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外伝 アテナとヘリオドール⑤

前回までのあらすじ


ナイトさんを旅に誘ってみた!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


1/19 世界観の世界編!に一部追記をしました。

    追記箇所は、『種族紹介』の人獣となります。


□□□□ ~ヘリオドールの嫉妬~ □□□□


 妾達一行は、現在とある人物のとある事情によってとある場所へとやってきている。

 そして、幾ばくかの時を経て、いま妾の目の前には5人の人間が勢揃いしている。


「じゃあ、俺は少し席を外すけど、後は任せても大丈夫か?」

「はーい!いってらっしゃーい( ´∀` )」

「うむ。後は任せよ」

「だ、だい、大丈夫でしゅ」


 主はそう言い残すと、このとある場所の主人と一緒に奥の部屋へと消えていった。


 すると───。


「!」


 明らかに部屋の空気が軽くなった。

 ドワーフもキョロキョロと辺りを気にしているあたり、妾の気のせいではないだろう。


 一方、姉さまはと言うと、


「セラフィー。お菓子食べさせてー( ´∀` )」

「.....姉さま?自分で食べよ」

「えーΣ(・ω・*ノ)ノ 」


 えーΣ(・ω・*ノ)ノではない。


 もはや何も言うことはない。

 姉さまには最初から何も期待してはいないのだから。


 とりあえず、姉さまは置いとくとして.....。


 妾がひしひしと感じるこの違和感は、緊張から解き放たれたというか気を張り詰める必要がなくなったというか.....。

 まるで「主やこのとある場所の主人が居なくなった以上飾る必要はない」と謂わんばかりに、あからさまに部屋の、人の雰囲気がガラッと変化した。


 現在この場にいるのは、妾と姉さま、ドワーフの3人と妾の目の前にいる5人の人間及びこのとある場所の主人に仕えているメイドらしき人物の計9名のみとなる。

 そうなると当然、雰囲気がガラッと変化したのは、妾の目の前にいる5人の人間とこのとある場所の主人に仕えているメイドらしき人物となる。


 その証拠に、


「.....ふ~ん。まぁまぁね」


 妾の目の前にいる5人の人間の一人が妾達を一瞥した後、そうつぶやいた。

 何が「まぁまぁ」なのかはわからないが.....。


 ただ、目の前にいる5人の人間がこうなる気持ちもわからなくはない。

 むしろ、主に後を託された身としては、5人の人間の本音を聞き出しやすいので好都合だ。


 では手始めに、5人の人間の興味を妾に向けさせることから始めよう。


「まずは「おめでとう」と言うておくのじゃ」

「「「「「?」」」」」


 よほど意外な言葉だったのか、5人の人間からの視線が集まる。

 出だしは好スタートだと言えよう。


「お主らは世界一優しい主人の眼鏡に適うたのじゃ。胸を張っても良い」

「「「「「.....」」」」」


 途端に数人の者からの興味が失われた。

 溜め息すら聞こえてくる。


 こんな境遇で胸を張れない気持ちや世界一優しい主人だと言われても信じられない気持ちは妾には痛い程よくわかる。

 仮に妾が逆の立場だったとしたら、やはり同じように興味を失うに相違ないだろう。


 だからこそ、奥の手を出すことにした。

 妾の言っていることが真実であるということを5人の人間に信じてもらう為に。


「妾の言うことが信じられぬと言うのなら、これを見よ」


 そう言って、


───ぴくぴくっ

───ふぁさふぁさ


 巧妙に隠していた耳と尾を5人の人間の前にさらけ出した。


 すると───。


「「「「「!!!」」」」」

「ヒ、ヒィィィ!?」


 一斉に驚く5人の人間と恐怖にも近い悲鳴を上げるメイドらしき人物。


 その後のメイドらしき人物の行動は素早く、あっという間に妾の目の前からお茶が消え失せた。

 獣人なんかにお茶を出したことが、もしこのとある場所の主人にでも知れようものなら大目玉を喰らうことは必定。それがこの世界の一般常識だからだ。


 ゆえに、このメイドらしき人物を咎める気は全くない。


 問題はメイドらしき人物ではなく、5人の人間だ。

 こちらは様々な反応を見せている。


 一人は驚いた後、再び、この世に絶望しきったような目と表情に戻ってしまった人間。(以下、A子)

