表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪い研ぎの研ぎ師  作者: 真打
第二章 追放
33/422

2.12.金貨八百枚


 ドシャリッ。

 鈍い音がカウンターの机の上で鳴った。

 分厚い皮で作られた革袋が八つ、綺麗に並んでいる。


 中に入っているのは金貨。

 バーシィが中身を見せてくれたのでこれは間違いない。

 一つの革袋には百枚の金貨が入っており、それが八つ並んでいるのだ。

 金貨八百枚という見たこともない報酬が目の前に置かれていた。


 それと交換で研いだ剣を手渡す。

 剣は木箱に入れているので、ケースもその時に手渡した。


「? これは?」

「木箱の中に剣が入っています。研いだ後はそれに保管するのが決まりなのです」

「なるほど。ですが申し訳ない、こちらの方に移しても構いませんか?」

「大丈夫ですよ」


 バーシィは許可を取ってから木箱を開ける。

 中に入っていた剣を見た瞬間感嘆の声を上げ、優しく剣の柄を握って輝きを確かめた。

 角度を変えれば店の中の様子が剣に映し出される。

 鋭く尖った切っ先はどんなものでも貫き通すことができそうだ。


 金貨八百枚分の仕事に相応しいと小さく呟いたバーシィはその刃に手を触れようとした。

 その触り方は危ない。

 すぐにカルロとテールは止める。


「「危ない!!」」

「え?」

「よ、よかった……。あの、想像以上に鋭くなっていますので……本当に気をつけてください」

「? 輝きだけではなく、切れ味も向上させたというのですか?」

「そうなりますね。なので取り扱いには十分に注意を……」

「試してみても?」

「それでしたら……テール君」


 カルロに指示され、テールはショーケースに入っている剣を一本と、以前切ってしまったカーテンの切れ端を持ってそれをバーシィに渡す。

 首を傾げていた彼ではあったが、この剣でカーテンの切れ端を切れということなのだろうと気付く、すぐに試してみる。


 すると、何の抵抗もなく布が切り裂かれた。

 本当に切れたのか分からずに確認すると、切った箇所がはらりと床に舞い落ちた。


「!? え!?」

「それと同じ加工がされていますので……」

「おお……! 素晴らしい……! これであればクリスティナ様もお喜びになります! では私はこれにて……」

「あ、はい。ありがとうございました」


 剣をケースに入れて閉じ、軽く挨拶をしてバーシィは店を出ていった。

 あの驚いた顔はなんとも嬉しいものだ。

 自分たちの技術を認めてくれる人が一人増えたかもしれない。


 バーシィを見送った二人は、ゆっくりとカウンターに置かれている金貨八百枚が入った革袋たちに目線を向ける。

 とんでもない金額。

 一つ手に取るだけでも勇気が要りそうなそれを、テールは軽い気持ちで手に取った。


 予想以上に重い。

 ずっしりとくる重さが、今回の依頼の重さを語ってくれている気がする。

 しかしその反面、それだけの仕事をやり切った達成感はあった。


「……これ、どうしますか?」

「本当に生活には困らなさそうな金額だもんね……。ま、必要になったら使おっか」

「ですね。いつもの場所に仕舞っておきます」

「うん、お願いね」


 八つの革袋を抱え、テールは作業場に入る。

 砥石を置いている棚の下。

 そこにある隠し扉を開き、中にあった金庫の中に八つの革袋をまとめて仕舞った。


 一気にお金持ちになったなとそのお金を見て思いながら、金庫を閉めて隠し扉を閉めた。

 全部合わせるととんでもない金額になりそうだ。


 そういえば今回はカルロに依頼を任せられたのだが、テールが研いでいる。

 なのでバーシィはカルロが研いでいると思っているはずだ。

 とはいえこれが公表される予定はないし、どっちがやったとしても同じくらいの出来栄えになるので、その辺は考えなくてもいいだろう。


「よーし、今日は寝よう」


 無事に依頼も達成した。

 他にやることもないし道具は全て片付けてしまったので、あとは寝るしかない。


 大きな仕事を終えて肩の荷が下りたテールは、軽い足取りで寝室へと向かい、ベッドに入った瞬間速攻で寝てしまうのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真打Twitter(Twitter) 侍の敵討ち(侍の敵討ち)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