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第206歩目 貴族邸の動乱!④


前回までのあらすじ


ご令嬢方にそこそこ気に入られた!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今話はかなり短めです。

二時間後にもう一話(そこそこ長め)をUPします。


□□□□ ~規定路線part.2~ □□□□


 「「きゃぁぁあああぁぁぁああ!」」


 サロン内にご令嬢方の悲鳴が響き渡る。


 それは本当に突然だった。

 ようやく、妹さんが一人で色々とできるようになった矢先のことなのだから。


 ・・・。


───バリンッ!


 突如、ガラスにも近い素材のサロンの窓を蹴破って侵入してきた五つの影。


 その影のどれもこれもが黒い布で体を覆っているので素性はハッキリとは分からない。

 しかし、それでも間違いなく暗殺者(正確には忍者っぽい?)といった感じの風体だ。


 まぁ、そもそも、刃物を所持している時点で間違いようもないのだが.....。


(.....狙いは俺か? それとも、ご令嬢方か?)


 俺はすぐさまご令嬢方を庇い、そいつらと対峙する。


(相手は五人か。なんとなく負ける気はしないが.....。

 果たして、ご令嬢方を守りながらの状態でも勝てるだろうか?)


 すると、背後よりギュッ! と掴まれる俺の服。

 その掴まれた先からご令嬢方の気持ちがハッキリと伝わってくる。怖い───と。


「りゅ、竜殺し様.....」

「ひぐっ.....。こ、こわいよぅ.....」


「.....」


 そうだった。勝てるかどうかじゃない。

 賊どもの狙いが俺かご令嬢方のどちらかは不明だが、必ず守りきらないといけないんだった。


「ご安心ください。私が居る限り、ご令嬢様方には指一本も触れさせませんから」


 だから、俺は努めて優しい眼差しと口調でご令嬢方の身の安全を約束した。少しでも、ご令嬢方の不安な気持ちを解消したくて.....。

 と、ここまでは完璧に振る舞っているようにも見えるが、実は心臓バクバクものだったりする。


 ()()()()()()()()


 別に、目の前の賊どもを恐れている訳ではない。

 そもそも、この世界において俺を含め勇者には布なんかで素性を隠すという行為は無駄に等しい。


 と言うのも、【鑑定】スキルで相手の素性を確認できるからだ。.....【鑑定】っと!


(ふむ。ステータスは平均3000前後。それと───全員、現地人か)


 その結果、目の前の賊どもはハッキリ言って雑魚だと判明した。


 脅威ですらない。

 正直、目を瞑っていても勝てるぐらいには弱い。.....まぁ、やらないけど。


 そういう意味では、ご令嬢方に危険が及ぶ可能性は万が一にも無いので安心だ。


 俺が油断しなければな。

 そして、この状況で油断するなどあろうはずがない。


「大丈夫ですよ。私の方が圧倒的に強いです。勝負にもなりません」

「.....ほ、本当?」

「本当ですよ、妹君。いま確認しましたから」

「か、確認ですか? どういう意味───あッ! 【鑑定】スキルですか!?」

「仰る通りです、姉君。さすがですね」


 それにしても、賊どもはなぜか襲ってこない。

 いや、襲ってくる気配が全くないようにも感じられる。


(.....?)


 賊の考えはいまいちよく分からないが、襲ってこないというのなら、この隙にまだ怯えている様子のご令嬢方を安心させることに専念しよう。俺さえ油断しなければいいのだし。

 

 そもそも、賊どもをさっさと片付けてしまうのがベストなんだと思う。

 それはよく分かっているのだが、ご令嬢方に服をギュッ! と掴まれてしまっていては身動きができない。


 なので、本当は賊どもが襲い掛かってきてくれさえすれば返り討ちにもできるというものなのだが、肝心の賊どもにはその様子が全くない。ただただ、俺とご令嬢方の様子を窺うばかり.....。


 (本当になんなんだ、こいつらは? 何がしたいんだ?)


 さて、不可解なことは多々あるも、やはり目の前の賊どもをいつまでも放置している訳にはいかないだろう。

 脅威というものは、(いくら安心だと言われても)そこにあるだけで、人を───ご令嬢方を恐怖に陥れるものだから。


 それに、動けないなら動けないなりの戦いをすればいい。


(ちょうどいい。お前ら、俺の新技を試す実験台(モルモット)になってくれや!)


 くくくッ。初めての実戦使用ということで、口角が上がらざるを───笑みがこぼれざるを得ない。

 大丈夫! ちょっとだけ! ちょっとだけだから!



 こうして、貴族邸にて俺と賊どもの戦いがいま始まろうとしていた。




次回、本編『貴族邸の動乱⑤』!


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