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閑話 再びの神の気まぐれ!

前回の閑話までのあらすじ


アルテミスのキスを見て、ニケ激怒!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


閑話 再びの嫉妬!の続きとなります。

時期的には102歩目前の、アルテミスが2回目の降臨を果たす前のこととなります。


□□□□ ~神界騒動part.1~ □□□□


side -アルテミス-


「うげっ.....」


神界に戻りアテナっちの部屋を訪れた早々、いきなりニケちゃんに首を掴まれそのまま持ち上げられた。

全く警戒していなかったとはいえ、それでもあまりにも一瞬の出来事だったので、戦闘系の主神であるあたしでさえも全く対処できなかった。


その時のことをD氏はこう語る。


「.....見えなかった。まさに神速」


(まさに神速.....じゃない!助けておくれよ!姉さん!)


「.....」


そういう意図を込めた眼差しでデメテルを見るも、当のデメテルは我関せずを貫き通している。

この姉さんはこういう女神だからあまり好きにはなれない。.....頼りにはしているけど。


特に嫌いなのが、何を考えているのかが全くわからない瞳だ。

深い深いどこまでも堕ちていきそうな深淵の闇を連想させる深い紫の瞳。

力は大したことない女神だけれども、この瞳に見つめられると何故か背筋に悪寒が走ることも度々あった。


今デメテルは、そのあたしの嫌いな瞳で、ただひたすらジッとこちらを見つめている。

助ける気など全くないということだろう。


一方のニケちゃんはと言うと、


「.....裏切り者。.....裏切り者。.....裏切り者。.....裏切り者。.....裏切り者」

「うら、、ぎ、、り、、もの?」


何か意味のわからないことをひたすらぶつぶつと言っている。


ニケちゃんは規定バカだから殺されることはないだろうけども.....。

まぁそもそも、神界では死ぬことはないんだけどね。それでも苦しいものは苦しい。


「く、、く、、る、、しい.....」

「苦しい?何を戯言を.....。肉体的苦痛よりも精神的苦痛を与えられた私のほうがずっと苦しいです」


(う~ん.....。やはりめんどくさい女神だね~)


めんどくさいニケちゃんに、傍観者気取りのデメテル。

非常にめんどくさい。もはや手段を選ぶ必要性すらないほどに、さっさとこの場を穏便に済ませたい。


だからあたしは、


「ま、、まっ、、て、、おく、、れ、、よ。

 どう、、い、、う、、こと、、か、、せ、、つめ、、い、、して、、お、、く、、れ」


息絶え絶えながらも、事態の終息に全力を注ぐことにした。

例え、どんな手段を使おうともね。あひゃひゃひゃひゃひゃw


「.....説明?説明なんていらないですよね?

 私から私の歩様を奪おうとしているではないですか!この裏切り者!!」

「う、、う、、ばう、、?あ、、たし、、が、、ア、、ユ、、ムッ、、チを、、?」


ニケちゃんの凄まじいまでの嫉妬に、神力に、体が無意識に強張る。

あたしに対するアユムッチがそうだったように、今のあたしもニケちゃんの灼熱のように燃えたぎる鋭い眼差しによって射竦められてしまった。


それにしても.....。


ますます意味がわからない。

いつあたしがニケちゃんからアユムッチを奪おうとしたのか.....。


(いや、確かに少しは男らしさを感じたけどさ?)


「とぼけるのも大概にしてください。決定的な証拠もあるのですから」

「しょ、、う、、こ、、?な、、んだ、、い、、そ、、れ、、は、、?」

「白々しい.....。まだとぼけるおつもりですか?」

「い、、い、、から、、お、、し、、えて、、お、、く、、れ、、よ」


よくわからないが、その証拠とやらが問題らしい。

つまりそれをなんとかできれば、この場を穏便に済ますことができる訳だ。


では、その証拠とは一体.....。


「まだとぼけるおつもりですか.....。いいでしょう。冥土の土産にお教えします」

「め、、い、、ど、、!?」

「.....殺しちゃダメ。殺せないけど」


ニケちゃんは完全に悲劇のヒロイン気取りだし、デメテルはしょうもないツッコミ.....。


この二人、いろんな意味でダメな気がする。

とは言え、あたしも人の事を言えた義理ではないけどさ。あひゃひゃひゃひゃひゃw



とりあえず、ニケちゃんから冥土の土産とやらを聞くことにした。

どうせ、しょうもない理由だったりするのだろうけど.....。


「私の歩様にキスされましたよね?あれが決定的な証拠です!

