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第136歩目 はじめての別れの挨拶!②

前回までのあらすじ


お世話になったコシーネさんに別れの挨拶をした!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【今話についての注意点】


今話は別れの挨拶『星空咲音編』となります。

星空咲音が不愉快だ!という方や不愉快な気分になりたくない!という方は読み飛ばしてください。

後書きにて、今話の簡単なまとめみたいなものを記載しますので、そちらをお読みくださいますようお願い致します。


今話の星空咲音もキレッキレな仕事ぶりで、大満足して帰られました(笑)


それではよろしくお願い致します。

 □□□□ ~今後の予定~ □□□□


 海都ベルジュに向けての旅支度を始めて二日目。

 結局、昨日はドールの買い物で時間が潰れてしまったので、再度旅に必要なものを揃えつつ、順々に別れの挨拶を済ませていこうと思う。


 コシーネさんには挨拶済みなので、残るは時尾夫妻とナイトさん、それにサキぐらいだろうか。


「勇者様 (※)はいらぬのではないか?別に主は仲良くはなかろう?」   (※)サキのこと

「そうもいかないだろ。俺は良くても、ドールは世話になったんだからさ」


 ドールがとても嫌そうな表情で、ぐぬぬ、と唸っている。

 サキのところにお泊まりして以降、どうやらサキに苦手意識を持っているようだ。まぁ、頑張れ!


 予定としては、まずサキに軽く別れの挨拶をし、その後時尾夫妻にしようと思っている。

 サキはどうでもいいのだが、時尾さんは異世界でできた始めての友人ということもあり、今夜酒を酌み交わしながらじっくりと語り合うつもりだ。


 そして翌日、ナイトさんのお店に出向き、今後について話し合おうと思う。

 このまま王都に滞在するつもりならいいのだが、故郷であるガタツに戻るというのなら、やはり護衛が必要となるだろう。その時は引き受けるつもりだ。ナイトさんにはお世話になりっぱなしなのでそれぐらいお安いご用だ。


「えー。それだとすぐにいけないじゃーん(´・ω・`)」

「黙れ。ほんの数ヶ月海都に行くのが遅れるだけだろ。

 そもそも、お前はいつも食っちゃ寝してるだけなんだから遅れても問題ないじゃねえか」


 ぶー垂れるアテナのわがままをガンとして撥ね付ける。

 ナイトさんにはどれだけお世話になったことか.....。こいつはちゃんと理解しているのか甚だ疑問だ。


「私はお世話になってないんだけどー(。´・ω・)?」

「はぁ!?嘘、、だろ!?斧とかバイトとか面倒見てもらったこととかいっぱいあるだろ!」

「頼んでないよー(・ω・´*)」

「斧は頼みましたー」


 犬も3日飼えば恩を忘れないというのにアテナときたら.....。

 いや、この鳥頭脳。まさにアテナクオリティーと言わざるを得ない。


「ちがうよー。セラフィが献上してくれたんだよー( ´∀` )」

「はぁ.....」


 女神ゆえに奉納品とでも言いたいのだろうか、この駄女神は。

 俺だったら、こんなやつに奉納するぐらいなら、たまちゃんやちゅんに貢いだほうがずっと建設的だと思う。


 もはやツッコムことすらバカらしくなってきたので、


───ぐにっ!


「いたーい!いたーいよー!ふええええええええええん(´;ω;`)」


 駄女神の頬をつねりながらサキの部屋へと赴くことにした。



 □□□□ ~アイドル(星空咲音)はいつだってアイドル(女王様)~ □□□□


「えぇ.....」


 溜め息も付きたくなるってもんだ。

 あまりの事の顛末に、俺自身に、そしてサキの傍若無人ぶりに嫌気が差す。


 どういうことか。

 それはほんの少し前まで遡る。


 ・・・。


 俺は当初の予定通り、サキに別れの挨拶をするために部屋を訪れたのだが入室を拒まれた。

 サキに、ではなく、ひと・える・いぬ子ちゃんに。.....まぁ、これはいつものことなので問題ない。


(べ、別に気にしてなんかいないんだからねっ!)


