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第138歩目 はじめての指摘!

前回までのあらすじ


時尾夫妻はアテナのおかげで子作りに励んでいるそうです!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


1/16 第137歩目の次回告知を変更しました。

変更前『はじめての別れの挨拶!④』 → 変更後『はじめての指摘!』


また、今話は少し長くなってしまったので、分割することにしました。

□□□□ ~ドールからの指摘~ □□□□


サキと時尾夫妻への別れの挨拶を済ませた翌日。

俺はお世話になった残り最後の人に今後の進退を尋ねるべく、とある場所へと向かっていた。


「これからどこに行くのじゃ?」

「ナイトさんのお店」

「旅の餞別をもらいに行くんだよねー( ´∀` )」

「図々しいな!?」


いや、ナイトさんなら贈ってきそうではあるが.....。

ただ、あくまで今回は旅に出ることの報告とナイトさんの今後についての相談が主目的だ。


しかし、


「今後.....のぅ」


ドールが疑惑の眼差しを向けてくる。

それは、まるで俺の心を見透かそうとしてくるようで、どうにも居心地が悪い。


「な、なんだよ?お世話になっているんだから当然だろ」

「前々から思っておったのじゃが、主はドワーフに対して少し過保護過ぎぬか?」


いや、過保護って.....。


困っている時はお互い様。

助けられる時間と労力があるのなら、積極的に助け合っていくべきだと思う。


それにナイトさんの場合は.....。


「ドールも知っているだろ?ナイトさんは吃音の影響で人とのコミュニケーションが.....」

「それじゃ。主はいつもそれを言うの。

 主からすれば親切のつもりなのであろうが、一体いつまでその親切を続けるつもりなのじゃ?」

「!?」


「ドワーフもいい大人なのじゃぞ?いつまで主は面倒を見るつもりなのじゃ?

 ドワーフの病には同情するが、それでもいつかは自立せねばならぬものなのじゃ」

「.....」


ぐうの音も出ないとはこのことだ。

まさか12歳の子に説教されるとは思わなかった。


いや、ドールの今までの人生を鑑みれば、俺よりも人生における経験値がずっと高いのだから当然といえば当然か。

『年月が人を形作るのではなく経験が人を形作る』最たる例かもしれない。


「主に問う」

「なんだ?」

「ドワーフをどうしたいのじゃ?」

「どう.....とは?」


ドールの質問の意図がよくわからない。

俺としては、ナイトさんにどうしたいのかを尋ねた上で、それを手伝うだけなのだが.....。


だが、ドールが知りたかったことはそういうことではないらしい。


「違う。妾が知りたいのは「主は今後、ドワーフをどうするつもりなのか」ということじゃ」

「今後?」

「はぁ.....。隠しているつもりなのか自覚していないだけなのかは知らぬが、それでは妾には通用せぬぞ?」

「?」


ますます持って、ドールが何を言っているのかよくわからない。


別に何も隠してはいないのだが.....。

それに、微妙に鈍感扱いされているような気がしなくもないのは納得できない。


「主は建前上、ドワーフに進退を尋ねると言うておるが.....。

 正確には違う。本心は付いてくるように説得するつもりなのであろう?」

「!!!」


ドールからの鋭い指摘に、思わず息を飲んでしまった。

何度も「違う」と否定の言葉を発そうとするも言葉にならない。


ドールに指摘されるまでは、確かにナイトさんに今後の進退を尋ね、その上でお手伝いするつもりだけでいたのは事実だ。一緒に来るように説得する気なんてさらさらなかった。


しかし、本心はどうだ?


ドールが指摘したように、一緒に付いてくるように説得してしまいそうな俺がいる。

いや、悩んでいるナイトさんを目の前にしたら、確実に説得しようと試みるだろう。


「どうじゃ?間違ってはおらぬであろう?」

「.....」


俺よりも俺の心を知るドール。


末恐ろしい12歳だ。

だが、めっちゃ頼りになる。


(これで美少女過ぎなかったらなぁ.....。惜しい!)



そんなバカなことを考えつつも、ドールの詰問は続く。


「改めて問う。主はドワーフをどうしたいのじゃ?」

「.....」

「妾の見たところ、主もドワーフも互いに依存しておる」

「.....」


それはなんとなくわかる。

ナイトさんと会うたびに、ナイトさんから信頼以上の気持ちがひしひしと伝わってきているのだから。


「ゆえに、主に説得されればドワーフは付いてくるであろう。それは別に構わぬ。構わぬのだが.....。

 結局、主はどうするつもりなのじゃ?それこそ、一生ドワーフの面倒でも見るつもりでおるのか?

