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第122歩目 アイドルの加護!星空咲音とのデート?②

前回までのあらすじ


1日アイドルの彼氏感となった。

□□□□ ~アイドルとの楽しい買い物?~ □□□□


サキとの買い物はそれはもう酷かった。

こんなに酷い買い物は今後二度と経験することはないだろう。


なにが酷いかと言うと、


「「「「サキたそはどっちにいったでござるか!?」」」」

「「「「こっちでござる!急ぐでござるぞ、同志!」」」」

「「「「サキたその純潔は拙者らが守るでござる!」」」」


まずは、同志達の追っかけがとにかく鬱陶しいことだ。


こんな性格のサキが純潔なんて守ってる訳ないだろ!と同志達にツッコミを入れたいが、夢を壊すのは憚れる。

それに、俺の存在を目の敵にしているようで正直めんどくさい。



他にも、


「これとかマジゃばくね!?買ぃっしょ↑ぉっさん、ょろー」

「.....」


「ゥケるwこのなんにも役に立たなぃ感じ、マジ最&高↑ぉっさん、これもょろー」

「.....」


「ドールちゃん!これサキが買ってぁげるょ!ペァとかょくね!?じゃー、ぉっさん。これ2つょろー」

「.....」


確か俺は、サキの買い物の『付き合い』に来たはずだ。

俺が知っている『付き合い』とは、荷物運びとかそういうのだったはず。

しかし、現状は荷物運びもさることながら、な・ぜ・か!サキの買い物の支払いを全てさせられている。


「.....なぁ?なんで俺が買わされているんだ?」

「はぁ?ぉっさんゎ年上で、大人の男。これだけで金払ぅ義務がぁるっしょ。

 なに?年下で、JKのサキに払わせるっつーの?それで大人の面目とかってゃつが保てるん?」


「.....いや、だって、これはサキさんの買い物だろ?自分の物は自分で買えよ」

「サキと一緒に居させてもらってるくせに文句とかwぉっさんマジ卍」


あれ?


いつの間にか『買い物の付き合い』から『一緒に居させてもらっている』という立場に変わっている。

『付き合い』なら俺の言っていることのほうが正しいが、『一緒に居させてもらっている』ならサキの言っているのことのほうが正しくなる。


恐らくサキの中では、


「ぶひ~.....!サキ様~、仏様~!どどどどどうか一緒に居させて欲しいんだな~!ぶひ~!」


とでも、俺が土下座でもしながら泣いてお願いしたことになっているんだろう。

もしかしたら、馬鹿力でぶん殴ってくださいぶひ~、とまで脳内変換されている可能性すらあり得る。


しかし実際は、


「ぉっさん。サキを怒らせた罰に明日1日買ぃ物に付き合ぇし」

「えぇ.....」


こんな感じのあっさりとしたものだった。

むしろ、行きたくないとの気持ちが出すぎてしまって、ひと・える・いぬ子ちゃんに足蹴にされたほどだ。


(はぁ.....。まぁいいか。どれも大したものじゃないし。

 下手に逆らって買い物が長引くより、素直に従ってさっさと終わらせたほうがずっと賢明だな)


大人な対応で相手をする俺に対して、サキは.....


「マ!?ドールちゃん、これが欲しぃゎけ?

 ぅーん.....。ぉっさんの経済力じゃ、無理なんじゃね?

 なーんかぉっさんってー、影薄ぃっつーか?万年平社員っぽぃしw」


我が物顔で言いたい放題だ。

どうせ俺は万年平社員だろうけどさ.....。影薄くて悪かったな!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あれは昼休みのトイレでのこと.....。


「今期はあまり実績が思わしくないんだよ」

「営業は大変そうだもんなー」

「ノルマに届きそうなのも5人ぐらいしかいなそうなんだ」

「5人!?それはヤバいな.....」

「この5人はいつもノルマを達成させるから、なにげに憧れるんだよなー」

「へー。すごいじゃん。その5人って誰?」

「東野さん、西澤さん、南さん、北平さんに.....」

「あぁ。その4人は経理でも有名だよ。どの部署にでも知られているんじゃないか。それで後1人は?」

「えっと.....。あれ?4人の間違いだったかな?いや、確か5人いたはず.....」

「憧れてんじゃないのかよ(笑)」


それを聞いていた俺は、俺!俺!地味ながらも頑張ってるから!と、思わず個室の中でツッコミを入れてしまっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


くっ.....。嫌なことを思い出してしまった。


実績を上げても評価こそされるものの、俺の存在感が増すことはない。

俺の存在感が唯一輝くのは幹事の時だけだ。(輝くが、ちゃんと覚えてもらえているとは言っていない)


まさに存在感が無さすぎて昇格のチャンスを失い続ける、ある意味で万年平社員とも言える存在だ。


(くそっ!飲み会の幹事の時だけ都合よく思い出される存在とかどうなんだよ!?

