第219歩目 とある休日の一日③!忠隷ヘリオドール② ※修正済み
前回までのあらすじ
モリオンとの洗竜を楽しんだ!
□□□□ ~ヘリオドールの場合~ □□□□
───くぅぅううう。
《......アユム。お腹減ったのだ》
「あぁ、もうそんな時間か」
かわいい空腹音とともに、モリオンとののんびりとした時間は終わりを告げた。
時刻は18時ちょっと前。
そろそろ夕飯を用意し始めないといけない時間帯だ。
「よし、飯にするか。モリオンはアテナとともにキッチンに集合な」
《ド......ド......お姉ちゃんはいいのだ?》
「ドールは俺が連れていくから大丈夫だ。......いいか? ちゃんと手を洗うんだぞ?」
《分かったのだ!》
シュピッと豪快に手をあげて、嬉しそうにドスドスドスと駆け去っていくモリオン。
心は既に夕飯へ。
まさにそんな感じのはしゃぎようだ。
だからだろうか?
普通では考えられないことが起こったりもする。
《アユム! アユム!》
「はいはい。アユムさんですよ。どうした?」
《大変なのだ! 出られないのだ!》
「マジか......」
なんというおバカわいい生き物なのだろうか。
モリオンはほとほと困った表情でドアの前に立ち尽くしている。
当たり前だ。
ドラゴンのままで、人間基準のドアを通り抜けることなど不可能だからだ。
(モリオンは俺を萌え死にさせる気か!?)
そんなおバカなモリオンにほっこりしながらも、人間になることを勧めてみる。
《そうだったのだ! さすがアユムなのだ!》
「全然誉められることじゃないけどな?」
シュルシュルシュルと縮んでいくモリオンを見て、俺は苦笑せずにはいられない。
その後、いつものちんまい子に戻ったモリオンは「ご飯なのだ! アユムも早くするのだ!」と捨て台詞を残して、たたたッと元気よく部屋を立ち去っていった。
※※※※※
ドールの部屋の前までやってきた。
「ドール。飯だぞ」
「......」
部屋の前で声を掛けてみるが返事がない。
───コンコンッ。
「ドール。飯だぞ」
「......」
ドアをノックして声を掛けてみるも返事がない。
時間も時間だ。
ある程度は予想していたが、やはりダメか。
「サクラ。その......大丈夫だよな?」
「大丈夫ですよぉ。お部屋の中にちゃんといますぅ」
「そういうことを聞きたいんじゃ......まぁ、いいか。ありがとな」
どだい、サクラに訊ねるほうが無理があるか、と諦める。
というか、想像した内容が返ってきても、正直反応に困る。
俺はサクラに礼を告げてからドールの部屋へと足を踏み入れた。
───ガチャ。
大丈夫だというのでドールの許可なくドアを開けると、そこに広がるは別世界。
中は薄暗く、コポコポコポと聞こえる変な音と病院のような独特の匂い。
お札が部屋いっぱいに張り巡らされ、怪しげな器材が所狭しと並べられている。
魔動駆輪内ではあるのだが、まるで研究室と見間違えるばかりの光景がそこにはあった。
(お、おぅ。ここは......相変わらずお化け屋敷みたいなところだな。モリオンが怖がる訳だよなぁ)
仮にドールの部屋だと知らなかったら、確実にお化け屋敷コース一直線である。
初めてモリオンがこれを見た時なんて「お、お化け怖いのだ」と怖がっていた程だ。
ちなみに、ドールの部屋のお題は『実験失敗もへっちゃらー! 核爆発が起きても気分はへのへのカッパだよー☆』らしい。......それ、アカンやつ!
閑話休題。
薄暗い部屋の中を進んでいくと、開けた場所でポツンッと佇んでいるドールを発見。
「ドール。飯だぞ」
「......」
「おーい。飯だぞー」
「......」
声を掛けてみるも、顔の前で手をふりふりかざしてみても、相変わらず無反応のままだ。
いや、まるで聞こえていない見えていない、といった感じだろうか。
目は虚ろで、心ここに在らずといった表情をしている。
───ゆさゆさッ。
仕方がないので、ドールの肩を掴んで体を揺さぶってみる。
「おーい。ドールさんやーい」
「..................なんじゃ。誰かと思えば主ではないか」
ドールの瞳に光が戻る。
表情は......相変わらず、心ここに在らずといったところか。
「飯なんだけど......その、食べられそうか?」
「......食欲はあまりないのぅ。じゃが、食べぬ訳にもいくまい」
「じゃあ、行くか。......えっと、大丈夫か? 歩けそうか?」
「......病人じゃあるまいし、問題ないのじゃ」
そう言って、俺にピタッと抱き着いてくるドール。
(......あ、あっつ!? 体、熱いんだけど!?)