 そこのところをハッキリせい、と妾は言うておるのじゃ」


ドールは今回の件について尋ねているのではなく、今後必ず訪れる未来(問題)について尋ねてきている。

そして「今回の件をきっかけに気持ちの整理をしろ」と促しているのだろう。.....大人だなぁ。


「俺は.....」


わかってもらえるかどうかは不明だが、素直な気持ちを吐露した。


正直な話、『放っておけない』というのが本音だ。

仕事に誠実で真面目、常に一生懸命なのに、吃音のせいで不器用。

自画自賛するつもりはないが、まるで俺を見ているようで放ってはおけない。


そこにあるのは、どちらかと言うと、好意よりかは親近感だろう。


だから、可能な限り手伝えることは手伝ってあげたい。

俺はいいとしても、ナイトさんはもっと評価されるべき魅力的な女性なのだから。


「ふむ。.....つまり、ドワーフが人として自立できるまで面倒を見るつもりであると?」

「う、う~ん.....」


そうハッキリ言われてしまうと、「その通りだ」と頷くことはできない。


自立できるまで面倒を見るということは、つまりナイトさんの人生そのものを俺が預かるに等しい。

言うなれば、ナイトさんとともに人生を歩むことになる。


正直なところ、そこまでの覚悟も無ければ想いも無い。

それに、一緒に歩むならニケさんがいい。


もう一度言うが、ナイトさんにあるのは好意というよりも親近感だからだ。


「別に今すぐ結論を出せとは言わぬ。

 ただ、いずれは考えねばならぬこと。それだけは留意しておくことじゃな」

「そう.....だな。ありがとう、ドール」


───ぽふっ。ぽんぽん

───ビクッ!


素直に感謝するつもりでぽんぽんするも、ドールは体を硬直させた。やべっ!


「す、すまん」

「い、いきなりするのはやめんかっ!」


そうだった。

ドールは男性恐怖症だったんだ。


改めて、ドールに尋ねる。


「尻尾触ってもいいか?」

「うむ。それならば良かろう」


───もふもふ


「ありがとな?情けない主人だが、これからもよろしく頼む」

「くふふ。安心せい!妾がおる限り大船に乗った気でいるが良い!!」


尻尾をもふもふされたドールは、尻尾を嬉しそうにたなびかせながら、両手を口にあてる仕草でかわいく微笑んだ。かわいい。



(そうだよな。ドールが言った通り、ナイトさんの件はしっかり考えないといけないよな)



・・・。



と、ここで気を引き締めていたら、


「ねぇーねぇー」


ここまで珍しく大人しくしていたアテナが口を開いてきた。


「どうした?」

「セラフィのことなんだけどさー」


どうやら、ナイトさんの件で何か物申したいらしい。

参考になるとは思えないが、一応聞いてあげよう。無視して拗ねられたらめんどくさいし。


「なんだ?言ってみろ」

「悩む必要なくなーい(。´・ω・)?」


「どういうことだ?」

「歩はセラフィのこと好きなんでしょー?」


「まぁ.....そうだな。嫌いではない」

「なら一緒にいればいいじゃなーい( ´∀` )」


「「.....」」


俺もドールも呆れて物が言えない。

今さら過ぎることをここでまたぶり返してくるとは.....。


やはり参考にはならなかった。

所詮、アテナということか。


だが、


「はぁ.....。そんな簡単なことじゃないんだよ」

「えー?簡単なことだよー(´-ε -`)」


アテナがなおも喰い下がる。


いつもテキトーなアテナにしては珍しい。

普段なら、喰い下がるどころかすぐに飽きてしまうのに。


と言うことは.....。


いつものおバカなアテナではなく、俺が一目置く智慧の女神アテナとして何か言いたいということだろうか。

俺が困っている時のみひょっこりと顔を覗かせ、そして見事なアドバイスを披露して去っていく俺の救世主だ。


これは期待が高まる。

アテナの助言がきっかけで何かが変わるかもしれない。


俺は高鳴る鼓動を懸命に抑えつつ、智慧の女神アテナに助言を求めた。


「どう簡単だって言うんだ?」


「歩はセラフィの助けになってあげたいんだよねー?」

「そうだな」


「それにー、歩はセラフィのことが好きなんだよねー?」

「まぁ.....そうだな」


「なら結婚しちゃえばいいじゃなーい!」

「「はぁ!?」」


アテナの意外な結論に、俺とドールの驚きの声が重なった。

そして、あまりにも下らないその答えにあっけらかんとなってしまった。


智慧の女神としての答えに期待していただけに失望感はひとしおだ。


「好きなら結婚できるでしょー( ´∀` )