 その後、サキの一言で入室はできたものの、ひと・える・いぬ子ちゃんからの俺への侮蔑、嫌悪感、汚物を見るような無言の眼差しが凄く痛い。

 むしろ、ここまで嫌われているとなると逆に清々しくなる。


───ちらっ。


「見ないでください。気持ち悪い!ゴミに見られただけでも不愉快です!!」

「今ちら見しましたよね?キモッ!いい加減にしてください、この虫けら!!」

「ひぃぃぃぃぃ。お、汚物()のくせに見ないでください!汚らわしいっ!!」


 はぁ.....。清々しくなんてなる訳がないんだよなぁ。

 とりわけ、いぬ子ちゃんはかわいいだけに悲しくなる。


「ぁんたら、ぅっさぃ」

「「「はい!お姉様♡」」」


「.....」


 その誠意?愛情?のほんの一欠片、いや、ほんの一雫でもいいので俺に向けて欲しい。

 せめて罵倒はされないようにできないものか.....。無理なんだろうなぁ。


「んで?サキになんか用なん?」


 俺がひと・える・いぬ子ちゃんに対して気落ちしていると、サキが早々に切り出してきた。


 俺を早く追い出したいのだろう。

 ただサキの場合は、ひと・える・いぬ子ちゃんのように俺への嫌悪感から追い出したいのではなく、レッスンの邪魔になるからというのが大半の理由だ。.....とは言え、俺への嫌悪感が全く無い訳ではないだろうが。


 サキはくそ生意気なJKではあるが、アイドル業に関してはとても誠実だ。

 いや、アイドルだけにしか.....。いやいや、アイドルとかわいい女の子に関しては、と言うべきか。

 だから、レッスンは物凄く真面目らしい。とは言え、ドールからの又聞きでしかないけど。


 そんなサキに旅に出る旨を話したところ、


「ぉせぇっつーの。待たせすぎっしょ」


 まるで、やれやれだぜ、とでも言いたげな呆れた表情でよくわからない返事をしてきた。

 嫌な予感がする。嫌な汗が背中を伝う。


 非常に聞きたくはないが、サキにどういうことかを尋ねてみる。


「ど、どういう意味だ?」

「ぉっさん、ボケるの早くね?ぉっさんはサキのスポンサーだって前言ったっしょ」

「いやいや。そもそも俺はスポンサーなんかじゃ.....」

「ぅっせぇつーの。ぉっさんの意見とか聞ぃてねーし。そも、ぉっさんの意見とかどぅでもぃぃっての」


 こ、この小娘がっ!!


 ガツンッ!と言ってやろうかと思ったが、ここは大人の余裕で我慢、我慢。

 いちいちDQNと言い合っていても何も解決しない。下手したら、ぶん殴られて失神させられてしまうのがオチだ。サキにはその『力』があり、ここは法で守られている日本ではないのだから。


(ま、まぁ、金だけむしり取られるのなら別にいいか。

 これでこいつともおさらばできることを考えたら安いものだ。はぁ.....)


 めんどくさいことは金で解決。

 いつの世も大人とは汚いものだ。小金持ちでよかった~!


 そう考えていたら、


「ぃつ出発するん?」

「ん?2日後だけど?」

「ちっ」


 お、おまっ!?

 それは何に対しての舌打ちだよ!?


 サキがまるで、こいつ使えねー、みたいな表情であからさまに舌打ちをしてきた。

 いや、違った。語弊があったようだ。


「ぉっさんさー、そぅぃぅことはもっと早く言ぇっつーの。

 ぃぃ年してゎかんねーとかマジぁりぇんてぃー。ぉっさんのくせに使ぇなさすぎっしょ」


「これだから社会の最底辺は.....。まさにゴミがお似合いですね」

「一寸の虫にも五分の魂と言いますが、虫けらには必要無いみたいですね。くすくすくす(嘲笑)」

「所詮、男なんてこんなものですよね。あるのは下心のみ。女性に対しての誠意、気遣いなんてまるで無し!」


「.....」


 サキからは実際に、使えない、と言われてしまった。うぐぐっ!

 そして、呆れているサキに呼応するかのように哄笑してくるひと・える・いぬ子ちゃん。


 本当、こいつらと話していると頭痛がしてくる。

 頭痛が痛いとかかわいいものだ。



 さて、五分の魂は否定されてしまったので、一部の勇気を振り絞って、サキに真意を尋ねてみる。

 金を渡せばいいだけのことに、どうしてここまで罵倒されてしまったのかが全くわからない。


 すると、


「はぁ?次のライヴ場所が海都ってことっしょ?

