第10話 第2皇女、「全て」を知る
そして、ヴィンセントはエレクトラに「全て」を語った。
守らなければならない「ルール」を無視した「勇者召喚」によって、エルードと地球、2つの世界が消滅の危機に陥ったところから始まり、その事を地球の神々から聞かされた春風は、それを阻止する為にエルードに行く事を決め、神々の1柱と契約を結んだ。
その後、「見習い賢者」の固有職保持者となった春風は、神々によってこの世界に送り込まれたが、彼らから聞いた内容とウィルフレッドから聞かされた事情に「違い」があっただけじゃなく、自分が目覚めたのは「悪魔の力」と知って、偶然その場に居合わせたレナと共にルーセンティア王国を脱出した。
そして、ルーセンティア王国の外で「邪神の1柱」こと「太陽と花の女神ヘリアテス」から500年前にこの世界で起きた「真実の出来事」や、元・固有職保持者の幽霊であるグラシアから、自身が予言に出てきた「赤き悪魔」だと聞いた春風は、故郷・地球だけでなくこの世界も救う事を決意し、レナと共にハンターとして活動、現在至る。
「……なるほど、そういう事だったのですね」
と、話を聞き終えたエレクトラがそう呟くと、
「そうだエレクトラ。春風は大切なものを守る為に立ち上がり、この世界に来たんだ」
「そうよ。そして今、春風ちゃんはこの世界の事も救おうとしているの」
と、ヴィンセントとキャロラインが真剣な表情でそう言った。
その言葉にエレクトラが何も言えないでいると、
「あの、エレクトラ様、大丈夫ですか?」
と、心配になったのか真面目な水音がそうエレクトラに話しかけてきたので、
「ああ、私なら大丈夫だ水音」
と、エレクトラはニコッと笑ってそう返事した。
その後すぐに、エレクトラは真っ直ぐヴィンセントを見つめると、
「陛下、教えてくれてありがとうございます」
とお礼を言って、最後に深々と頭を下げた。
それを見て、
「ふむ、随分と落ち着いてるな。ショックで顔を真っ青にするかと思っていたんだがな」
と、ヴィンセントが意地の悪そうな笑みを浮かべていると、
「確かにショックですが、彼が断罪官のギデオン・シンクレア大隊長を破ったと聞いたあの日の話し合いから、『何かがあるに違いない』と思ってましたから」
と、エレクトラは特に表情に出す事もなくそう返事したので、
「はは、そうか。流石は俺達の娘だ」
と、ヴィンセントは笑いながらそう言った。
その後、エレクトラは春風を見て、
「神と契約を結びし赤き悪魔。そして、未熟な見習い賢者から半人前の半熟賢者へのランクアップ……か」
と、呟くと、
「すまないが、春風と呼ばせてもらって良いだろうか?」
と、春風に向かってそう尋ねてきたので、春風は思わず「え?」と首を傾げたが、すぐに表情を変えて、
「はい、構いません」
と、エレクトラに向かってそう返事した。
すると、それを聞いたエレクトラが「ありがとう」と再びお礼を言うと、
「春風、この私と戦ってくれないだろうか? 神と契約したお前の強さを、ぜひ知りたいと思ってるんだ」
と、お願いしてきたので、
「え、えぇ?」
と、春風はそう声をもらしながら1歩後ろに下がると、
「その……いつが良いのですか?」
と、エレクトラに向かってそう尋ねてた。
すると、エレクトラはニコリと笑って、
「お前の都合に合わせる。いつでも言ってくれ」
と、春風に向かってそう言ったので、その言葉に反応したのか、歩夢、美羽、凛咲、そしてレナの4人が春風とエレクトラの間に立ち、ギロリとエレクトラと睨んだ。
それを見て、
「す、すまない」
と、エレクトラは深々と頭を下げながら謝罪した。
そんなエレクトラを見て、
「あ、あの、ユメちゃん達、そんなにエレクトラ様の事睨まないで……」
と、春風はレナ達に「待った」をかけようとしたが、
「……ん?」
と、そう声をもらしたので、
「どうしたの春風?」
と、水音が尋ねると、
「いや、あれ……」
と、春風がとある方向を指差したので、水音達は一斉にその方向を見ると、
『……あ』
そこには、難しい表情をしたジェフリーがいた。




