第27話 思わぬ遭遇
異端者討伐部隊「断罪官」がこのフロントラルに来て、グラシアに「過去」の話を聞いてから翌日、春風はというと、
「はぁ……」
と、溜め息を吐きながら、ハンターの仕事をしていた。
あの後、グラシアの話を聞いていたフレデリックが、
「この話は他言無用でお願いします。広まってしまえば、とんでもない混乱が起きてしまいますので」
と、春風とグラシア、レベッカ、ヴァレリー、タイラー、そして、レベッカの夫デニスと娘のウェンディをはじめとした、その他の人達にそう提案し、それに対して、皆、黙ってこくりと頷いた。
因みに、グラシアの話を聞いていた人達が他にもいたという事実に、春風もグラシアも「え、マジで!?」とびっくりしていた。
そして、翌日の現在。
(『関わらない方がいい』、か)
グラシアの話を聞いてから、春風はなんとももやもやとした気分になっていたが、
(ま、考えても仕方ないか)
と、気持ちを切り替えようと思って、昨日は出来なかったハンターの仕事を受ける事にした。
今回受けた仕事は、フロントラル都市内にある孤児院の職員のお手伝いと、そこで暮らす孤児達の遊び相手だ。
このフロントラルには、旅の商人や流れ者のハンターの他にも、様々な理由で親を亡くした、もしくは親に捨てられた子供達も入ってくるので、彼らが安心して暮らせるように都市内部に数ヶ所程孤児院が建てられていた。春風が今回受けたのは、その内の1つの孤児院からの依頼で、
「怪我で動けなくなった職員の代わりに、孤児院の中のお手伝いや、孤児達の遊び相手になってほしい」
というものだった。
依頼を受けた春風は、早速孤児院の院長に詳しい依頼内容を聞いた後、職員達の手助けをしつつ、孤児達の遊び相手になった。
手伝い自体はそれ程苦でもないし、孤児達と遊ぶのも楽しいのだが、
(断罪官達は、このフロントラルに何しに来たのだろう?)
と、春風の頭の中は、昨日見た断罪官という連中に関する考えでいっぱいだった。ここに来た理由に関しては、
「どうもこのフロントラル付近に、彼らが探している『異端者』が潜んでいるとの事です」
と、フレデリックはそう説明していたが、春風はそれが本当かどうか疑っていた。ただ、その時春風の脳裏に浮かんだのは、
(まさか、あの子達な訳ないよな?)
そう、春風がフロントラル付近の森で出会った、あのぼろぼろ服の少年とその兄であるもう1人の少年だった。
そんな事を考えていると、
「あ!」
と、春風の近くでボール遊びをしていた孤児達のボールが、彼らの手を離れて孤児院の門付近にまで転がってしまったので、
「あ、こりゃいかん!」
と、春風は孤児の1人と一緒に、転がっていったボールを拾いに向かった。
そして、ボールが1人の人物の足元で止まると、
「あ、すみません……」
と、春風はその人物のもとへと駆け寄りながらそう謝罪したのだが、
「っ!」
(う、嘘だろ!?)
なんとそこにいたのは、昨日春風が見た断罪官達の先頭にいた男の人、
(何でここに、『大隊長』殿がいるんだ!?)
断罪官大隊長の、ギデオン・シンクレアだった。
「……」
転がったボールを拾い上げた孤児を、その男、ギデオン・シンクレアーー以下、ギデオンがジッと見つめている。
それを見て、春風は大急ぎで孤児のもとへと駆け寄った。今の春風は、左腕に銀の籠手をつけてなく、身に付けている武器は「お守り」の鉄扇のみ。杖の方はというと、
(ま、今日は必要ないだろう)
と考え、今は腰のベルトについている革製のポーチの中だ。
(や、やばい! やばいって!)
春風は2人の傍に着くと、
「どうも、すみません。ほら、向こうに行こ?」
と謝罪しながら、大急ぎでボールを持った孤児を仲間達のもとへと向かわせて、自身もそそくさとその場を去ろうとした。
その時だ。
「待て」
と、ギデオンがそう口を開いたので、春風は思わずビクッとなって動きを止めた。
そして、
「な、何でしょう……か?」
と、春風がゆっくりとギデオンの方へと振り向きながら、恐る恐るそう尋ねると、
「……」
と、ギデオンは無言のまま、何故か春風の顔をジィッと見つめてきた。
あまりにも意味のわからないギデオンの行動に、
「あ……あのぉ……?」
と、春風が再び恐る恐るギデオンに向かってそう尋ねると、
「貴様、中々良い顔付きをしているな」
と、ギデオンは再びそう口を開いた。
その言葉に春風は一瞬キョトンとなったが、すぐにハッとなって、
「え、あ、ありがとうございま……」
と、緊張しながらもギデオンにお礼を言おうとした。
ところが、
「うむ、良い顔付きだぞ、少女よ」
と、ギデオンがそう言った次の瞬間、
「……あぁ?」
それまでの緊張が一気に吹っ飛び、
「俺は男です!」
春風は、ギデオンに向かって怒鳴るようにそうツッコミを入れた。
そして、その後すぐに、
(何やってんの俺ぇえええええええっ!?)
と、春風は心の中でそう悲鳴をあげた。




