表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/349

第93歩目 vs.バット!神の試練①

前回までのあらすじ


アテナがこそこそ隠れて悪だくみをしていた。

□□□□ ~デビュー戦~ □□□□


意地汚いアテナにお仕置きをして既に1週間が経った。

あれからもコツコツとダンジョンに通い、遂にはダンジョンマスターのおわします最終フロアにまでたどり着いた。


しかし.....


見つからない。

どうしても、神の試練がある魔物部屋が見つからないのだ。

だから最終フロアにたどり着けても、先にダンジョンをクリアしてしまっては意味がない。


気ばかり焦るが、それでも今日もいつも通りダンジョンに向かうことにした。


・・・。


ギルドに着いた。


情報収集しに立ち寄ったのだが、なにやら騒々しい。

多くの冒険者やギルド職員達が、悩ましげな表情を浮かべている。何かあったのだろうか?


原因を探ろうとコシーネさんの窓口へ向かうと、


「あっ!お待ちしていました、冒険者さん!」


一際、明るい表情で迎えられた。


コシーネさんだけに限らないのだが、この傍迷惑な大家族はそれなりに美人だ。

ラズリさん未満ナイトさん以上といった感じだろうか。日本でなら一線級のアイドルに匹敵する。


故に期待されるような眼差しを向けられると、照れると同時にドキドキしてしまう。


「な、なにかあったんですか?」

「はい。現在冒険者さんが挑まれているダンジョンで、魔物部屋が確認されたのですが.....」


今までにも普通の魔物部屋は何個も発見されている。

それ自体は特に珍しいことでもなんでもない。

大体はすぐ討伐されて終わりなのだが、今回はどうやら事情が少し違うようだ。


「なにか?」

「討伐に向かったいくつかのPTが全滅してしまいました.....」


冒険者で、魔物部屋に挑戦する以上はこういうことも覚悟の上だろう。

それでも、迷わず成仏してほしい。


「それはまた.....。ちなみに全滅したPTの総合ランクはいかほどですか?」

「Aが3つとSが2つですね」

「Sもですか.....」


Aランクはともかく、SランクPTが全滅しているとなるとこれは当たりくさい。

この王都に滞在している冒険者の質はかなり高い。普通の冒険者のワンランク上の力はあると見ていいだろう。


それが全滅.....。

そうなるとその魔物部屋には、恐らくは神の試練を担当している強力なペットが控えているはずだ。


遂に見つけた!


俺が不謹慎ながらもほくそ笑んでいると.....


「はい。それなので、この案件はSSランク以上の方に委任されることが決まりました」

「.....委任?」


なにやら聞き捨てならない言葉が出てきた。


「このギルドの長より、冒険者さんに指名依頼が出されています。内容は魔物部屋の掃討です。

 この依頼の達成を以て、冒険者さんを正式にギルド上層部に推薦することが決まっております」


要は、推薦するだけの力が本当にあるのかどうか実力を示せ、ということなのだろう。


巷ではドラゴン討伐も実は嘘なのでは?と囁かれている。実際嘘なのでなんとも言えないが.....。

どうやら酒場での土下座の一件が原因らしい。

人間誰しも見たこともない功績を信じるよりも、実際見たことのある恥辱の方を信じるものだ。


それはいい。それはいいのだが.....


困った。

正直目立ちたくないので、このまま笑い者扱いされている方が大英雄になるよりも万倍もいい。


だが、魔物部屋は攻略したい.....

でも、そうなると必然的に大英雄にされてしまう.....


そんな感じで悩んでいたら、


「.....主。すまぬ」


しょんぼりした様子で、ドールが謝ってきた。

こうなった原因を作り出したことに責任を感じているのだろう。


いまだお利口さんモードのドールに、らしさを感じ取れない寂しさを感じつつも言葉を綴った。


「この依頼が終わったら、いっぱいもふもふさせてもらうぞ?それで今回の件はチャラな」

「よ、よいのか!?」

「行き違いはあったけど、俺の為にしてくれたことには変わりないからな。

 でも罪は罪だ。だから罰として、いっぱいもふもふはさせてもらうからな?」


最終的には試練をクリアすることにはなるだろう。

それならばいっそのこと、ここでドールの罪の意識をなくさせてしまったほうがいい。


そして許すとしても、無罪放免は責任感の強いドールでは到底受け入れ難いはず。

それならばなにか罰を与えたほうが、ドールもすっきりするというものだ。

俺は聖人君子でもなんでもない。一社会人として、信賞必罰こそが一番後腐れのない方法だと思っている。



こうして俺は指名依頼を受け、魔物部屋へと向かうことになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【指名依頼!魔物部屋の掃討】 ランク:SS