 アルテミス様を信じておりましたのに.....。この裏切り者!!」

「.....」


なるほどね。

やはり、しょうもない理由だった。


(確かにキスはしたけどさ?あれで裏切り者扱いとか.....。

 本当にニケちゃんは単純だ。だからこそ悪戯しがいがあるんだけどね。あひゃひゃひゃひゃひゃw)


このニケちゃんは普段はほぼ完璧な女神で、規定規定とうるさい生真面目な性格をしている。

しかし、アユムッチが絡むと途端にポンコツ女神となるのだから面白い。いや、御しやすい。


つまりは、このとんでもない勘違いをどうにかすれば全てが解決ということになる。

では、どうするかと言うと.....。


「ご、、かい、、だ、、よ。ちゃ、、ん、、と、、せつ、、め、、い、、する、か、、ら、、さ」

「説明などいりません」


「そ、、う、、いわ、ず、、に、、きい、、て、、お、、くれ、、よ。

 あた、、し、、は、、ニケ、、ちゃ、、ん、、の、、た、、め、、に、、した、、ん、、だ、、から、、さ」

「.....私のため?」


ニケちゃんの人を信じやすい性格を利用して、ニケちゃんが気になることを言えばいいだけだ。

そうすれば、後は勝手にニケちゃん自身が都合よく解釈してくれるのだから。


「そう、、だ、、よ。だ、、から、、せ、、つ、、めい、、さ、、せ、、て、、おく、、れ、、よ。

 きっ、、と、、ニケ、、ちゃん、、に、、とっ、、て、、も、、ゆう、、よう、、な、、じょ、、う、、ほう、、だ、、から、、さ」


「.....そこまで言うのでしたら聞きましょう。

 ですが、下らない内容でしたら.....。覚悟してくださいね?」


その言葉とともに、ようやく禍々しいオーラから解放されることになった。

ついでに体のほうも解放してもらった。.....あ~苦しかったよ、まったく!


「では、早速お聞きしますが、私の為に、とはどういうことでしょうか?」


ニケちゃんからは疑惑の眼差しで訊ねられた。


「簡単なことさ。前にもニケちゃんには言ったよね?」

「なにをでしょう?」

「頑張った者には褒美が必要だって」

「確かに.....。それがなんだと言うのです?」


どうやら耳を傾け始めたようだ。

始めは頑なな態度だったけれども、こうなってしまえばお手の物。


「わからないかい?あたしがニケちゃんの代わりにアユムッチに褒美をあげたんだよ」

「.....?」

「仕方がないね~。詳しく教えてあげようじゃないか」

「お、お願いします」


そこからは、まるで小さい子にものを教える要領で懇切丁寧に説明をしていくことにした。

ただ、一気には語らずに焦らしながら。


要はどれだけ興味を惹き付けられるかが重要なのであり、説得できるかどうかに重点は置いていない。

そもそも耳を傾けてきた時点でニケちゃんの性格上、もう説得できたに等しいのだから。


「繰り返すけど、頑張ったら褒美を与えるのは神にも適用される。ここまではいいかい?」

「はい」

「神にも適用されるということは、つまりアユムッチにも適用される。ここまでもいいよね?」

「はい」


「更に繰り返すと、アユムッチは人間で不完全な生き物。これは理解しているよね?」

「はい」

「アユムッチのニケちゃんへの愛は本物。

 だけれども、それが常に万全ではないことも理解できているよね?」

「は、はい」


ん?


