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第159歩目 はじめての王命!

前回までのあらすじ


長い長い戦いがようやく終わった!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今話より『第五部・第6章』となります。


章題より主人公の力UPが主目的となりますが、主人公の力UPとなると、『旅』と『加護』が主なものとなります。

つまり、年月がガンガン進んでいくのと神様がたくさん登場する章となる予定です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


誤字脱字報告、ブクマ、評価など、ありがとうございます。

やる気に繋がります。


□□□□ ~戻ってきた日常~ □□□□


「うぅ.....。なんか頭がくらくらする.....」


 俺はいま、長い長い眠りから、ようやく目を覚ましたばかりだ。


 あの壮絶だった竜族戦以降、どうやら3日間もこんこんと眠り続けていたらしい。

 確かにかなり疲れてはいたが、まさか、ここまで昏睡するとは思わなかった。


 なんでも、回復薬無双の弊害とのこと。

 実際、身体的疲弊よりも精神的疲弊のほうが体には悪いようだ。


(もっと力が欲しい.....。力に溺れないだけの、昏睡しないだけの力が.....)


 改めて、己の力不足を嘆いていると.....。


「あー!歩が起きてるー( ´∀` )」

「体調はどうじゃ?どこか気になるところはないか?」

「アユム!おはようございます、なのだ!」


 やかましい連中が、買い物?から帰ってきたようだ。

 今までシンッとしていた一室が一気に騒々しく、でも、どこか嬉しくなる雰囲気に包まれた。


(.....こいつらはなんともなさそうだな。良かった)


 3日間も昏睡していただけに、心配していたアテナ達が無事であることにホッと一安心。

 とは言っても、心配していたのは体や健康面ではなく、面倒事を起こしていないかのほうだが.....。


「ドール。看病ありがとな」

「なんの。主の奴隷として当然のことをしたまでじゃ」

「なんでコンちゃんだけなのーΣ(・ω・*ノ)ノ 」


 そこ、驚くとこか?

 どう考えても、ドール以外が看病していたとは到底思えない。おっ!頭が冴えてきた!?


「.....看病してくれたのか?」

「とうぜーんっ!歩は私をなんだとおもってるのーヽ(`Д´#)ノ」

「.....ふーん。モリオン、どうなんだ?嘘付く子は悪い子なんだぞ?」

「お姉ちゃんは看病してないのだ。我と一緒にお菓子を食べてただけなのだ」


 思った通りだ。

 この、まるで息をするかのように嘘を吐くふてぶてしい態度。嫌いじゃない。嫌いじゃないが.....。


「しらないのー?だいたいりょーほー?ってやつだよー!」

「.....代替療法とは?」


「私が歩のかわりにご飯を食べてあげることでー、歩が元気になれる画期的な治療法なんだよー!

 流行りなんだけどなー?しらないなんてー、歩はおっくれてるー!あーははははは( ´∀` )」

「おぉ!よく分からないけど、お姉ちゃんはすごいのだ!我も協力するのだ!」


「「.....」」


 結局はお前が食いたいだけじゃねぇか!


 しかも、なぜかモリオンも、アテナに協力的な姿勢を見せている。害悪だ。害悪過ぎる。

 俺が昏睡していたこの3日間で、アテナがモリオンに及ぼした影響は計り知れないものがある。


(あぁ.....。俺の愛娘が、くそ駄女神に穢されていく.....)


 そう思うと、いてもたっても居られなかったので、俺は.....。


───ぎゅむ!

───ぎゅむ!