依頼:フランジュギルド長

詳細:ダンジョン15階層にある魔物部屋の掃討

報酬:特別報酬

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



□□□□ ~蜂王配下バット登場~ □□□□


魔物部屋は15階層にあるらしい。

こんな浅い階層にあるとは思いも寄らなかった。


神の試練だと言われれば、普通誰しもがもっと深い、そして魔物が強い階層を予想する。

その予想の裏を掻かれた。こういうところに、アルテミス様の意地の悪さが垣間見える。


「多分だが、アルテミス様の試練だと思う。ドールは大丈夫か?」

「うむ、問題ない。いつも通りで良いのであろう?」

「ねー?なんで私にはきかないのー(。´・ω・)?」


お前に聞いても意味ないからだよ。ピンチの時以外は役に立たないし。


「その通りだ。敵は俺が倒すから、アテナを守ってやってくれ」

「任せよ。姉さまの面倒は妾が見る」

「まかせてー!コンちゃんの面倒は私がみるねー( ´∀` )」

「.....アテナ、うるさい」

「ふええ(´;ω;`)」


アテナがやる気に燃える程、これ以上に厄介で面倒なことはない。

おとなしくドールに面倒を見てもらえ!



ドールにアテナ用の大量のお菓子を渡して、俺達は魔物部屋に突入した。


・・・。


「.....いない?」


魔物部屋に突入したはいいものの、何もいない。

無数の遺留品が散見しているだけで、その原因を作りし存在が見当たらない。どういうことだ?


「.....いや、おるぞ。このおぞましい気配.....間違いなくおる」


歴戦の猛者であるドールがそう言うならば間違いないだろう。

どこかに隠れて、俺達の油断を誘っているに違いない。


───ぱたっ

───ぱたっ


・・・。


刻々と時が流れるが、何も変化は見られない。

地面や上空を見渡しても、それらしきものは見受けられない。


───ぱたっ

───ぱたっ


嫌な汗が額を伝う。


見えない敵、わからない存在というのは、人間に恐怖を与える。おばけや幽霊などがいい例だ。

今まさに俺とドールは、そんな得体も知れない相手に緊張しているところだ。


辺りに警戒を払うも、それでも変化の兆しは一向に見られない。


───ぱたっ

───ぱたっ


それにしても、相手の考えていることがよくわからない。

俺とドールは間違いなく相手の存在には気付けていない。

俺達の隙や油断を狙っているのなら、もう何かしらのアクションがあってもいいはずなのだが.....


───ぱたっ

───ぱたっ


そして、決まってこういう時に何かしらのアクションを起こすのは当然こいつだった。


「てか、さっきからうるせえんだよ!何をぱたぱたしているんだ!?」


さっきから、この場の緊張感にふさわしくない軽快な音を立てているのはアテナだ。

なにやら地面を楽しそうに踏んでいる。


「見てみてー!この影うごくんだよー( ´∀` )」

「影が動く?なにバカなことを.....うぉ!?」


アテナが楽しそうに踏もうとしている影をよく見ると、確かに影はアテナに踏まれまいと必死に動いている。

原理はよくわからないが、非常に気持ち悪い。


.....てか、影?ダンジョン内で影なんてできるのか?


疑問に思った俺は、ドールの足元を見てみると.....やはりない。

アテナにもない。影があるのは何故か俺だけだ。


.....つまり、そういうことなのか?


俺が確信に至ると同時に、その謎の影は地面から這い出し俺達の前にその姿を現した。


鳥とも、獣とも言えるようなその風貌。

広げれば、ゆうに2mは軽く越えそうな翼は、羽毛ではなく膜でできている。

前肢は、親指が普通の指の形で鉤爪あることをのぞけば、全て細長く伸びている。

翼の膜はその人差し指以降の指の間から、後肢の足首までを結んでいる。


これは恐らく.....いや、間違いなくコウモリと呼ばれる生物に違いない。

ただ普通のコウモリと違う点があるとすれば、人間同様2本の後肢で地面に直立していることだろうか。

コウモリと言えば、天井にぶら下がっている印象があったので、少なからず驚いた。


そしてこいつもボス猿同様、


「.....お見事です。我輩のスキルを見破りし汝らこそ、

 我が主アルテミス様の試練を賜りし者達で間違いないですな?」


話せちゃったりするようだ。

まぁ、その方がコミュニケーションを取りやすいので助かる。


「その通りだ。俺がアルテミス様にお願いをした」

「.....なるほど。なるほど。汝からは凄まじい力を感じます。

 アルテミス様が、我輩をここに遣わされたのも納得できるというものです」


「.....わかるのか?」

「如何にも。我輩はアルテミス様が愛獣(ペット)

