第45話 激突、断罪官・11
「さぁ、貴様ら。これで、こちらが有利になったな」
レナとアメリアを前にそう言い放ったギデオン。彼の周りには、ルーク副隊長を含む隊員達がいて、皆それぞれ戦闘態勢に入っていた。
そんなギデオンらを見て、
「く。まだ行けるか、獣人の君?」
と、アメリアがチラッと隣のレナを見てそう尋ねると、
「はぁ?」
と、レナは「いきなり何こいつ」と言わんばかりのイラッとした表情でそう答えると、スッと剣を持つ右手と何も持ってない左手を上げた。
次の瞬間……。
ーーボッ!
という音を出して、レナの両手が炎に包まれた。
『なっ!』
と、声を出して驚いたアメリアとギデオンら断罪官達に、
「誰に向かって言ってんの?」
と、レナはニヤッと笑いながら言った。
紅蓮の炎に包まれたレナの両手を見て、
「お、驚いたな。それも、獣人の能力なのか?」
と、アメリアが尋ねると、レナは「え、うーん」と唸って、
「……詳しい事は、この場を生き延びたら教えるよ」
と、苦笑いしながら答えた。
その答えを聞いてアメリアが「はぁ」と声をもらすと、
「俺もいく!」
と、ディックが2人の間に立ち、春風に貰った弓矢を構えた。そんなディックに、
「ちょっと、あんた大丈夫なの?」
と、レナが尋ねると、ディックはチラッとレナを見ながら、
「……ああ、問題ない」
と、若干緊張している様子でそう答えた。よく見ると、左右の頬が赤くなっていたが、レナは「そう」と言ってスルーした。
そして、そんなディックを見て、
「ありがとう、ディック」
と、アメリアはニコッと笑いながらお礼を言った。
一方、ギデオンは戦う相手が3人になったのを見て「ふ……」と鼻で笑うと、
「総員、敵を一掃せよ!」
と、隊員達にそう命令し、それに従うように、
『オオーッ!』
と、隊員達は一斉にレナ達に向かって突撃した。
さて、そんな状況の中……。
ーー春風君。春風君。目を覚ますんだ。
(あ……あれ? オーディン……様?)
ーー春風君。君ははこんなところで、倒れている場合じゃない筈だよ?
(……そう、ですね。おれは……まだ……倒れる訳には……いかないんだ!)
ーーそうだよ。さぁ、目を覚ますんだ。
「ーーさん! ーーいさん! お兄さん!」
「う……あ……」
そう呼ぶ声がしたので、春風は少しずつ意識を取り戻した。
やがて、ぼんやりしていた視界がハッキリと見えるようになると、目の前には涙を流すピートとエステルがいたので、
「……やぁ、呼んだかい?」
と、春風は笑顔で2人に向かってそう言った。その笑顔を見て、ピートとエステルは「よかったぁ!」と叫んで春風に抱き付いた。
その後、
「うぐ! ちょっと2人共、痛いんだけど……」
と、春風がそう言うと、ピートとエステルはすぐに春風から離れて、ピートは回復薬を用意し、エステルは「体力回復」のお呪いを春風にかけた。
ひと通り傷が癒えると、
「ありがとう」
と、春風は2人の頭を撫でながらお礼を言って、ゆっくりと立ち上がった。
そんな春風を、
「お、お兄さん! まだ動かない方が……!」
と、ピートは心配するが、
「大丈夫。お兄さん、そう簡単には死なないよ」
と、春風は笑顔でそう返すと、「2人共、俺から離れないでね」と言って、今も戦ってるレナ達のもとへと歩き出した。
さて、その頃断罪官らと戦っていたレナ、アメリア、ディックの3人はというと、
「「「はぁ……はぁ……」」」
と、なんとか善戦(?)していたが、それでも数は相手の方が多く、その為、3人は体中に沢山の傷を負っていて、疲労もかなり溜まっていたのか、顔色も悪くなっていた。
そんな3人を見て、ギデオンは口を開く。
「ふむ、我々を相手によくここまで戦えたな。だが、もう終わりにしようか」
その言葉を聞いて、3人がキッとギデオンを睨みつけると、
「待てよ、おっさん」
という声がしたので、レナ達はハッとその声がした方へと振り向くと、
「春風!」
「ハル君!」
そこには、ゆっくりと歩いている春風がいた。因みに、その傍にはピートとエステルもいる。
春風はレナとアメリアの間に立つと、その場に落ちていた自分の杖を拾い、それを掲げると、
「ヒールレイン」
と、水属性の回復魔術を唱えた。
すると、春風を中心に、レナ、アメリア、ディック、そして、ピートとエステルの頭上に、魔力を秘めた雨が降り注いだ。
そして、その雨に触れた途端、レナ、アメリア、ディックの体中の傷が、みるみる塞がっていった。
「「「こ、これは……!?」」」
と、魔術を受けた3人が驚いていると、
「それは……水属性の魔術か?」
と、ギデオンが春風に向かってそう尋ねてきた。
その問いに対して、
「……」
と、春風が無言を貫いていると、
「戦っていた時から気になっていたが、貴様、今の水の魔術の他にも、風、炎、土属性の魔術を使っていただろう? 通常、『魔術師』の職能保持者が身に付けることが出来る魔術は、属性にちなんだ1種類だけだ」
と、ギデオンはそう言い、最後に、
「貴様……一体何者だ?」
と、尋ねるようにそう付け加えた。
その瞬間、周囲が一気に緊張に包まれていると、
「……ま、どうせいつかはバレる事だしなぁ」
と、春風は「はぁ」と溜め息を吐きながらそう言った。
その後、「は、春風?」とレナが首を傾げていると、春風はレナやアメリア達だけじゃなく、ギデオンら断罪官達にも見せびらかすように、あるものを見せた。
職能:見習い賢者。
『……え?』
それは、自身の職能だった。
「ちょっと、春風!?」
と、それを見て驚くレナを無視して、
「改めて名乗らせてもらうよ。俺の名は、雪村春風。『雪村』が苗字で、『春風』が名前だ。そして……」
真っ直ぐギデオンら断罪官を見ながら、
「固有職能『見習い賢者』の、固有職保持者だ!」
と、ハッキリとそう名乗った。
謝罪)
大変申し訳ありません、誠に勝手ながら、一部のサブタイトルを変更させてもらいました。
変更点:数字表記の部分。
本当にすみません。




