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第114歩目 はじめてのランダム!双子神①

前回までのあらすじ


謎の少女モリオンの(自称)教育親となった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今話より、『星空咲音編』に突入です。


□□□□ ~俺様至上主義~ □□□□


長い長い単身赴任から帰還して3日が過ぎた。


この3日間は特にダンジョンに繰り出す訳でもなく、アテナやドールの為に時間を費やしてあげた。

帰還してのアテナの態度やドールの尻尾の振られ具合から、相当寂しい思いをさせてしまったようだ。


その寂しさを埋める意味合いでも3日間の時間が必要だった。


特に初日などは酷かった。

「お前らは磁石かよ!?」と思うぐらい、くっついて離れなかった。まるでモリオンを彷彿させるかのような.....。



そして、4日目。

勢い込んで教会に出向こうとしたら、衝撃の事実.....。



結局、帰還して20日目。

無事王都のDランクダンジョンもクリアした俺達は4度神界に赴くこととなった。


今回の最大の目的は『アルテミス様に試練を用意してほしい旨』を伝えることだ。


以前にも説明したが、俺はつい最近まで『試練=クリアするダンジョン』だと勝手に思い込んでいた。

そのせいで前回接待した分の報酬である試練は、CランクかDランクどちらにするか決めきれずに、結局次回赴いた時に伝えると言うことでアルテミス様と合意に至っていた。


つまり、今回は誰のクリスタルも所持していないことになる。

それはどの神様にあたるかわからないという本来の仕様で挑むことに他ならない。


(いきなりニケさんに会える可能性もあるんだよな!?オラ、わくわくすっぞ!)


ちなみにアルテミス様への伝言は、神界を自由に移動できるアテナに頼めばいいらしい。.....大丈夫かな?


・・・。


少しずつ少しずつ意識が覚醒してくる。

目を開けると、もはやお馴染みといった白くて何もない面白みが全くない場所に俺はいた。


どうやら無事神界には来れたようだ。


と、ホッとしていたら.....


「.....なぜ人間がここ(神界)にいる?」


明らかに不機嫌そうな男の声がしてきた。


どうやら今回は女神ではなく男神みたいだ。

神界に於いては、初の男神ということに少し緊張する。


「.....おい、聞いているのか?俺様の問いに答えろ」

「あっ!し、失礼しました。はじめまして。俺はアユ.....」

「貴様のことなどどうでもいい。俺様の問いだけに答えろ」

「.....も、申し訳ありません」


恐ろしく高圧的な態度に若干イラッときたが、相手は神様。

以前アルテミス様に教わった通り、迂闊な思念と行動は控えるべきだ。


そんなことを心に戒めていたら、


「この俺様を無視するとは不敬なり」

「.....え!?」


───ドンッ!


「ぐぅっ!?」


男神様が何かをポツリッと呟いたかと思った瞬間、上から見えない何かが、まるで俺を押し潰すかのように強烈な圧力をかけてきた。


車に轢かれた憐れなカエル。


今の俺はそれに等しい状態だ。

この謎の圧力では死ぬことはなさそうだが、それでも苦しい。

まるで強制的に平伏させられているかのような感覚だ。しかも、相手の状態など一切お構いなくといった感じで。


「早く答えろ。殺すぞ?」

「(.....は、話したくても話せません!)」


謎の圧力のせいで、口を開くことすらできない。

このままでは、また男神様の怒りを買ってしまう、と危惧した俺は懇願する勢いで状況を思念してみた。


してみたのだが.....


「不敬。不敬。不敬。不敬。不敬」

「(.....ちょっ!?聞こえていないのか!?)」


どうやら通じていない.....?ようだ。

神様全員が心を読めると聞いていただけにショックが大きかった。


だが.....


男神様の冥く醜悪に満ちたニヤけ顔をなんとか仰ぎ見たことで全てを理解した。


(.....くそッ!端から俺の言葉なんて聞くつもりはなかったってことか!)


神。


アルテミス様とはまた違った『神』の存在だ。

崇高にして、偉大、そして至高の存在である『神』に、下賤にして、野蛮、そして愚かな存在である『人間』が、神に声を、言葉をかけること自体が畏れ多い。


それを具現化した神というのが、この男神様なのだろう。


・・・。


ただ、状況は極めて危険だ。

まさか本当に殺されはしないと思うが.....。し、しないよね!?