 しかも、こんな小娘にまで見透かされるとか.....。普通に堅実で真面目のなにが悪い!?)



若干イライラしつつ、サキに「よろー」されたやつを見てみると、






『魔動駆輪車』 30億ルクア






「よろー、じゃねえよ!?こんなん気安く買えるか!」

「サキじゃねーし。ドールちゃんのだしー。ゅぅても、ぉっさんじゃー、ゃっぱり無理めかー」


(無理じゃないし!.....と言うか、ドールはまだ諦めていなかったのか.....)



ドールの尻尾が残念そうにシュンとなっているのを横目に、サキとの買い物はまだまだ続く。



□□□□ ~アテナへの愛情~ □□□□


疲れた。

女帝のように振る舞うサキにはうんざりだ。


今は一休みしようと、近くの喫茶店に立ち寄っている。


サキはよほどドールが気に入ったのか、常にベッタリだ。

ドールは若干ウザそうにしているのに、それを意にも介していない辺りはさすがと言うかなんと言うか.....。


「ドールちゃん。ぁーん」

「や、やめんか!妾は主に食べさせてもらうのじゃ!」


「ぉっさんなんかょり、サキのがぃぃっしょ。ぁーん」

「いくら勇者様でも主を愚弄するなら.....(はむ。もぐもぐ)」


「マジゃばばー↑↑↑ぉっさんー、ドールちゃんくれしー」

「や、やばば???.....と言うか、ダメ」


急に猫なで声を出されても、ドールをあげるつもりは一切ない。.....と言うか、少し気持ち悪い。


ただ、ドールがかわいいのはサキに同意だ。

サキに対して嫌々しながらも、結局餌付けされている光景は思わず頬が緩んでしまう。

尻尾も勢いよくとは言わないまでも、ふりふりと優雅に振られている。喜んでいる証拠だ。


そんな感じでドールに和んでいたら、


「歩~。はーやーくー( ´∀` )」

「おっと、悪い」


元祖和み系キャラが、早く寄越せと言い出してきた。


俺の膝の上で、餌を待つ雛鳥のように口をあーんと開けて待っているアテナ。

そこに届いたケーキの一切れを放り込む。


───もぐもぐもぐもぐ。

───ごくんっ。


「おーーーーーいしーーーーーい!

 疲れたときにはやっぱりあまいものだよねー!」


アテナは(*´μ`*)←こんな顔で至福に浸っている。かわいい。

ただ途中からアテナをおぶっていたので、アテナが疲れているかどうかは甚だ疑問だ。


「もっとちょーだーい( ´∀` )」

「はいはい」


かわいいおねだりに釣られて、ケーキを次々とアテナの口に放り込む。


───もぐもぐもぐもぐ。

───ごくんっ。


「おーーーーーいしーーーーーい!」

「アテナは本当においしそうに食べるよな」

「だってー、おいしーんだもーん!」

「見てるこっちまで、ついつい食べたくなってくるよ」


───もぐもぐもぐもぐ。

───ごくんっ。


「おーーーーーいしーーーーーい!」

「でも、うるさいから静かにしような?」


アテナの胃袋という名のブラックホールにどんどん吸い込まれていくケーキ達。

注文したケーキ達も、最早なくなろうとしている。


そして最後の一切れを食べさせようとしたら、


「んー(・ω・´*)」

「.....あれ?いらないのか?」


「歩が食べていいよー!」

「なんでまた?」


「食べたいんでしょー?しあわせのはんぶんこー(*´∀`*)」

「!!!」


この子がすごくかわいい件!