 結婚すれば一緒に居れるしー、助けにもなれるんだよー!ほらー、簡単でしょー!!」

「.....」


どう?さすが私でしょ?みたいなドヤ顔で胸を張っているアテナ。

胸を張った際、その大きなおっぱいがぷるんっと揺れるも、俺の視界にはほんの少ししか入らなかった。


それぐらい俺はアテナに呆れていた。

それぐらい俺はアテナに失望していた。

それぐらい俺はアテナに裏切られた気分になっていた。


だから、


「な~にが「ほらー、簡単でしょー!!」だ!?くそ駄女神!そんな簡単に結婚なんてできるかっ!!」

「ふええええん(´;ω;`)なーんでー!?好き同士なら結婚できるんでしょー!?」


俺はアテナのもちもちぷるぷるな頬に手をかけ、おもいっきりつねった。

バカが喘ぐも無視、無視。


(本当、期待して損したわっ!)



結局、ナイトさんの件は一旦保留にして、泣き喚くバカを引きずりながら、俺はナイトさんのお店へと向かうことにした。




次回、本編『はじめての別れの挨拶!④』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


~好きなら結婚できるって言ったよね!~


「ぶー(´-ε -`)」

「.....何をそんなに拗ねてんだよ?」

「歩が私に嘘ついたからー」

「はぁ?嘘?嘘なんて言ってないぞ?」


「言ったよー。「結婚は好き同士がするもの」だってー」

「その通りだが?嘘でもなんでもないぞ?」

「ならー、なんでさっきは怒ったのー?」

「さっき?.....あぁ、ナイトさんの件のことか?」


まだ根に持ってるのか.....。

と言うよりも、嘘を付かれたことがショックなのか?


「そーそー。歩が嘘じゃないって言うならー、私は何も間違ってないじゃーん(´・ω・`)」

「う.....」

「嘘ついたのー?」

「う、嘘じゃない」


「じゃー、なんでー?」

「そ、それはだな.....」

「それはー?」


「た、例えばこうだ!アテナはドールのことが好きだろ?」

「うんー!大好きー(*´∀`*)」

「うんうん。そして、な"ーのことも好きだろ?」

「うんー!大好きー(*´∀`*)」


「そうだろ。そうだろ。.....でも、ドールの好きとな"ーの好きは意味合いが違うだろ?」

「ううんー。一緒だよー(・ω・´*)」

「だろ?俺が言いたいのはそういう.....え!?一緒なの!?」

「一緒だよー?コンちゃんもな"ーちゃんもだーい好きー!」


「いやいやいや。人に対する好きとペットに対する好きは違うもんだろ?」

「なにがちがうのー?私はコンちゃんもな"ーちゃんも大好きだけどー?」

「マ、マジか.....。(分け隔てなく是全て平等に愛す。これが本当の神の愛とでもいうのか!?)」

「歩はなにが言いたいのー(。´・ω・)?」

「えっと.....」


「嘘ー?嘘ついたのー?ヽ(`Д´#)ノ」

「い、いや、違うぞ!断じて嘘は付いてない!!」

「じゃー、どういうことか説明してー」

「そ、それは.....」


ええい!ままよっ!!


「俺には結婚したい好きと結婚したくない好きがあるんだよ」

「あー!なるほどー!」

「ふぅ~。(バカな子で助かった)」

「じゃー、私は結婚したい方の好きなんだねー(*´∀`*)」


え?ナンデソウナッタ?


「結婚してくれるって言ったもんねーo(≧∇≦)o」

「いや、俺は考えさせてくれって.....」

「あっ!コーンちゃーん!!きいてきいてー!歩が私を「結婚したいほど好き」だってー!!」

「な、なんじゃと!?主!真かっ!?」


あぁ.....。どんどんカオスな状況に.....。


でも、結果的には、アテナに嘘を付いたと思われなくて本当に良かった。

結婚するかどうかは置いといて。


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