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第102歩目 神を震わしたるもの!女神アルテミス⑤

前回までのあらすじ


ドールにはお酒を呑ませたらいけないと痛感した。

□□□□ ~三度神界へ~ □□□□


気が付くと神界にいた。


その日朝食を済ませた俺達は、早々に教会に出向き、早速祈ることにした。

今回はドールも含めて3人で祈ったのだが.....


「ドールはいないんですね」

「そりゃそうさ。前にも言ったが、アユムっちが特別なだけなんだからさ」


神界に来たのは俺とアテナだけだった。


いや、なんとなくそんな気はしていた。

フラ○ダース状態(昇天)の時に、ドールの魂みたいなものが一緒にいなかったので.....。


ドールはアルテミス様に相当気に入られているらしいのだが、それでも神界には来れないようだ。

そう考えると、神界にホイホイと来れる俺はアルテミス様の言う通り、相当特別な存在なのだろう。


「アルテミス様、お久しぶりです。これつまらないものですが.....」

「あぁ、久しぶりだね。なんだい?お土産かい?」


アルテミス様に渡したのは、アテナお気に入りのお団子だ。


アテナの助言で持ってきたのだが、考えてみれば当然だった。

これから俺は接待に勤しむ訳なのだから、先方のお宅である神界に伺うのなら手土産は必須だ。

異世界、そして神界という特殊なケースに、ついつい社会人としてのマナーを忘れてしまっていたようだ。


アテナは地味に役に立つと思っていたら.....


「.....アユムっち」

「あれ?お気に召しませんでした?アルテミス様は甘いものがお好きだと聞いたんですが.....」


アルテミス様は微妙な表情をしている。

怒っている訳でもなく、さりとて嬉しくない訳でもないような.....。


「.....半分無いんだけど?」

「ふぁ!?」


見せてもらうと確かに半分無い。

いや.....、これは半分と言っていいのか?


俺が渡したお団子は全部で5本入りの、串にお団子が3つ刺さった普通のタイプものだ。

普通半分無いと聞けば、常識的には2~3本無くなっていると考えるのが一般的だろう。


しかし、見るとお団子は5本きちんと入っている。

但し、串に刺さってるお団子は1個ずつしかないのだが.....。


(あのくそ駄女神!食べやがったな!

 道理で怪しいと思ったんだよ!「お土産は私がもつよー( ´∀` )」なんてことを言い出すからさ!)


食べたのはきっと、昇天前の俺が意識を失った後だろう。

アテナのお迎えが少し遅かったような気がしたし。


・・・。


アテナにお仕置きしたいのはやまやまだが、あのバカは神界に着く早々、父親のところに足早に向かっていってしまった。

以前同様、何度も振り返っては手を振っていたので「かわいいなぁ」なんて思っていたが、どうやら俺のお仕置きから逃げる為の方便だったらしい。


(帰ってきたら、歩スペシャルをお見舞いしてやる!)


アテナへのお仕置きが決まったと同時に、やらなければならないこともある。

当然謝罪だ。こんなつまらないことで、機嫌を損ねられたらたまったものじゃない。


「アルテミス様、申し訳ありません。あのバカが勝手に食べてしまったようで.....」

「あひゃひゃひゃひゃひゃwひぃ~w.....あ~、いいよ、いいよ。

 アテナっちらしいね。それにしても.....、アユムっち達は、本当にあたしを飽きさせないねw

 開けたら団子が半分無いとか、さすがのあたしもビックリしたよw一瞬、そういう設定なのかと疑ったねw」


どうやら機嫌を損ねてはいないようだ。

と言うよりも、良くなっているような気もする。.....アテナのおかげか?


(いやいやいや!それならそれで、俺に一言ぐらい相談しろよ!

 たまたまアルテミス様のツボに嵌まっただけに違いない。うん、絶対そう!)



アルテミス様の機嫌は良くなったが、アテナへのお仕置きが回避されることはなかった。



□□□□ ~違和感~ □□□□


アルテミス様が早く遊びに行きたいということなので、話も早々に切り上げ、本題に入ることにした。

本題とは当然ダーツのことだ。


俺は前回同様『自由』を選択するのだが.....


