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外伝 はじめての計画!アテナとヘリオドール④

前回までのあらすじ


女神ニケ降臨!


side -ヘリオドール-


□□□□ ~意外と苦労人~ □□□□


主が慕う女神ニケ.....様が降臨されてきた。

確かに女神様というにふさわしい力がある。


アルテミス様の時とは違う力の奔流。いや、力の暴発とでもいうべきか。

ただそこに居るだけで、他者が生きることを許さない圧倒的、絶望的な暴力。


これまで良い印象を持っていなかった存在であるのに。

これまで嫌悪し続けてきた存在なのに。

そんな感情全てがものの見事にどこかに吹っ飛び、ただただ主の後ろで情けなく震えることしかできなかった。


何度も言うが、『力』という一点に於いては、まさに女神という名にふさわしい。


しかし.....。


なんだか見た目はあまりパッとはしない。少なくとも姉さま以下なのは間違いない。

そして以前、妾と姉さまは同格だと主が言ってくれたので、つまり妾以下ということにもなる。


非常に美しい訳でもなく、男が好きだと言うただの脂肪である乳も大きいという訳でもない。


(主は一体、ニケ.....様のどこに惚れたというのじゃ?.....純粋に力に惚れたのか?)


結局、主がニケ.....様に惚れた理由が全くわからないまま、妾は姉さまの面倒を任されてしまった。

明らかに主はニケ.....様と二人っきりになりたがっている。


妾としては、主とこんな不気味な存在を二人っきりになどさせたくはないのだが、


「ア、アテナを頼む」


妾の心配など歯牙にも欠けず、体のいい厄介払いをされてしまう始末。


(その言葉を使えば、妾がいつでも頷くと思ったら大間違いなのじゃ!)


納得できない気持ちは多々あるも、ただ、主が姉さまを心配しているのもこれまた事実。

主の頼みでもあることだし、やむを得ず引き受けることにした。



・・・。



さて、なんやかんやありながらも主がニケ.....様を連れ添って出掛けていってしまった。

それはいい、それはいいのだが.....。


(だらしない顔をするでない!)


いくら慕っているとは言え、デレデレしすぎな気がする。

妾には一度もあんな顔をしたことがないくせに!.....ぐぬぬっ。


一方、この場に取り残された妾達はというと、


「な"ーちゃん、お散歩いくよー( ´∀` )」

「な"ー?」

「おきておきてー!」

「な"ー」


姉さまが散歩に誘うも、一向にその気を見せる様子がない猫。

いや、むしろ「眠らせろ」とでも謂わんばかりに、そっぽを向いているような気もする。


「んー。起きないねーr(・ω・`;)」

「いや、猫はこんなものであろう」

「そうなのー?でもー、お散歩したーい(´・ω・`)」

「主が言っておったぞ?抱っこすればいいのでは、とな」


果たして、それを散歩というのかは不明だ。

と言うよりも、そもそもこの猫は寝るつもりなら何しにやってきたのだろう.....。


しかし、姉さまの反応は違ったようで、


「なるほどー!さすが私の歩だねー!かしこーい( ´∀` )」


何か戯れ言を吐きながらも嬉々としていた。

主は妾のものだと何度言ったらわかるのか.....。いや、言ったことはないけれど。


姉さまの図々しさにほとほと呆れていたら、


「じゃー、コンちゃんお願いねー(o゜ω゜o)」

「.....は?なんじゃと?」


よくわからないことを言ってきた。


「.....姉さまが散歩をしたいのであろう?なぜ妾が抱っこせねばならぬのじゃ?」

「んー。私ねー、ティーカップより重いものもてないんだよねーr(・ω・`;)」


はぁ?


