自然の摂理には勝てません
お腹が一杯になったら眠くなるのは当然だよね。私日本人で平民ですよ。勿論“勿体無い精神”の塊。出された料理はお腹がはち切れそうになるまで食べちゃうのだ。
そんな訳で、現在私ふかふかなベッドの上でうとうとしております。
(でも、まさかヘルケさんにまで根回ししているとは……)
「今夜は客室に泊まって行け」と勧められ(いや、命令?)、当然遠慮しました。そこまでお世話になるわけには行きません。雇っていただいている馬屋のヘルケさんにも心配掛けてしまうし、と。
するとそれを聞いたリーリアス王子が一言。
「それなら心配ない。ヘルケ夫妻には王城から使いが出ている」
「使い?」
「これから3日間、カノンはこちらで預かると」
「はぁ、そうですか。それなら安心……って! ちょっと待ってください!! 3日ってなんですか!!」
「俺が此処に滞在するのは新節祭の間だけだ」
新節祭が行われるのは今日を含めて3日間。それが終われば現在白の国を訪問している各国の王族達は皆帰国することになる。けれどそれと私に一体何の関係が?
こちらが話を理解していないことが分かったのだろう。王子が溜息をついた。
「カノン。俺は求婚したのだぞ」
う……。そ、そうでしたね。美味しい料理と『あーん』攻撃(?)の気疲れで忘れてました。
「その返事を聞かずにお前を手放すと思うのか?」
へ、返事ってすぐ必要なの!!? だって君は子供で(30歳だけど)、王子様で、まだ会ったばっかりだよ? 今プロポーズの返事をしろと言うのなら当然答えはNOだ。
「あのね、私……ふぐっ」
開いた口にまだ小さい彼の手が覆いかぶさる。返事を聞きたいと言ったくせに、どうして邪魔するのさ!! 目線だけでそう訴えれば、リーリアス王子は顔を曇らせた。そして再び眉間に皺。でも今度は機嫌が悪いんじゃない。子供らしくない、苦しそうな表情。
「今の時点でカノンが断るのは分かってる。でも俺は本気だ。その口からは肯定の言葉しか聞きたくない」
そのまま彼は部屋を出て行ってしまった。
ずるいよ。あんな顔をされたら勝手に帰るなんて出来ないじゃない。
そんなこんなで、私は今だ王城に滞在中。まぁ、情に絆されたとも言う。それでも彼の言葉を聞いて、表情を見て、王子とか子供とかそんなんじゃなく“リアスくん”自身の事を考えて返事をしなければきっと彼は納得しないんだろうと思った。
タイムリミットは3日間。出会って3日で答えを出せなんて無茶ぶりもいいとこ。正直、彼と結婚する自分なんて想像もつかない。
あぁ、どうしたら……あ、まずい眠くなってきた。いやいや、ただでさえ時間がないのだからもっとちゃんと考えないと。まだ眠ったら……うーん限界が……、でもでも……。
…………ぐー。




