表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オカルト探偵・須世理琴音の不可思議事件覚帖  作者: 硯見詩紀
第三章 悪夢を現実にしてはならぬ
28/42

第1話

 八上(やがみ)卯白(うしろ)の名を聞けば、みんなが口を揃えてこう言うだろう。


 美少女だ、と。


 美少女と言えば須世理琴音もそうであるが、八上は須世理と同系統で美少女というわけではない。須世理は清楚や楚々と言った言葉が似あう美少女だが、八上は可憐や無垢と言った言葉が似あう美少女だ。もっと簡単に喩えると、うさぎのような小動物的可愛さを持っていると言えばいいだろう。ふと守りたくなるような妹というか可愛い後輩みたいな、そんな存在が八上卯白だ。


 どうして、俺が八上卯白の話をしているかと言うと――俺は今、そんな可愛いうさぎみたいな八上とお話をしているからだ。

 放課後。教室の掃除もほどほどにして、俺は須世理探偵事務所へ行くため、昇降口で上靴から外履きへと履き替えていた。そんなとき、八上が俺に話しかけてきたのだ。


「杵築くん」


 と、少し幼げな声で、八上は俺を呼んだ。


「ん? なんだ、八上。なんか用?」


 俺と八上は同じクラスだから、面識はある。でも、毎度毎度会話をするほど仲のいい人間ではない。同じクラスということ以外は、ほとんど接点はないと言っていいだろう。そんな彼女が俺に一体なんの用だろう?


「あの、ちょっと話があるんだよ。その、こういうのって杵築くんに話した方がいいかと思って……」


 もじもじしながら、八上は言う。鳶色の髪に結われたサイドテールがぴょんぴょこと揺れていた。


「話……」


 話とはなんだ? まさか、告、こここ告白……ってやつなのか!? いやいやいや! 俺みたいな奴にそんなイベントが突発的に起こるはずがない!! つまり……本当にただのお話。ただの事務的な用件だろう。きっとそうだ。


 ふー、と。深呼吸をして、呼吸を整える。動揺を抑える。そして、落ち着きを払って、俺は言う。


「とりあえず、ここじゃなんだから、場所を変えようか」



 *****



 場所を変え、校門前。


「で、話って何?」


 俺はそう切り出す。対面にいる八上は、その童顔を俺に向け、話す。


「うん。あのね、最近、わたしの身の回りでおかしなことが起こってるんだよね」


「は?」


「いや、だから普通じゃ考えられないおかしなことが起こってるんだよ」


「何故、それを俺に相談するんだ?」


「だって、杵築くんと須世理さんってそういう怪奇現象を解決してくれるんでしょ?」


 八上がそう言った。


 須世理琴音が、オカルト探偵であることは前々から知れていたことだ。しかし、俺が須世理の助手になったのはここ最近のことである。とはいえ、須世理のような美少女の周りをうろちょろする男――俺が現れれば、それはすぐに周知のことになってしまう。たぶん、俺が須世理の助手であることを知らない人間はこの学校にはいない。まあ、中には俺が彼女の恋人じゃないかと疑っている奴もいるが、そういう奴は放っとけばいいのである。


「だから、杵築くんに相談した次第なんだよ。まあ、須世理さんでもよかったんだろうけど、わたし、あまり須世理さんと面識ないから、話しかけにくかったんだよ」


 なるほど。だから、クラスメイトである程度面識のある俺に相談を持ち掛けたわけであるな。とはいえ、俺にああだこうだ言われても何もわからないのが現状だ。ある程度のオカルト知識があるとはいえ、それで八上の身の回りで起きているオカルトがなんなのか分かるわけではない。


「じゃあ、まあとりあえず事務所に行くか? そこで、詳しい話を須世理に話してくれ」


「うん、そうしよ。須世理さんに話さないと何も始まらないからね」


 よく分かっているではないか。そうだ。不可思議事件を解決するのは探偵の仕事であって、助手である俺が手出しできる領域ではないのだ。


 俺は、八上を連れだって須世理探偵事務所へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