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第149歩目 ドラゴンの海水浴!モリオン⑥

前回までのあらすじ


みんなの水着姿はキュートだった!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


評価、ブクマありがとうございます。

誤字脱字報告もお気軽にどうぞ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『今日のひとこま』が少し長いですが、最後まで読んで頂けたら嬉しいです。


□□□□ ~モリオンと遊ぶ海水浴①~ □□□□


 一悶着あったが、アテナ達は早速ビーチボールで遊び始めた。

 美少女達の間をふわりふわりと舞うように行き来するビーチボール。


「コーンちゃーん、いっくよー!」


───バシーン!


 アテナの華麗なスマッシュ炸裂。

 激しくビーチボールが揺れる。


 そして、そんな華麗なスマッシュをしたということは.....。


───ぶるんっ。


 当然、アテナの豊満な果実も揺れることに他ならない。いいね!


 ビーチボールを用意しておいて正解だったようだ。

 海水浴のお約束アイテムとお約束展開は目の保養の為にも欠かせない。


「へぶっ!?」


 そして、アテナより華麗にスマッシュされたビーチボールをものの見事に顔面で受け止めるドール。

 これもお約束展開と言えばお約束展開なのだが、こういうのはアテナの役割だと思っていた。それがまさかドールになるとは.....。


(ドールって意外と運動音痴なのか?)


 そんな疑問を抱きながら、しばらく見ていると.....。


「姉さま、お返しなのじゃ!」


───バシーン!


 とても運動音痴とは思えない強烈なスマッシュを繰り出すドール。

 その威力はあまりにも強烈すぎて、まるでムンクの叫びのようにビーチボールが歪んでいる。


 そして、そんな強烈なスマッシュをしたということは.....。


───。


 当然、ドールのささやかな胸が揺れることはなかった。まぁ、もともと揺れるほど無いしな。


 それでも、ビーチボールを用意しておいて正解だった。

 ドールの胸は仕方がないと言えども、『結果良ければ全て良し』という言葉がある。


 だって、そうだろう?

 ドールの強烈なスマッシュが行き着く先はなんと言っても.....。


「きゃっ!?」


───たゆんっ。


 アテナの豊満な果実が揺れる。いいね!


 アテナの謎パワーによって顔面直撃コースを外れたビーチボールは、これまた謎の原因によって自然と豊満な部分へと吸い寄せられるように飛び込んでいった。それがあたかも当然だと言わんばかりに.....。


 その後、何度も何度も同じ展開が続く。


「コーンちゃーん、へったくそー( ´∀` )」

「ぐ、ぐぬぬ!な、なんで姉さまの場合は顔に当たらんのじゃ!!」


「.....」


 もはや遊びの主旨が変わっているような.....。


 それはともかく、あのビーチボールは仮に性別があったとしたら、きっと生粋の男だろう。

 巨乳の子には胸に飛び込み、無乳の子には顔面に飛び込む、その態度があからさますぎる。全く!羨まけしからん!!



 ・・・。



 さて、アテナとドールがビーチボールで遊んでいる一方、モリオンはというと.....。


「お姉ちゃん達、楽しそうなのだ.....」


 ビーチに座り、殺伐と楽しそうに遊んでいる2人の姉を羨ましそうに眺めていた。

 その背中からは子供の見た目とは思えないほどの哀愁が漂っている。年季が入ってる!?


「モリオンは遊ばないのか?」

「水、冷たいのだ.....」

「あぁ、なるほど.....」


 人間形態でいる時のモリオンは、暑いのや寒いのが苦手という弱点がある。

 常温以外の体温になると、体が動かなくなるみたいだ。普通の人間ならば、ある程度体温調節みたいなものが自然となされるが、モリオンの場合はその機能が働く前に体がギブアップするらしい。


