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オカルト探偵・須世理琴音の不可思議事件覚帖  作者: 硯見詩紀
第三章 悪夢を現実にしてはならぬ
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第7話

 コンビニは、八上の屋敷から一〇分ほど歩いた所で見つかった。


 俺は、そこでカップめんを買い、コンビニにある電気ポットを使ってそれを作り、どこぞのヤンキーが如く駐車場でそれを啜っていた。時間はすでに〇時を回っている。時間帯の所為なのか人通りの所為なのかは知らないが、コンビニには客がそんなにいなかったので、駐車場でカップめんを啜ることに恥ずかしさは覚えなかった。やはり、庶民にはこのくらいが美味く感じるのだ。


 ずるずると、カップめんを啜っていると、ふいに遠くの方から、ウーン、カンカンカンカン……というサイレンと、ピーポーピーポー……というサイレンが聞こえてきた。とりあえず、パトカーではないことは確かだ。このサイレンは、消防車と救急車のもの。どこかで、火事でもあったのだろうか?


 火事。


 ふと、嫌な予感が脳裡をよぎる。八上が毎晩見る悪夢は、家が燃える夢である。そして、須世理曰く、その夢は実現化する可能性がある。


 サイレンの音は近づいていた。こちらに。


 もしかして……いや、でも、まさか、そんな、唐突に……?


 ウーン、カンカンカンカン……ピーポーピーポー……カンカン……ピーポー……。


 消防車と救急車のサイレンがけたたましく鳴り響く。二つのサイレンがごっちゃになってちょっぴりカオスで嫌な音だ。音はだんだんと大きくなる。鼓膜が破れそうなくらいに音は大きくなっていく。


 まさか……まさか……まさか……。そんな、まさか……。


 ――と、刹那。赤い車と白い車が俺の視界に飛び込んで来た。それらは、他の車を押し退けながら、信号を無視しながら、『消防車が通ります』とか『救急車が通ります』とか言って、強引に進んでいく。



 八上卯白の屋敷がある方角へ。



 まさか、まさか、まさか!


 俺はハッと八上の屋敷がある方へ視線を遣った。


 そのとき、全身の力が、ふわっと抜けた。俺の手からカップめんが滑り落ちる。中身が地面にぶちまけられたが、気にならなかった。いや、気になれなかった。だって、今はそんなことを気にしている場合じゃなかったから。


「……、」


 夜空に映える一筋の白線。それは煙だった。煙が不気味にモクモクと立っていた。火のない所に煙は立たぬ。あそこには煙が立っている。つまり、あそこには火がある。


 確証はないが、直感した。――八上の家が燃えている!


 ヤバい。もうとにかくヤバい。悪夢が実現するならば、八上は死ぬ。それに須世理だって心配だ。あいつ、部屋に着くなりすぐに眠りこけってしまったが、大丈夫だろうか。何も気付かずそのまま一酸化炭素中毒で死にましたなんて嗤えないことになっていないだろうか。


 気付けば、俺は走っていた。急がないと。このまま杞憂に終わればそれでいいが、もしそうじゃなかったら……なんて考えたら、いてもたってもいられない。


 早く、早く、早く! 早く行かないと! 早く八上の家へ戻らないと。そして、確認しないと。八上は、須世理は、逃げられたのか、生きているのか。早く、早く確かめないと!!


 八上の家に近づくにつれ、俺の直感はだんだんと確証を得始めていた。


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