第14話 そして、開幕の時
ストロザイア帝国帝都。
そのシンボルである帝城内には、幾つもの「目的」に合わせた部屋がある。
当然、その中の1つには、主に「お祝い事」をする為の大きな部屋……いや、正しくは「ホール」と言った方が良いだろうか。
そしてその日の夜、その「ホール」の中で今、ストロザイア帝国皇帝ヴィンセント主催の「祝勝会」が始まろうとしていた。
因みに内容は「勇者達が邪神ループスとの戦いを終わらせたのでそれを祝う」というものだ。勿論、建前上はだが。
まぁとにかく、その「祝勝会」の会場となってるホールでは、多くのご馳走が置かれたテーブルが並べられ、その周囲に集まっているかのように、大勢の立派な衣装を着飾った者達がいた。
当然、その中にはルーセンティア王国国王のウィルフレッドに、爽子をはじめとした異世界の勇者達や、春風の仲間達、そしてループスとヘリアテスもいる訳で、今、彼・彼女達はヴィンセントら皇族達が用意してくれた立派なスーツやドレス姿で、祝勝会の開催を待っていた。
そんな状況であるというのに、
「……」
ただ1人、水音は何処か落ち着かない様子で、時折辺りをキョロキョロしていたので、
「どうした水音? そんな落ち着かない顔なんかして」
と、水音の傍にいたエレクトラが、水音にそう話しかけてきた。
それに水音が「ん?」と反応すると、
「あ、ああすみませんエレクトラ様。その……あれから結構時間経ってる筈なのに、春風や師匠達、それにキャロライン様遅いなって思ってまして……」
と、エレクトラに向かって気まずそうに謝罪しながらそう言った。
その言葉を聞いて、
「うーむ、確かに遅いな。一体何をしているんだ?」
と、同じく水音の傍に立っていたループスが、水音と同じように辺りをキョロキョロしながらそう言った。
因みに、何故ループスだけでなくヘリアテスまでもがこのホールにいるのかというと、遡る事数時間前、春風、レナ、歩夢、美羽、凛咲の5人がキャロラインに連れられるように謁見の間を出て行った後、
「どうせならお二方も一緒に楽しまれてはどうですか?」
と、ヴィンセントにそう誘われてしまい、共に祝おうと水音達と共に祝勝会の開催を待つ事になり、そのまま現在に至る。
「まぁ、キャリーの事だから、悪いようにはしねぇと思うけどな」
と、ヴィンセントが「やれやれ」と呆れ顔になっていたその時、ホールの扉が開かれて、
「「お父様!」」
と、その向こうからルーセンティア王国王女のクラリッサとその妹、イヴリーヌが現れた。
その姿を見て、
「おお、クラリッサにイヴリーヌか!」
と、ウィルフレッドは目を大きく見開いたが、
「……って、ん?」
と、何かに気付いたかのように傾げていると、
「お、お父様、どうかなさいました?」
と、イブリーヌが「え? え?」とオロオロしていると、
「お前達、マーガレットはどうしたんだ?」
と、ウィルフレッドはクラリッサとイヴリーヌ、2人に向かってそう尋ねた。
その質問を聞いて、爽子ら勇者達が「え?」とクラリッサ達の背後と扉の方に視線を向けると、確かに王妃であるマーガレットの姿がなかったので、
「ああ、お母様でしたら、『国を放っておく訳にはいかないから、あなた達2人だけで楽しんでらっしゃい』と言われてしまいまして……」
「なるほど、それに従ってここにきたという訳のだな?」
と、ウィルフレッドがそう尋ねると、クラリッサとイヴリーヌは同時に「「はい」」と答えた。
すると、
「あの、お父様……」
と、イヴリーヌが恐る恐るウィルフレッドに声をかけてきたので、
「む? どうしたイヴリーヌ?」
と、ウィルフレッドがそれに反応すると、
「春風様は、どちらにいるのでしょうか?」
と、イヴリーヌがそう尋ねてきたので、
「ああ、あいつならキャリーや他の勇者達に連れられて出入ったきり戻ってねぇんだわ」
と、ウィルフレッドではなくヴィンセントがそう答えた。
その答えを聞いて、
「そ、そうでしたか」
と、イヴリーヌが少しシュンとなっていると、
「みんな、お待たせぇえええ!」
と、ホールについている別の扉が開かれて、その向こうからキャロラインが現れて、元気良くそう言った。
そんなキャロラインの様子を見て、
「おう、遅かったな……って、あれ? 春風達はどうしたんだ?」
と、ヴィンセントがキャロラインに向かってそう尋ねると、
「ああ、心配しないで。みんな準備は出来てるから」
と、キャロラインは満面の笑みを浮かべてそう答えた。
そして、その答えに周囲の人達が「え?」と首を傾げていると、
「みんなぁ、いらっしゃあい!」
と、キャロラインは先程潜ってきた扉の向こう側に向かってそう呼びかけると、扉の向こう側から爽子ら女子・女性勇者達同じような立派なドレスに身を包んだ、レナ、歩夢、美羽、凛咲、そして、
『……え? 誰?』
真っ赤なドレスに身を包んだ、1人の美少女が入ってきた。