芋虫の如く、ただ蠢くことしかできずに困惑していたら、こういう状況をいつも打開してくれるのは奴だった。


「やめてーーーーー!私の歩なんだからーーーーーヽ(`Д´#)ノ」


みんなご存知、アテナだ。

この場がなんとかなるのならアテナのものになってやってもいい!、そう思えるぐらいヤバい状況だった。


「.....なんだ。誰かと思えば、クソ生意気な妹か」

「今すぐやめてー!歩が死んじゃうー!」


よくわからないが、今のやり取りを見ただけでも、あまり兄妹の仲はよろしくないみたいだ。

アテナも珍しく激昂している。.....た、助かるかな?


「.....いいだろう。妹に免じ、助けてやろう」


──フッ!


「あ、ありが.....」


体にかかる圧力が一瞬和らいだ。







と、思った瞬間、


───ドドンッ!


「.....ぐぶっ!?.....おええぇぇぇ」


先程よりも明らかに強い圧力が俺を襲った。

そのあまりの威力に、マンガとかでしか見たことがない嘔血とでも言えばいいのか、盛大に血を吐き出し、そしておまけに七色の汚物も.....。


(まずい!マズイ!まずイ!マズい!不味い!不味イ!本当に死ぬ!!)


一度死んでいる身ではあるが、改めて死の恐怖を感じた。


全身が痛い。

体中が痛い。


あらゆる負の感情が俺を襲う。


そして、次第に薄れ行く意識の中、


「ははははは!愉快!愉快!愉快!愉快!愉快!」

「やめなさーいヽ(`Д´#)ノ」


狂喜な歓声を上げる男神様と、俺の為に必死に抗議しているアテナの声を子守唄にして俺は意識を閉じた。



(.....はぁ。神様って本当なんなの?まともな神経の神様はいないのかよ.....)



□□□□ ~安らげる存在~ □□□□


.....柔らかい。

.....気持ちいい。


そして、


.....いい匂いもする。


「あー!よかったー(´;ω;`)」

「・・・」


心地好い眠りから解放された眠り姫ならぬ眠り凡人である俺は、アテナの歓喜に出迎えられた。


「.....い、、きているんだよな?」

「うんー!だいじょぶー?」


───ぽふっ。ぽんぽん


「.....大丈夫だ。ありがとう」

「にへへー(*´∀`*)」


頭をぽんぽんされたアテナは、いつものように八重歯を覗かせながらにぱー☆と微笑んだ。かわいい。


この笑顔.....。

どうやら本当に生きているようだ。.....別にアテナを疑っていた訳じゃないよ?


さて、アテナの前で強がってみたのはいいものの、実は全然大丈夫じゃない。


体の震えが一向に止まらない。

意識をしっかり保たないと気を失いそうだ。

己を強く保たないと今すぐにでも涙がこぼれそうだ。


圧倒的な『死の恐怖』。


恐れを抱かずにはいられなかった。

正直アテナが側に居てくれなかったら、俺は目覚めた瞬間に心を壊し、廃人と化していただろう。


「歩(。´・ω・)?」

「.....大丈夫だ。大丈夫.....なんだけど、今は側にいてくれ」


───むにゅ


アテナをそっと抱き寄せる。

柔らかくて幸せな感触が俺を、俺の心を、俺の存在自体を包み込む。


「いいよー( ´∀` )歩はあまえんぼうさーん!」

「.....助かる」


いつもはダメな子であるアテナも、俺が本当にピンチの時だけは必ず寄り添ってくれる。

感謝せずにはいられない。.....いや、調子に乗るからほどほどの感謝にしておこう。



こうして俺は落ち着くまで、アテナときゃっきゃうふふをして楽しんでいた。

キレかかっている存在を忘れて思う存分.....。



□□□□ ~放置プレイ?~ □□□□


「早く消え失せろ」

「・・・」


唖然とした。

心を落ち着かせるまでアテナときゃっきゃうふふを楽しんだ俺に、男神様から放たれた第一声がそれだった。


ここに到着して以降、どうにもこの男神様はイライラしっぱなしである。

何がそんなに御心を煩わせているのだろうか。当然、原因は俺なんだろうけど.....。まさか人間嫌いとか?