冷めた虚ろな表情とは異なり、体のほうは驚くほどに熱い。
ヘナヘナと萎れていた尻尾も、今ではぶんぶんと嬉しそうに振られている。
「......言ってることとやってることが違うんだが?」
「......知らぬ」
「ハァ......。このまま連れていくぞ?」
「......」
返事は無かったが、俺の服をギュッと掴んできたのが答えなのだろう。
歩けない訳じゃないが、甘えたいといったところか。
普段の勝ち気なドールではなかなか見られない光景だが、今日ばかりは仕方がない。
俺は妖怪子泣き爺と化したドールを服からひっぺがすと、その小さい体をお姫様抱っこのように横抱きにして、アテナとモリオンの待つキッチンへと向かうのだった。
その道中───。
「......な、なぁ、ドール? そんなに見つめられると恥ずかしいんだが?」
「......」
ドールの情熱的な潤んだ瞳と挑発的な蕩けたメス顔が絶妙にエロかった。
※※※※※
夕飯とお風呂を無事(?)終え、場所を俺の部屋へと移す。
「そろそろ時間だぞ。遊んでないでベッドに入れ」
「はーい( ´∀` )」
「......」
「分かったのだ!」
アテナとモリオンはダイブするかのように、ドールは気怠そうな感じでベッドIN。
時刻は21時少し前。
いつものことだが、アテナとモリオンはそろそろ就寝タイムとなる。
「アユムとお姉ちゃん、おやすみなさい、なのだ」
モリオンは定位置につくと体を丸め、既に寝る準備が整ったようだ。
昼間あんなに昼寝をしたというのに、目はとろんと微睡み始めている。
「おやすみ」
「モーちゃん、おやすみー(・ω・´*)」
「......」
おやすみの挨拶を交わし、俺達も定位置へと移動する。
ちなみに、ベッドの定位置とはこんな感じだ。
部屋 ← (モリオン) (ドール) (俺) → 秘密の小部屋
(アテナ)
当然、いつもそうしているように、アテナが俺の体の上をよじ登ってくる。
無駄にデカいおっぱいを押し付けながら、まるでゾンビのように。
アテナにとっての枕は俺だ。
だから、アテナのこの行動自体は何の問題もないのだが......。
「悪い、アテナ。今日はモリオンと一緒に寝てくれ」
そう、普段ならば。
「ぶー(´-ε -`) なんでー?」
「今日はあの日なんだよ」
「あの日ってなにー(。´・ω・)?」
「......姉さま、済まぬの」
「コンちゃん?......あー! そっかー! 歩がお昼にお風呂に入ってきたのはー、そーいうことだったんだねー(o゜ω゜o)」
「気付くの遅ッ!?」
普段はぶーたれるアテナも、最愛の妹であるドールのこととなると素直だ。
今夜は大人しくモリオンと一緒に寝てくれるらしい。
「という訳だ。ドール、こっちへ」
「......うむ」
元々隣ではあるのだが、俺にピタッとくっつくように寄り添ってくるドール。
今日はあの日。
4ヶ月周期で訪れる『赤月の日』だ。
『赤月の日』というのは、獣人族が本能的に発情してしまう日である。
種族によって発情度は異なるが、大概の獣人族はドールのように朝からボーッとしてしまうものらしい。
そもそも月というものは、朝や昼間の間は沈んでいる訳ではなくただ見え辛くなっているだけらしいので、それが獣人族を朝から心ここに在らず状態にさせてしまっているのだろう。
だから、本日は旅を休みとした。
魔動駆輪の運転手はドールである。
一応、サクラのサポートがあるとはいえ、万が一があったら大変だからな。
ドールの身の安全もそうだが、22億もした魔動駆輪だ。大切にしていきたい。
「そろそろか?」
「......うむ。気を抜くと一気にいきそうなのじゃ」