 竜族というのも難儀なものだなぁ.....。

 いや、竜族は関係ないか。ドラゴン形態なら全く問題ないらしいし。


「.....変身していいのだ?」

「それはダメ」


 かわいそうではあるが、突然ドラゴンが現れたりなどしたら大騒ぎになるどころの問題ではない。

 絶対にめんどくさいことが待ち受けている未来が容易に想像できるので勘弁して欲しい。


「我も遊びたいのだー!遊びたいのだー!遊びたいのだー!」



 こうして、俺は珍しく駄々をこねるモリオンと一緒にビーチでできる遊びをすることになった。



□□□□ ~モリオンと遊ぶ海水浴②~ □□□□


 ビーチでできる遊びと言えば、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。

 大体の人が『ビーチバレー』または『スイカ割り』などを真っ先に思い浮かべるものだと思う。


 そんな様々な遊びがある中、俺がモリオンに提案した遊びはというと.....。


「なにするのだ?」

「お城でも作るか」


 これを選んだ理由はいくつかある。

 まずビーチバレーは、現在ビーチボールをアテナ達に独占されているので不可能。

 ケチる気はさらさらないが、わざわざビーチボールを買い足すというのも、う、う~ん.....。


(それともアテナ達と一緒にやるか?

 せっかくアテナのお守りをドールに押し付けることに成功したのに!?)


 却下だ!

 アテナのお守りをするぐらいなら、モリオンと2人で遊んだほうがずっと楽だ。



 次にスイカ割りは、どうせやるならアテナ達と一緒にやったほうがいいだろう。

 掛け声が1つしかないというのはなんとも寂しい。


 それにまだ海水浴を楽しみ始めたばかりだ。

 しょっぱなからスイカ割りをするというのはどうにも違うと思う。


 俺の中のスイカ割りの印象は、例えるならメインディッシュに相当するものだ。

 そこそこ遊び倒した末にこそ、その真価があると思う。



 そんな訳で、ビーチで砂城を作っちゃWow!ということに落ち着いた。

 それにやったことがある人ならわかるだろうが、結構時間を潰せるメリットもあるからな。


「どうやって作るのだ?」

「まぁ、見てろ」


 砂に適量の水を混ぜて形どっていく。


 城のイメージは、かの有名なネズミーランド。

 目を凝らせばベルジュの王城が見えるというのに、イメージはネズミーランドだ。


・・・。


 そして、せっせと作ってしばらく、遂に出来上がったお城を見て、モリオンがぽつりっ。


「これ、なんなのだ?」

「俺の(実家)


 HAHAHA。

 一軒家は男の夢、男の城というだろう?


 そもそも砂城なんてものを、俺のようなド素人がホイホイと作れるはずがない。

 それに俺は、小学校の図工や中学・高校の美術の成績がともに3(5段階中の!)と、美への意識がこれっぽっちもない人生を歩んできている。なおさら砂城なんてものを作れる訳がない。


「おー!これが歩の城なのだ!?すごいのだ!」

「.....」


 やめて!

 改めてそう言われると悲しいものがあるから!


 悪気がないのは分かっているが、それでも純粋に、のだー!と喜んでいるモリオンを見るとなんとも言えない気持ちになる。


(城が一軒家とかリアルすぎる.....。せめて、遊びでぐらいは夢を見たっていいじゃない!)


 子供の遊びとはなんと残酷なものなのか.....。


「我も!我もやってみたいのだ!」

「おぅ、やってみろ」


 俺の『普通』という悲しい性はさておき、水分を含んだ砂をモリオンに手渡していく。

 大雑把な性格をしているモリオンが作る砂城。どんなものになるのか非常に楽しみだ。


「のだ♪のだ♪のだ♪」


 モリオンはかわいい掛け声とともに砂をどんどん盛り上げていく。

 しかし、お城の全容はまだまだ見えてはこない。


「楽しいか?」

「楽しいのだ!」

「それはよかった」


 楽しんでくれているようでなにより。

 見た目相応の遊びで楽しんでいるモリオンに、俺も思わずほっこり。顔が(ほころ)んでいくのがわかる。


・・・。


 そして、モリオンの尻尾をさすさすしながら待つことしばらく、遂にモリオン力作のお城が出来上がったようなのだが.....。


「こ、これは?」

「我の()なのだ!」


 鬼岩城かよ!?


 そこには、そう思わずツッコミたくなるようなおどろおどろしいものが出来上がっていた。

 なんかそれっぽい雰囲気もあるので、少なくとも俺の城(笑)よりかはよっぽど精巧だと思う。


(くっ!.....モリオンの図工・美術の成績は4以上ということか!)