微妙な反応だったけど、一応理解はしているようだ。

どうやら、泥棒猫や狐が相当気になっているらしい。


説明を続ける。


「アユムッチがニケちゃんの為に相当頑張っているのは見ていてもわかるよね?」

「はい.....」

「確かにアユムッチに好意を寄せる女はそれなりにいるけど.....」

「.....」


「それらの誘いをほとんど断っているんだよ?じゃあ誰の為かって?そりゃあ、ニケちゃんの為にさ」

「はい!その通りです!」

「そこまでわかっているならば、アユムッチにも頑張った褒美をあげないといけないわけだ」

「な、なるほど。私への愛を貫いた褒美ですね」


かぁ~。

くっさいことをよくも大真面目な顔で.....。


ニケちゃんのあまりにも青臭い発言に思わず全身がかゆくなったが、我慢我慢。

今は説得の最中だ。大笑いするのはこれが終わってからでいいだろう。


「そ、そうだね(嘲笑)じゃあ聞くけど、誰がアユムッチに褒美をあげるんだい?」

「当然、私ですよね?」

「その通り。でも現状はあげることができていない。そうなると、アユムッチはどう思うだろうね?」

「.....?」


「頑張ったのに報われない。きっと不満が溜まるだろうね~。

 そこに、アユムッチの意思とは関係なく誘惑が今後もずっと続く訳だ」

「.....」

「そしてアユムッチは人間で不完全な生き物。

 そんなアユムッチに不満と誘惑が続けば、いくらアユムッチでも心が揺れちゃうんじゃないかい?」

「!」


ニケちゃんが明らかに動揺している。

アユムッチからの愛を確信しているようだが、それでもニケちゃんからアユムッチに対して何かをしてあげたことがないのは本人もわかっていること。


アユムッチが人間故に、永遠の愛というものを求めるには極めて困難であることはニケちゃんもわかってはいるのだろう。

だからこそ、アユムッチからの愛を繋ぎ止めておく為にはそれ相応の何かをしてあげる必要がある訳で.....。



ニケちゃんが狼狽しきっているようなので、そろそろ畳み掛ける頃合いだ。


「そこで最初に言った通り、あたしがキスをしたことが活きてくるって訳さ」

「ど、どういうことでしょうか?」


「考えてもごらんよ。あたしがキスをあげることができたんだから.....。

 いずれはニケちゃんからも褒美をもらえる。そうアユムッチは思うんじゃないかい?」

「!!」


さて、あたしの説明はここで終了だ。

多くを語ってボロを出すよりも、後はニケちゃんが勝手に都合よく解釈してくれるだろう。そういう顔をしているし。


「つ、つまり.....。アルテミス様は私の為に歩様に期待感を持たせてくれたということですか?」

「そう言ったよね?」

「し、しかし、それならばキスでなくとも.....」

「キスである必要があったとしたら?」


「!!!」

「安心しておくれ。あたしはニケちゃんの味方だよ」

「つ、つまり.....。褒美への期待感を膨らませた.....ということでしょうか?」

「あたしがキスだったんだ。アユムッチはニケちゃんに同等、もしくはそれ以上の褒美を期待しているかもね」


きっとアユムッチはそんなことは微塵も思ってはいないだろう。

それでもいい。要はこの場をなんとかできればいいだけのただの方便に過ぎないのだから。


「よ、要約しますと.....。褒美への期待感の大きさが、それ即ち磐石な私への愛に繋がるという訳ですね!

 そして、その一躍を担って頂いたのが、あのような行為だったと!」

「そうそう。わかってくれたかい?あひゃひゃひゃひゃひゃw」


あたしの返事に、得心がいった、と感じ取ったニケちゃんの表情は実に晴れやかだ。


あまりにも晴れやか過ぎて笑いが止まらない。

実に滑稽だ。アテナっちがいなければ、ニケちゃんがこうも御しやすいとは。おもしろっ!


「.....またテキトーなこと言ってる」

「いいんだよwニケちゃんが勝手に勘違いしてるだけなんだからさ。あひゃひゃひゃひゃひゃw」


どうやら場が落ち着いたと判断したデメテルが話しかけてきた。

その表情は呆れ果てているものだったが、傍観者を気取っていたデメテルにどうこう言われたくはない。



さて、あたしへの疑いが晴れたことはいいとして、そろそろ解決しないといけない問題がある。


それは.....


「わかってもらえたようで何よりだよ。

 それで?ニケちゃんはあたしに何か言うことはないのかい?

 力が劣るとは言え、あたしはニケちゃんの主筋にあたる神だよ?