「そう言えば、ドールの分はどうするんですか?」


今回はドールも攻略の証を捧げている。

当然、神の恩恵を受ける権利はあるはずだ。


確か前回の話だと、アルテミス様がダーツをやって、神の恩恵内容を決めるということらしいのだが.....


「アユムっちがやってもいいよ。そのほうが狐も喜ぶだろ?」

「え!?いいんですか!?」

「構いやしないよ。せいぜいいいのを当ててやんな」

「ありがとうございます」


俺がアルテミス様の代わりにやってもいいらしい。

これだけでもドールは相当気に入られていることがよく分かる。


アルテミス様に感謝を述べ、早速矢を受け取ったのだが.....


(.....ん?)


妙な違和感を感じた。

だが、その違和感の正体がわからない。


アルテミス様の悪戯か?と警戒したが、矢は普通の矢だ。何の細工もされてはいない。

アルテミス様にも、俺自身にも、そして今この場にも特に変わったところは見受けられない。


(.....?気のせいか?)


「どうしたんだい?」

「.....い、いえ、何でもありません」


アルテミス様の極自然な怪訝な表情からも、何かを企んでいるとは到底思えなかったので、気のせいだったようだ。

いくら悪戯好きだとは言っても、何かある度にアルテミス様を疑うのは良くないだろう。


気を取り直して、ドールのダーツに挑む。


アルテミス様のダーツなら高確率で『自由』を当てられる。

そして『自由』の場合は、俺が内容を自由に選べることになっている。


強さを渇望しているドールの為だ。

ここは一つ、強い加護でも選んでやるか!と勢い込んでいたら.....


挿絵(By みてみん)


用意されたのは、規定とやらで決まっている当てるのが恐ろしく困難なダーツボードだった。


「.....え?あれ?こ、この前のやつじゃないんですか?」

「当たり前だろ?あれはあたし用に用意した特別製さ。それ以外はみんなこっちだよ」


「え、えっと.....。仮に俺がアルテミス様のお願いを断った場合は、どっちのボードになるんですか?」

「当然、こっちに決まっているだろ?」


そう言って、アルテミス様が指差したのは困難なボードのほうだった。


「・・・」

「あひゃひゃひゃひゃひゃwなに勘違いしてるのさ?

 あたし以外の奴のお願いなんて、あたしにはどうでもいいんだよ」


ドールの分をやってもいいと言われたので少しは見直したのだが、やっぱりアルテミス様は『神』だった。


こんな困難なダーツに挑むのはむしろ辛い。当てられる気がしない。

自分のダーツならまだしも、人の、ドールのダーツだと思うと余計気が重い。


「なにしてるのさ?ちゃっちゃと投げな!ちゃっちゃと!あひゃひゃひゃひゃひゃw」

「・・・」


手伝ってくれる様子もないようだ。

これはつまり、俺は知らず知らずの内に、アルテミス様の悪戯の術中に嵌まってしまっていたということなのだろう。はぁ.....。


しかし、こうなってしまった以上は仕方がない。

この人は悪戯をしないと気が済まないのだろうか?と内心悪態をつきながらも、勢いよく回るボード目掛けて、意を決して矢を投げた。


・・・。


───ストッ!


小気味良い音ともに矢がボードに刺さった。


徐々に回る勢いを失っていくボード。

次第に露になるボード上の文字群。


・・・。


しばらくすると、ボードが完全に沈黙した。

当然、結果が気になる。


そして、矢が刺さりしその場所に書かれている文字を確認すると.....











『たわし』











「うわああああああああああ!ドおおおおおールうううううごめええええええええええん!」

「あひゃひゃひゃひゃひゃw

 それだよ!あたしはそれを見たかったんだ!ひぃ~wあひゃひゃひゃひゃひゃw」


その結果に、俺は思わず頭を抱えて絶叫した。


罪悪感がハンパない。

申し訳なさが尋常じゃない。

自分自身の運の無さに呆れてものが言えない。


(ド、ドールの頑張りを踏みにじってしまった.....)