 なんてことを考えていたら.....。


「ここが父様の部屋なのだ。それで、ここが我の部屋」


 なにやら鬼岩城の説明を始めるモリオン。

 どうやら各自の部屋も見事に再現した造りらしい。思った以上に本格的だ。


「ここがじぃの部屋なのだ。それで.....」


 ところが、先程までうきうきとしていたモリオンが言葉を詰まらせる。


「.....?どうした?」

「.....ここが母様の部屋なのだ。一度も入ったことがないのだ」

「.....」


 なんて健気な娘や!


 思わず涙が出そうになった。

 年を取ると涙もろくなるというのは本当らしい。まだ26だけど。


「いつか入れる日が来るといいな」

「なのだ!アユムも一緒に入るのだ!」

「.....え?俺も一緒に?」


 それはどうだろう?

 モリオンにも入らせない程の大切な場所を、赤の他人である俺が土足で汚すのはいかがなものか.....。


「それにアユムの部屋もあるのだ!」

「.....え?俺の部屋?」

「そうなのだ!ここでアユムと一緒に暮らすのだ!」


 本当にそれはどうだろう?

 こんなおどろおどろしい鬼岩城で、モリオンと一緒に暮らしていくというのもいかがなものか.....。


「.....我と一緒は嫌なのだ?」

「ち、違うぞ!そういう意味じゃない!」

「じゃー、どういう意味なのだ?」

「もっと平和そうな場所がいいかな、と.....」


 あれ?

 そもそも、なんでモリオンと一緒に暮らさないといけないんだ!?


 そう思った時には既に後の祭りで.....。


「じゃー、アユムの家で一緒に暮らすのだ!」

「それは本当にやめて!親父とお袋が腰を抜かすから!!」


 ドラゴン形態であるモリオンを親父とお袋が見た日には、その日が二人の命日に成りかねない。

 第一、人間形態のモリオンですら耳と尻尾を付けたただのコスプレイヤー(おまけに幼女!)にしか見えないのに、そんな子と一緒に暮らすと言ったその日には.....。


 親族間の俺を見る目が、今よりも更に冷たくなるような気がして耐えられない。

 今でさえ、空気を扱うような微妙な存在だというのに.....。


(せめて一緒に暮らすのなら、今のアパート.....では狭いから、

 どこか大きめな所を借りて、そこで一緒に暮らすべきだよなぁ.....)


 と、なのだー!とかわいく万歳して嬉しそうに微笑んでいるモリオンを見て、しみじみ思う俺だった。



□□□□ ~秘かに計画していたこと~ □□□□


 夕方。


 心地好い気分の中、目を覚ますと既に日が落ちようとしていた。

 モリオンと砂城を楽しんだあの後、アテナ達と合流してビーチバレーやスイカ割りなど一通り満喫してすぐに、どうやら俺達は寝てしまったらしい。


「.....(すやすや).....(^-ω-^)」

「.....くー.....くー.....くー.....」


 今も俺の隣では気持ち良さそうに眠るアテナとモリオンの姿が目に入る。

 だらしなくよだれを垂らしてはいるが、それでも二人の寝顔はまるで天使のようだ。かわいい。


(あれ?二人?.....ドールはどこいった?)


