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日々つれづれなることを、書け!  作者: 三屋城 衣智子


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私を好きなおキツネさま 第3話 ちょっと願ってみただけなのに幼馴染が戻ってきた!

 



 次の日。

 夢見心地のまま目覚めた遥は、いつものように母と弟分ごと朝ごはんの用意をし、母と二人、幼稚園の年長である弟の身支度を済ませると「いってきます!」と元気よく家を出た。

 今日も空は青く澄み渡り、鳥たちが挨拶と言わんばかりにぴちぴちょ鳴き、木から木へと羽ばたき渡っている。

 通学路は小学生たちの話し声がみちみちで、その中で遥も友達とお喋りをしながら歩いた。


「うぃっす!」

「ヒュー、ぴーんくっ!」


 高元(たかもと)たちがまた友達のスカートをめくって走っていく。流石に堪忍袋の緒が切れた遥は、すぐさま走り出すとスプリンターもかくやの走りを見せ彼らに追いついた。


「おーまーえーらぁー!!」


 そしてその首根っこを掴むと、後ろからグーパンチを相手の右脇腹にお見舞いする。

 三人ほどちょっかいをかけてきたのをしばき倒しながら学校に着いた。

 いつもの日常だった。




「はーい、ちょっと静かにー。今日は皆さんにお知らせがあります」


 朝の会で突然、担任の美代子(みよこ)先生がクラスみんなに声が通るように話し出した。珍しくパンツルックのスーツだったから、何か発表があるんじゃないかとクラスメイトの山田なんかは朝話してたが、どうやら予感はあたったらしい。


(何の話だろう)


 みんな姿勢を正して先生を見ると、静かになったのを見てとった美代子先生がそのお知らせを発表した。


「今日からこのクラスに仲間が増えます。藤井君、入ってきてちょうだい」


 先生の呼びかけで教室の扉を開けて入ってきたのは、六年生にしては背が高く、なかなかのイケメンで体つきもしっかりした男の子だった。クラスの何人かの女子は、その姿にこそこそと隣や前後の席の子とアイドルの話をするみたいにおしゃべりを始めた。

 彼は教壇の隣に立つと、クラスを見渡してくる。


 窓際から順番に廊下側へと顔を向け、遥の方へと視線がきた時。まるで恐竜の化石を見つけた時のような。朝日も相まって、その転校生の瞳にはキラキラとした光が瞬いたみたいだった。

 遥は吸い込まれるようにそれを眺めた。


「じゃあっと。自分で名前を黒板に書いてから、みんなに自己紹介してもらえる?」

「わかりました」


 藤井君の初めて聞く声、その声に遥の遠い記憶が刺激される。目を見開く遥。

 カツカツと硬質な音をさせながら黒板に書かれた文字は、程よい大きさで柔らかく。

 その名前を背に、彼は自己紹介をする。


藤井(ふじい)宇宙(そら)です。五年前までこの町に住んでて、両親の都合で帰ってきました。知ってる子もいると思うので、また仲良くしてください」


 ペコリと下げた頭を上げながら、藤井君は挨拶をした。


「ずっと会いたかった。遥ちゃん、また会えたね」


 そしてとろけるような声音でもって、教室に爆弾発言を投げた。

 女子の何人かの、「ぇえ〜?」と言う声が漏れ出ていた。




「先生さよーならー」

「はい、さようなら。気をつけて帰ってねー」


 帰りの会の後、思い思い一緒に帰る人を見つけながらみんなが教室を後にする。

 遥もランドセルに宿題の入ったファイルとかを入れ込みながら、帰る準備をしていた。そこへ誰かの人影がかかる。遥が見やると、それは今日転校してきた藤井宇宙(そら)だった。


「遥ちゃん、一緒に帰ろ?」


 微笑みながら言われ、遥は夢見心地になる。なぜなら、彼こそが狐の神様にお願いをぽろりとしてしまった幼馴染なのだ。会えないと思っていたから、遥は本当にびっくりしたし、いまだに信じられなかった。


「本当に、ソラ?」

「うん、本物のソラ」


 次で最終話、そしてその次で制作四方山話をしようと思います。

 正確にはファンまじの、ですね。

 この二作品を他サイトのコンテストにおうぼちゅうなので。

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