第65話 事情説明からの……
「まず大事な事なんだが……この世界は冗談抜きで危機に瀕している」
と、皆の前でそう前置きすると、ゼウスは文字通り「全て」を話し始めた。
それは、この世界の「真実」に始まって、500年前に「侵略者」達に襲撃された事。
その「侵略者」達の子孫が現在この世界で暮らしている「人間」という種族である事と、その「侵略者」達の親玉が現在この世界で「神」を名乗っているという事。
17年前にグラシアが遺した「本当の予言」や、その「予言」を回避する為に親玉達がルーセンティアの王族達に「勇者召喚」をやらせたが、それは本来守るべき「ルール」を無視したもので、その為にこの世界だけでなく春風と「勇者」達の故郷「地球」までもが消滅の危機に陥ってしまい、それを阻止する為にゼウス達「地球の神々」が、唯一助けた春風をこの世界に送り込んだ事。
そして、その春風と、「邪神」ことこの世界の「本当の神」であるヘリアテスともう1柱の神であるループスに育てられたレナこそが、「予言」に出てくる「悪魔」だという事。
それらを全て話すと、
「……とまぁ、ざっとこんな感じだ」
と、ゼウスは最後にそう締め括った。
その瞬間、部屋の中が重苦しい空気に包まれた。
ゼウスの説明を聞いて、春風、レナ、ヘリアテス、グラシア、そして凛咲を除いた周囲の人達は、皆、そのあまりの内容に顔を真っ青にしていた。ただし、2人の人物を除いて。
それから少しすると、
「……それは、本当の事なのですか?」
と、その内の1人であるオードリーが、ゼウスに向かって険しい表情でそう尋ねてきたので、
「ああ、信じたくないと思うが、全部事実だ」
と、ゼウスはハッキリとそう答えた。
その後すぐに、
「私からもよろしいでしょうか?」
と、今度はもう1人の人物であるフレデリックがそう口を開いたので、ゼウスが「ん?」とフレデリックに視線を向けると、
「今回行われたという『ルールを無視した勇者召喚』ですが、現在の神々はその事を知っているのでしょうか?」
と、フレデリックは真っ直ぐゼウスを見てそう尋ねてきた。
ゼウスはその質問に対して、「それは……」と若干答えにくそうな表情になったが、すぐに表情を変えて、
「間違いなく、連中は知ってるだろうな」
と答えた。
その答えを聞いて、
「……そうですか」
と、フレデリックは表情を暗くすると、
「それはつまり、神々……いえ、『侵略者の親玉』達は、『この世界の事などどうなっても構わない』と思ってるという事なのでしょうか?」
と、再びそう尋ねてきたので、
「だろうな。で、実際にこの世界が消滅したら、そうなる前に自分達だけ逃げ出すか、一部の人間達を連れて、また別の世界を侵略するつもりだろうよ」
と、ゼウスは更に真剣な表情でそう答えた。
すると、
「……た」
という声がしたので、ゼウスを含む全員がその声がした方へと振り向くと、そこには皆と同じように顔を真っ青にしたアメリアがいて、
「大変じゃないですか! 早く、その事実をみんなに知らせないと!」
と、オードリーに向かってそう言ったが、
「……それは、無理ですね」
と、オードリーは険しい表情でそう言ったので、
「どうしてですか!?」
と、アメリアが怒鳴るようにそう尋ねると、
「このような『とんでもない事実』を公表すれば、この都市内部はおろか、世界中が大混乱に陥るでしょう。そうなれば、侵略者の親玉達は、速攻でこの世界を見捨てる……いえ、もっと悪く言えば、親玉達自身で、この世界を滅ぼすでしょうね」
と、オードリーはタラリと汗を流しながらそう答えた。
「そ、そんな……」
そう言うと、オードリーは更に表情を真っ青にして膝から崩れ落ち、
「わ……私は……私は……」
と、ボロボロと大粒の涙を流し、
「姉さん……」
と、それまで黙ってたエステルが、アメリアの傍に駆け寄りって、彼女を優しく抱き締めた。
春風はそんな2人を見て、
(まぁ、そりゃそうなるだろうな)
と、心の中でそう呟いた。
元々、アメリアとエステルの両親は共に五神教会の信者で、アメリア自身もずっと五神教会のもとで働いていたのだが、妹のエステルを守る為に彼らを裏切り、長い逃亡の末このようなとんでもない事実を聞かされたのだ。
(もしかしたらアメリアさん、今日までずっと辛い思いをしてきたんだろうな)
と、春風がまた心の中でそう呟いていると、
「あ、あの、春風お兄さん」
と、それまで黙ってた話を聞いていたピートがそう口を開いたので、
「ん? ピート君どうしたの?」
春風がピートに視線を向けると、
「その……ゼウス……様の話、凄く難しかったけど、お兄さんは、『故郷』を守る為に、この世界に来たんだよね?」
と、ピートが恐る恐るそう尋ねてきたので、
「……うん、そうだよ」
と、春風は真剣な表情でピートにそう答えた。
ピートはその答えに「そうなんだ」と呟くと、
「じ、じゃあ……『故郷』を守る為に、レナお姉さんと一緒に……『神様』を、殺すの?」
と、ピートは震えた声で再びそう尋ねてきた。
その質問を聞いて、その場にいる者達全員が一斉に春風とレナに視線を向けた。
そして、
「春風……」
と、もう1人の「悪魔」であるレナも春風に視線を向けると、春風は深呼吸して、
「すっげぇ迷ってます!」
と、胸を張ってそう答えたので、その答えを聞いて、
『……え?』
と、皆、一斉に首を傾げた。




