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第160歩目 はじめての世界地図!

前回までのあらすじ


キャベツさんに勇者じゃないことがバレてる!?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【訂正のお知らせ】


2/28 キャラクター紹介(第4歩目)の表示がおかしくなっていたので修正しました。

    内容の大筋は変わっていませんが、修正の際に余白ができたので【服装】などを追加しました。


大変、申し訳ありません。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2/28 世界観の世界編!に一部追記をしました。

   追記箇所は、『世界地図』・『周辺地図』のベルジュより先の地図となります。


□□□□ ~力を求めるなら~ □□□□


 どうやら、俺が勇者ではないことは既にバレているらしい。

 と言うよりも.....。


「君が寝ている間に、女神様から詳しい話を聞いたんだよ」

「お前が原因かよっ!?」

「だってー、「結婚しよう。結婚しよう」うるさいんだもーん(´-ε -`)」


 あぁ、なるほど。


 なんとなくアテナに同情してしまった。

 俺が昏睡していたこの3日間で、キャベツさんに一体どれほどの求婚をされたことか。相当、辟易したんだろうな.....。


「はっはははは!だが、女神様を責めないであげて欲しい。僕が無理矢理頼み込んだんだ」

「と、言いますと?」

「いや、少し疑問に感じていたんだ。話が噛み合わないことも度々あったしね」

「HAHAHA」


 アテナうんぬん以前に既に怪しまれていたのか.....。


 なら、しょうがない。

 もともと、俺は勇者ではないのだから話が噛み合うはずがない。アテナ、めんご!めんご!


「全然謝ってなーいヽ(`Д´#)ノ」

「うるさいなぁ.....」


 謝罪とは言葉じゃないんだよ。

 誠意の気持ちがあれば、それでいいんだ。気持ちがあればな!


「いや、むしろ責められるべきは僕のほうかもしれないね」

「え?」


 ぶー!ぶー!やかましいアテナを適当にあしらっていると、キャベツさんが沈痛な面持ちで意外なことを言い出してきた。いきなりどうした!?