「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!このくそ駄女神が!!」

「ふぇぇえええん!ごめんなさーい(´;ω;`)」

「あぅぅううう!?な、なんで我も怒られてるのだ!?」


 俺に頬をつねられたことで、アテナとモリオンが呻いた。


 アテナは言うまでもないことだが、モリオンも怒られて然るべきだ。

 だって、「我と一緒にお菓子を食べてただけなのだ」この一文は見過ごすことができない。


 それと言うのも、アイテムボックスの中にあったお菓子がまるごとなくなっているどころか、俺の所持金ですらごっそりとなくなっている。

 絶対に、このおバカ組の食費であろうことが、容易に想像がつく。


「.....お、お姉ちゃんが使っていいと言ったのだ」

「アテナの言うことでもダメなものはダメなの。.....明日のおやつは減らすからな?」

「ぁぁあああ!ご、ごめんなさいなのだ!ゆ、許して欲しいのだ!!」

「絶対にダメ!」


 悲壮な表情ですがり付いてくるモリオンに毅然とした態度でNOを付き付けた。


 いい子にしたら誉めてあげる約束をしたが、その逆も然りだ。

 悪いことをしたら、しっかりと叱ってあげることも時には必要だ。.....うん。モリオンの健全な教育の為には、心を鬼にせねば!


 アテナが頬を押さえて泣き喚き、モリオンがガクッと膝を付いて絶望している姿を俺が見下ろす。

 ようやく、本来あるべき姿、日常が戻ってきたのだと実感した。


「いつまでもバカなことをしておるでない。主が起きたのなら、早く行くのじゃ」

「行くって、どこへ?」


 すると、一部始終を見ていたドールが気になることを言ってきた。

 と言うか、俺は3日間も寝ていたせいで空腹なんですが.....。


「勇者様が主と話があるようなのじゃ」

「キャベツさんが?」


 こうして、俺達はキャベツさんの待つ冒険者ギルドへと向かうのだった。



□□□□ ~王命~ □□□□


「国外退去?」

「.....はい」


 それは突然だった。

 いや、必然だったのかもしれない。


「それって.....。所謂、追放ってことですよね?」

「.....」


 セシーネさんが、気まずそうにソッと視線を逸らす。


 キャベツさんが俺に話があると言うので、冒険者ギルドへ赴いた途端に宣告された追放命令。

 当然、冒険者ギルド側の判断ではなく王命である。


「.....我のせいなのだ?」

「違う.....とは言い切れないな。モリオンというよりかは竜族が原因だろう」


 モリオンの表情が昏く澱む。


 ここで、「モリオンのせいじゃない!」と気休めを言ったところで意味はないだろう。

 だったら、ハッキリと竜族が原因だと教えてあげるほうが、まだ幾分モリオンを納得させやすい。


「.....」

「仕方がないことだ。気にするな。.....でも、忘れちゃいけないぞ?」


「.....なにをなのだ?」

「感謝している人もいることだ。

 どんな時でも、モリオンと一緒に居てくれる人がいることだ」


 俺はそうだろ?の意味を込めて、モリオンにサムズアップを1つ。

 それに続くかのように、アテナやドールも俺に倣って、モリオンにサムズアップをした。


「.....ありがとうなのだ。アユム、お姉ちゃん、ありがとうなのだ!」


 落ち込んでいたモリオンに、いつもの笑顔が戻った。

 モリオンはやはりこうでなくちゃ。いつもにこにこしているモリオンが1番である。


「「「「「.....」」」」」

「「「「「.....」」」」」


「「「「「パチパチパチパチパチパチパチパチ」」」」」


 しかし、こんなほのぼのとしたやり取りであっても、冒険者一同の視線はどちらかと言うと冷ややかだ。

 悪意がないのは分かっているが、それでも.....。


 ただ、国外追放の王命も、冒険者一同の冷ややかな視線も至極普通のものだ。

 竜族が、このベルジュに及ぼした影響を考えてみれば、王や冒険者一同を責めることはできない。


「.....申し訳ありません」

「いえ、セシーネさんのせいではありませんから」


 本当に申し訳なさそうな、苦虫をつぶしたような面持ちで謝罪するセシーネさん。

 よほど申し訳ないと思っているのか、下唇をギュッと噛んで何かを懸命に堪え忍んでいる。と言うか、血が出てるじゃないですか!?ヒール!