いや、そう言えば、姉さまが『物を持っている』光景を今の今まで見たことがない。

食べ物などは主やドワーフ、ゼオライトが食べさせているし.....。


「.....じょ、冗談であろう?」

「ほんとーだよー(・ω・´*)」


しかし、それだと気になることがある。


「確か.....、姉さまは斧を一応使えるのであろう?それならば.....」

「それねー。セラフィに作ってもらたんだけどー、ティーカップよりも軽いんだよー!」


いやいやいや。

さすがに斧がティーカップよりも軽いとかは有り得ない。


そう思ったので、持たせてもらったところ、


「.....」


まるで綿でも掬い上げているかのように持ち上がる巨大な斧。

見た目の大きさと物理法則をまるで無視したかのような斧に思わず唖然としてしまった。


「すごいでしょー(〃ω〃)」

「.....すごいのはドワーフであって、姉さまではなかろう」

「だってー、私が注文したんだもーん(´-ε -`)」


ぶー垂れながら、ただ注文しただけなのを我が功のように誇る姉さまは相変わらずだ。

いや、むしろ姉さまらしすぎて、本当に姉さまがすごいように思えてくるからタチが悪い。


「とりあえず抱っこしてみよ。もしかしたら、ティーカップよりも軽いかもしれぬであろう?」

「えー?」

「な"ー?」


姉さまと猫からの「え?本気で言ってるの?冗談でしょ?」みたいな視線が痛い。


「.....」


少し無理がありすぎたかもしれない。

どう見ても、この猫がティーカップよりも軽いとは妾でも思えない。


しかし、何よりも腹に立つのが.....


「コンちゃんはバカだねー( ´∀` )

 な"ーちゃんがティーカップよりも軽い訳ないでしょー?あーははははは!」

「な"ー!な"ー!な"ー!」


まるで息がぴったりと合ったかのようにバカにしてくるこのコンビネーション。

とは言うものの、猫のほうは被害妄想かもしれないが。.....いや、しかし、この小憎たらしい顔。ぐぬぬっ!


とりあえず、姉さまがダメならここは、


「な、なら、ぬいぐるみに抱っこさせたらよいではないか」

「キュ、キュ、キュ!」

「『ポキュはアテナ様の護衛だから無理だよー』だってさー( ´∀` )」


「護衛とか必要ないであろう!妾もおることだし」

「キュ、キュ、キュ!」

「『文句があるならニケ様に直接言ってー。ポキュはニケ様の命令に従うだけだよー』だってー( ´∀` )」


ぐ、ぐぬぬっ。


そうこられてしまうとどうしようもない。

ニケ.....様に文句を言うなど、恐ろしくて出来るはずがない。これはぬいぐるみも同じだろうが.....。


・・・。


結局、姉さまが希望した散歩なのに妾が猫を抱っこすることになってしまった。


「よいか?大人しくしているのじゃぞ?」

「な"ー?」


よくわかっていなさそうな返事ながらも、全く暴れる様子はない。

主の言った通り、ほとんど動く気はないようだ。


と言うよりも、


「な"ー.....」


むしろ、妾に抱っこされたそばから既に寝ようとすらしている。

デブでブサイクな猫ながらも、まどろみかけているその表情はどこか愛嬌がある。


そう思っていたら、


「ぶしゅっ!」

「あーははははは!変なくしゃみー( ´∀` )」


猫が突如くしゃみをし出した。


そのくしゃみがなんと言うか、あまりにも親父臭かったのでせっかくの愛嬌が台無しだ。

更に言うなら、姉さまはそのくしゃみを面白がっているようだが、妾は笑っていられる場合ではなかった。


「ぶしゅっ!」


───べちょべちょべちょ


「.....」


主に買ってもらったお気に入りの服が猫の唾だらけ。

しかも微妙に臭い。


猫の面倒を押し付けられた挙げ句にこの仕打ち。

さ、最悪だ.....。


そして、当の猫はというと、


「な"ー.....」


くしゃみをして満足をしたのか、そのまますやすやと寝てしまった。


「.....」


ダメな姉に、ダメな猫。

そして、ダメなぬいぐるみ。


妾の苦労はまだまだ始まったばかりだ。



(と言うか!何度も言うておるが、寝るんだったら散歩いらんではないか!)