 一人は驚いた後、喰い入るように目を輝かせ期待に満ちた表情でしきりに頷いている人間。(以下、B子)

 一人は驚いた後、腕組みをして、何やら思案に耽っている居丈高丈夫で筋骨隆々なエルフ。(以下、C子)

 一人は驚いた後、E子の背中に隠れつつも、羨望の眼差しで興味津々に見つめてくる猫の獣人。(以下、D子)

 一人は驚いた後、警戒しつつも幼いD子を抱き寄せ、まるで守っているように見える猫の獣人。(以下、E子)


 この5人の人間からは、まだまだ半信半疑といったところは見受けられるが、それでも妾の言ったことの半分は納得してもらえたように感じる。

 今はそれで十分。少しでも心を開いた上で、本心を聞かせて貰えたらいいのだから。


 早速、5人の人間から色々と聞き出すことにする。

 妾が最も聞いておきたいお題はこれだ。


「お主らは我が主に何を望む?」


 シンプルではあるが、こんな境遇の5人だからこそ、どうしてもそ聞いておきたい内容だ。

 端のA子から順繰りに答えさせる。


「.....別に何も」

「何もないと?」


 既に絶望しきっているような目と表情をしているA子からはおおよそ予想通りの答えが返ってきた。


「どういうことじゃ?妾を見ても何とも思わぬのか?」

「.....あなたはかわいいから当然」

「我が主は容姿で人を判断したりはせぬぞ?」

「.....そんな人はいない」


 その後も色々話してみるが、取り付く島もない状態。

 なんとなく分かっていたこととは言え、非常に残念。


 獣人である妾をこんなにも優遇してくれる主である。

 そこから少しでも生きる希望なり活力なりを見出だしてくれたら良かったのだが.....。


(はぁ.....。差し出された一条の光すらも自ら拒むようではものの役に立つまい)


 この瞬間、妾の中からA子が選択肢から消えた。


 こういう状況だから絶望するのは仕方がない。

 けれども、なんとかしようと足掻くことすらも放棄するような者に救いの手を差しのべる必要はない。



・・・。



 A子を視界から消した後、次はB子に質問の答えをさせてみた。


 ところが───。


「ねぇ、あなたの主人はお金持ちなの?今着ている服は新品でしょ?しかも高級品。ねぇ、どうなの?」

「.....いいから質問に答えんか」


 妾が尋ねた質問に答えないどころか余計な話をしてくる始末。

 どうやら先程の「.....ふ~ん。まぁまぁね」の発言は、妾の着ている服を見て、主の財力を推し量っていたようだ。


「融通の利かない子ね。これだから獣人は.....」

「.....答える気がないのじゃな?」


「はいはい。答えればいいんでしょ。そうね.....。

 あなたのような獣人にでもそこまでしてくれる主人なら別にいいわよ?」

「.....」


「そっちの子(※)には敵わないけど、あなたのような獣人すらも気に入るような主人ですもの。

 きっと私のことも厚遇してくれることは間違いないわ。.....これでいいかしら?獣・人・さん?」

「.....」                      (※)アテナのこと


 その後も、B子は妾が何も言わないことをいいことに言いたい放題。

 先程のA子とは違い、生きる活力や積極性に溢れているものの、今回の主旨には合わない人物だ。


 分かりきってはいることだが、念のためドワーフに確認を取るも『×』とのこと。

 とにかくこのB子は、自己中心的で種族差別が酷く、恐らくだが、人を見た目で判断するタイプだろう。


(ふん!いくら主の前でかわいこぶったところで、どうせ化けの皮が剥がれるだけじゃ!!)


