第92話 ユリユリと言えばやはり、硬派の女性走り屋でしょう? (9)
「いいえ、いいえ、気にしないでください……」
私はお礼を言ってくれるユイお姉さまへと首を振り、友人、仲間なのですから気にしないで欲しいと嘆願をすれば。
「お~い! 可憐~! こっちへ来てみなぁ~! 見通しが良いから~!」
「ほら~、可憐~! 早く! 早く~!」
佐方インターチェンジのパーキングエリアの上りと下りを繋ぐ陸橋の上から山田さまと安子さまの二人が大変下品に私へと向けて大袈裟に手を振り、手招きをしながら急かし呼んできた。
だから私の傍にいるユイお姉さまが、『ポン!』と優しく背を押してくれて、
「可憐、皆があんたのことをもう自分達の仲間だと思って呼んでくれているから行っておいで~! 友人を待たすのも悪いから~!」
そう、今まで私には表向きだけは友人を装っている人達……。この私が他校へと転校していって、事情を聴くための電話一本すらしてこないような知り合いは、前の聖女学院には多々いましたが。
山田さんや安子さんのように、お互いが気を遣わず言いたいことを言い。気に入らなければいがみ合う……。
そして更にお互いの言葉や意見──行動が気に入らなければ胸の掴み合い、殴り合いまで本気でして、その後はカラッと晴れた青空のようにお互いがわだかまりなく、和気藹々と会話をするような本当の友人は山田さまと安子さんが初めてなので。
「はい、総長! いってきます!」
私はいつものように『ユイお姉さま~』と呼ばずに。今日はレーシングチーム【堕天使】の集会の日なので、チームの一員らしく、ユイお姉さまへと告げると。
私は山田さまや安子さま……。そして他のメンバーさん達もいる佐方インターチェンジのパーキングエリアの陸橋へと向かう。