 その主神に勘違いだったとは言え、ニケちゃんは手をあげたんだ。大問題だよ。規定からしてもね。

 場合によっては、アユムッチに褒美を与えることができなくなってもおかしくはない状況だけど?」


君臣上下の意識を改めてハッキリさせることだ。

ニケちゃんはなまじ主神であるあたし達よりも力があるだけに暴走されてしまうと手に負えない。


今まではそれでも良かった。

ニケちゃんは主神であるあたし達に絶対の忠誠を誓っており、そもそも暴走するようなことがなかったのだから。

だからこそ、パパもアテナっちの付き神として、ニケちゃんに絶大な力を与えたのだろう。


だが、今は状況が全く異なる。

ニケちゃんの暴発材となるべき存在がいるのだから。

状況によっては主神であるあたし達に、いつ牙を剥いてくるかわかったものではない。


もし、そんなことになったら.....。


(ニケちゃんを抑えられるのは、パパかポセイドン兄貴、もしくはヘカテーぐらいなものかね~)


だからこそ、君臣上下の意識を改めてハッキリさせる必要がある。

最低でも、あたしだけには被害が及ばないようにする必要はある。


「神界規定には、付き神が主神に手をあげることは禁じられていたはずだよ?それを破ったんだ。

 もし仮にあたしがこれをパパに訴えたら、ニケちゃんはアユムッチに当分会えなくなる可能性が高い」


虎の威を借る狐ならぬ、規定やパパの威を借るあたし。


あたしは狩猟の女神。

相手を狩る為ならば、使えるものは何でも使う主義だ。それがあたしの美徳!


そんなあたしに対して、


「も、申し訳ございません!どうか無知なる私の無礼な振る舞いをお許しください!」


当のニケちゃんは額づいての平謝り。


恐らくはあたしに対しての無礼よりも、アユムッチに会えなくなる可能性のほうを危惧しているのだろうが。

この際どちらでもいい。絶大な力を持つニケちゃんが、あたしの前で謝罪しているという事実が重要なのだ。



さて、本来ならこんな面白いシーンを見逃すあたしではないのだけれども、ここでは主神としての度量を見せておくことにする。今後のことも考えて.....。


「仕方がないね~。あたしも誤解させるようなことをしちまったからね。今回は特別に許してあげるよ。

 いいかい?今回だけ特別だからね?そこはちゃんと肝に命じておくれよ?」

「あ、ありがたき幸せ!このご恩は決して忘れることはございません!!」


「うんうん。忘れないでおくれよ?あひゃひゃひゃひゃひゃw」


最強戦力の一つをたやすくGET。

これで何かあったときの保険はバッチリだ。



こうして、ニケちゃんの疑いを晴らしたあたしは、再びアテナっち達の旅行鑑賞を楽しむこととなった。



あっ、そうそう。

ニケちゃんとはこんな約束もしたんだった。


「アルテミス様」

「なんだい?」


「私の為にご尽力頂くのは大変嬉しいのですが、そ、その.....」

「遠慮せず言ってみな」


「お言葉に甘えて.....。その.....私の歩様にキスをされるのは今後控えて頂けませんか?

 いくら私の為とはわかっていても、どうしても心を抑えられないのです.....。申し訳ありません」

「嫉妬にまみれてしまうと?」


ニケちゃんが気まずそうに頷いた。


まぁあたしとしても、アユムッチのちょっとした男気に感じ入った結果の行為だった。

故に、今後も何ももうするつもりは一切ない。


だから.....


「安心しておくれ。あたしはニケちゃんの味方さ。だから、今後は絶対にしないと約束するよ」

「アルテミス様!.....感謝します!!.....感謝します!!!

 この命尽きるまで、アテナ様とアルテミス様はどんな脅威からもこのニケが必ずお守り致します!」


この時のあたしは気安く請け合い《約束》をしてしまった。

ニケちゃんにとっての約束というものがどれ程の意味に値するのかを全く知りもせず、また何かあったらテキトーにごまかせばいいや、と軽く考えて。



この軽はずみな行動が、後に大問題に繋がるとはこの時のあたしは思いも寄らなかった.....。



次回、更に閑話!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


本編の俺TUEEEEEはもう少しお待ちください。

本当に圧倒的な強さで快勝してしまうので。主人公らしく。


その前に神の試練の用意が遅れた原因を先に取り上げようと思います。

この章はタイトルを見ておわかりになられる通り、ニケの章となりますので一気に回収しようと思っています。


これからも『歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~』をよろしくお願いします。


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