「勇者でもない君に、戦いを無理強いさせてしまったことを深く反省しているよ。本当に済まない。

 そして、ありがとう。君が、君達がいなかったら、僕はきっとこの場にはいなかっただろう。本当にありがとう」


 キャベツさんはそう言うと、周りの目など一切気にもせず、深々とお辞儀を始めた。

 反省と感謝、その気持ちが誰の目から見てもハッキリと伝わるほどに深々と.....。


───ざわざわざわ

───ざわざわざわ


 当然、ギルド内が騒然となったことは言うまでもないだろう。

 どういった経緯があってのお辞儀か知らない冒険者一同でも、正統勇者であり十傑の1人が深々とお辞儀をしている。その事実だけでも驚くには十分過ぎるほどだ。


「あ、頭を上げてください!もう分かりましたから!」

「そうか。ありがとう」


 ギルド内の視線全てが俺とキャベツさんに集まっていたので、俺は居たたまれなくなった。

 キャベツさんの気持ちはありがたいのだが、こういうことは時と場合を考えて欲しい。注目されるほうの身にもなって欲しいものだ。


「さて、反省と感謝が済んだところで、君に1つ尋ねたい」

「俺に?なんでしょうか?」


 ここからが本題ということだろうか。

 もともと俺達がギルドを訪れたのは、キャベツさんが俺に話があるということだったし。


「君はこれからどうするつもりなんだい?」

「どう.....とは?」

「目的というのかな?君がこれからすべきこととも言える」


 旅の目的.....。


 これといって特にないような気がする。

 アテナの異世界旅行に付き添うことと、後はドールの母親がいると噂されているアクアリオ帝国に行くことぐらいだろうか。


「そうか。君は意外と楽観的な性格なんだね」

「HAHAHA。す、すいません.....」

「ハッキリ言おう。君は正統勇者になるべきだ」

「はぁ!?俺が!?」


 キャベツさんからの意外な指摘に驚かざるを得ない。

 いや、考えなくもなかったというのが正直なところだ。


 十傑はともかくとして、正統勇者になることで色々と恩恵があるのは確かだ。

 これからの異世界旅行を快適なものとしていくには、あって得こそあれ損はないように思える。


 それに何よりも.....。


「君は勇者ではない。だからこそ、正統勇者になるべきだ。それは君自身を守るだけではなく.....」

「アテナ達の身を守ることにも繋がる.....そういうことですよね?」

「はっはははは!既に分かっていたのか。余計なお世話だったみたいだね」


 俺は勇者ではない。だから勇者が持つ力を、体を有していない。

 それなのに、アテナを始めとして、ドールやモリオンと3人の子の命を預かってしまっている。


 本来、人の命を、人生を預かる大役なんて、それこそ『付き人』である俺なんかよりも『勇者』のほうが適任である。

 しかし、現状は『勇者』ではなく『付き人』である俺が請け負っている。


 責任重大だ。責任重大である。

 当然、俺自身の安全を確保することは重要だが、それよりもアテナ達の身の安全を図ることのほうが最優先だ。


 その為には.....。


 力が欲しい。

 力に溺れないだけの、アテナ達を守れるだけの力が欲しい。


 今回の竜族との戦いで、それを嫌というほど痛感させられた。

 俺がもっと強ければ、アテナの作戦に頼ることなく勝利できたかもしれない。

 そうなれば、モリオンに頼ることもなかったし、モリオンが傷付くこともなかった。


 力が欲しい。

 力に溺れないだけの、アテナ達を守れるだけの力が欲しい。


「僕は『付き人』というものの特徴はよく分からないが.....。

 それでも、正統勇者には君の求めるものがあるんじゃないのかい?」

「その通り.....です」


 現状、俺に出来ることは回復薬無双ぐらいなものだ。

 精神はごっそり削られそうだが、レベル4スキルが手に入らない以上は仕方がないだろう。


 その為には回復薬が必要となる。

 そして、回復薬を手に入れる為には正統勇者になる必要がある。


 ・・・。


 俺の目的は既に決まっていたのかもしれない。

 力を欲した時点で『正統勇者』になるべきなのだと.....。

『勇者』ではない『付き人』だからこそ『正統勇者』になるべきなのだと.....。


 しかし、そうなると1つの問題が残る。


「俺は『勇者』ではないのですが、『正統勇者』になれるんですか?」


 勇者が勇者業をしているから、正統勇者になれるのではないだろうか。

 付き人というイレギュラーな存在が果たしてなれるものなのだろうか。


「はっはははは!正統勇者は勇者だからなれるものではないよ」

「そうなんですか?」


「現に勇者ではない者も正統勇者になっているしね。

 君も知っているだろう?時尾の奥さんを。彼女もまた正統勇者の1人()()()のさ」

「!!」


 時尾さんとゼオライトさんも正統勇者だったことが、キャベツさんの口から語られた。

 いや、あの2人の実力から考えれば、さもありなん。


 しかし、あの2人は、2人で1人だったようなものなので、ちょっと特殊なのではないだろうか。

 時尾さんの加護がそういうものなのだし。


「正統勇者になる為には『勇者』という肩書きは必要ない。必要なのは『勇者としての心意気』さ」

「勇者としての心意気.....」


「そういう意味では、勇者でもない君が、

 今回の戦いで人々の為に立ち上がった勇気こそ『勇者としての心意気』だと言えるものさ」


 それは少し買い被りすぎだろう。

 俺は逃げられる手段がなかったから戦う道を選んだ訳だし。


「過程じゃない。結果さ。結果が人々の為になっていれば、それでいいんだよ」

「.....なるほど。正統勇者とはプロ集団の集まりということですか」

「そういうことさ。だから、君に問おう。君の信じる正義とはなんだい?」

「.....」


 俺が信じる正義.....。


 俺には何もないかもしれない。

 キャベツさんのように、全ての女性を守るという気概もない。

 恐くなったら隠れたいし、命の危険性があるというのなら人々を見捨てでも尻尾を巻いて逃亡したい。


(HAHAHA。分かっていたが、俺には『勇者』としての資質はないんだな.....)