 この瞬間、妾の中からB子が選択肢から消えた。


 そもそも、主を貶しているところが許せない。

 例え、主が何かの間違いでこのB子を選んだとしても妾が全力で阻止してやる。



・・・。



 A子に続いてB子も視界から消したところで、次はC子に回答させる。


「私は.....故郷に帰りたい」

「故郷?」


 何やら沈痛な面持ちで、そう語るC子。


 よほどの事情があるのだろう。

 しかし、冷たいようだが、妾には関係ないし興味もない。


「他に何を望むのじゃ?」

「え?」

「え?ではない。それ以外は何を望む?」

「う、う~ん.....」


 妾のあっさりとした対応に困惑気に腕組みをして考えるC子。

 どうやら、他は何も考えてはいなかったらしい。


(まぁ、特に問題も無さそうだし、良かろう)


 この瞬間、妾の中でC子は保留となった。


 したいこと、やりたいことなどは後から考えればいい。

 それよりもなによりも、健全で頑強な肉体と目指すべき目標が決まっていることが気に入った。



・・・。



 とりあえず、全員が視界から消えるようなことがなくなり、ホッと胸を撫で下ろす。

 そして、残すは後2人。


 と、その前に気になることがある。


「お主らは.....もしかして姉妹か?」

「うんっ!」

「.....(こくっ)」


 妾の問いに、幼いD子は元気よく返事をし、恐らく姉だと思われるE子は静かに頷いてみせた。


 二人とも、ピンッと立った耳に細長い尾、そして全身が体毛に覆われているところがそっくりだ。

 この二人は獣人であることは間違いない。ただ、妾のような普通の獣人とは少し異なる。

 この場合は獣人というよりも人獣と言ったほうが正しいかもしれない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 獣人・・・体のベースは人間で、耳や尾などが備わっている種族。見た目は人間そのもの。

 人獣・・・体のベースは動物で、二足歩行や人語を理解する種族。見た目は動物そのもの。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 だからだろうか───。


「ねこちゃんだー!かーわいいー(〃ω〃)」


 姉さまが先程からずっとうるさい。

 それに何やら興奮しているのも非常に腹立た.....、いや、鬱陶しい。


(もうっ!なんなのじゃ、姉さまは!!)


 そんな妾の様子に、


「コンちゃんどうしたのー?」

「なんでもないっ!」

「でもー、尻尾がー(・ω・´*)」

「!?」


 姉さまが気付いたようで、予想外な指摘をされてしまった。

 すぐさま尾を見てみると───。


───ふぁさふぁさふぁさふぁさふぁさ!


 勢いよく激しく振られ、そればかりか、姉さまの腕に何かを主張するかのようにバシバシと打ち付けている。


「.....」


 唖然、呆然、開いた口が塞がらない。

 指摘されて初めて気付いたが、無意識とはいえ、妾は何をしているのか.....。


(こ、これではまるで.....)


 そう思っていたら、姉さまから驚きの言葉が出てきた。


「もしかしてー」

「な、なんじゃ?」

「ねこちゃん達に嫉妬しちゃったのー?」

「は、はぁ!?な、なな、なにを言うておる!わ、妾が嫉妬などする訳がにゃかろう!?」


 認めたくはないものの、顔が上気していくのがわかる。

 それに上手く呂律が回らずに思わず噛んでしまう凡ミスも.....。


 そうなると、


「あー!かんだー!やっぱり嫉妬してるんだねー(にやにや)」

「し、してないと言うておろう!」

「安心してー!コンちゃんが一番だよー!ぎゅー(*´∀`*)」

「ひ、人前でやめんか!.....(にへらっ)」


 いくらダメな姉であろうと察したようで、みんなの見てる前で好意全快のぎゅーをされてしまった。

 妾は口では嫌がりつつも、姉さまのこのぎゅーには逆らえず、思わず口がにやけてしまう失態付き。


「いいこいいこー」

「こ、子供扱いはやめるのじゃ」


 振りほどこうと思えばいつでもできる。

 だが、敢えてそれはせず、姉さまのふかふかな胸に包まれ幸せに浸る。


「.....」

「コンちゃんはあまえんぼーさんだねー( ´∀` )」

「ふ、ふんっ!あ、姉ならたまには妹を甘やかすものなのじゃ!」

「いいこいいこー(*´∀`*)」


 とても恥ずかしい。

 しかし、久しぶりの姉さまの抱擁はやめられない。


 それに、誰にでも好かれる存在である姉さまの『一番である』という事実に満更ではないのも確かだ。



(あ~。姉さまのぎゅーには敵わぬのぅ~。この世の極楽浄土なのじゃ~)



 □□□□ ~候補決定。そして暗雲立ち込める~ □□□□


 みんなの前でシスコンぶりを発揮してしまった妾と姉さま。

 姉さまは全く気にしてはいないようだが、妾は穴があったら入りたい気分だ。恥ずかしすぎる!