「ど、どうすればよろしいのでしょうか?」

「.....なに?そんなこともわからないのか?」

「ひぃ!も、もももも申し訳ありません!全くわかりません!」

「ちっ!面倒な。なぜこの俺様が、貴様如き人間の相手などしなければならん!」


俺は蛇に睨まれたカエルの如く、ひたすら低頭平身に努めた。


そもそも、俺としてもどうすれば戻れるのかとんとわからない。

今まではアテナに導かれたり、いつの間にか意識が戻っていた。


もしかしたら、何かルールみたいなものがあったのかもしれないが、あの大雑把を絵に描いたアルテミス様のことだ。

きっと正式な手順を踏まずにそれを行っていた可能性もある。


頼みの綱のアテナさんも、俺が落ち着いたとみるや早々に父親のところに行ってしまった。

思わず、「パパのところじゃなくて、アルテミス様のところに行けよ!」とツッコんでしまったほどだ。


(.....意外とアテナはパパ大好きっ子か?)


ちょっとジェラート、いや、ジェラシー。

ジェラートなんて31ぐらいでしか食べたことがない。


とりあえず俺にはどうしようもできないので、ひたすら成り行きを見守っていたら、


「これでいいのだろう?早く消え失せろ」

「.....え?」


男神様に投げ捨てられるように渡されたのは.....







『たわし』






だった。


なるほど。

もしかしたら、本来得られる『権利』とやらを頂くことで下界に戻ることができるのかもしれない。


それはいい。それはいいのだが.....


『たわし』は酷くないだろうか。


そもそも、この男神様はダーツすらしていない。


アルテミス様の話では、得られる権利は神様がダーツで決めると言っていた。

更に言うなら、俺の場合は俺がダーツをできるとも言っていた。

アルテミス様の言葉を信じるなら、この男神様はいろいろと矛盾しているようで腹立たしい。


「.....?なぜ消え失せない?」

「と、言われましても.....」


どうやら男神様も事情を把握していないようだ。

当然、俺にもわからない。


(.....ちょっと神界のシステム杜撰すぎない?神様もわからないってどうよ?)


男神様が凄くイライラしながらも調べ出したので、俺は借りてきた猫のように大人しく待つことにした。

まるで口癖のように「アフロディーテが.....」「アフロディーテが.....」と言っている辺り、イライラの原因はそこにあるのかもしれない。


正直なところ、待っているだけなのも退屈なので、この男神様について語ろう。


まず名前はわかりません!だって、名乗らないんだもん.....。

アテナと不仲っぽく、アフロディーテ様うんぬん言っているから、なんとなくの予想はつくけど。


次に容姿全般。恐ろしくカッコいい。

トキオさんもイケメンだったが、そのトキオさんですら霞む程の超絶イケメンと言っていい。人類には到達しえないかっこよさだろう。


身長は俺よりも高い。180は確実に越えている。

見た目は完全に主人公のそれ。100人に問えば100人全員が即時に「この人!」と指差す程の勇者然に英雄然。

モデルのようにスラッとした体型ながらもなよなよとしてはおらず、むしろ引き締まったガチムチ系のような筋肉を恥ずかしげもなく晒している。多分ナルシスト、.....いや、間違いなくナルシストだろう。

そして特徴的なのが、手にしている巨大な斧?槍?戟?多分ハルバードと呼ばれるものだ。.....似合いすぎ!


あまりのイケメン英雄っぷりに、世の全ての女性が、いや、人に限らず神でさえも、この男神様の虜になってしまうと思われる。性格さえよければ.....。

同じ男である俺でさえも、カッコいい(ぽっ///)、と嫌々ながらも思ってしまうぐらいだ。


・・・。


ちょうど説明を終えたところで、男神様の調べものも終わったみたいだ。ご都合って助かるよね。


「どうやら貴様は特別な存在らしく、貴様の分の権利()()は俺様であっても勝手に決められないらしい」

「そ、そうですか。申し訳ありま.....」

「あのクソ生意気な妹が何かしたに違いない。忌々しい!忌々しい!忌々しい!忌々しい!忌々しい!」


───ガンッ!

