第54話 宴会
春風達の勝利(?)に終わった断罪官達との戦い。
その後、春風が目を覚ました宿屋「白い風見鶏」の食堂では、
「あの、これ一体何をしているのですか?」
と、春風がレベッカに尋ねると、
「何って、『宴会』だよ。あんたと仲間達が断罪官達をやっつけた事を祝ってな」
と女将であるレベッカがそう答えたように、断罪官達に勝利した事を祝う為の「宴会」が開かれていた。
それぞれが酒や料理を片手に、春風達の戦いを見ていた者達がどんちゃん騒ぎを繰り広げる中、食堂内のカウンター席では、
「うぅ。よかったよぉ、春風が目を覚まして……」
と、レナが泣きながら春風の腕にしがみついていて、そんな春風の隣では、
「ちょおっとぉ、狐耳のお嬢ちゃん。春風から離れなさいよぉ」
と、春風師匠である凛咲が、レナを見て「むぅ」と頬を膨らませていた。因みに、レナの後ろでは、
「はぁ……はぁ。レナ、もっと耳と尻尾をもふもふさせてぇ」
と、顔を真っ赤にして息づかいを荒くしていたウェンディが、いやらしそうに指を動かしていた。
更に春風の後ろのテーブルでは、
『はぁ……疲れた』
と、先程まで先輩ハンター達に質問攻め(?)にされていた、アメリア、エステル、ディック、ピートの4人が、疲れ切った表情でグッタリしていた。
そして、肝心の春風本人はというと、腕にしがみついているレナを「よしよし」と優しく撫でながら、
「はぁあああああ……」
と、暗い表情で深い溜め息を吐いていた。
そんな春風を見て、
「どうしたんだい? 主役がそんな顔してさ」
と、宴会主催者であるレベッカが呆れ顔で尋ねてきたので、春風は暗い表情のまま、
「主役って……いえ、自分が悪いのはわかってるんですけど、やっぱり見られてたっていうのはちょっとへこむと言いましょうか……」
と、「はは」と苦笑いしながら答えた。
そう、現在春風が考えていたのは、このような状況になってしまった「原因」についてだった。
確かに、このような状況になったのは自身の所為である。
何故なら、「どうせいつかはバレるんだ」というなんとも能天気(?)な考えで、ギデオンら断罪官達に自身の「正体(全てではないが)」を明かしたのだが、まさかそれをレベッカ、ヴァレリー、タイラー、フレデリックだけでなく、今この場にいる先輩ハンター達全員に見られていたので、幾ら自分が悪いとはいえこれには流石にショックを受けたのだ。
その事を考えて、春風が再び「はぁ」と深い溜め息を吐くと、
「何言ってんだい。アタシらはアンタ達が無事に帰ってきてくれて、凄く嬉しいんだよ。ここにいる連中だってそう思ってんだ」
と、レベッカはそう言って、周囲にいる人達に「なぁ?」と言わんばかりに視線を向けた。その瞬間、
『うんうん!』
と、その場にいる者達全員が力強く頷いた。
そんな彼を見て、春風は「あぅ……」と頬を赤くすると、
「それに、アンタが頑張ったおかげで、その子達も助かってんだしさ」
と、レベッカは次にアメリア達に視線を移した。
その視線を受けて、
「……そうだ。君のおかげで、私達はこうして助かったんだ」
と、それまでぐったりしていたアメリアはそう口を開くと、真っ直ぐ春風を見て、
「ありがとう。そして……」
と、お礼を言った後、
「私達の問題に巻き込んでしまって、すまなかった」
と、申し訳なさそうに深々と頭を下げて謝罪した。そしてそれに続くように、エステル、ディック、ピートも春風に向かって頭を下げた。
春風はそれを見て、
「ああ、そんな、顔を上げてください。断罪官達との戦いは俺が勝手にやった事ですし、それに……」
と、「気にするな」と言わんばかり手を激しく振ると、ちらっとズボンのポケット(その中には春風が作った魔導スマホ(グラシアさん入り)が入っていた)を見ると、
「『仲間の仇をうちたい』って想いもありましたし」
と、「あはは」と苦笑いしながらそう言った。
それを見て、
「ああ、なるほど」
と、レベッカが小さな声でそう呟くと、
「まぁ、これで俺、連中に思いっきり憎まれる事になっちゃいましたけど……」
と、春風はそう言って遠い目をした。
すると、
「大丈夫よ春風」
と、凛咲は優しい口調で春風の肩に手を置いて、
「そうなったら、私が連中を皆殺しにするから!」
笑顔で恐ろしく物騒な事を言った。しかも親指をグッと立てながら、だ。
それを見た春風は、
「ちょ、師匠……!」
と、凛咲に向かってツッコミを入れようとすると、それを遮るかのように、
「ところで、すっごい気になってんだけど」
と、それまで黙っていたヴァレリーが口を開いたので、春風達が「ん?」と頭上に「?」を浮かべていると、
「アンタ、一体何者なんだ? なんか『師匠』って呼ばれてるみたいだけど」
と、ヴァレリーは凛咲を見てそう尋ねてきたので、
「……あ」
と、春風はすぐに凛咲に視線を向けると、凛咲はニコッと笑って、
「はじめまして、春風の『師匠』の、陸島凛咲です。ああ、『陸島』が苗字で、『凛咲』が名前ね」
と、自己紹介した。それを聞いて、
「ほほう、これは珍しい。苗字と名前が逆なのですか。それで、あなたは彼に何を教えているのですか?」
と、今度はフレデリックが、ちらっと春風を見ながら、凛咲に向かってそう尋ねてきた。
凛咲はその質問に対して、
「うーん、色々あるけど、メインは『冒険』かな」
と、笑顔を崩さず答えたので、
「はぁ? 冒険?」
と、ヴァレリーが頭上に大きな「?」を浮かべている中、凛咲は話を続ける。
「そ、冒険。私、こう見えて『世界』を股にかける『冒険家』なんですよ。そして、そんな私は春風の『師匠』兼……」
そう言うと、凛咲は春風をグイッと抱き寄せて、
「『お嫁さん』です」
と、満面の笑みでそう言った。
その発言から数秒後。
「ちょおっとおおおおおおおっ!」
『なぁにぃいいいいいいいっ!?』
春風と周囲の人達の、驚きの声があがった。