「本来なら、竜殺し様一向には報奨金があって然るべきなのですが.....」

「なるほど。気にしないでください。例え、あったとしても辞退するつもりでしたから」

「.....え?」

「それと、俺が回収したドラゴンも全部提供します。復興資金に役立ててください」


 これはずっと考えていたことだ。


 もしかしたら、この戦いの原因自体が俺達にあるのではないかと。

 そう考えたら、報奨金どころか戦利品ですら受け取るのは何か違うと思う。筋違いな気がする。


「いいのかい?報奨金は仕方がないとしても、君には戦利品を受け取る権利はあるんだよ?」

「構いません。むしろ、復興の役に立てるなら喜んで提供します」

「そうか。はっはははは!君には恐れ入ったよ。分かった!僕も全て提供しようじゃないか」

「えぇ!?な、なにも、キャベツさんまでそこまでしなくとも.....」

「おいおい。()()()()()()君が身を削っているのに、正統勇者である僕がケチる訳にはいかないだろう?」


 本当にこの人は勇者の鑑のような人だ。

 多少節操がないところは鼻につくが、それでも勇者としては清々しいまでに立派な人だと思う。


 ・・・。


 ん?



(キャベツさんはいま、なんて言った!?俺が勇者ではないと言わなかったか!?)



次回、『世界地図』!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


~もうやってられません!~ side -セシーネ-


「.....え?冗談ですよね?」

「セシーネ、どうしたんだい?美しい顔が真っ青じゃないか」

「キャベツ様.....。いえ、いま王より通達がありまして.....」

「褒美の言葉.....という訳ではなさそうだね」


「.....はい。竜殺し様のPTを即刻ベルジュより追放せよと.....」

「そうか.....。いや、同情はするが、竜殺し君なら分かってくれるだろう」

「.....はい」

「ん?それだけじゃないのかい?」


「.....はい。ベルジュの損害賠償も竜殺し様に払わせろと.....」

「はっはははは。.....さすがに笑えない冗談だね。

 彼らがいなければ、ここベルジュもフラッペのようになっていたんだよ?それでもかい?」

「.....間違いありません。払わせろと.....」

「そうか。それでセシーネの見立てではどれぐらいの賠償金になると思うんだい?」


「軽く見積もっても、数百億、いえ、数千.....、もしかしたら兆規模になるかと思われます」

「それを個人に負担させるのはどう考えてもおかしいね。国家クラスの案件だ」

「.....もう私は嫌です。私達、冒険者ギルドは国の機関ではありません」

「セシーネ、それは言ってもどうしようもないことだよ」


キャベツ様の言っていることは理解できます。

超法機関である冒険者ギルドであっても、信用の為には国との強固な繋がりが必要です。


つまり、その国で冒険者ギルドを営む為には、理不尽であろうと王命には従わなければいけないということです。


「国を救った英雄様にそんな失礼なことは言えません!」

「君は意外と頑固者なようだ。でも、とても優しい人でもある」

「キャベツ様。私はギルドを辞めます!

 ですから.....、私を連れ出してください!あなたのお側に居させてください!」

「いいのかい?僕は正統勇者だよ?

 言わば、巣なし鳥のようなもの。一所に長くはとどまれない宿命だ」


「英雄に、恩人に、恩を仇で返すぐらいなら.....。いっそのこと、あなたのお側に行きたいです!」

「はっはははは!それでこそ僕の妻だ!分かった。付いてくるといい」

「はい!ありがとうございます!」

「それと、賠償金のことは僕がなんとかしよう。これは竜殺し君へのせめてもの感謝の気持ちだ」


「キャベツ様.....。ありがとうございます」

「ところで、君が抜けた穴はどうするんだい?とても大きな穴になるんじゃないのかい?」

「それでしたら、姉さん達にお願いしてあります」

「手回しが早くないかい!?王の通達はさっききたばかりだろ?」


「まぁ、キャベツ様ったら。うふふ。女を甘く見すぎですよ?」

「いやはや。既に覚悟していたということか。セシーネはなんとも度胸のある女性のようだね」

「それでなければ、正統勇者様の妻になどなったりはしません」

「はっはははは!全くその通りだ!恐れ入ったよ!.....では、ハネムーンはどこがいい?」

「キャベツ様の行きたいところが、私の行きたいところです」


こうして、私はベルジュのギルド職員を寿退社しました。

そして、私の後釜には、フラッペでギルド職員をしていたカシーネ、キシーネ姉さんに任せることにして。


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