第一話
「うーん……なかなかお客さんが来ません……」
ここはある村のはずれにひっそりと建つ、転生者専門の相談屋。
そこに住んでいるのが、そう!この私、アベリア・エルクレスです!
趣味はピアノを弾くこと、最近はお料理なんかにも興味があります!
身長は165センチ、体重は――
――カランカラン
扉の鈴が鳴り、誰かが入ってきました。
お客さんかな?
「どうぞ、おかけになってください!」
「あ……ありがとうございます」
入ってきたのは、赤毛のすらりとした細身の女性。
腰には革のベルトにナイフを吊るしています……冒険者でしょうか?
「お名前をお聞かせください!」
「イベリスです……」
「イベリスさんですね!本日はどのようなご相談を?」
「……仕事を探していて」
なるほど。やはりそうきましたか。
実はこの世界、かつて猛威を振るっていた魔物たちは魔王を討ったことですべて消滅しました。
それ以来、世界は平穏を取り戻し……同時に魔物退治を生業としていた冒険者たちは次々と失業していったのです。
彼女もまた、その一人なのかもしれませんね。
「ちなみにですが……どんな神能をお持ちで?」
神能――それは転生者全員に与えられる固有の能力のことです。
強い人はとても強いし、ちょっと変わった力を持ってる人もいて、ほんと色々!
「『神速』という言葉のままの神能です」
「『神速』!?え、それってめちゃくちゃ便利じゃないですか!お仕事だってすぐ見つかるはず!」
「……って思いますよね。でも……」
イベリスさんの顔が、ちょっとだけ曇ります。
「――前髪が崩れているのを見られるのが恥ずかしくて」
「――わかります。女の命、前髪ですよね」
うんうん、女性なら誰でも一度は悩むアレです。
どんなに凄い神能でも前髪が崩れちゃったらテンションも下がるってもんです!
「ちなみにどれくらいの速いんですか?」
「えっと……自分で加減はできるんですけど、最大だと音速くらいですね」
ふむふむ……あ、いいこと思いつきました!
「イベリスさん!私のこの相談屋で働くのはどうですか!!」
「え……本当ですか?」
「もちろんです!」
イベリスさんは一瞬だけ戸惑った表情を見せましたが、すぐに小さく笑って頷きました。
「じゃあ……そうしようかな!」
「良かったです!それじゃあさっそく、仕事内容の説明を――」
〜次の日〜
「ん〜お客さん、来るかなぁ」
――カランカラン
「アベリアさん!配ってきましたよ!たくさんの人に受け取ってもらえました!
姿が見えないくらい速く動けば、恥ずかしさもバレないってアベリアさんが言ってた通りでした!」
「わぁ、ありがとうイベリスさん!それは良かったです!」
さて、彼女、イベリスさんのお仕事とは……
「このチラシで少しはお店の宣伝になったかな!」
――そう!チラシ配りです!
彼女の神能を最大限に生かした、この相談屋にとってとても大切な仕事です!




