第48話 激突、断罪官・決着?
「フェニックス」となった春風の一撃を受けて、ギデオンの全身は炎に包まれた。
そしてその炎が消えると、文字通り「真っ黒コゲ」となったギデオンはバタリと仰向けに倒れ、それと同時に、地面に着地した春風の姿が元に戻った。
(……勝った……のかな?)
と、そう思った春風がゆっくりと後ろ振り向き、
(ギデオン・シンクレア。手強い相手だったな)
と、心の中でそう呟きながら、倒れたギデオンを見ていると、
「春風ぁー!」
と、レナ達が自分の所へと駆け寄ってきて、
「父上ぇー!」
『大隊長ぉー!』
と、ルークと断罪官の隊員達が、ギデオンのもとへと駆け寄った。
春風はルークに視線を向けて、
「……あの人、やっぱり息子さんだったんだ」
と、ボソリとそう呟くと、
「……あれ?」
急に視界がグラリとゆらめき始め、右足が急にガクンとなり、今にも倒れそうなった。
そんな春風を見て、
「は、春風ぁー!」
と、レナが走るペースを上げようとした、まさにその時……。
ーーストン。
「おっと!」
(……え?)
何者かに体を支えられたのを感じたので、春風は「誰だ?」とその正体を確かめようとすると、
「お疲れ」
「え、レベッカ……さん?」
その正体は、宿屋「白い風見鶏」の女将、レベッカだった。
いや、レベッカだけではない。彼女の傍には、
「どうも、ハルさん」
「よ!」
「やぁ」
「あ……あれ? フレデリック総本部長、ヴァレリーさんにタイラーさん?」
ハンターギルド総本部長のフレデリック、レギオン「紅蓮の猛牛」リーダーのヴァレリー、そしてレギオン「黄金の両手」リーダーのタイラーの姿もあったので、春風は思わず目をパチクリとさせた。それと同時に、
「げっ! 何であの人達がいるの!?」
彼らを見て、レナはそう驚きに満ちた声をあげた。
「あの……何で、レベッカさん達がここに?」
と、レベッカに支えられた状態の春風がそう尋ねると、
「断罪官の連中があんたを探しにうちに来てから、ずっと嫌な予感がしてな。で、ウェンディから話を聞いたレナが飛び出したの見て……」
「私達も、嫌な予感がしましたので、一緒にここへ来たという訳ですよ」
と、レベッカとフレデリックがそう答えた。因みに、フレデリックに続くように、ヴァレリーとタイラーもうんうんと頷いていた。
春風はフレデリック達の答えに「そうですか」と返したが、ふと、ある事に気付いて、
「あの……何処から見てたんですか?」
と、恐る恐るフレデリック達に向かってそう尋ねると、フレデリックが答える。
「レナさんがハルさんと断罪官達の戦いに加わった所ですが、何か?」
「それって、全部見てた……と?」
「はい」
その答え聞いた瞬間、
「やっべぇえええええ! 自分からバラしておいてやべぇえええええ!」
と、春風はそう叫びながら手で顔を覆った。それを見て、
「もう、春風ったらぁ……」
と、レナが呆れ顔になっていると、
「そしてレナさん」
と、フレデリックがレナに声をかけた。
「ふえ? な、何ですか?」
と、不意に声をかけられたレナがそう尋ねると、
「随分とお美しい姿ですね」
と、フレデリック穏やかな笑みを浮かべてそう答えた。
その答えにレナが「え?」と首を傾げると、
「あああああ、しまったぁあああああ!」
と、レナは自分が今変身状態である事に気付いて、
「ままま、待って! これは違う! 違うのぉ!」
と、大慌てでそう言い訳した後、何を思ったのか自身の左腕につけてる銀の腕輪を外した。
次の瞬間、レナは眩い光に包まれた後、狐の獣人の状態から元の人間(?)の姿に戻り、
「こっち! こっちが本当の私よ!」
と、ドーンと胸を張りながら答えた。
だが、
「い、いや、レナ。それ……」
と、春風が恐る恐る指を差してきたのでレナは「え?」と再び首を傾げると、手に持っている銀の腕輪と、頭にある狐の耳、お尻から出た狐の尻尾の順に触れて、
「あああああ、間違えたぁあああああ!」
と、文字通り本当の姿を周囲の人達に晒してしまった事に漸く気付き、
「ち、違うの! 私その、見た目は獣人だけど、実は獣人と妖精のハーフで……って、あれ!? 私何言ってんの!?」
と、大慌てで更に墓穴を掘ってしまった。
すると、
「……くも」
という声がしたので、春風達が「ん?」とその声がしたの方へと向くと、
「貴様ぁ、よくもぉ!」
そこには、隊員達の手当てを受けているギデオンの傍で、肩を震わせながら立っているルークの姿があった。
ルークはバッと後ろを振り向いて春風を睨みつけると、
「みんなは父上を連れてこの場から脱出しろ!」
と、隊員達を見ずにそう命令した。
それを聞いて、隊員の1人が、
「る、ルーク副隊長はどうする気なのですか?」
と、恐る恐るそう尋ねると、
「私はここに残る。そして……父上をこんなにした、あの悪魔を滅ぼす!」
と、ルークは怒りままにそう答え、春風に向かって剣を構えた。
そしてそれを見て、
『でしたら、私達もお供します!』
と、4、5人の隊員達がルークの傍に立ち、それぞれの武器を構えた。
そんなルーク達を見て、レナ達が思わず身構えると、フレデリックが「ちょっと失礼」と前に出て、
「もう勝負はつきました。これ以上の戦闘行為は、中立都市フロントラルの代表の1人として許しませんよ」
と、ルークに向かってそう言った。
その言葉を聞いてカチンときたのか、
「そうか……ならば貴様も『異端者』だ!」
と、ルークと隊員4、5名が武器を握り締めながら、春風達に向かって突撃してきたので、
「そんな!」
「ちぃ!」
「馬鹿共がぁあああああっ!」
と、レナ達だけでなくヴァレリーまでもが戦闘態勢に入った。
次の瞬間、晴れた空から紫色の稲妻が、ドーンと春風達とルーク達の間に落ちた。
突然の事に「な、何だ!?」と、春風達だけでなくルーク達も驚きに満ちた表情になっていると、稲妻が落ちた場所から、
「そこまでにしてもらうわよ、断罪官とやら」
と、女性のものと思われる声がしたので、春風達が「え?」と一斉に首を傾げると、落ちた場所に立っていた土煙が晴れて、
「私の愛しい弟子兼スウィートハニーの全力の一撃に、お前達は敗北した。これ以上手を出す気なら……私が許さない」
そこには、ショートヘアがよく似合うスタイル抜群の20代くらいの女性が立っていた。
その姿を見て、レナ達や断罪官達も「ほう……」と見惚れる中、
「え……師匠?」
と、春風は女性を見てそう呟いた。
次で今章最終話(の予定)です。