 なんてことを考えていたら、頭の下が妙に気持ちいい。


「主。ようやく起きたようじゃな」

「もしかして.....ずっとか?」

「うむ。妾も寝てしまったら、色々と問題が出るであろう?」


 どうやら、ドールはずっと起きて荷物の盗難防止や俺達の身の安全を守っていてくれたようだ。

 しかもありがたいことに、膝枕をしてくれるサービス付き。心地好い目覚めだったのはそのおかげか。本当に頭の下がる思いだ。


「ありがとう、ドール」

「主の奴隷として当然のことをしたまでじゃ。

 それよりも、もうじき日が暮れる。早く帰り支度をするのじゃ」


 周りを見渡すと、ビーチにいるのはどうやら俺達だけのようだ。

 昼間はあれほど騒がしかった(それほど騒がしくなかった)このビーチも、今はシーンと静まり返りどこか寂しい。

 唯一聞こえてくるさざ波の音も、今では泣いているようにさえ感じる。まるで俺達の帰りを惜しむような、悲しむような、そんな哀愁を偲ばせて.....。


「もう俺達以外は残っていないよな?」

「そのはずなのじゃ。少なくとも妾は見ておらぬな」


 ずっと起きていたドールが言うのなら間違いないだろう。

 そもそも、元からそこまで利用者も多くはなかったことだし。


「だから「急いで帰り支度をせい」と言うておるのじゃ。主は姉さまとトカゲを起こせばよい」


 ドールはそう言うと、せっせと荷物をまとめ始めた。

 確かにドールの言う通り、日が落ちる前に急がなくてはならないだろう。


 しかし───。


 俺はこの時をずっと待っていた。

 ビーチに俺達しかいないこの状況をずっと.....。


「ほら、二人とも起きろ」

「.....ふわぁ.....おはよー.....歩.....(^-ω-^)」

「.....くわぁ.....おはようなのだ.....アユム.....」

「おはよう。これから最後の遊びをするぞ。二人とも急いで準備しろ」


「いまからー(。´・ω・)?」

「今からじゃと!?」

「今からなのだ?」

「そう、今から」


 こうして、驚く3人とともに本日最後の遊びが始まろうとしていた。



□□□□ ~モリオンと遊ぶ海水浴③~ □□□□


 俺達はいま、ある孤島にいる。

 いや、見ようによっては間違いないではないだろうが、その言い方では明らかに語弊がある。


 俺達はいま、ある巨大な生物の上にいる。.....と言ったほうが正しいだろう。


「気持ちいいか?」

『気持ちいいのだ』


 そう、俺達が現在いるのはモリオンの体の上だ。

 当たり前だが、人間形態のモリオンではなく、ドラゴン形態のモリオンだ。人間形態のモリオンだといじめになっちゃうからな。


「モーちゃん、おっきーねー( ´∀` )」

「.....(ぶるぶるぶる).....こ、このトカゲの.....この不快なオーラはなんなのじゃ.....?」


 初めてドラゴン形態のモリオンを目の当たりにしたアテナとドールの反応はご覧の通りの有り様だ。

 アテナは相変わらずアホ面だし、ドールも相変わらず強者センサーが働いているらしい。


「海、入れてよかったな」

『なのだ!アユム、ありがとうなのだ!』


 うんうん。

 喜んでくれているのは嬉しいが、.....もう少し声のボリュームを落とそうな?


 俺達はモリオンと何気なく話している(ちなみにアテナとドールも会話できている)だけだが、端からは『GAAAAAAAAAA!』と謎の生物が吼えているようにしか聞こえないはずだ。

 海に入れて喜ぶ気持ちは大いに分かるが、見つかってしまっては元も子もないので気を付けて欲しい。


 そう、俺が提案した最後の遊びとは、ずばり『モリオンを海で遊ばせてあげること』だ。


 せっかく海水浴に来たのに、一人だけ海に入れないというのはあまりにもかわいそうだ。

 それに、旅を楽しみに付いてきたモリオンに『海には入れなかった』という悲しい思い出を作らせてしまうのは俺の本意ではない。


 だから、この人がいない時間(夕暮れ時)をひたすら待ち続けた訳だ。

 当然、ビーチ沿いでは見つかる恐れもあるので、念のため沖まで移動してはいるが.....。


「ごめんな?今のモリオンだとこれぐらいしか出来なくて.....」

「いいのだ♪いいのだ♪水、気持ちいいからいいのだ♪」


───ぷかぷか~。


 何をする訳でもなく、ただ海を漂い続けるだけでもモリオンは大満足らしい。

 いや、正確には何もしていない訳でもないが.....。


───グギャァァアアア!

───ガ、ガァァアアア!

───ゴギャァァアアア!


 海の魔物の断末魔がそこかしこから聞こえてくる。

 唯一の救いは、落ち行く夕陽のおかげで海面が夕陽色に染まっている為、現実を直視しなくてもいい点だろう。


『.....(メキメキ).....(バリバリ).....(グチャグチャ)』


「今度は3匹同時だねー!モーちゃーん、すごーい( ´∀` )」

「「.....」」


 実況してんじゃねぇ!くそ駄女神!!

 夕陽さんが現実を直視しないようにしてくれている意味がないだろ!!