□□□□ ~教育~ □□□□


猫の散歩は概ね順調だ。

まぁ散歩と言っても、姉さまが飽きてしまったらしく、いつもの食べ歩きになっているが.....。


気持ちはわからなくもない。

フェンリルの時とは違って、そもそも猫は寝ているだけだから散歩自体面白くもないのだろう。


それはいい、それはいいのだが、


「コンちゃーん、あーん」

「.....」


いまかいまかと餌を待つ雛鳥のように口を開けている姉さまの口へとお菓子を放り込んでいく。

主がいない以上、当然のことながら姉さまの面倒は妾が見ることになる。


「おいしーねー( ´∀` )」


幸せそうな顔でもぐもぐしている姉さまは見ていてとても癒される。

姉さまのこの雰囲気は妾もとても気にいっている。


「.....」


そう、とても癒されるし、気にいっているのだが.....。


これではダメなのではないか、とだんだん思うようになってきた。

いや、前々からそのように思うことはしばしばあった。


ただ姉さまの持つ独特な雰囲気で、ついついなんでも許してしまっていた。

しかし今の現状を鑑みると、やはりこのままではダメなのではないかと強く思うようになった。


だって、そうであろう?


猫やぬいぐるみの主人である姉さまは、二匹の面倒を一切見ず、それどころか妾にお世話されている現状だ。

一切合切全てをやれとは言わないが、『主人としての務め』というものがあるのではないだろうか。


もっと言えば『主人としての務めを果たせないなら、ペットを飼うべきではない』と思う。


「コンちゃーん、あーん」

「.....」


「おーいしー(*´μ`*)」


ただ、その現実を姉さまに突きつけるのはあまりにも無慈悲かもしれない。

そもそも自分自身のことすらも満足できない人、神に、「ペットの世話をしろ」というのはあまりにも酷だ。


だから妾は、


「.....のぅ、姉さま」

「んー?」

「そろそろ身の回りのこととか、自分でできるようになったほうが良いと思うのじゃ」


ここにきて『姉さま補完計画』を立ち上げることを決意した。

そうすれば、姉さまの世話を見る必要がなくなり、妾は四六時中、主とともに居られるという訳だ。


だが、


「ひつよーないねー( ´∀` )」


妾の計画は姉さまの一言で一刀両断にされた。


「な、なぜじゃ!?」

「だってー、私がやらなくても歩がしてくれるもーん!」

「いやいやいや。主と姉さまはいつかは離ればなれになる訳であろう?

 それならば、主に頼りっぱなしはいけないと思うのじゃ」


主と姉さまの関係は、恋人のそれでもなく、女神と付き人というもの。

謂わば、一時的なビジネスパートナーというもので、50年という期間がくれば解消される。


ここはやはり『姉さま補完計画』を発動するべきだろう。

そう思っていたのだが.....。


「私と歩はずっといっしょだよー(。´・ω・)? 」

「.....?姉さまはいずれ神界とやらに帰るのであろう?」

「んー?帰らないよー?」

「.....え?どういう意味じゃ?」


.....あれ?旅行しにきたのではないだろうか?


「歩と結婚するからねー( ´∀` )

 結婚ってー『ずっといっしょ』って意味でしょー?」

「はぁぁぁぁぁあああああ!?あ、主と結婚!?冗談であろう!?」


まさかの答えに狼狽せずにはいられなかった。

あの姉さまが、あのズボラな姉さまが、まさか将来の計画をしっかりと立てているなんて誰が予想できただろうか。


だが、


「歩が結婚するって言ったもーん」

「.....主が?主がそう言ったとでも言うのか?」

「そだねー」


どうやら妾の心配は杞憂のものだったらしい。

またいつもの、姉さまのくだらない戯れ言だったようだ。


「主がそんなことを言うはずがなかろう」

「ほんとーだよー(´-ε -`)」

「なら、その時の主を再現してみよ」


───ピーンポーン


(※)ここからは姉さまの戯れ言を楽しんでほしいのじゃ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「す、好き、かな?」

「じゃー、結婚しよー( ´∀` )」

「か、考えさせてくれ」

「うんー(*´∀`*)」  (※)第53歩目 参照

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「こんなかんじー?」

「主は「考えさせてくれ」と言うておるではないか」


わかってはいたことだが、やはり姉さまの戯れ言だったようだ。


それはそうだろう。そもそも主は妾と結婚するのだから。

次点でニケ.....様。その次ぐらいに現地妻の人間あたりだろう。主は姉さまのことなど恐らくは眼中に無いはず。


しかし、姉さまは食い下がる。


「コンちゃんはしらないのー?」

「なにをじゃ?」

「考えさせてくれってのはねー、結局、いいよーってなることが多いんだよー(o゜ω゜o)」

「所詮俗説じゃな。主に当てはまるとは限らぬ」


何を言うかと思えば、根拠の無い俗説。

そんなことで婚約者を名乗るなど片腹痛い気分だ。


「ぶー(´-ε -`)結婚するんだもーん!」


尚も食い下がる姉さま。

もはや単なる駄々っ子だ。


だから、


「黙るのじゃ」


───ドンッ!


