第16話 食事が終わって・2
春風とレナが食堂を出た後、残されたレベッカ、ヴァレリー、タイラーが春風について話し合っている中、とうの春風本人はというと、あの後、無事に空いてる部屋に入る手続きを済ませて、その部屋に入ると、
「あー、すっごい疲れたぁ」
と、すぐにその場にヘナヘナとへたり込んだ。因みに、部屋はそれなりに広くて綺麗だった。
まぁそれはさておき、そんな状態の春風を見て、
「だ、大丈夫!?」
と、一緒に部屋に入ったレナが、驚いて春風にそう尋ねると、
「あはは、ご、ごめんレナ。あの人達に本当の事がバレないか凄く緊張しちゃって……」
と、春風は疲れているのを誤魔化すかのように笑いながらそう答えた。
その答えを聞いて、
「あー、うん。まぁ、あの人達……ヴァレリーさんとタイラーさん、それにレベッカさんもここじゃ結構有名だから」
と、レナは若干気まずそうな態度でそう返すと、
「ん? 何それ、どういう事?」
と、春風はその言葉が気になったのか、首を傾げながらそう尋ねた。
「そ、それは……」
その質問に対して、レナは気まずそうな態度を崩さずに「はぁ」と溜め息を吐きながら答える。
「まず、あのヴァレリーさんがリーダーをしてる『紅蓮の猛牛』は、主に魔物の討伐を中心に受けているレギオンで、このフロントラルでダントツの魔物討伐数を誇ってるの」
「へぇ、そうなんだ……って、ちょっと待って。お、俺、そんな凄いレギオンのリーダーと戦ってたの?」
と、春風に恐る恐る尋ねられて、レナは黙ってコクリと頷いたので、それを見て、
(ま、マジかよ……)
と、春風はタラリと冷や汗を流した。
そんな春風を前に、レナは話を続ける。
「一方、タイラーさんがリーダーをしてる『黄金の両手』っていうのは、『紅蓮の猛牛』と同じように魔物の討伐もしてるけど、1番の特徴は生産系職能の職能保持者が多い事で、このフロントラルで売られている武器や防具、それに回復薬とかはみんな彼らが作ってるの。あぁ因みに、タイラーさん自身は戦闘系の職能保持者なんだけどね」
「そうなんだ!」
「そして最後にレベッカさんなんだけど、ハルはハンターの階級は知ってるよね?」
「え? ああ、確か『白金級』が1番高いんだよね?」
「うん。ちょっと話すのが遅れたけど、今話したヴァレリーさんとタイラーさんが白金級のハンターで、レベッカさんは……元・白金級のハンターなの」
「……え、マジで!?」
「マジで。これは他の人から聞いた話なんだけど、料理人のデニスさんとの結婚を期に引退する前はもの凄く強い戦闘系職能の職能保持者で、単独での魔物討伐数は『紅蓮の猛牛』を軽く超えているんだって」
「えぇ……」
レナの説明を聞いて、春風は顔を真っ青にすると、
「だ、大丈夫かなぁ? 俺の嘘……ていうか、正体バレたりしないよなぁ?」
と、かなり『不安です!』と叫びたくなるくらいの表情でレナに向かってそう尋ねると、
「う、うーん。だ、大丈夫だと思う」
と、レナは自信なさそうにそう答えたので、
「ふ、不安だ。これからの事を考えると、なんかすっごい不安になったんですけど」
と、春風は表情を青くしながら、ガックシと肩を落とした。
そんな春風を見て心配になったのか、
「だ、大丈夫だって! ハルには、私がついてるんだからさぁ! いざとなったらここを出て別の場所でハンター活動すればいいんだし……」
と、レナは必死になって春風を慰めた。
その時だ。
「私もついてますよ」
と、何処からか女性の声が聞こえたので、
「だ、誰!?」
と、レナはキョロキョロと周囲を見回すと。
「ここです」
と、再び女性の声がしたので、
「え?」
と、レナが声がした方へと振り向くと、
「ここですよレナ様、ここです」
声の発生源は、春風の左腕に付けられている銀の籠手からだった。
よく見ると、腕の装甲には赤、青、オレンジ、緑色の宝石(?)がはめ込まれていて、女性の声はその4つの宝石から発せられているのがわかった。
「え、な、何? どういう事?」
と、レナが戸惑っていると、4つの宝石がピカッと光りだして、
「よいしょっと」
そこから1人の女性が出てきた。
その姿を見て、レナは「え?」と口をあんぐりさせた後、
「ぐ、グラシアさん!?」
と、出てきたその女性の名前を呼んだ。