 当たり前のことだが、海にも魔物は存在する。

 ここ海都ベルジュでは7つの浮き島を囲うようにして城壁が連なっているが、定期的に国内の海水を入れ換えている。景観も一つの売りである以上、海水の入れ換えは当然だろう。


挿絵(By みてみん)


 その入れ換えの際に、当然海の魔物も一緒にやってくる。

 

 ただ、特に魔物の侵入を防ぐ手段は講じていないようだ。

 その魔物もまた貴重な資源の一つになるかららしい。


 そういう理由もあって、国内には多くの海の魔物がうようよ泳ぎ回っている。

 このビーチもある一定の所までは魔物避けの対策がされているものの、沖まで来てしまうともはやそんなものは存在しない。


 結果、モリオンに挑みし憐れな魔物が、モリオンのおやつとなって胃袋に消えていくという訳だ。


───グギャァァアアア!

───ガ、ガァァアアア!

───ゴギャァァアアア!


 次から次へとモリオンのおやつになっていく魔物達。

 何がそこまで彼らを駆り立てるというのだろうか.....。


「す、すごいな.....。よくこんなドラゴンに挑もうとするよな.....」

『.....(メキメキ).....(バリバリ).....(グチャグチャ).....はむはむはむだ?』

「あ、いや.....。モリオンは答えてくれなくていい.....」


 た、頼むから食事風景を見せないでくれ.....。

 あまりにもリアルすぎる.....。


「海の魔物は目が悪いからの。トカゲがドラゴンだと分からぬのであろう」

「周波数的なやつで認識してるのか?」

「そういうこ.....」

「そだねー!さっすが私でしょー?」


「「.....」」


 おいしいところだけ横取り!?


 本来なら智慧の女神(笑)であるアテナが答えて然るべきところをドールに答えさせるばかりか、あまつさえ、最後のおいしいところだけを掻っ攫っていくスタイル。


「ほめてくれていいんだよー!あーははははは( ´∀` )」

「.....」


 更には自分のお手柄にしていくおまけ付き。

 清々しいまでの小悪党だ。


 だから───。


「.....そんなに誉めて欲しいのか?」

「ほめてー!ほめてー!ポンポンがいいー(*´∀`*)」

「.....わかった。たっぷり誉めてやるよ」


 俺は駄女神のもちもちぷるぷるな頬に両手を添える。

 常に左手は添えるだけの精神は絶やさずに.....。


「ふぇ!?」


───ぎゅむ!!


「な~にが「ポンポンがいいー(*´∀`*)」だ!くそ駄女神!!甘ったれてんじゃねえぞ!!」

「ふええええええええええん(´;ω;`)ご、ごめんなさーい」


 俺に頬をぎゅむぎゅむされた(つねられた)ことで駄女神が呻いた。



 駄女神はどんな時でも駄女神。

 それはいつもと変わらない日常だった。



□□□□ ~モリオンと遊ぶ海水浴④~ □□□□


 俺がアテナにお仕置きしている間も、モリオンは海水浴とおやつをひたすら満喫していたようだ。

 そして、ある程度腹が膨れてきた影響か、ある頼みごとをしてきた。


(.....まぁ、魔物を丸ごとだから腹は膨れるわな。HAHAHA)


『むずむずするのだ!』

「むずむず?」

『背中なのだ!かゆいのだ!』


 頼みごととは所謂孫の手役、つまりは背中を掻いてほしいということだった。

 ドラゴンみたいな巨体ともなると、背中を掻くだけでも大変らしい。難儀なことだなぁ。


 早速、モリオンの指示に従うも.....。


『もうちょっと上なのだ』

「上ね」


 かゆい場所がよく分からない。


『そこじゃないのだ。上なのだ』

「上.....?」


 かゆい場所が全然分からない。

 と言うよりも、背中が広すぎて「上なのだ」と言われても全く分からない。


『むずむずするのだー!かゆいのだー!』


───グラグラグラグラグラ


「ちょっ!?暴れんな!お、落ちるだろ!」

「ふえええええ。お、おちちゃうー(||゜Д゜)」

「ね、姉さま!妾に捕まるのじゃ!.....こら!トカゲ!よさんか!!」


 どうやらモリオンのむずむずは我慢できないほどらしい。

 このままモリオンに豪快に暴れられてしまっては俺達の身も危うい。


 急いでモリオンのかゆい場所をみんなで探し始める。


「モ、モーちゃーん、まっててねー!今すぐみつけてあげるからーr(・ω・`;)」


 珍しく、あのアテナも必死だ。

 もしかして.....アテナは泳げないのだろうか?