 A子、B子を除く、周りの温かい視線が余計恥ずかしさを募るので早々に本題に戻る。


「お、お主は我が主に何を望む?」

「お腹いっぱいたべたい.....ニャ」


 .....ニャ?


 そう語るのはD子。

 指をくわえる仕草がなんとも幼く感じるが、人を優しい気分にさせる笑顔がとてもかわいい。


「何が好きなのじゃ?猫だから魚か?」

「魚きらい.....ニャ。肉たべたい.....ニャ」

「なにゆえ魚が嫌いなのじゃ?おいしかろうに」

「骨いたい.....ニャ。いつもつまる.....ニャ」


 姉と思われるE子の背中で少しおどおどしているものの受け答えはしっかりとしている。


 それに、


───くぅぅううう


 先程からずっとお腹が鳴っているので、満足に食べられる環境ではないのだろう。

 つまり、『お腹いっぱい食べたい』という願いは『生きたい』という願いそのもので間違いない。


(少し幼さ過ぎる気もするが、幼いなら幼いなりにやれることがあるので良かろう)


 この瞬間、妾の中でD子は保留となった。


 幼いながらも生きたいと願うその気持ち。

 それに人を優しい気分にさせる笑顔は尊いものだ。この幼子、大人になったら化けるかもしれない。



・・・。



 さて、残すところはE子のみとなった。

 だが、このE子からはとにかく強い意思を感じる。


(こやつの謎の気迫.....。向いておる方向は違うものの妾に近い雰囲気じゃな)


 もうこの時点で、E子は保留案件だ。

 それぐらいE子からは何かをひしひしと感じる。


 それに、D子を背中に隠し、姉としてひたすら妹を守り続けようとしているその姿に感動すら覚える。

 羨ましい。本当の姉妹とはこうあるべきだ。.....まぁ、姉さまのような姉も悪くはないが。


 既にE子は保留と決定したので、改めて確認する必要はないのだが、それでも興味があったので尋ねてみる。


「お主は我が主に何を望む?」

「.....い、妹を幸せにして欲しいにゃ」


 .....にゃ?


 よくわからないが、姉と妹で微妙に発音が違うらしい。

 どちらも語尾に独特の表現が付くのは変わらないが、姉のほうが自然な発音に対して、妹のほうはまるで無理しているような不自然でカタコトな発音になっている。


 とりあえず発音はいいとして、気に入らないことがある。


 それは───。


「それはお主の願いではなかろう」

「!?」


 E子の願いそのものがE子自身の願いではないことだ。

 E子が願ったものはD子自身の願いであって、E子のものではない。


 似ているようで似ていない、似て非なるものだ。

 妾が本当に聞きたいのはE子自身の願い。それをぶつけて欲しい。


「お主の本当の願いを言うてみよ」

「.....」

「妹の幸せを本当に望むのならば遠慮は不要。我が主はそれを叶えてくれる優しい主人じゃ」

「.....?」


 しばしの沈黙が続く。


 このE子、己の幸せよりもひたすら妹の幸せを願っていたらしい。

 だからか、こんな境遇だから仕方がないとは言え、自分自身にふさわしい願いが思い付かないようだ。


(妾が感じた謎の気迫の正体は、愚直なまでの妹愛ということか.....)


 それはそれでいいと思う。

 美しい姉妹愛、羨ましい姉妹愛だと思う。

 

 だからこそ、やきもきしてしまう。

 そこまで妹の幸せを願うのなら、どうして自分自身の願いが思い付かないのか.....。


「.....本当にないのじゃな?」

「.....」


 E子からの返事はない。

 正直、少しイライラしてきた。


 E子のD子を想う気持ちは素晴らしいものだが、結局は独りよがりだったようだ。

 所詮は下らない自己犠牲愛に過ぎなかった。


 妾はそういう『自己を犠牲にしてでも』みたいな考え方は好きにはなれないし、理解したいとも思えない。

 現に、いくら生き返ったとは言え、それで主を一度死なせているのでなおさらだ。


「もう一度問う。本当にないのじゃな?」

「.....」


 イライラ。イライラ。


「.....本当にないのじゃな!」

「にゃ!?.....い、妹にいっぱい食べさせて欲しいにゃ?」


「違うっ!!」


───バンッ!