 五大王の一獣であらせられる蜂王様の配下『バット』と申す者。

 蜂王様の元では偵察隊隊長を務めておりますれば、情報を扱うことにおいて我輩の右に出るものはおりますまい」


五大王とやらがなんなのかはわからないが、これは想像以上の相手が来てしまったのではないだろうか。


仮に五大王をペットの頂点と考えると、バットはその頂点の1匹に仕える1つの部隊の隊長となる。

王の次に控える者となると、将軍クラス.....下手したら複数の将軍を束ねる大将軍の可能性も有り得る。


ものには順序がある。

いきなり強敵を送り込んでくるのはやめてほしいものだ。


「そう身構えることはないでしょう。

 我輩はアルテミス様より、汝らの力を見てくるように、と承っただけです。

 決して殺害する意思はありませんのでご安心ください」

「そ、そうなのか?」


確かにこの理知的なコウモリ男からは殺意が窺えない。

しかし、それだからこそ薄気味悪さが拭えないものも事実だ。


「はい。もしアルテミス様に汝らを殺害するご意思があるのならば、

 偵察隊隊長に過ぎない我輩よりも、その任にふさわしい者が遣わされたことでしょう」

「つ、つまり何か?お前は他のペット達に比べると弱いとでも言いたいのか?」


「その通りです。もちろん我輩も隊長という役職におりますれば、ある程度の実力はあります。

 しかし、我輩など吐いて捨てるほどの強者がごまんといるのも事実。その事だけはお忘れなきよう」

「・・・」


このバット以上の猛者がごまんと.....。

それだけで立ち眩みがしてしまいそうだ。俺、いつかは死ぬんじゃね?


「さて神界でアルテミス様も見ておられることでしょうし、

 おしゃべりはここまでにして、そろそろ試練に移るとしましょう。準備はよろしいですか?」


準備はいいかって?苦笑しか出ない。

ここまでバカ丁寧な試練というのも珍しい。実にユニークな試練だ。


「我輩は偵察が任務。それ故に戦闘は不得手としています。

 ですので、汝らのお相手はこの者達にお願いするとしましょう。.....行きなさい!我が眷属達よ!」


バットはそう言うと、畳んでいた翼を広げ舞い上がり、ダンジョン天井に見事にぶら下がった。

そうそれ!それならコウモリっぽい!


そして、広げられた翼からは.....


キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。キィーキィー。


けたたましい鳴き声とともに、


蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。蝙蝠。


無数の、それこそ何百いるのか数えられないぐらいの眷属、もとい蝙蝠達が飛び出してきて、俺達に一斉に牙を剥いてきた。


またこのパターン。勘弁してくれよ.....


とりあえず敵を知らなければ、勝利は危うい。

無数の蝙蝠達が襲ってくる前に、敵情を探るべきだろう。鑑定!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『こうもり』 レベル:102(C) 危険度:小


体力:1800

魔力:1650

筋力:1990

耐久:1700

敏捷:2200


【一言】こうもりって気持ちわるいよねーr(・ω・`;)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


無数に襲ってくる蝙蝠共は正直大したことはない。

この程度の強さならば、幼体のままのドールの結界でもなんなく防げるだろう。


アテナとドールの安全さえ確認できれば、俺は全力で戦える。


問題は.....バットだ。

正直確認したくはないが、せずにはいられないだろう。鑑定!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『バット』 レベル:351(SS) 危険度:特大


体力:12200

魔力:20000

筋力:11500

耐久:13000

敏捷:24000


【一言】私はモンキーちゃんのほうがすきだなー(´-ε -`)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ちょっ!?なにが偵察隊だから強くないだよ!十分に強いだろ!ふざけんな!!



今まさに、神の試練が始まろうとしていた。



次回、神の試練②!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今後ですが、ダンジョンでの戦闘は基本的に『神の試練のみ』となります。

主人公があまり無双していないように思われるでしょうが、『ダンジョン内の魔物相手では無双状態』なので敢えて描写はしていません。


ある要素の為に、もう一度ダンジョン内のザコ戦も描写する予定ですが、それ以降は神の試練のみとなります。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