第21話 ある日の出会い
その日、春風は1人(正確にはグラシアも一緒なのだが)、ハンターの仕事としてフロントラル付近の森の中で、回復薬に使う薬草を採取していた。
何故1人なのか、その理由を語る為に時を少し前に遡る事にしよう。
春風は普段、都市内部での仕事はいつも1人で受けているのだが、外での仕事はレナ、もしくはたまにだが先輩ハンター達と一緒に受けている。そのおかげで春風の交友関係が広がっていったのだが、詳しく語ると色々とめんど……失礼、ややこしいところもあったりするので、こちらでは語らないでおこう。
しかし、今日は本当に春風1人だけでフロントラルの外の仕事を受けていた。何故なら、
「え、レナに指名依頼が来てるの?」
「うん。正確には銀級以上のハンターにだけどねぇ」
そう、レナを含めた銀級以上のハンターに、遠征系の指名依頼が来ていたのだ。
これは春風も予め知っていた事なのだが、ハンターには時折りギルドの方から指名依頼が出されて、指名されたハンターはこれを引き受けなければならないという決まりがあったのだ。因みに拒否する事も出来るのだが、後に色々と面倒な事になってしまうという。
そしてその日、春風とレナがギルド総本部に入ってすぐに、受付の職員から、
「フレデリック総本部長が、レナさんにお話があるそうです」
と言われて、レナは「はぁ」と溜め息を吐いた後、
「ごめん、ちょっと行ってくるね」
と言って、春風を残してフレデリックのもとへと向かい、その後暫くして、「はぁ」と再び溜め息を吐きながら春風のもとへと戻った。
「……で、今日から数日間、ここから少し離れた小さな村を襲う魔物の討伐に行く事になっちゃったと?」
と、レナから指名依頼の内容を聞いた春風がそう尋ねると、
「う、うん。ごめんね、一緒にいられなくて……」
と、レナは申し訳なさそうに表情を暗くしながら謝罪したので、
「レナが気にする事はないよ。仕事、気をつけて行ってきてね」
と、春風はそう励ましながら、レナを仕事へと送り出した。
ただその際、
「私がいない間は、絶対に無理な仕事はしないでね!」
と、念を押されてしまったが。
まぁ、とにかく、その後、残された春風は「今日は何をしようか」と受ける仕事を見ていたが、残念な事に都市内部での仕事の依頼はなく、代わりに都市の外での仕事が多かったので、
「それじゃあ、こいつにするか……」
と、春風は仕方なく、1番ランクの低い「薬草採取」の仕事を受ける事にし、現在に至る。
「ふぅ。大分採ったなぁ」
と、春風は布袋に大量に入っている薬草を見て、満足そうな笑みを浮かべた。
先に語ったように、今春風がいるのは、フロントラル付近、それも都市から1番近い森の中だ。ここは春風がまだハンターになったばかりの時に入った森で、現在春風が知ってる中でも、1番薬草が採れる所でもあった。
当然、森の中には魔物もいるのだが、ハンターになった日からも自身を鍛え続けていたので、ある程度の相手なら1人でも倒す事が出来た。
まぁ、そんなこんなで、襲ってくる魔物を倒しながら、かなりの数の薬草を取る事が出来たので、
「これだけあれば充分ですね」
と、春風の傍でグラシアがそう言った次の瞬間……。
ーーグウゥ。
「あ」
「あらあら」
春風のお腹からそんな音が聞こえたので、
「あはは。じゃ、お昼ご飯にしましょうかねぇ」
と、春風は布袋を閉じると、その場から歩き出した。
暫く歩くと、大きな川の前に出たので、春風はそこで食事にする事にした。
「よぉし。それじゃあ、作りますか!」
そう言って春風が腰のベルトに付けてる小さな革製のポーチに手を突っ込むと、そこから様々な調理器具と、様々な食材を取り出した。
このポーチはヘリアテスのもとで彼女と精霊達と一緒に作ったもので、ゲームやラノベ、漫画などの創作物に出てくる、いわゆる「アイテムボックス」もしくは「インベントリ」とも呼ばれているものにあたる道具である。見た目は小さいが、大きなものから小さいものまで、様々な道具や素材などを入れる事が出来るのだ。その辺りの詳しい話については、いずれ何処かで語るとしよう。
とにかく、春風は川の近くで焚き火を起こした後、楽しそうに料理を開始した。
そして、数十分後。
「……よし、出来た!」
という声と共に出来上がったのは、春風特製のハンバーガーだった。
出来立ての為か、黙々と湯気のようなものが見えて、それが更に美味しそうに見せたのだが、
「でも、ちょっと作り過ぎたかも」
出来上がったハンバーガーの横には、同じハンバーガーが山のように積み重なっていたので、春風はタラリと汗を流しながら「あはは」と笑ったが、
「ま、いっか!」
と、今は食事に集中しようと気持ちを切り替えて、
「じゃ、いっただっきまーす!」
と、出来立てのハンバーガーを手に取り、思いっきりがぶりつこうとした。
その時……。
ーーパキッ!
「ん!?」
春風の背後で、木の枝を踏んだような音がしたので、
「誰だ!」
と、春風はすぐに後ろを振り向くと、
「ヒィッ! ご、ごめんなさい!」
と、悲鳴と謝罪と共に、大きな木の後ろから、
「……え、子供?」
春風よりも年下と思われる1人の少年が、恐る恐る顔を出してきた。




