結構バラバラだったりします。


「うーん。今回も失敗だったか......」

「別に接吻ぐらい良いではないか」

「ふざけんなッ! まだニケさんともしていないのにできるか!」

「その言い方だと、ニケ様との接吻後は良いと言うことなのかの?」


「そういうことは好きな人とやれ。少なくとも主従関係では絶対にダメ」

「じゃー、歩。ちゅーしよー! んー(○´ε`○)」

「なんで!?」

「さっき「好きな人とやれ」って言ったじゃーん。私、歩のこと好きだよー(。´・ω・)?」


「あ、ありがとう。......だけどな、好きの意味合いが全く違う。アテナもダメ」

「じゃー、我と───」

「モリオンはもっとダメ」

「の、のだ!?」


「主は面倒くさい男だのぅ。減るものでも無かろうに」

「うるせぇなッ! こういうことは気安くやっちゃダメなんだよ!」

「へたれじゃのぅ。それでどうするのじゃ? 縄でも使うかの?」

「な、縄......? 何に使うんだ?」


「古来より動きを封じるには縄が使われておるではないか。これで妾を縛れば良かろう?」

「えー。そ、それはさすがに......。なんか痛そうだし、かわいそうじゃん?」

「あれはダメ、これはダメではどうしようもないのじゃ......やはり諦める他あるまい」

「い、いや! 縄はダメだけど、諦めることはしないぞ!」


「ならば妙案を出してみよ」

「む、向かい合うから危険なんだよ! 俺がドールを背後から抱き締めてみるとか......」

「......言うておくがの? 妾は自分の尾を自在に操れるからの?」

「だから?」


「確か......妾を慰み者にしておった者は「手でされるよりも何倍も気持ちが良い」とか言うておったかの?」

「......え?」

「手の時点でヒィヒィ言っておるくせに、主はそれでも本当に良いのじゃな?」

「や、やっぱりここは正攻法からいくしかないよな! 背後からとか邪道! 邪道!!」


「くふふ。残念だのぅ」

「となると、ドールの動きを完全に封じる手段が必要だよなぁ......」

「そんなものある訳がなかろう。少なくとも、今の優しすぎる主では絶対に無いと断言できるのじゃ」

「ぐぅ!!」


「発情状態の妾は......獣人族はもはや人では無い。その時ばかりは餓えた獣なのじゃぞ?」

「......だから、多少は乱暴にしてもいいと?」

「しても良いではない。せざるを得まい? 主は暴走した熊を前に優しく接するのかの? 前提がもはや違うのじゃ」

「優しくするだけではなく、時には突き放せか......」


「なんじゃ、分かっておるではないか。とはいえ、そうしたところで無駄ではあろうがの」

「......本当に多少なりとも乱暴にしても良いんだな?」

「それよ、それ。妾に訊ねておる時点で甘いのじゃ。本当に何とかしたいと望むなら、妾を圧倒的に組伏すぐらいの覚悟と力を持って相対せよ」

「気は引けるけど......しゃーなしだなッ!」


 この後、『ご褒美ほぉるど』が誕生するのは、もう少し経ってからのこととなる。


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