そして、その発情具合が色濃くなってくるのが21時辺りなのである。
ドール曰く、この時間になると徐々に理性が飛び始めるらしい。
一刻も早く本能の赴くままに行動したいという欲求に駆られるんだとか。
そう、一匹のメスとして本能の赴くままに子孫を遺そうとする行動に・・・。
「じゃあ、始めるぞ。準備はいいか?」
「......うむ。世話になるの」
いつになく素直なドールに、俺は「任せろ」と一声掛けてから準備に入る。
ドールが俺を頼ってくれている。
主人として、旅の仲間として、こんなにも嬉しいことはない。
・・・。
その昔、赤月の日が及ぼす獣人族の習性の件を初めて知った俺は、ドールに「何か手伝えることはないか?」と訊ねたことがある。
その時、ドールからは───。
「妾を気遣うなら抱く、抱けぬなら知らぬ振りをするが良い。中途半端な優しさは優しさではないのじゃ。それは単なるお節介でしかない。時には突き放すことも優しさなのじゃ。主はお人好しすぎる。妾が暴走したら責任を取ってくれるのかの?」
と、すげなく突き放された。(※第116歩目『今日のひとこま』参照)
その後、幾度ともなく赤月の日を迎えることになる訳なのだが......その度に筆舌に尽くし難い壮絶なドールの状況を、見るに堪えないドールの苦悶の表情を見ることとなる。
それを見て、主人として───いや、違うな。
旅の仲間として───いいや、これも違うな。
一人の人間として、心が締め付けられる思いだった。
だからと言って、ドールの望むがままに抱いてあげる訳にはいかない。
俺としても『初めてはニケさんと』と決めているので譲るつもりは一切ない。
そこで、ドールに怒られるのを覚悟で提案したのが───。
・・・。
「なに、主人として当然の努めだ。最後まで付き合ってやる」
「......くふふ。頼もしいものなのじゃ。ならば、しばらく体を借りるとしようかの」
俺はドールの目から完全にハイライトが消える前に行動に移る。
「じゃあ、失礼しますよっと」
まずはドールの両脇の間に俺の腕をそれぞれ通していく。
そして、通した腕を斜め30度よりちょい上に上げた角度で維持する。
この時、空いた両手でドールの後頭部を掴んで俺の胸へとドールの顔を押し付ける。
「苦しかったらちゃんと言えよ?」
「......もう少し強く押し付けてもらっても構わぬ」
「了解」
これで、ドールの顔と両腕の動きを完全に封鎖する。
理性が完全に吹き飛んだ後のドールはまさに獣。いや、性獣だ。
俺との間に子供を望む故か、ありとあらゆる手段で俺の全てを求めてくる。
(諸事情により文章をカットしました)
その度に貞操の危機を感じて、ドールには強制的におやすみ頂いたことが何度もある。
致し方ないことだったとはいえ、いつも後味の悪い思いをしたものだ。
しかも、翌日には「腹がジンジンと痛むのじゃが?」と決まって非難される始末。
やはり、ドールとしても強行手段はなるべく避けてもらいたいものらしい。
故に、ドールの顔と両腕の動きは完全に封鎖する必要がある。
「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」とはまさにこのことだ。
とりあえず、これで上半身のほうの対処は完了した。
次はデリケートな部分にも関わる下半身のほうの対処に移る必要がある。
「その......いつものようにするから、後は自分でやってくれよ?」
「......分かっておる。妾にとっても重要なことだからの」
確認を取って、俺はドールの股の間に右足を滑り込ませる。所謂、股ドンってやつ?