本当は食べたいくせに、更に言うならもっとおかわりを要求したいだろうに、俺が何気無く言った「ついつい食べたくなる」という言葉に反応してくれたらしい。


ただ、


(『はんぶんこ』じゃなくて『お裾分け』だけどな?

 もっと言うなら、『はんぶんこ』じゃなくて『一切れ』しかないけどな?)


なんて無粋なツッコミは今は無しにしよう。


アテナはおバカでわがままだけど、こういう一面があるから侮れない。

考えてみれば、アテナは他の女性よりもずっと癒される。


ラズリさんは美人で料理上手だけど、婚活バカ。

ナイトさんはおおらかで常識人だけど、仕事バカ。

ドールは一生懸命で忠誠心が高いけど、暴走バカ。

ゼオライトさんは面倒見がいいけれど、旦那バカ。


そして、


目の前にいるサキなんてアイドルなのに、内面バカ。


みんなそれぞれ個性的で魅力溢れる女性だが、必ず単なるバカの範囲には収まらない。

なにかしらのめんどくささを有している。


それに対してアテナはどうだろうか。


「おいしー?(o゜ω゜o)」

「ありがとう」


───ぽふっ。ぽんぽん


「にへへー(*´∀`*)」


食べさせてあげるー!と言われたものの、ひたすら見つめてくるだけという始末。

アテナにとっての『食べさせてあげるー!』は『見ててあげるー!』と同意なのだ。


.....もう、お分かりだろうか。


アテナは単なるバカでしかない。


わがままだけど、単なるバカ。

ぐ~たらでだらしがないけど、単なるバカ。

ピンチにならないと助けてくれないが、それでも単なるバカ。



───ギュッ!!


この癒される存在を力強く抱き締める。


「はぁ~。アテナは本当に癒される~」

「歩あったかーいo(≧∇≦)o」


かわいい。


ずっと守りたいこの笑顔。

そして、この時間を.....。


だから、


「アテナはずっと単なるバカのままでいてくれ」

「誰がバカよーーーーーーーーーヽ(`Д´#)ノ」


「こらっ!いちゃつくでない!主は姉さまを放さんか!」



ドールうるさい。


そして.....。


アテナかわいいよアテナ!



□□□□ ~アイドルの加護とは~ □□□□


「勇者様なのであろう?ならば、どんな力を持っておるのじゃ?」


それは突然だった。


俺がアテナに癒されていたら、いつの間にかすっかりと仲良くなったサキに、ドールがストレートに訊ねていた。

俺としても、サキのあの異常なステータスには興味がある。ナイスだ!ドール!!


「ドールちゃんなら教ぇてもぃぃけどー。条件がぁるっしょ」

「条件とはなんじゃ?」

「ドールちゃんが、サキのものに.....」

「それはダメじゃな。それなら別に教えてくれなくとも良い」


ドールに即拒絶されて、しょぼーんとしているサキ。.....ざまぁ!おっと、大人気なかったか。


以前、「勇者の誘いでも断る」とドールは言っていたが、どうやら本当のようだ。

ドールから並々ならぬ忠誠心を感じる。ちょっとこそばゆい。


「とりま、今日1日サキと一緒にぃるってのゎ?これならぃぃっしょ!?」


ドールはよほど気に入られているらしい。

サキの必死さが若干気持ち悪い。これこそキモぶ.....いや、なんでもない。


ただ、それでもドールの答えは決まっているのだろう。


「それもダメじゃな。妾は片時も主の側を.....」

「それならいいぞ。今日1日だけだからな?持っていけ!泥棒!」


だから、俺が許可を出しておいた。


「主!?」

「マ!?マ!?マ!?ぉっさん、ぁざまる水産!マジぁげみざわ↑↑↑」

「あ、あざ.....なに?あげみざわって歌手!?」


ダメだ。全くついていけない.....。


それはともかく、ドールがそれはもう裏切られた!みたいな顔で驚いている。

尻尾もピーンとなっている。これは驚いているサインだろう。


俺としてはドールの意向を汲んでやりたい気持ちはある。

そう、大いにあるのだが.....。


それでも、


サキの力をどうしても知りたい!


ここは一つ。

その大いなる忠誠心で頑張ってもらいたいところだ。


・・・。


ドールとは『嫌なことはしない』との誓いがあるので、拝み倒してしぶしぶ納得してもらうことになった。

当然、後でドールのわがままを叶えてあげる条件付きだが.....。ドールさん、マジ感謝!


