エピローグ
須世理琴音と出会い、俺は様々な不可思議事件に遭遇した。あと、大変な目に遭った。
すべてのきっかけは、我が妹・結祈の部屋で起こったポルターガイスト現象。これが縁で俺は須世理と出会い、彼女の助手になった。
以降、沼名河歌恋にちょっかいをかけられたし、八上卯白の依頼を受けて火災に遭遇するなどという散々な目に遭った。
そして、すべて黒幕であり須世理の因縁の相手であった気多崎多聞との対決。あれは、正直寿命が縮むかと思ったよ。気多崎の奴、俺が中二病時代に作った自作神話を基にした魔術を使うんだから。まあでも、なんとかそれも一件落着した。
大変なことの方が多かったが、オカルトの存在する世界は、それはそれで楽しいと俺は思った。須世理がいるからそう思えたのか、オカルトという存在それ自体が楽しいのか。未だにそれは分からない。とはいえ、どっちがどっちかなんて今答える必要もないだろう。もしかしたら、どっちの要素もあるから、俺は楽しいと思えるのかもしれないからな。
さて。須世理探偵事務所にて。
俺は今、キャンパスノートにあることを書き記している。いや、中二病を再発したわけじゃないぞ? 自作神話とか中二小説は書いていない。俺は今、須世理と出会ってからこれまでのことを思い出しながら事件覚帖を書いているのだ。これは助手としての仕事で、須世理からの命令でもある。
……にしても、こうして書いてみると結構な量になる。結祈、沼名河、八上、気多崎のことで、ノートはすでにいっぱいだった。
「よし、できた」
書き終え、顔を上げる。すると、計ったかのようにさりげなく俺の机にコーヒーカップが置かれた。中身はある。須世理の瞳と同じ色をした真黒なコーヒーだ。クリームとシュガーも付随していた。
珍しや。いつもは俺に淹れさせるのに。須世理よ、どういう風の吹き回しだ。
「お疲れ様」と須世理は言って、俺に微笑みかけた。
俺はそれにどぎまぎしつつも「あ、ありがとう」と言う。少しばかりの照れが働き、俺は彼女から目を逸らしてしまった。
須世理の淹れてくれたコーヒーにクリームとシュガーを加え、啜る。須世理が入れてくれたからと言って、別段、味に変化はなかった。まあ、当たり前か。同じコーヒー豆を使っているんだから。
コーヒーを一啜りして、「ああそうだ」と、ふとあることを思いつく。
このノートにタイトルを付けようじゃないか。いや、なくてもいいのだろうけど、あった方がこうなんと言うか体裁がいいではないか。
一考の後。俺はマジックペンを手に取って、キャンパスノートの表紙にこの記録のタイトルを書き入れた。
――オカルト探偵・須世理琴音の不可思議事件覚帖。




