第22話 ある日の出会い・2
(な、何だ? 何でこんな所に子供がいるんだ!?)
木の後ろから現れた少年に、春風は内心驚きを隠せないでいた。そんな春風を前に、
「あ、あの、ごめんなさい……」
と、少年は春風を見て、怯えながらそう謝罪した。
よく見ると、少年の服装はとてもボロボロで、体の方はというと、今にも倒れてしまうんじゃないかと思えるくらい酷く痩せ細っていた。
そんなボロボロ服の少年を見て、
「こんにちは」
と、春風が穏やかな笑みを浮かべてそう挨拶すると、
「え!? こ、こんにちは」
と、ボロボロ服の少年は驚きながらも挨拶を返した。
そんな彼を前に、春風は穏やかな笑みを崩さず、
「君、何処から来たのかな? 見たところフロントラルの住人じゃなさそうだけど」
と、ボロボロ服の少年に向かってそう尋ねた。春風自身、フロントラルに来てからそれ程経っていない為、住人全員の顔を覚えているという訳ではないが、目の前にいる少年からは、明らかにフロントラルの住人じゃないという雰囲気が出ていた。
春風の質問を聞いて、
「え、えっとぉ……」
と、ボロボロ服の少年が怯えながら答えようとしたその時……。
ーーギュウウウウウウウ。
「あ!」
彼の腹からそんな音がしたので、思わず恥ずかしそうに顔を真っ赤にして下を向いた。
そして春風もその音を聞いて大きく目を見開いたが、すぐに「はは」と笑って、
「お腹空いてるの? それじゃあ、一緒に食べようよ」
と、山のように積み重なったハンバーガーの1つを手に取って、「はい」とボロボロ服の少年に差し出したので、彼はそれを見て、「あ……」とハンバーガーに手を伸ばそうとしたが、何かを思い出したかのように途中でその手を止めたので、
「ん? どうかしたの?」
と、気になった春風が尋ねると、
「あ、あの、実は僕、仲間がいまして……!」
と、ボロボロ服の少年は勇気を振り絞るかのようにそう答えたので、
「え、そうなの? じゃあ、ちょっと待って……」
と、春風が行動に出たその時……。
ーーヒュッ!
「「っ!」」
ーードシュ!
突然、風切り音が聞こえたので、嫌な予感がした春風がその場を飛び退くと、先程まで春風が立ってた地面に、一本の矢が突き刺さったのだ。
「誰だ!」
突然の攻撃に、春風は矢が飛んできた方向に向かって怒鳴るようにそう叫んだ。
すると、
「ピートから離れろ!」
と、森の木々の間から別の少年がシュタッと現れて、春風に向かって弓を構えた。
見たところ春風と同い年に見える、長い髪を持つその少年を見て、
「に、兄ちゃん!」
と、ボロボロ服の少年がそう叫んだ。
それを聞いて、
(ああ、なるほど。彼がこの子の仲間か)
と、春風は冷静な表情で納得した。
よく見ると、長い髪の少年も、ボロボロ服の少年と似た雰囲気を出していて、痩せた体に使い古されたかのような服と革製のベストを付けているだけじゃなく、弓を弾く腕も力が入ってないのか、プルプルと震えていた。
そんな長い髪の少年を見て、
(彼もお腹を空かしてるのかな?)
と、春風が首を傾げていると、
「離れろって言ってるんだ!」
と、長い髪の少年は苛立っているかのように、弓を構える手に力を入れた。
といっても、見たところあまり力が入ってないように見えるが、春風はそれをスルーして、
「あー、彼が君の仲間かい?」
と、春風がボロボロ服の少年に向かってそう尋ねると、
「は、はい、僕の兄です!」
と、ボロボロ服の少年がそう答えたので、
「やっぱりね……」
と小さくそう呟くと、春風は「はぁ」と溜め息を吐いて、
「あー! あれは何だ!?」
と、叫びながら、明後日の方向を指差した。
その叫びを聞いて、
「「え!?」」
と、長い髪の少年とボロボロ服の少年が同時にその方向を向くと、
「アクセラレート!」
と、春風は「風」の魔術で脚力を強化し、その状態でシュタタッと後片付けをした。
調理器具をしまい、ハンバーガーを2つ程手に取って、残りを大きめの皿に移すと、
「はい、どうぞ!」
と、それをボロボロ服の少年に渡し、
「じゃーねっ!」
と、ダッシュでその場を後にした。
すると、漸く騙された事に気付いた長い髪の少年が、
「し、しまった、あいつ……!」
と、春風を追いかけようとしたが、ギュウッとお腹が鳴ってしまい、「く……」とその場に膝をついた。そんな彼を見て、
「兄ちゃん!」
と、ぼろぼろ服の少年が、ハンバーガーを乗せた皿を持ったまま駆け寄った。
さて一方その頃、ダッシュで彼らのもとから駆け出した春風はというと、
「うーん、我ながら上手いなこれ」
と、ハンバーガーを頬張りながら走り続けていた。
そんな春風に向かって、
「春風様、お行儀が悪いですよ」
と、魔導スマホ内のグラシアが注意してきたので、
「あ、すみませんグラシアさん」
と、春風は食べながらそう謝罪した後、
「さて、依頼もこなしましたし、帰りますか」
と、フロントラルに向かって駆け出した。