「いいか?今日1日だけなのと、ドールが嫌がることは絶対にしないこと。これだけは絶対に守れよ?」

「りょ。.....ドールちゃん、マジきゃわわ↑きゅん死にしそう♡」

「や、やめんか!気持ち悪いのじゃ!」


本当に大丈夫だろうか。

サキの手がわさわさと気持ち悪く動いているのが微妙に気になる。


そして、


「えー。コンちゃんはおとまりなのー?なら私もコンちゃんと一緒に行こうかなー(・ω・´*)」

「アテナはダメ」

「ぶー(´-ε -`)」


これ以上、心配の種を増やさないで欲しい。

それにアテナまで行ってしまったら、ゼオライトさんに恨まれてしまう。.....俺も寂しいし。



アテナの不満を餌付けで宥めながら、話の本題に戻る。


「サキの力はァィドルにぴったしのものだねー」

「アイドルに.....?だから筋力が20万もあるのか?」

「に、20万、、じゃと!?」


さすがのドールも口をあんぐりと開けて驚いている。かわいい。

俺もステータスを最初に見たときは驚いただけに気持ちはよくわかる。


「ぉっさん、マジゥざぃんだけどー↓なんかー、裸を見られてぃるようできもぃっつーの」

「ぐっ.....。み、見えちゃうものは仕方がないだろ!」

「どういうことじゃ!?主は勇者様の裸を見たのか!?」


ドールは何を言っているのだろうか。

この子は普段は頼りになるのに、女性が絡むと途端にアホの子になるのが悩みの種だ。


「サキだって、ぉっさんなんかに見せたくなぃっつーの。ちゃけば、見たぃなら金払ぇー」

「払ったら見せてくれてるの!?.....と言うか、それはダメだろ。それって援交とかって言うのでは?」


「援交wじゎるw.....ぉっさん、マジで日本人?w日本の山奥で芝刈りでもしてたん?w」

「ど、どういうことだよ?」


「ぃまどき援交とか言ゎねーから。そもそも、サキはゥリとかしなぃっつーの。パパ活だよ、パパ活」

「それなにかで聞いたことがある!

 そうか、パパ活かぁ.....じゃなくて!そんなことを言いたいんじゃない!」


誰も今時の援交事情なんて聞いていないし、聞きたくもない。興味すらない。

そもそも俺は言葉遊びをしている訳でもない。援交だろうと、ウリ?だろうと、パパ活だろうとどうでもいい。


それに、例えサキの言う通り、俺が山奥で芝刈りをしていたような田舎者であったとしても譲れないものはある。


それは.....


「パパ活だろうとなんだろうと、アテナ達の前でそういうことを言うのはやめろ」


アテナをニケさんから預かっている身として、更にはドールの主人として、二人の教育に悪影響を与えそうなことは一切容認できない。

子供の健全な成長を見守るのは、一人の大人として当然の義務だ。



俺の毅然とした態度に、さすがのサキも反省しただろうと思っていたら、


「ぉっさん、マジメンディー↓」

「.....え?」


言葉の意味はわからなかったが、ハッキリと『めんどくさい』とわかる表情でバッサリと切られてしまった。

そしてサキは「鬼チョボパン」と謎の言葉を残して、そのまま席を立ってしまった。


「「・・・」」

「ケーキはおいしーねー(*´μ`*)」


あまりの事態に茫然とする俺とドール。

それとバカ面でケーキをおいしそうに食べているアテナ。かわいい。


(.....あれ?自惚れるわけじゃないけど、俺はいいこと言ったよね?めんどくさいってどういうこと!?)


困惑している俺に、


───ポンポンッ


「歩、どんまい(・ω・´*)」

「アテナ.....」


肩をポンポンッして励ましてくれるアテナの優しさが心に染み渡る.....。



そして、アテナに続いてドールも慰めてくれ.....


───ポンポンッ


「主、大丈夫なのじゃ。妾も勇者様が何を言っておるのかさっぱりなのじゃ」

「.....」


肩をポンポンッして違う意味で励ましてくれるドールの勘違いに唖然とした。



(どんな勘違いだ!?なにもサキの言葉が理解できなくて落ち込んでいた訳じゃないわ!)