 仕事遅すぎだって言ってんの。ぉ・ゎ・か・り?ぉっさん。.....あっ!金ゎょこせーw」

「え.....」


 想定外の答えが返ってきて、唖然としてしまった。

 俺は別れの挨拶をしに来たのだが、どうやら営業報告をしに来たと思われているらしい。


「やりましたね!お姉様。今度は海都ですって!海上ライヴとか楽しみです!!」

「おめでとうございます、お姉様。私は早速触れ込みに行ってこようと思います」

「海上か~。お姉様?酔ったりしないですかね?私心配です.....(ちらちらっ)」


「ぁんたらもマジ頼んだよ?ぉっさんのょぅにヘマしたら許さなぃかんね?」

「「「お任せください!お姉様♡」」」


「.....」


 いやいやいや。ヘマってなんだよ!?

 仮に営業だったとしても、仕事を取ってきたのにその言いぐさはないだろ!


 と言うよりも、これは完全否定しておかないとマズい流れなのではないだろうか。

 このままだと、最悪サキ達と一緒に旅に出ることになってしまう。


「な、なんか勘違いしているようだが.....」

「ぅっせぇつーの。つーか、ぃつまでぃんの?

 あっ!ドールちゃんゎゅっくりしてぃってね♡」


「.....え?」

「ぇ?じゃねーし。

 手ぶらなぉっさんと違って、サキはピッチで準備しねーとぃけなぃんだからさっさと出てけょ」


「い、いや、だからその.....」

「はぁ.....。バカだけでも救ゎれねーってのに気も遣ぇねーとかマジ終ゎってんしょ。

 ぉっさんさー。終ゎるのゎ頭だけにしとけょなーwマジぉっかれさーんwww」


 こ、こんのくそガキがっ!!


(.....はっ!いかんいかん。

 所詮は子供の戯れ言だ。ムキになるなんて大人げない。俺は大人、俺は大人)


 額のこめかみがピクピクと反応してはいるものの、俺は至って冷静だ。

 DQNに構うだけ損、損。普通の大人は自ら危険には首を突っ込まないものだ。賢い大人だけが突っ込めばいい。


 結局、急いで誤解を解こうとした結果、サキには思いっきり罵倒され、仕舞いには頭をペシペシと叩かれた挙げ句に部屋から追い出されてしまった。勢いに押され、言いたいことも全く言えずに.....。とほほ。



 そんなしょんぼりしている俺にアテナとドールがぽつりっと一言。


「歩。一本いっとくー(。´・ω・)?」

「.....」


 アテナから手渡されたのは異世界版の胃腸薬だった。うん、それは違うよね.....。

 ナイトさんと晩酌するようになってから常備するようになった俺の必需品だ。


「主よ、ハゲでも良いではないか。ハゲであろうと主の価値は下がらぬ。

 むしろ髪を切る必要が無くなる分、ハゲは合理的でお得なのじゃ。まぁ、妾はせぬがな」

「.....」


 ドールから言い渡されたのはハゲの利点?だった。.....と言うか、ハゲハゲ連呼すんなっ!

 自分はしないと言い切っているのに人には勧めるとかこれ如何に。


 二人とも悪気がない上に、俺を思っての行動だから強く言えないのが辛いところだ。

 子供って時には残酷だよね.....。



 つまり、俺が何を言いたいかというと、『サキ達と一緒に旅に出ることになってしまった』ということだ。



(うわああああああああああ!

 どうしてこうなったああああああああああ!?)



 俺の苦難はまだまだ続く.....。




次回、本編『はじめての別れの挨拶!③』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【今話のまとめ】


星空咲音を始めとして、ひと・える・いぬ子ちゃんの好感度は相変わらず0に近い。



別れの挨拶をしに行ったが、海都にてライヴ公演の仕事を取ってきたと勘違いされてしまう。

(星空咲音は主人公のことを体のいいスポンサーだと思っている為)



違うと反論しようとするものの、仕事が遅い・使えない・気が利かないと罵倒された挙げ句にハゲ認定される。



アテナやドールからハゲまされるも、どこかズレている模様。



結局、星空咲音の勢いに押され、反論できずにそのまま部屋から追い出されてしまう。



つまり、星空咲音達とともに旅に出ることになってしまった。



以上です。


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