 最悪、泳げないだろうアテナは俺が助けてやるか、と思いつつ、俺もモリオンのむずむずを探す。

 すると、ある場所で奇妙なものに気付いた。


───キラキラ


「なんだこれ?光ってる.....?」


 触ってみると、ものすごく硬い。

 小突いてみると、コンコンと硬質な音がする。強度はよほどのものだろう。


 と、その時───。


『そこなのだ!』

「え?これ!?」


 どうやらむずむずの原因を突き止めることに成功したらしい。


 早速掻いてあげるも、モリオンからは微妙な反応。

 なんとなくだが、この謎の物体があまりにも硬すぎて、掻いても意味がないように思える。


『かーゆーいーのーだー!早くするのだー!』

「ちょっ!?だから暴れんなって!落ちるだろ!」


 またしても暴れるモリオン。

 本当に我慢の限界らしい。


 とりあえず、


───ガリガリガリ


「こ、これでどうだ!?.....と言うか、俺の爪がぁぁあああ!!」

『全然なのだ』


 思いっきり強く掻くもダメ。

 むしろ、俺の爪が割れた。


───ドンドンドン


「こ、これでどうだ!?.....い、痛かったら言ってくれ」

『全然なのだ。痛くもないのだ』


 思いっきり強く叩くもダメ。

 どうにも壁を叩いているような不思議な感覚だ。


───ゴンッ!


「くそっ!これでどうだ!.....痛ってぇぇえええ!!」

『全然なのだ。何かしてるのだ?』


 思いっきり強く殴るもダメ。

 俺のお手手はまっかっかなんですが!?


───ガンッ!


「かくなるうえは!.....く、くぉぉおおお!?あ、足がぁぁあああ!!」

『全然なのだ。早く、早くするのだ!』


 思いっきり強く蹴るもダメ。

 もはや何も言うまい。骨が折れていないだけマシだろう。


 それにしても、何をしてもこの謎の物体はうんともすんとも言わない。

 鱗のようにも見えるが、鱗とは少し違う謎の物体。


(これ本当になんなんだよ!?もはや万事休す!!)


 そう諦めかけていたその時、俺に天使が舞い降りた。


「先程から主は何をしておるのじゃ?これは皮であろう。剥がせば良いのじゃ」

「.....は?皮?」


 ただ、その天使が何を言っているのかはさっぱり分からない。

 なにやら皮と聞こえたような気がしたが.....。


「気ではない。皮じゃ『皮』」

「皮って.....あの皮だよな?」

「主がどの皮を言うておるのかは知らぬが、体を覆っている皮なのじゃ」


 やっぱり俺の聞き間違えではないらしい。


 だとしたら、モリオンの体の皮を剥ぐということになる。

 さすがにそれはかわいそうではないだろうか.....。


「何を言うておるのじゃ?トカゲは脱皮しておるだけなのじゃ」

「だ、脱皮!?ドラゴンって脱皮するの!?」


 あれ?

 脱皮って、昆虫や爬虫類、両生類がするんじゃなかったのか?.....ドラゴンは爬虫類だっけ?


 しかし───。


「するでしょー(・ω・´*)」

「生物は皆するであろう。常識なのじゃ」

『ドラゴンは脱皮するのだ。アユムは知らなかったのだ?』


 俺が非常識なのか!?


 どうやらドラゴンが脱皮するのは常識らしい。

 いや、ドラゴンに限らず、生物は皆脱皮をするものらしい。


 人間も日焼けをしたら皮が剥けるが、それが脱皮にあたるのだとか.....。詭弁すぎないか?



 とりあえず、原因が脱皮の皮だと判明したので、みんなで剥いていく。


───ペリペリペリ


「楽しいねー!あーははははは( ´∀` )」

「妹のくせに姉に脱皮を手伝わせるとは.....。これだからトカゲは.....(ぶつぶつぶつ)」


「いや、ちょっと待て!なんでこんな簡単に剥けるんだ!?

 さっき俺が色々としたときはなんともなかったはずだぞ!?」


 あまりにも簡単に剥けてしまうことに納得がいかない。

 掻いても、叩いても、殴っても、蹴っても、うんともすんともしなかったあの皮が、今ではゆで卵の殻のようにツルンッと簡単に剥けてしまっている。上手くは言えないが、物理的な法則とかそのへんどうなの!?


 しかし───。


「ふつーにむけるでしょー(・ω・´*)」

「剥けて当然であろう。主は何を言うておるのじゃ?」

『剥けるのだ。アユムは知らなかったのだ?』


 またしても俺がアウェイか!?