□□□□ ~いい加減にアイドルの加護とは~ □□□□


鬼チョボパンとは、『トイレに行きたくて我慢できない』という意味だったらしい。

普通に『トイレ』とか『花を摘みに行く』とかのほうが言いやすいのではないだろうか。


とりあえず話が横に逸れすぎるので、いい加減サキを問い詰める。


「ゅぅても、さっき言ったっしょ」

「いやいやいや。アイドルにピッタリの力としか聞いていないから。具体的にどういう意味か話せよ」

「ぁっ.....察し。.....ぉっさん、顔が悪ぃだけでなく、マジでバカな感じ?」

「いいから早く話せ!.....話してください!お願いします!!」


もうこの子やだ.....。

それにバカ.....なのかもしれないが、少なくとも顔は悪くないはず。良くもないけど.....。


「懇願とか草生ぇるwぉっさん、カノジョ↑とか居たことなぃっしょ?w」

「.....」


大人としての矜持を捨てお願いしたのにも関わらず、この態度。

既に俺の体力は精神的に0に近かった。


だから、


「ドール、没収!ドールの件は無し!!」

「はぁぁぁぁぁ!?ぉっさん、マジぁりぇんてぃ!!」

「ジブリだかなんだか知らないが、いい加減にしないと本当にドールの件は無しにするぞ?」

「かしこー。.....子供相手にガンギレとかー、超MMなんだけどー↓」


こ、この小娘が!!


サキが何を言っているのかはさっぱりだが、態度からして反省しているようには思えない。

いや、むしろ俺が大人気ない対応をしたことに呆れ果てているといった感じだろうか。


「サキの力はァィドルにぴったしのものだねー」

「.....それはさっき聞いた」

「ぉっさんもキモ豚の1人ならゎかるっしょ?」

「なにが?」


アイドルにピッタリの力と言われても想像できない。

そもそも俺はアイドルじゃないし。.....それ以前にキモ豚でもないけどな!


「はぁぁぁ!?ゎかんなぃとか、ぉっさんヤバすぎ!バカでぃぃのはただィケのみっしょー」

「.....俺の言葉をあまり理解していないようだな?

 次、話が脱線したら、本当にドールの件は無しにするからな?」


「GM!GM!ちゃんと話すっつーの!そんな激ぉこになんなしー」

「.....」


激おこぐらいなら俺でもわかる。

と言うか、そもそも怒らせるなよ.....。


慌てて取り繕うサキの態度に、俺の視線は実に冷ややかだ。


今時のギャルJKはみんなこうなのだろうか。

女子校の教師とか一度は夢見るものだが、サキみたいなのがいっぱいいるのだとしたら正直遠慮したい。

遠慮するどころか、むしろ教師に憐れみすら感じてしまう。.....教師ってのも大変なんだなぁ。



高校の教師に敬意を払いつつ、サキの言葉に耳を傾ける。


「サキの力はァィドルにぴったしのものだねー」

「.....だから!それはさっきも聞いたっての!」


「落ち落ち。.....ぉっさんも日本に居たときに、ぃろんなァィドルを見たっしょ?」

「落ち落ち???.....ん?ま、まぁ、ライヴとかには行っていないけどな?(嘘です!行っていました!)」


「そんなんどぅでもぃぃし。そこでにゃんつくぶったァィドルがよく言ってるっしょ」

「にゃ、にゃん???」


このギャル語?というのかなんと言うのかわからないが、なにがなんだかさっぱりだ。

これでちゃんと日常生活をまともに送れるのだろうか心配でならない。.....あっ、周りの大人の心配ね。


「はぁ.....。ぉっさん、そんなこともしらねーとか.....。ぃぃかげんにしろしー↓

 『にゃんつくぶった』ってのは『かわぃこぶった』て意味。ぉぼぇとけー」

「あぁ、ぶりッ子って意味か」


「ぶりッ子w大草原不可避なんだけどーw

 ぉっさん、それもぅ化石w今時ぶりッ子とか言ってたら笑ゎれるっつーのw」

「マジで!?」


どうも。時代の流れに取り残された化石の俺です.....。


サキと話していると、最早めくるめく時代の流れについていける気が全くしない。

とは言っても、サキとは歳が10歳も離れているから仕方がないのだろうけど。


ただ.....。


これを世代の壁として、そのまま受け流してしまっても良いのだろうか。でも、俺だけじゃないはず!


