第33話 「事情」を聞き終えて
「……これが、私達がここまで来た経緯だ」
と、アメリア達はそう言って事情を説明し終えると、
「それはまた、辛すぎますね」
と、春風はそう言って表情を暗くした。
今日会ったばかりの人物の話など、普通だったら「本当なのか?」と疑ってしまうだろう。
しかし、春風はアメリア達が嘘を言ってない事を確信していた。
何故なら、春風にはとある新しいスキルがあるからだ。
実はヘリアテスの所(レナの実家)で暮らしていた頃、春風は新しくスキルを入手する機会が出来たので、早速新たなスキルを入手していた。
そのスキルの名は……。
[嘘発見]……相手の嘘を見抜くスキル。極めれば複数の人間の嘘を見抜けるようになれる。
この他にも入手したスキルがあるのだが、詳しく書くと長くなると思うので、今はこれだけ紹介しておこう。
とにかく、春風はこのスキルによってアメリア達の話が真実であると理解した。理解したうえで、表情を暗くしたのだ。
(なんか訳ありかなとは思ってたけど、結構キツいわ、これ)
と、そんな事を考えた後、
「ちょっと質問していいですか?」
「?」
「その、村長さんの息子さん……ブレントっ言いましたっけ? その人はどうなったんですか?」
と、春風はアメリア達に向かってそう質問した。
その質問に対して、アメリア達は「あー」となんとも言えない表情になった後、
「ブレントは……行方不明なんだ」
と、アメリアは気まずそうに答えた。
「は? 行方不明?」
と、春風が首を傾げると、
「……ああ。あの日、アメリアとエステルの両親だけじゃなく、村長や村のみんなも、エステルを守ろうとしていたんだ。結局、みんな殺されたけど。で、それ以外は断罪官の連中が来る前に殆ど村から逃げ出してたよ。あいつと、あいつの母親も一緒にな」
と、今度はディックがそう答えた。特に最後のブレントの部分は「忌々しい」と言わんばかりの表情で言った。
その言葉に、春風は「えぇ?」と再び首を傾げた後、
「という事は、もしその人が生きてたら、そのうち仕返しに来るかもしれないって事ですか?」
と、再びそう尋ねると、
「それは……どうでしょう。あの時、私は怒りのままにあの人達を呪ったから、今もその呪いに苦しんでるかも……」
と、今度はエステルが顔を下に向けながらそう答えた。
その答えに、春風は「あ、そうですか」と呟くと、また更に質問した。
「えっとぉ。で、その出来事の後、皆さんはその村を出て旅をしている……で、いいんですよね?」
「ああ。エステルの事も、私がしてしまった『裏切り行為』も、きっと五神教会側に伝わってるだろう。だから、『旅をしている』というより、『彼らから逃亡している』と言った方がいいだろうな」
「逃亡って、アテとかあるんですか?」
「いや、残念ながら。だから、出来るだけ遠いところへと思ってるんだが、その途中で私がドジって怪我をしてしまってな。で、その治療の為にこの小屋で休んでいるという訳なんだ」
と、春風の質問に対してアメリアがそう答えると、それに続くように、最後にピートが口を開く。
「それで、動けないアメリア姉ちゃんの為に、僕が近くで薪や薬草を採りに行ってた時に……」
と言って、チラッと春風を見たピートに、
「ああ、俺が食事してるところを見たって訳だね」
と、「はは……」と笑いながらそう言った春風を見て、
「は、はい、そうです。あの時は、美味しいパンをありがとうございました!」
と、ピートは顔を真っ赤にしながら春風にお礼を言って、
「……そうだ。そして、俺はピートが心配になって探していた時に、ピートと一緒にいるあんたに出会って……」
と、ディックが恥ずかしそうにそっぽを向いた。
そんなディックを見て、春風が「ああ、あの時はごめんなさい」と謝罪すると、
「いや、君は気にしないでくれ。寧ろ、私達の為に大切な食糧をわけてくれて、本当に申し訳ないって思ってるんだ」
と、アメリアは最後に「すまなかった」と付け加え、春風に向かって深々と頭を下げた。
それを見て、春風は「あーそんな……」照れくさそうに顔を赤くした後、
「え、えっとぉ。ところで、アメリアさん達はこれからどうする気なんですか?」
と、誤魔化すようにそう質問すると、アメリアは顔を上げながら、
「ああ、それなんだが、私ももう怪我が良くなったし、ここを離れてまた逃亡の旅にでるところなんだ。先程君が話したように、ギデオン大隊長も来ている事だしな」
と、答えたので、春風も納得の表情を浮かべながら言う。
「そうですね。俺も話を聞いただけなんですけど、かなり危険な人物だとか」
「ああ。大隊長は『異端者』に対して本当に容赦がない。加えて私という『裏切り者』もいる訳だから、向こうも本気で私達を追っているだろう」
「それは大変ですね。俺も出来る限りサポートします。すぐにここを離れて……」
と、春風が最後まで言おうとした、まさにその時、
「その必要はない」
『っ!』
春風の背後で聞き覚えのある声がしたので、春風とアメリア達が驚いてその声がした方へと向くと、森の木々の間を通って、
「お前達には……ここで死んでもらう」
大隊長ギデオン・シンクレア率いる、「断罪官」が現れた。