 もう何も言うまい。

 世界が、みんながおかしいのではなく、どうやら俺がおかしいらしい。


『ドラゴンは脱皮する』

『皮は掻いても、叩いても、殴っても、蹴ってもダメだが、簡単に剥くことはできる』


 この事実を真摯に受け止めて、これからの人生を過ごしていこうと思う。



 その後、とっぷりと日が暮れるまで俺達はモリオンの脱皮に付き合わされることになった。

 そしてそれが、この後大事件に繋がろうとは.....この時は露にも思いはしなかった───。



次回、本編『モリオンの挑戦』!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


~水切り勝負~


「ふぅ。皮もこんなところか?」

『アユム、お姉ちゃん、ありがとうなのだ!むずむずなくなったのだ!』

「それはよかった。.....ところで、この皮はどうするんだ?」

『いらないのだ。捨てるのだ』


捨てる.....。

異常な固さを誇るこの皮をそのまま捨てるのはもったいないような.....。


「いらないなら俺が貰っていいか?」

『別にいいのだ。なにに使うのだ?』

「ナイトさんへの贈り物だな。きっと喜ぶと思う」

『誰なのだ?』


紹介したろ.....。まぁ、いいか。


俺とモリオンがそんなやり取りをしている一方、アテナ達は───。


「コーンちゃーん!みてみてー( ´∀` )」


───ヒュッ!

───ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン


俗に言う、『水切り』または『石投げ』で遊んでいた。

この場合、投げているのはモリオンの皮だが.....。まぁ、自分で取った分は自由にしてもいいだろう。


それにしても.....。


「なんの!姉さまには負けぬ!」


───ヒュッ!

───ポン、ポン、ポン


「次は私の番ねーo(≧∇≦)o」


───ヒュッ!

───ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン


「先程のは練習!今度こそ本番なのじゃ!」


───ヒュッ!

───ポン、ポン


アテナの水切りの上手さが異常だ。

俺もやってみたが、アテナほど上手くはできなかった。


「アテナ、すごいな!(ぽふっ。ぽんぽん)」

「にへへー(*´∀`*)ありがとー(にぱー☆)」

「ぐ、ぐぬぬ!わ、妾のほうが力があるというのに.....」

「コツがあるんだよー。力じゃないのー(o゜ω゜o)」


「本当にそういうしょーもない知識だけは豊富だよな」

「智慧の女神だからねー(`・ω・´) シャキーン!!」

「誉めてない、誉めてない」

「でもー、仮にコツ覚えてもー、私にはかてないけどねー!」


な.....んだと!?

アテナの挑発に闘志を燃やす俺とドール。


しかし、結果は.....。


「ねー!言ったでしょー ┐(´ー`)┌」

「お、おかしいだろ!?なぜ勝てない!?」

「ぐぬぬぬぬぬ。さ、さすがは女神様ということか.....。理不尽なのじゃ!」

「そーいうことー!あーははははは( ´∀` )」


『アユム!アユム!』

「どうした?」

『我もやってみたいのだ!』

「いや~、さすがにモリオンは無理だろう。水切りというか水を裂きそうだし」


『なんでなのだ!我もやりたいのだ!』

「モーちゃんでも私にはかーてないよー!あーははははは( ´∀` )」

「おい。バカ、よせ。モリオンを煽るな」

『我は竜族なのだ!お姉ちゃんには負けないのだ!見てるのだ!』


そして、モリオンから放たれたブレス。

そう、なぜか放たれたのはブレスだった。


「いやいやいやいやいや。ブレスじゃ、水切りですらないし」

「モーちゃん、水切り知らないのー(。´・ω・)?」

『みずきりってなんなのだ?』

「の、のぅ、主。これはちとまずいのではないか?」


ん?


ドールの指差す方向を見ると、物凄い勢いで、水を、魔物を切り裂いていくモリオンのブレス。

その勢いはとどまるところを知らない。


そして、遂には.....。


───ドガァァァァァアアアアアン!


海都ベルジュを囲う城壁の一部を木っ端微塵に吹き飛ばしてしまった。


「.....」

「(´・ω・`)」

「.....」

『.....ご、ごめんなさい.....なのだ』


はい、撤収!

バレなきゃOK!HAHAHA!!


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