 しかし、正統勇者には勇者の肩書きは必要ない。

 必要なのは勇者としての心意気。すなわちプロ意識。

 これならば、忠実な社畜をそこそこ経験してきた俺にも少しはある。


 だが、現時点では、大見得を切って「これが俺の信じる正義です!」と言えるものは何もない。


 だから、ここは素直に言おう。

 失敗は恐れるものではない。失敗は次に、成功に繋がるものなのだから。


「今は何もないかもしれません」

「はっはははは!それでいい。その通りなんだよ」


「!?」

「前にも言ったが、正義とは公平でもなければ平等でもない。

 それは突き詰めれば、自己中心的なわがままそのものだ。

 考えてみて欲しい。それを簡単に口にできる者は正統勇者にふさわしくないと思わないか?」


 なるほど。

 確かにその通りのような気も.....


「まぁ、僕は即答したんだけどね。はっはははは!」

「.....」

「己が信じる正義は千差万別。最初から見つかっている者もいるということさ」


 高笑いしているキャベツさんに、俺は白い目を向けていた。


 この人はなんでこうなのだろうか。

 せっかく尊敬できそうな気分に浸っていたのに上げて落とす。出会った当初から、こればっかりだ。本当にもったいない。


「とりあえず、君は君の信じる正義を探すといい」

「はい」

「それとは別に君にやってもらいたいことがある」

「俺に?」


 キャベツさんがおもむろに3枚の紙切れを取り出した。

 1枚はびっしりと文字が書かれているもの。他2枚は単なる白紙だ。


「これは推薦状さ。君を十傑に推薦する旨をしたためてある」

「あぁ.....」


 すっかり忘れていた。

 そう言えば、俺は正統勇者十傑の適性試験を受けていたのだった。推薦状ってことは合格ということかな?


「そして、こっちが.....」

「!?」


 キャベツさんが何やら呪文を唱え出すと.....。

 なんということでしょう。白紙だった2枚の紙切れに絵図面が浮かび上がってきたではありませんか。


 呪文を唱えたことからして、恐らくは勇者が使える便利魔法の一種だろう。

 申請魔法とか、そんな感じのと一緒で。


 これは見過ごすことができない!


「アテナ!」

「( ´∀` )b」


 まさに以心伝心。

 せこいことをする時に限っては言葉を交わす必要などないのだ。何の魔法かは知らないが、勇者魔法GETだぜ!


 キャベツさんより2枚の紙切れを受け取ったので、敢えて確認する必要はない(見れば分かる)のだが、念のため確認してみる。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


「これは?」

「世界地図さ。もう1枚はここベルジュより先の地図となる」


 まぁ、その通りだった。

 となると、先程の魔法は紙に書き写す魔法かなんかなのだろうか。


「まず君はシンフォニアを目指して欲しい」

「シンフォニア.....。なんなんです、ここは?」

「王や皇帝のいない国。勇者が作った国。勇者が集う国とでも言うのかな」

「!?」


 え?勇者が国を作っちゃったの!?

 そんなこともできる勇者がいるのかよ!?