ただただその思いで胸が張り裂けそうだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

考えてみてほしい。


下書きだけなら、間違いなく最優秀賞を取れる他人の絵があるとする。

それに俺が色付けをした途端、佳作からも漏れてしまった。


俺が余計なことをしなければ.....。

俺がその作品に携わらなければ.....。


まさにそんな気分だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あひゃひゃひゃひゃひゃw

 アユムっちは期待通り、いや、それ以上の結果を見せてくれるから面白いね~w」

「・・・」


アルテミス様はお腹を抱え、イスから転げ落ちそうになるぐらい大笑いをしている。

『人の不幸は蜜の味』とも言うが、それをここまで体現している人はそうそういないだろう。


・・・。


どんなに悔いても、結果は覆らない。

『たわし』は『たわし』でしかないのだ。


「ほら、『神のたわし』だよ。一生ものだから、乱暴に扱っても大丈夫さ。あひゃひゃひゃひゃひゃw」

「あ、ありがとうございます.....」


アルテミス様から『神のたわし』とやらを下賜された。

女神級ワンピース並みの丈夫さを誇るらしいので、もう「他のたわし」いらずらしい。HAHAHA.....。


(ドールには掃除を頑張ってもらうとするか.....。いや、俺が頑張るか.....)


なんてことを遠い目をしながら考えていたら、


(.....ん?)


「どうしたんだい?」

「.....?い、いえ、なんでもありません」


まただ。

またしてもよくわからない違和感を感じた。


先程の違和感は、結局アルテミス様の悪戯が原因かと思っていたのだが、どうやら違ったようだ。

先程と今の違和感は全く同じものだ。.....なんだというのだろう?



そのまま奇妙な違和感に包まれつつ、次のステージである俺のダーツに挑むことになった。



□□□□ ~泣いたっていいじゃない、人間だもの~ □□□□


謎の違和感に包まれつつも、俺のダーツの出番になった。

当然ダーツボードは.....


挿絵(By みてみん)


アルテミス様の特別製だった。


「ですよねー.....」

「当然だろ?そもそもあたしが遊びに行くことが目的なんだからさ」


何を当たり前のことを、と若干呆れ顔のアルテミス様から矢を受け取る。


アルテミス様が側に寄る度に香り立つ、酸っぱくも香ばしい『アルテミス臭 (俺命名)』。

俺はその『アルテミス臭』を嗅ぐ度に血湧き肉躍っていた。


しかし、同時に.....


(まただ.....。またこの不思議な感じだ.....)


奇妙な違和感もまた感じるようになっていた。

いまだにその違和感の正体が全くわからない。


「なにしてるんだい?そんなに心を乱していたら、当たるものも当たらないよ。

 やめておくれよ?あたしのダーツも外すなんてことはさ」

「す、すいません.....」


謝罪するも先程失敗していることと、いまだに感じる違和感のせいで、どうにも落ち着くことができない。

このままではボードにすら当たらない可能性もある。


そんな心配が、俺を余計不安に、そして心を更にざわつかせた。


「はぁ.....。落ち着かせるどころか余計乱れているじゃないか」

「す、すいません.....。どうにも緊張しちゃって.....」


「いくらなんでもさっき失敗したからって、このボードで失敗なんてしやしないよ。安心しな」

「は、はぁ.....」


「あ~、もう!じれったいね!あたしが手伝ってやるよ!」

「た、助かります」


アルテミス様は痺れを切らしたのか、前回同様、俺の背後に回り右手を添えてきた。

背中に柔らかくも豊満な胸の幸せな感触が伝わってくる。心が跳ねる。


そして当然のように、


───すんすん


アルテミス様の脇から漂う香ばしい.....


───すんすん


香ばしい『アルテミス臭』が.....、


(.....あれ?臭わない?)


香ばしい『アルテミス臭』が僅かしか感じられない。

それどころか、若干フレグランスな香りすら漂う。


(ど、どういうことだ!?アルテミス様の匂いはこんなものじゃないはず!

 一度漂えば、千里をも駆けると言われるほどの名臭だぞ!?それほど臭く、素晴らしいものなのに!)


俺が軽く混乱していたら、


───ドゴッ!


「そこまで臭くないよ!失礼な男だね!」

「ごふっ.....。す、すいません.....」


アルテミス様より、ボディーブローを下賜されることになった。


それはいい。それはいいのだが.....