そして、少しだけ膝を曲げてあげて、後はドールの好きなように位置調整をやらせる。
一方、空いた左足はドールの細くしなやかな右足に絡ませる。
(諸事情により文章をカットしました)
ドールの荒々しくも甘い吐息と気持ち良さそうな声の誘惑を振り切り、ドールの下半身の動きを完全に封鎖することに成功した。
もう一度言うが、理性が完全に吹き飛んだ後のドールはまさに性獣だ。
俺との間に子供を望む故か、ありとあらゆる手段で俺の全てを求めてくる。
(諸事情により文章をカットしました)
その度に(まさに天国ではあるが堪えなければならないので)地獄のような(苦しみとも言える)快楽を感じて、(ドールの巧みな性技によって)昇天しかけたことが何度もある。
ちなみに、時が加速することも早漏になったりすることもない。
いくらニケさん一筋だとはいえ、体は正直なもので堪えるのには苦労したものだ。
それでもドールに手を出さなかったのだから、俺は誉められても......それこそ『男の中の漢で賞』を表彰されてもいいレベルだと思う。
だが、男の中の漢である俺であっても地獄の快楽を堪えるのは本当にきついものがあるので、なるべくなら勘弁してもらいたいところだ。
故に、ドールの下半身の動きは完全に封鎖する必要がある。
「事件は現場で起きてるんじゃない! ベッドで起きてるんだ!」とはまさにこのことだ。
そして、完成したのが、ドールの全身を拘束するかのように包み込んだ今の形である。
俺はこれを『ドール用のご褒美ホールド』と、そう呼んでいる。
幾度とも訪れた赤月の日に何度も何度も試行錯誤して、ようやくこれがベストな形であるとの結論に至った最終形態でもある。
さぁ! 全ての準備は整った!
俺とドールの長い長い勝負はこれからだ!!
次回、『とある休日の一日④ side -ヘリオドール-』!
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今日のひとこま
~赤月の日と知った前準備~
「おはよう」
「んー。おはよー(^-ω-^)」
「......」
「おはようございます、なのだ......」
「ん? ドールも眠そうにしてるなんて珍しいな」
「そだ、ねー。......すー......すー......すー(^-ω-^)」
「くそ駄女神。起きたばっかで寝るな。ほら、顔を拭いてやるからこっちに来い」
「......くー......くー......くー」
いや、本当にいい加減にしろよ、お前ら?
まさかドールも!?......っと、こっちは大丈夫か。
「野菜いっぱいじゃーん(´-ε -`)」
「いいから食え。朝にサラダは(俺の中では)定番なんだよ。......いいか? 残したら、おやつ抜きだぞ?」
「の、のだ!?」
「......」
「ん? どうした、ドール? 全然食べていないようだけど」
「..................すまぬ。あまり食欲が無くての」
「食欲が無い?......(おでこピタッ)......うーん? 風邪......では無いようだな」
「......病気ではないのじゃ」
病気じゃないにしてはとても気怠そうだが......。
それにどこかボーッとしているというか虚ろな感じが......。
「モーちゃん、モーちゃん(o゜ω゜o)」
「お姉ちゃん、なんなのだ?」
「......まさか! ドール、今日ってあの日か?」
「......(こくッ)」
「私の分の野菜も食べなさーい! お姉ちゃん命令だよー( ´∀` )」
「え......? お姉ちゃん、おやつ抜きになるのだ」
「そうか。あの日か。......じゃあ、今日は休日とするか」
「......そうしてもらえると助かる。どうも朝から意識が混濁としておるのじゃ」
「だいじょーぶ! おやつが無いなら作ればいいじゃなーい( ´∀` )b」
「おー! お姉ちゃん、頭良いのだ! じゃー、我も───」
「部屋まで戻れそうか? 無理そうなら俺が連れていってやるが......」
「......病人じゃあるまいし問題ないのじゃ」
「ダメダメー。どっちも残してたらー、製造禁止されちゃうじゃーんヽ(o・`3・o)ノ」
「!! お、お姉ちゃんだけズルいのだ!」
「お、おぃ。本当に大丈夫か? フラフラしてるぞ? あの日ぐらい俺に甘えてもいいんだぞ?」
「......大丈夫だと言うておろう。ちなみにあま......いや、何でもないのじゃ」
「野菜食べてくれたらー、モーちゃんの分も作ってあげるよー?Ψ(`▽´)Ψ」
「ほ、ほんとーなのだ!? 約束なのだ!」
「後で食べやすいもの作ってやるからな。......まぁ、味の保証はしないが」
「......すまぬ。世話をかけるの」
「それにしても、今日があの日か......」
「約束約束ー! あーははははは( ´∀` )」
「......うぇぇ。野菜おいしくないのだ」
「......お前ら、全部丸聞こえだからな?」
「Σ(・ω・*ノ)ノ」
「の、のだ!?」
「ハァ......。今日は色々としなくちゃいけないんだから手間をかけさせるな」
さてと、夜までに色々と準備しないとな。
俺の着替えに、替えのシーツ、ドール用の食事に、一応消臭剤もか。
それと......俺も可能な限り出しておくとするかな。




