第81話 とんでもない条件・2
「あなたには、『紅蓮の猛牛』と『黄金の両手』、両方のレギオンに入ってもらいます」
『はぁ……はぁあああああああっ!?』
フレデリックのまさかの発言に、春風達は絶叫した。ただし、オードリーを除いて、だ。
その後、数秒程固まっていると、
「……はっ! ちょっと待ってくださいフレデリックさん! それってあれですか!? 俺に、ヴァレリーさんとタイラーさんのレギオンを掛け持ちしろって言いたいのですか!?」
と、我に返った春風が、フレデリックに詰め寄るようにそう尋ねてきたので、
「はい、その通りですが、何か?」
と、フレデリックは「何言ってんだ?」と言わんばかりに首を傾げながら尋ね返した。
その答えに春風は「なっ!?」と絶句したが、
「……はっ! いや、『何か?』って何ですか!? バイト掛け持ちならわかりますけど、レギオン掛け持ちって何ですか!? ていうか、レギオンって普通1人1つしか加入出来ないんじゃないんですか!?」
と、すぐに再び我に返って、再びフレデリックに詰め寄った。そんな春風の後では、レギオンリーダーのヴァレリーとタイラーが「そうだそうだ!」とプンスカ怒っていた。
しかし、
「え? そんなルール、ありました?」
と、フレデリックも再び「何言ってんだ?」と言わんばかりに首を傾げたので、春風は「なっ!?」と再び絶句しながらも、
(あれ? そういえばそんなルール、聞いた事がないような?)
と、心の中でそう疑問に思った。そんな春風の後ろでは、
「えぇ? ないの?」
「あ、暗黙のルール……とかじゃ……」
と、ヴァレリーとタイラーが、フレデリックの発言にショックを受けていた。
それから数秒程、誰もが沈黙していると、
「あー、理由を聞かせて欲しいんだが……」
と、それまで黙って話を聞いてたレベッカがそう口を開いたので、それにフレデリックが「む」と反応すると、
「単純な事ですよ。アメリアさん達を養うのなら、2つのレギオンに入って頑張る方が効率が良いというだけの話です」
と、そう説明したので、そこで春風が「ん?」となり、
「あ、あの。前から気になってたんですけど、レギオンに入る事に何のメリットがあるんですか?」
と、フレデリックに向かって恐る恐る尋ねた。
その質問を聞いて、フレデリックは「うーん……」と考える仕草をすると、
「そうですね。ざっくり言いますと、単独で活動するよりも仕事の効率が上がりますし、『活動拠点』である『家』を得る事も出来ますし、何よりそこで知名度を上げていけば、普通より豪華な報酬が得られる難易度の高い仕事にありつける……かもしれないといったところでしょう」
と、フレデリックはそう説明した。
それを聞いた春風は、
「は、はぁ、そうだったんですか。それで、どうしてそこでヴァレリーさんとタイラーさんのレギオンなのでしょうか?」
と、更にそう尋ねると、
「こちらも単純な事ですが、今言った2つのレギオンはここでは大手のレギオンでしてね、『財力』を手に入れたいのでしたら、これほど素晴らしいレギオンはないでしょう」
と、フレデリックは未だにショックを受けているヴァレリーとタイラーに視線を向けながらそう答えたので、
「はぁ、そうですか」
と、春風は納得の表情を浮かべた。
その後、春風は「それでしたら……」とヴァレリーの方へと向いて、
「あの、ヴァレリーさん」
と、話しかけたので、
「はっ! な、何だい春風?」
と、我に返ったヴァレリーがそう口を開くと、
「その……あなたのレギオンに入るにあたって、何か加入試験みたいなものってありませんか?」
と、春風は恐る恐るそう尋ねたので、
「いや、その必要はないよ。あんたの実力は、私と戦った時に十分わかった。だから、問題なく入っていいよ」
と、ヴァレリーは「心配すんな」と言わんばかりの笑顔でそう答えた。
すると、
「あの、タイラーさん」
と、今度はタイラーに向かって話しかけると、
「はっ!な、何かな春風君……?」
と、ヴァレリーと同じように我に返ったタイラーがそう尋ねてきたので、
「あの……タイラーさんのレギオンに入る時も、何か試験みたいな事をするのでしょうか?」
と、春風は真っ直ぐタイラーを見てそう尋ね返した。
タイラーはその質問に「え?」と小さく呟くと、
「うーん。僕達『黄金の両手』は、『生産系職能保持者にも大活躍の場を作る』という方針ですから。そうですね、春風君は固有保持者でしたよね? もしかして、戦う以外にも、何か出来る事があるかい?」
と、春風に向かってそう尋ねたので、
「え? う、うーん。一応魔導具とか魔術薬とか作れますけど……」
と、春風は恐る恐るそう答えた。
その答えを聞いて、
「え、それはほんとう……」
と、タイラーが「本当ですか?」と尋ねようとした、まさにその時、
「あ、あの! すみません!」
と、それまで黙って話を聞いていたピートが、「はい!」と手を上げた。




