第31話 それから……
今回はいつもより短めの話ですが、第3章最終話です。
今後の活動についての話し合いから翌日。
朝食が済んだ後、話し合いの通り、レナはハンターとして活動する為に春風達のもとを発った。
一方、ヘリアテス達のところに残った春風はというと、彼女と精霊達の指導のもとで、この世界に関する歴史や、現在の常識、そして、自身のスキルを使いこなす為の訓練を受ける事になった。特に精霊達からは、魔術だけでなく魔力そのものの制御方法、更にはそれらを扱う為の基礎体力と精神力の向上を目的とした訓練も受ける事になり、春風は最初は苦戦していたが、「地球だけでなくエルードも救う」と決めたので、弱音なんて吐いていられないと必死になって訓練に励んだ。
やがて、ある程度訓練に慣れてくると、今度はなんとヘリアテスを相手に組み手をする事になった。
それを聞いた春風は最初、
(えっと、ヘリアテス様って一体どのくらい強いんだろう? ていうか、戦えるのかな?)
と、疑問に思っていたが、次の瞬間、
「はっ!」
ーーブオン!
「はぐあっ!」
春風の敗北という結果に終わった。それも、完膚なきまでにだ。
これは後で知った事なのだが、実は何を隠そう、ヘリアテスは見た目は10歳から12歳くらいの少女だが滅茶苦茶強く、レナに戦闘技術を叩き込んだのも彼女なのだそうだ。
「さぁ、立ちなさい春風君。まだ訓練は始まったばかりですよ?」
「は……はい」
その後、春風のなんとも情けない悲鳴が何度も響き渡った。
そうして訓練に励む中、次に春風が行ったのは、自身の「装備」の製作だった。
地球で「師匠」と呼ぶ女性のもとで、春風は格闘術の他にも、剣や弓、果ては様々な特殊な武器の扱い方を教わった。
(さて、どうするかな……)
と、腕を組んで考え込んだ末、
「うん。まずははこいつだな」
と、春風は「師匠」と呼ぶ女性にもらった「お守り」こと鉄扇を手に取った。
(そういえば、こいつって一体何なんだ?)
と疑問に思った春風は、その鉄扇にスキル[鑑定]を使った。
「……は?」
結果、その鉄扇はこう表示された。
鉄扇・彼岸花……とある「刀」を材料に作られた鉄扇。作り手がかけた「おまじない」によって、作り手と使い手以外が持つと凄く重く感じてしまう。(作り手:陸島凛咲 使い手:雪村春風)
(彼岸……花?)
その名前を見た瞬間、春風の脳裏に浮かんだのは、自身が昔、一度だけ振るった一振りの「刀」だった。
「くっ!」
その時の苦い記憶を思い出して、春風は辛そうな表情になったが、すぐに「いかんいかん」と首を横に振るって、
「後悔するだけならいつでも出来る。今はただ、やるべき事をやるんだ」
と、自分に言い聞かせた。
ただその後、
(……あれ? ちょっと待てよ)
春風の脳裏に、とある記憶が浮かび上がった。
それは、ルール無視の勇者召喚から救われた際に見た、2人の青いローブ姿の人物が出た「夢」だった。
(確か、あの時2人から受け取ったのも、『扇』と『刀』だったな……)
と、春風はその「夢」の内容を思い出し、
(偶然……なのかな?)
と、疑問に感じていたが、
「ま、いっか」
と、春風は気にしない事にした。
それから春風は、仲良くなった精霊達と協力して、自身の装備を作っていった。
多くの失敗をしたが、それにも負けずに様々な試行錯誤の末、なんとか自身が納得する装備が出来上がると、
『イエーイッ!』
と、春風と精霊達は、喜びのあまり飛び上がってハイタッチした。
そして、そんなこんなで時が過ぎ、
(とうとう明日だな)
と、春風が心の中でそう呟いたように、明日はいよいよここを旅立ってレナと合流する時になった。
その前日の夜、春風は1人、湖の畔に座り込んで、夜空に浮かぶ月を眺めていた。
「……」
無言で月を見ている春風の脳裏に浮かんだのは、
(ユメちゃん。美羽さん。水音。先生にクラスのみんな……)
ルーセンティア王国で別れた「勇者」達と、
(オヤジ。地球にいるみんな……)
故郷「地球」にいる家族と、今日まで生きて出会ってきた大切な人達だった。
彼らを思い出して、春風は泣きそうになったが、すぐに首を横に振るうと、
「おい、悪党ども……」
と、自身が戦う相手を思い浮かべて、その後、月に向かって手を伸ばすと、
「お前らの『罪』、絶対に償わせてやるからな!」
と言って、伸ばしたその手をぐっと握り締めた。
〜第1部「最悪の異世界召喚編」・完〜
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ここまでの春風のステータス(ヘリアテスとの邂逅時)
雪村春風(人間・17歳・男) レベル:1
職能:見習い賢者
所持スキル:[英知][鑑定][風魔術][炎魔術][水魔術][土魔術][錬金術][暗殺術][調理][隠密活動]
称号:「異世界(地球)人」「固有職保持者」「神(地球)と契約を結びし者」
どうも、ハヤテです。
新しく投稿を始めて、新しい設定を作ったり何度か書き直したりしてるうちに、
「あれ? これもうただの修正版じゃないのでは?」
と、考えてしまう本作ですが、以上で物語の第1部はお終いです。
そして、この後の事ですが、このまま第2部に進むか、それともとある「新たな物語」を書いて投稿する予定です。
どちらも更新は不定期になるかもしれませんが、今度こそ最後まで書いていきますので、今後ともよろしくお願いします。