どうしても解せない。

本当にアルテミス様の香しい匂いは凄まじいのだ。

それこそ少し側に寄るだけでも香り立つほどなのに、今はそれがほとんどない。


俺が愛したアルテミス様(匂い)がそこにはいないのだ!



もはやこの世界の危機に瀕する程に近い錯乱をしていたら、アルテミス様からその意外な結末を知らされた。


「さっきからどうもアユムっちの様子がおかしいと思っていたら、そういうことかい」

「ど、どういうことですか!?」

「アユムっちがあまりにもあたしの匂いを嗅ぐからね。気持ち悪くて剃っちまったよ」

「!!?」


そう言って、アルテミス様は恥ずかしげもなく脇と下を見せてくれた。

本来なら鼻血ものなのだろうが、それ以上の衝撃が俺を襲った為、鼻血どころではなかった。


ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。


何もない。

脇にも下にも何もない。


以前あった森林がすっかりなくなり、つるつるで真っ平らな大地へと変貌してしまっていた。

豊かな大自然が.....、人の、神の手によって破壊し尽くされてしまっている。


俺はあまりの無慈悲さに放心状態となった。

全身から力が抜け、ガックシと膝を着いてしまった。


「どうだい?これで大分匂いも抑えられたろ?更にアフロディーテから香水も借りて付けてみたのさ」

「あ、、あ、、」


「残念だったね~wアユムっち?あたしの匂いが嗅げなくなってさwあひゃひゃひゃひゃひゃw」

「あ、、あぁ、、あああああ、、」


違和感の正体がようやくわかった。

『アルテミス臭』がこの部屋には充満していなかったのだ。

更に言うなら、まっさらになったことで『アルテミス臭』が漂いにくくなっていたのだ。


俺が愛したアルテミス様(匂い)は既にこの神界にはいなかった.....



神とはなんと無慈悲なのだろうか。

神とはなんと残忍なのだろうか。

神とはなんと冷酷なのだろうか。


そして.....


神とはなんと愛がないのだろうか.....


・・・。


だから.....


「うおおおおうおうおう.....!おおおおおうおううう.....!

 おおおうおおおうおお.....!ううううおおおおおお.....!」

「え!?アユムっち!?」


俺は本当に悲しんだ。

アルテミス様の御前とか関係なく、見栄も外聞も全てかなぐり捨てて、一人の人間として大泣きをした。


例えるなら、親類が亡くなった時に近い。

「何を大袈裟な」と思われるかもしれないが、それぐらい俺はアルテミス様の匂いを愛していた。

何に悲しみを感じるかは人それぞれだが、少なくとも俺はアルテミス様の匂いを愛していたのだ。


そして.....


「あなたは!!それで!!楽しいのかもしれませんが!!俺は!!非常に!!悲しいです!!」

「!?」


同時に吠えた。

もはや無礼とか、接待とかの思惑が全て頭の中から吹き飛び、胸中に渦巻く怒りと無念さを吐き出した。


「俺はアルテミス様の匂いが好きだったんです!!匂いを愛していたんです!!」

「ええええ.....。こ、こんなにちっとも嬉しくない告白は初めてだよ.....」


「それを!!どうして!!剃って!!しまったんですか!!」

「そ、剃るも剃らないも、あたしの勝手だろ?」


「勝手じゃないです!!アルテミス様の匂いは、もはやアルテミス様だけのものじゃないんです!!」

「あたしのものだろ!?」


「あの匂いこそ!!まさに世界の宝だったんです!!それをどうして.....。どうして.....、どうして.....」

「・・・」


胸につかえる思いの丈を全て吐き出した俺は、再び泣き出した。

さすがのアルテミス様も圧倒されっぱなしだ。


『泣く子と地頭には勝てぬ』という言葉があるが、まさにそれだ。

今まさに俺は泣く子と化している。愛すべきものを失った悲しみに暮れながら.....。


「.....アルテミス様」

「な、なんだい?」


「.....もう一度生やしてください」

「.....は?」


俺の唐突なお願いに、アルテミス様はキョトンとしている。

今の俺には、アルテミス様の鋭い眼光すら、ただの猫の目のようにしか映らない。


「もう一度!!生やしてください!!」

「あ、あたしに命令を.....」


「なんでもいいので!!生やしてください!!」

「!!」


俺の意外な反抗に、アルテミス様が体を一瞬ビクつかせたのが分かった。

『窮鼠、猫を噛む』だ。


しかし、この時の俺は何かに取り憑かれていたんだと思う。

後に冷静になった時に、自分の愚かな行動に顔が青ざめたものだ。


それぐらい哀しみに暮れ、怒りに無念に燃えていたのだろう。.....おぉ、怖っ!