「にゃにゃ!?」

「.....(はむはむ)お菓子はおいしー.....ふぇ!?Σ(・ω・*ノ)ノ」


 妾が目の前のテーブルを叩いたことに驚くE子とついでに姉さま。

 

 いまだ一向に答えにたどり着かないE子に急速に関心が削がれていく。

 そこまで自分自身を犠牲にしたいと言うのなら、お望み通り、その自己犠牲愛を叶えてあげよう。


 妾は一度保留にした案件を解除し、E子を視界から消そうと思ったその時───。


「コンちゃん、めーーーーーヽ(`Д´#)ノ」

「い、いきなりなんじゃ!?」


 突如、姉さまが怒りだした。

 

 訳がわからない。

 大人しくお菓子でも食べていればいいのに.....。


 だが姉さまは、


「ねこちゃんをいじめないのー!」

「はぁ?」


 どうやら妾がE子を虐めているように見えているらしくて、それで怒っているらしい。

 と言うよりも、姉さまは今までの話を聞いてはいなかったのだろうか。.....いや、姉さまのことだから聞いてはいなかったのだろう。


 そんなダメな姉にほとほと呆れていたら、


「ねこちゃん、ねこちゃん。おいでおいでー( ´∀` )」

「「?」」


 姉さまは勝手にD子とE子を手招きして呼び始めた。

 二人とも訳がわからないといった表情をしているものの、素直に姉さまの手招きに応じて側まで寄る。


 すると───。


「ぎゅー!」

「「!?」」

「ねこちゃん達はもっふもふだねー!あーははははは( ´∀` )」


「何をするかと思えばそんなことかっ!」


 姉さまは唐突にD子とE子にめいっぱいのぎゅー。

 妾は思わず、ずっこけそうになってしまった。


(羨ましい.....じゃなくて!この姉は本当にどうしようもない。一体なにをしたいのか.....)


 そう思っていたら、姉さまから意外な言葉が飛び出してきた。


「コンちゃんもー、ぎゅー( ´∀` )」

「や、やめんか!」


「コンちゃんももふもふー!きーもちー!

 ねぇー、コンちゃんはしあわせー?私はしあわせだよー!」

「む?.....ま、まぁ、悪い気はせんの」


「うんうんー。だよねー。

 じゃー、ねこちゃん達はいっしょにいてしあわせー?」

「!!」


 こ、この姉は.....。


 甘いというか、ただの天然なのか。

 こういうところは主に少し似ているような気がする。

 それに姉さまは話を聞いていないようで、実は聞いていたということだろう。喰えない姉だ。


 当然、姉さまが意図したことはE子にも伝わったようで───。


「最後に問う。お主は我が主に何を望む?」

「妹と一緒にいたいにゃ!」


 今度は少しも躊躇うことなく、勢いよくハッキリと返事をしてきた。


 これこそが妾の望んだ答えだ。

 妹の幸せを願うならば、それを見届ける必要がある。


 そうなれば、自ずと答えは出るようなものだ。

 とは言え、本当はE子自身に気付いてもらいたかったのだが.....。


「コンちゃんはいじわるだよねー(・ω・´*)」

「.....」


(うるさい!うるさい!!本当に喰えない姉なのじゃ)



 何はともあれ、E子を視界から消さずに済んだので、ここで妾からE子に助言を一つ。


「覚えておくが良い。

 妹の、.....人の幸せを望むのならば自分も幸せになる努力をせよ。

 自分が幸せにならないで、どうして人の幸せを願えるというのか。

 自分が幸せになることで、初めて人の幸せを心から願い、祝えるものなのじゃ」


 少なくとも妾はそうだった。

 そして、これからもずっとそうだろう。


 妾が幸せを望むように、主にも幸せになってほしい。

 それはつまり、妾が幸せになることで、主もきっと幸せになれるはずだ。.....いや、してみせる!