「.....そ、それで?そのにゃ、にゃんつくぶった?アイドルがなんだって?」

「ぉっさん、無理すんなしーwそのぶりッ子wしてぃるァィドルが良く言ぅっしょ。

 『みんなの声援が私の力になりますぅー☆』ってー」


「ん?それはまぁ.....」

「ぁのさー。応援なんかが力になるゎけねーだろってー。

 ァィドルを応援したぃなら金落とせっつーの。ァィドル活動は金がかかんだからさー↓」


「お、おぅ.....」


なんか微妙に話が脱線しているような気もしなくはないが.....。

ただ今までのふざけた態度とは異なり、真剣な表情でアイドル活動についての不満を吐き出している最中なので口を挟むことができない。


俺は知っている。

女の子の愚痴は正解を求めている訳ではなくて、ただ聞いて欲しい、ただ同意して欲しい、ということを.....。


だから、ひたすら聞き役に徹する。


・・・。


そして10分後、


「ぉっさん、ぁざまる水産。マジenjoyしたわー」

「あ、あざ?.....と言うか、今のが楽しかったのか?」

「ちげーし。『スッキリ』したって意味」

「そ、そうか.....」


どうやらそうらしい。

『enjoy』に『スッキリする』という意味があるのかどうかはわからないが.....。


ただ、サキの晴れやかな表情を見るに、聞き役に徹したのはどうやら間違いではなかったらしい。

良かった.....。ありがとう!テレビ先生!!



目的がなんなのかを、俺自身が最早忘れかけていたその時、


「とりま、サキの力は本来なら何の役にも立たなぃ応援が、そのまま力になったっつーゎけ」


突然のカミングアウトをされた。


一瞬、頭の中が真っ白になる。

突然のことで何を言われたのかが理解できない。


「.....は?」

「は?じゃねーし」

「.....わ、悪い。サキさんの力はなんだって?」

「はぁぁぁ!?聞ぃてねーとか、ぉっさんマジふざけんなし!」


聞いていなかった訳ではない。

ただ、目的を忘れた上での突然のカミングアウトだったのでよく理解できなかっただけだ。


サキの言葉に耳を傾ける。清聴、清聴。


「だーかーらー!

 サキの力は『応援されるだけで力アップ』だっつーの!

 ぉっさん、また聞ぃてねーとか言ったら、マジふるぼっこだから!」


あぁ~、なるほど。

確かにアイドルにぴったりの力だ。



・・・。



 (はああああああああああ!?『応援されるだけで力アップ』ってなんだよそれ!?)



次回、誰もが思うこと!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


「ぉっさん。ぉっさん。ドールちゃんから聞ぃたんだけどー、ぉっさんって金モなん?」

「金モ???」

「.....ぉっさん、マジメンディー↓『金モ』ってのは『金持ち』って意味。それぐらぃしっとけー」

「.....金持ちじゃない」


「マ?ぉっさん、パチつぃてんじゃね?」

「俺はギャンブルなんてしない」

「草wマジじゎるwぃぃから金モなのか教ぇろしー」

「違うって言ってんだろ。そもそも金持ちだったら、なんだっていうんだよ」


「サキのスポンサーになってもらぅに決まってね?」

「あれ?意外とまともだった.....」

「はぁ?意外とってなんなん?ぉっさんはなんだと思ってたん?」

「俺はてっきり、玉の輿とか、豪遊するとかそんなことを.....」


「豪遊はともかく、玉の輿はねーゎ。ぉっさん、マジきもすぎー↓」

「きもいって.....。そういうやつ何人もいたぞ?」

「.....ぉっさんに?」

「あぁ。俺が勇者だってことや竜殺しだってことを知ったやつは大抵な」


「ふーん。ぉっさんが噂になってる『竜殺し』なんだー。ちな、ぉっさんさー」

「なんだよ?」

「さりげ金モっしょ?『竜殺し』は30億近く稼ぃだって聞ぃたしー。

 なによりも、ぉっさん。自分で金モだってゲロったっしょ」

「!!?」


誘導された!?

てっきりバカなのかと思ったが、意外と強か!?


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