「.....生えているかどうか確認しにきますね」

「え!?」


「.....生えるまで、.....以前の匂いが戻るまでずっと確認しにきます。

 .....ひたすら確認しにきます。.....他の神様にも確認します。

 .....アルテミス様のペット達にも確認します。.....仮に俺が死んでも、ヘカテー様に確認します」

「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」


あの傍若無人なアルテミス様が、俺に恐れ慄いている。.....いや、引いている?


後に聞いたところ、どうやらこの時の俺の目は死んでいたらしい。虚ろだったらしい。

アンデッドでもないのに、アンデッドに勝るとも劣らない程の虚ろな目だったようだ。どんな目だ!


「.....いいですね?俺の愛したアルテミス様を返してください!!」

「ひぃ!.....わ、わかった。わかったから近寄るんじゃないよ!気持ち悪い!」


こうして俺はアルテミス様と約束を交わすことに成功した。

この約束が果たされるかどうかは、アルテミス様のみぞ知るってやつだ。


ちなみに、この日を境にアルテミス様はアンデッド系には容赦をしない神様になったのだとか.....ひぃ!



良い子の諸君!

陰キャやオタクはバカにしたらダメだぞ。後が怖いからな。お兄さんとの約束だ!



あっ。結局ダーツはアルテミス様が投げた。

なんでも、俺に触れたくないらしいとかで.....。


次回、再び降臨!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


~その後のバット~


「そう言えば、バットはアテナがペットにするらしいですが、いいんですか?」

「構いやしないよ。てか、あの子はもうあたしの事はなんとも思ってやいやしないよ」

「.....え?どういうことですか?」

「ヘカテーが早々に来て、さっさと記憶の変換をやっちゃってたからね。今はアテナっちに絶対服従さ」


「ええええ!?そんな簡単に終わっちゃうものなんですか!?」

「そりゃそうだろ。ヘカテーはあぁ見えて相当の実力者だからね。たかが神獣如き、造作もないよ」

「造作もないって.....。結構揺るぎない意思に思えたんですが.....」

「地力が違う。どんなに鋼の肉体を持とうが、どんなに鋼の意思を持とうが、圧倒的な力の前には無力なのさ。

 逆らいたくば、力を持たないとね。力なき意思は無力。力なき自由は無力。力なき主張は無力だよ」


「おおぅ.....。厳しい世界ですね.....」

「どの世界も弱肉強食は基本だろ?行使される力が違うだけでさ」

「まぁ、そうですね。スポーツも、勉強も、仕事も、恋愛もそうですしね」

「そうそう。だからバットはもはやあたしのペットじゃないわけ。優秀な子だから可愛がっておくれよ」


「バットは今、どうしているんですか?」

「ニケちゃんの仕事の補佐をしているみたいだよ。結構慕っているように見えたね」

「そ、そうですか.....(あの蝙蝠野郎、まさか俺のニケさんを狙ってたりしてないだろうな!?)」

「あの子は前々から、己の非力さに嘆いていたからね。ニケちゃんの強さに純粋に憧れているのさ」


「てか、ニケさんってそんなに強いんですか?なんか想像できないんですが.....」

「強いなんてもんじゃないさ。あたしやヘカテーが束になっても敵いやしないんだからさ」

「そんなに!?てか、あのかわいらしいヘカテー様もそんなに強いのか.....」

「ニケちゃんと仮に結ばれたら、アユムっちは間違いなく尻に敷かれるだろうね。あひゃひゃひゃひゃひゃw」


むしろ敷いてほしい!ニケさんなら大歓迎だ!


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