 妾と同じ境遇だからこそ、妹の幸せを願うE子には妾同様強い意志が必要なのだ。

 その意味を妾の助言から少しでも汲み取ってくれたのなら、同じ獣人の同胞としてこれ以上の喜びはない。


・・・。


 その後も色々と話した結果、やはり候補はC子、D子、E子の3人に絞られた。

 ドワーフもこの3人なら問題ないとのことなので聞き込みを終了する。


(妾の役目はここまでじゃな。後は主に託すのみ)


 そう一段落したところで、


「悪い。待たせた」


 噂をすればなんとやら、主がこのとある場所の主人とともに戻ってきた。


 素早く耳と尾を隠して自然を装う。

 別に隠す必要もないのだが、少しでも主の不利になるようなことはなるだけ避けたい。

 

 姉さまだけでも足手まといだというのに、この上、妾も主の足手まといになるなど言語道断だ。

 妾は主の奴隷として、主を立派に導かなければならないのだから。


(この想いはきっと主に届いているはずじゃ)


 そう思っていたら、


「む?」


 主の回りをちょこまかと走り回る黒い影。

 どこかで見た記憶もあるが、そんなことは今はどうでもいい。


「いいか?人が話している時は大人しくしているんだぞ?」

「───?」

「そうだ。できるな?」

「───!」


「.....」


 その影は妾の主に馴れ馴れしく接するだけでも腹立たしいのに、


「うわっと!?.....危ないな。そこがいいのか?」

「───!」

「わかった、わかった。じゃあ、そこで大人しくしてろ?」

「───!」


「.....」


 こともあろうに妾の場所さえ占拠する有り様。ゆ、許せぬっ!!


「それでどうだった?ある程度絞れそうか?」

「.....」

「ドール?」


───ブチッ!


 堪忍袋の緒が切れた。


 妾に仕事を押し付けて、主は逢い引きとはいいご身分。

 しかも、隠れてこそこそいちゃつくならまだしも、妾の前で堂々といちゃつくとは何事かっ!


 だから妾は吼えた。



「そんなことはどうでもよいっ!その(ドちび)はなんなのじゃああああああああああ!!」



次回、本編『善後策!』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


~優しさと融通~


「お菓子はおいしーねー( ´∀` )」

「姉さま、うるさい。静かに食べんか」

「ぶー(´-ε -`)コンちゃんうるさーい」

「うるさいのは姉さまじゃ」


───くぅぅううう


「んー(。´・ω・)? 」

「む?」

「.....お腹すいた.....ニャ」

「こ、こらっ!後でお姉ちゃんの分のご飯あげるから静かにするにゃ!」


───くぅぅううう

───くぅぅううう


「あっ.....」

「おねえちゃんのお腹の虫さんもないてる.....ニャ」

「(´・ω・`)」

「.....(ぐぬぬ。同胞であるし、なんとかしてあげたいが.....)」


「コンちゃーん」

「ど、どうしたのじゃ?」

「ねこちゃん達にお菓子あげちゃだめー?r(・ω・`;)」

「.....主に「ダメだ」と言われたであろう?」


「えー(´;ω;`)」

「せめて主が戻ってきてから確認せよ」

「.....」

「.....姉さま?(珍しい.....。あのやかましい姉さまが黙っておるだと!?)」


───くぅぅううう

───くぅぅううう

───くぅぅううう

───くぅぅううう


「やっぱりむりー!」

「ね、姉さま!?」

「ねこちゃん達おいでー( ´∀` )」

「ニャ!?」「にゃ!?」


「ちょ!?姉さま!?さすがにそれはマズいのじゃ!!」

「うるさーいヽ(`Д´#)ノ」

「うるさいってそんな横暴な.....。主に叱られても知らぬぞ?」

「だいじょぶだもーん!私の歩ならきっとわかってくれるもーん!」


なにが私の歩じゃ、図々しい!

妾の主だと何度も言うておろう!!


「おいでおいでー」

「いいの.....ニャ?(ちらっ)」

「.....いいのにゃ?(ちらっ)」

「はぁ.....。好きにするが良い。妾は何も知らぬ。何も見てはおらぬ」


主の命令は絶対ではあるが、たまにはこういうのも悪くはあるまい。但し!同胞に限る!!


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