第60話 オードリーの提案
「ですので、アメリアさん達はお2人にお任せします」
「「はぁ……はぁあああああああっ!?」」
オードリーが出したその提案に、春風とレナは驚愕の声をあげた。
因みに、他の人達は口をあんぐりとさせた状態で固まっていた。
そして、誰もが数秒程固まっていると、
「ちょ、ちょっと待ってください! 何ですか『お任せします』って!?」
と、レナがテーブルをバンッと叩きながら、オードリーに向かって怒鳴るように尋ねると、
「言葉の通りですよ。あなた達2人に、アメリアさん達を保護してほしいのです」
と、オードリーは穏やかな笑みを浮かべながらそう答えたので、レナは「な! ほ、保護ぉ!?」と更に驚愕した表情になったが、春風はというと、
「……説明を、お願いします」
と、逆に冷静な態度で、オードリーに説明を求めてきたので、
「あらあら……」
と、オードリーはそんな春風を意外なものを見るような目で見た後、
「わかりました」
と返事して、説明を始めた。
「敢えて言わせてもらいますが、アメリアさん達は教会から『異端者』と認定されました。つまり、彼女達はこの世界にとって『悪』となったのです。反対に、そんな彼女達を討伐しに来た『断罪官』は、やり方こそ問題はありますが、彼らもまた1つの『正義』と言えるでしょう」
と、真剣な表情でそう言ったオードリーの言葉に、アメリア、エステル、ディック、ピートは表情を暗くしたが、そんな彼女達を前にしても、オードリーは話を続ける。
「そして、春風さんにレナさん。事情はどうであれ、あなた達はそんな『悪』である彼女達を助け、逆に『正義』である『断罪官』と戦い、これを退けました」
「「……」」
「特に春風さん」
「はい」
「あなたは歴代の大隊長の中でも『最強』と呼ばれているギデオン・シンクレアを倒しました。これは、教会にとってとんでもない事態です。今頃、教会の本部があるルーセンティア王国は大混乱になっているでしょう」
そう言った後、「ふふ……」と笑ったオードリーを見て、
(あー。ですよねー)
と、春風が心の中でそう呟くと、
「……おっと、話が逸れてしまいました」
と、オードリーは「これは失礼」と言わんばかりに口をおさえて、更に話を続ける。
「で、話は戻しますが、とにかく春風さんとレナさんは断罪官と戦い、勝利し、アメリアさん達を救った。それはつまり、その時点でお2人に「彼女達を守り、幸せにする」という「責任」が生まれた事になります」
と、そう説明したオードリーに、
「ま、待ってください! あなたの言う事はもっともですが、これ以上私達の事に2人を巻き込みたくありません!」
と、それまで黙って話を聞いていたアメリアは、ソファーからガバッと立ち上がりながらオードリーに向かってそう言ったが、オードリーはそれに動じる事なく、
「では、どうする気なのですか? このままここを出ていって、いつまで続くかわからない逃亡の旅をする気なのですか?」
と、冷静な口調でそう尋ねてきたので、
「そ、それは……」
と、アメリアはそれ以上何も言えずに、顔を真っ青にしてソファーに座った。
それを見届けた後、
「納得、していただけましたか?」
と、オードリーは春風とレナを交互に見てそう尋ねてきたので、
「わ、私は別に構いませんが……」
と、レナはそう答えた後、チラッと春風を見たが、
「……」
春風の方はというと、表情を暗くして考え込んでいた。
春風は心の中で呟く。
(確かに、オードリー市長の言う通り、俺とレナにはアメリアさん達を守る『責任』があるだろう。レナはそれで良いのかもしれないけど……)
と、そう呟いた後、春風は更に「迷ってます」と言わんばかりに考え込み始めた。
先程心の中で呟いたように、ギデオンら断罪官を退けた自分達には、確かにアメリア達を守る「責任」があるだろう。
しかし、春風はこの世界の人間ではない。やるべき事をやった後は、故郷である「地球」に帰らなければならない身なのだが、だからといってアメリア達の事を放って良いのかと問われれば、自信をもって「イエス!」と答える事など出来ない性分も持ち合わせているので、それが、春風を迷わせているのだ。
そんな春風を、レナと凛咲が心配そうに見つめる中、
「迷うのは、あなた自身の『事情』の所為ですか?」
と、オードリーがそう尋ねてきたので、春風は「え?」と目を大きく見開いた。春風だけではない、レナやアメリア達だけでなく、ヴァレリー、タイラー、そしてレベッカも、皆春風と同じように「え?」と目を大きく見開いた。
因みに、凛咲とフレデリックは特に動じる事なくオードリーを見ていた。
そんなレナ達をよそに、
「……あの、今のはどういう意味でしょうか?」
と、春風が尋ねると、
「春風さん。ここからはとても重要な事ですので、きちんと答えてくださいね」
と、オードリーは真剣な目で春風を見てそう言うと、
「あなたは、『勇者』なのですか?」
と、尋ねた。