 俺が驚愕している中、キャベツさんの説明は淡々と続いていく。


「そこでしか、正統勇者になることはできない。当然、十傑もね」

「な、なるほど。全勇者特別機構?とやらに承認されないと、うんぬんって言ってましたもんね.....」

「そういう決まりだからね。そこは我慢して欲しい」


 勇者の暴走を止めることができるのは勇者だけ。

 そうなれば、必然と勇者をまとめる組織なんかができるのは当然のことだろう。社会組織とはそういうものだ。


「そして、シンフォニアを目指す途中で、君には知名度や実績を上げてもらいたい」

「どういうことですか?俺は、実績はともかく知名度は結構あるんですよね?」

「それは『竜殺し』としての知名度だね。僕が言っているのは『勇者』としてのだ」

「あぁ、なるほど。正統勇者として認められる為に必要ってことですね」


 当然といえば当然か。


 いくらキャベツさんの推薦状があろうとも、全勇者特別機構の面々は俺のことを全く知らない訳だ。

 俺にしたって、キャベツさんが十傑と言えども、たかが1枚の紙切れで信用を得られるとは到底思えない。推薦状はあくまできっかけに過ぎないということだ。


「具体的には何をすればいいんですか?」

「理解が早くて助かる。

 具体的には災厄と言われる魔物を1匹ほど倒して欲しい。それで十分だ」


「災厄?」

「君にも見えているだろう?僕の称号が。それのいずれかだ」


 称号.....。

 スライムとかゴーレムのやつのことだろうか。


「そうそう。こいつらは一定期間が経つと、群れで一番強いものをキングとして擁立する習性があるんだ。

 だから、定期的に討伐する必要がある。まぁ、君なら楽勝だろう。心配する必要はない」

「めんどくさい魔物ですね.....。一番近いのはどいつですか?」


「ここからなら.....ゴーレムだね。中央大陸のトルガスト王国に生息しているよ」

「分かりました。とりあえず、討伐に行ってみようと思います」


 シンフォニア共和国、トルガスト王国、そして、アクアリオ帝国。

 どうやら俺の目的も、アテナの異世界旅行も、大筋で目処が立ってきたようだ。


 まずはトルガスト王国を目指そう。

 そして、シンフォニアに立ち寄って、アクアリオ帝国だ!


「僕はシンフォニアにて君を待つことにしよう。そこで君の信じる正義を改めて聞かせてくれ」

「分かりました。大変お世話になりました」


「いやいや。こちらこそ。君との共闘は楽しかった。

 今度は同じ正統勇者として、同じ十傑の仲間として、ともに戦えることを楽しみにしているよ」



 こうして、俺達は王命により海都ベルジュから追放された。


 しかし、その行き先は暗くはない。

 俺の為にも、アテナ達を本当の意味で守る為にも、力を求めて新たな旅が始まったのだから。



次回、本編『母親』!


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今日のひとこま


~世界地図~


「そう言えば、世界って意外と狭いんですね」

「どういうことだい?」

「いえ。確か、ここベルジュとかが東の端って聞いたので、地図を見ると狭いなぁ、と」

「あぁ。そういう意味か。いや、世界はもっと広いらしいよ」


「らしい?どういうことですか?」

「君はダンジョンもののゲームをしたことはあるかい?」

「まぁ、人並みにはありますね」

「今はどうなのか知らないが、この『ワールドマップ』の魔法は昔のゲームの仕様と一緒なのさ」


「と言うと.....。行ったところが表示されるということですか?」

「そういうことだね。本当の全世界地図はシンフォニアにあるよ」

「へ~。それは楽しみですね。なんせ俺はこの世界に50年はいないといけないですし」

「そうだったね。ただ、あまり期待しないほうがいい」


「え?なんでですか?」

「確か全世界地図によると、西の大陸はほとんど廃れた土地だったような気がする」

「そうなんですか?」

「人々が土地を酷使して、使えなくなったら東に、東に移動しているらしいからね」


「えぇ.....。理由が酷すぎる.....」

「まぁ、そのあたりはどこの世界も一緒だということさ。基本的には人間の都合次第だね」

「と言うことは、西の大陸はあまり期待できないですかね?」

「国がない訳じゃない。とは言っても、その大部分をアクアリオが占拠しているけどね」


「魔道具に力を入れている国でしたっけ?」

「魔道具.....というよりは、兵器だね。

 一般兵士にも勇者並みの力が使えないかどうか研究しているらしい」

「あっ。もういいです。なんだかフラグが立ちそうなんで」

「はっはははは!そうかい?まぁ、興味があったら一度は行ってみるといい」


ドールの母親がいるらしいし、興味がなくても行かざるを得ないんだよなぁ.....。


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