第32話 「異端者」と「裏切り者」・3
今回も、いつもより短めの話になります。
大切な妹のエステルが固有職保持者だった。
その事実を聞かされた時、アメリアの表情は絶望に染まった。
「どうして? どうしてエステルが?」
と、アメリアは誰かに尋ねるようにそう呟いたが、それに答えた者は誰もいなかった。
もしも許されるなら、
「私には出来ません!」
と、アメリアはそう拒否したであろう。
しかし、断罪官に所属している以上、上の人間……否、もっと言えば「神」に逆らう事は許されない。
(私はどうすれば……どうすればいいの?)
と、アメリアはそう悩みながらも、小隊の仲間達と共に、生まれ故郷へと向かった。
一方、エステルの方はというと、自身が固有職保持者だという事が村人達に知られてしまった後、彼女は村の中にある大きな倉庫に幽閉された。因みに、「呪い」を受けたブレントと取り巻き達は未だに苦しんでいて、彼の母親は、
「今すぐあの悪魔を殺すべきよ!」
と、息子を呪ったエステルに対して激しく怒りと憎しみを露わにしていたが、逆に父親と村人達はというと、
「全てはブレント達の自業自得だ!」
『そうだそうだぁ!』
と、誰一人ブレント達に同情せず、寧ろ、皆エステルに対して、
「こんな扱いをしてしまって申し訳ない」
と、本当に申し訳なさそうにしていた為、エステルも村人達を恨まなかった。
そしてディックはというと、
「俺に……俺にもっと力があったら!」
と、自身の無力さを呪うと同時に、
「ごめん、エステル」
と、エステルに対して、村人達以上に申し訳ない気持ちになっていた。そして、そんなディックを、
「兄ちゃん……」
と、ピートは心配そうに見つめていた。
そして数日後、とうとう断罪官が村にやって来た。
彼らの中にアメリアは……いなかった。
実は村に着く前日、アメリアは所属している小隊の隊長と仲間の隊員達によって、村の近くの森に置き去りにされたのだ。
「そ、そんな……みんな!」
それを理解すると、アメリアは急いで彼らを追って村に向かった。
そして、彼女が村に着いた時、
「あ、ああ……村が!」
生まれ故郷の村は、紅蓮の炎に包まれていた。
目の前で起きてる事を見て膝から崩れ落ち、「遅かった」と呆然とするアメリアの目の前で、小隊の隊長と仲間達による「異端者討伐」という名の「虐殺」が行われていた。
「ああ、嫌だ。こんなの……嫌だ」
大切な故郷が業火に包まれ、大好きな人達が次々と殺されていく状況に、涙を流すアメリア。
そして、ふととある方向に視線を向けると、
「エステル!」
今まさに、大切な妹を手にかけようとしている隊長の姿を発見し、次の瞬間……。
ーープチッ!
アメリアの中で、何か切れた。
「やめろぉおおおおおおおっ!」
そう叫ぶと、彼女は武器を構えて、エステルの方へと駆け出した。
彼女はまずエステルを助ける為に隊長を手にかけた。本人曰く、その時相手からの抵抗はなかったそうだ。
その後、アメリアはその勢いのまま、1人、また1人と、苦楽を共にしてきた断罪官の仲間達をその手にかけた。
やがて空から雨が降り注ぎ、村を焼く炎が消えると、文字通り全てが終わった。
村の中央にあたる場所に、1人立ち尽くすアメリア。
そんな彼女の周りには、大好きな村人達の他に、断罪官達の死体が転がっていた。
当然、その中にはアメリアの両親もいた。
生き残っているのは、妹のエステルの他に、幼馴染みのディックと、その弟のピートだけだった。
「姉さん……」
と、エステルに見つめられながら、呆然としているアメリアの口から出たのは、
「ごめんなさい」
謝罪の言葉だった。
アメリアは持っていた武器を落として、再び膝から崩れ落ちると、
「お父さん、お母さん、村長、村のみんな、ケネス小隊長、小隊のみんな、みんな……ごめんなさい、ごめんなさい……」
と、死んでしまった人達全員にそう謝罪し、
「う……あ……うあああああああ……っ!」
大きな声で、泣き叫んだ。
それから暫くすると、漸く雨が止んだ。
アメリアは生き残ったエステル、ディック、ピートと共に、殺された両親や村人達、そして、自身が殺した小隊の隊長と仲間達を弔うと、使えそうなものを持って、生まれ故郷だったその場所を旅立った。