テーブルを軽く叩いて、物理的に黙らせることにした。

姉さまのペースに付き合っていては埒があかない。ここは心を鬼にする必要がある。


「 Σ(・ω・*ノ)ノ」

「な"、な"ー!?」

「キュ、キュ、キュ!?」


突然のことに驚くダメダメな主従。

姉さまは妾の突然の変調に驚き、猫はビクッと体を震わせたのち目を覚まし、ぬいぐるみは何事!?と臨戦態勢に入っている。


「戯れ言はもう良い!早速、姉さまの教育に取り掛かるのじゃ!」

「ふえええええ(´;ω;`)コンちゃんこわーい」

「なんとでも言うがよい。姉さまのその腐った性根を叩き直してやるのじゃ!」



こうして、妾の『姉さま補完計画』が苛烈に激しく幕を開けることとなった。



次回、ニケと初デート!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


~しあわせの在り方~


「早速、これを食べてみるのじゃ」

「はーい。あーん」

「あーん、ではない。自分で食べよ」

「ぶー(´-ε -`)」


姉さま補完計画の手始めは、スプーンを使ってケーキを食べることから始めてみた。

今まで甘えてきた姉さまには少しハードルが高い課題かもしれないが、妾の姉を名乗る以上頑張ってもらいたい。


そう心を鬼にしていたのだが.....。


───ガシッ。


「うむ!?」


きれいにスプーンを持つ姉さま。


───サクッ。


「なぬ!?」


ためらうことなくケーキにスプーンを入れる姉さま。


───ぱくっ。


「なんじゃと!?」


もはや文句の付けようもないほど普通に食す姉さま。


妾の予想に反して、姉さまは見事までのスプーン捌きを披露し始めた。


「ちょっ、ちょっと待つのじゃ、姉さま!」

「もぐもぐもぐー?」

「ね、姉さまは食べ方を知らぬのではないのか!?」

「(ごくんっ).....しらなかったねー。でもー、毎日見てるんだからおぼえるよー( ´∀` )」


学習能力など皆無かと思ってはいたが、さすがは智慧の女神ということか。


「ほう。ならばなぜ自分で食べぬのじゃ?」

「んー」

「どうしたのじゃ?」

「ごはんとかってー、たべてるときはしあわせじゃないといけないよねー?」


「む?まぁ、それはそうじゃな」

「だからだよー( ´∀` )」

「訳がわからぬ。それと姉さまが自分で食べぬ理由が繋がらぬのじゃ」

「んー」


姉さまは難しい顔をしながら思案し始めた。

まるで「どうしてわからないかなー」とでも言いたそうな顔をしながら.....。


「そうだー!コンちゃん、あーん」

「自分で食べられるのだから、自分で食べたらよかろう?」

「いいからー!」

「.....はぁ。仕方のない姉なのじゃ」


姉さまの口へとケーキを運ぶ。


「おーいしー(*´μ`*)」

「(本当、幸せそうに食べるものじゃな。見てるこちらまで幸せになりそうじゃ)」

「それだよー、コンちゃん!」

「ふむ!?ど、どういうことじゃ!?」


「私にたべさせてくれる人はー、みーんなコンちゃんと同じ顔をするんだよー!」

「と言うことはつまり.....」

「うんー!自分でたべないことでー、みーんなを幸せにしてるんだーo(≧∇≦)oえらいでしょー?」

「.....」


詭弁も詭弁。


しかし、こういう幸せの在り方もあるのかもしれない。

さすがは妾の姉というべきだろう。


「働かないでたべるケーキはおいしーねー( ´∀` )」

「.....」


『姉さま補完計画』はまだまだ続く。


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