───ガンッ!

───ガンッ!

───ガンッ!

───ガンッ!


男神様はそう言うと、憎悪の籠った恐ろしい表情よろしく、唐突に手にしていた巨大なハルバードをひたすら叩きつけ始めた。


(この神様怖すぎる件!.....と言うか、よく見ると武器の刀身が血塗られたように真っ赤じゃねえか!)


ちなみに、俺が当たり前のように思念できているのは理由がある。


アテナに名前は教えてもらえなかったが、この男神様は何も考えていない無思慮な神様で、人間はおろか他の神の言葉すらも聞き耳を持たない性格をしていると教わった。

その為、耳に入ってくる言葉 (心読含む)全てに対して興味すらなく、聞き流しているのだとか。

ましてや俺の、人間の言葉なんてその辺の虫と変わりないとのこと。ただ、プライドだけは異常に高いので侮辱は厳禁とか。


男神様は俺の待遇が、もしくはアテナの対応?が、余程腹に据えかねたのか、


「.....俺様は忙しい。貴様なんかの相手などしてられるか!」

「も、申し訳あり.....」

「俺様はもう行く」

「え?で、では、俺はどう.....」


とんでもないことを言い出した。


しかもアテナの言う通り、この男神様は俺の言葉など全く意に介していない。

かろうじて存在だけが認識されているぐらいだろう。邪魔な存在としてだが.....。


そして、困惑している俺をよそに.....


───スゥ。


「ちょ、待てよ!!」


今まで目の前にいた男神様の姿形が突然消えてしまった。

俺が思わず、某ドラマのセリフを言ってしまったことからも、その動揺ぶりは窺い知れるだろう。


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


「えぇ....」


どうやら男神様は本当に行ってしまったようだ。

後に残されたのは、俺とドールの権利分となってしまった『たわし』のみ.....。



(これ、どうすればいいんだ?.....てか、ドールごめん!また『たわし』になっちゃったよ.....)



俺は心の中でドールに謝罪しつつ、アテナが戻ってくるのを一人寂しく待つのだった。



次回、NTR宣言!?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


~アテナの制限?~


単身赴任から帰還して4日目。


「今日は教会に行こうと思う」

「えー!まだあそびたーい!」

「3日間遊び倒しただろ?あんまりダラけるのも考えものだぞ?」

「ぶー(´-ε -`)歩はほんとーにまじめだよねー。すこしぐらいハメはずしなよー」


実は思いっきり羽目を外してました!


「そ、そうだな.....。とりあえず行くぞ!」

「んー。教会でなにすんのー?」

「何って.....。神界に行くんだよ。アルテミス様に試練をお願いする」

「誰がアルテミスお姉ちゃんにお願いするのー(。´・ω・)?」


「え?アテナに頼めばいいって、アルテミス様から聞いたんだが.....」

「わたしー?別にいいけどー、どうやっていくのー?」

「ん?いつも父親のところに行く要領で、アルテミス様のところに行けばいいんじゃないのか?できないのか?」

「できるよー(・ω・´*)そうじゃなくてー、どうやって神界にいくのー?」


なんだろう?会話がいまいち噛み合っていないような.....。


「だから、今から教会に行くんだろ」

「それじゃー、私は神界に行けないじゃーん(・ω・´*)」

「え?え?え?.....ど、どういうことだ!?」

「えー!わからないのー?歩はバカだねー┐(´ー`)┌」


「.....いいから、説明しろ」

「かんたんだよー。私の分の攻略の証はー?」

「え!?アテナも神界に行くには必要なの!?」

「とうぜーん( ´∀` )下界におりたらー、私は庶民といっしょだからねー」


また俺の勝手な思い込み!


まさかの攻略の証不足とは.....。

こうして俺は再びダンジョン攻略に勤しむことになった。



(※)ちなみに、マスター戦の時のみアテナとドールを連れ出しました。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんだか話の流れがよくわからない。 前回アルテミスが降臨してある程度満足させたから、それでニケと会わせてくれるのかと思いきや、なんか定期的にまた試練を受けるって流れにいつの間にかなって…
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