その291、翼と尻尾
「名乗ってなかったなああ!!」
相手は翼を広げながら、カカカと笑う。
「私はカパーラ。お前は!?」
「刃光院、黒羽――」
私は返答しながら、押し寄せる魔力の波動を押し返す。
「忘れなきゃ覚えておいてやるよ!!」
どういう意味だよ?
心の中で突っ込んでいると、カパーラは宙を飛び、こっちに迫ってくる。
<魔力ブースト。飛翔――>
こっちも負けずと飛び、相手からの攻撃に対処する。
バカスカ魔弾を打ってきたかと思ったら、今度は長い柄の鎌を振るってくる。
かわした途端、コンクリートのような床に裂け目ができた。
「殺し合いはしないんじゃないのか?」
「この程度じゃお前は死なないだろ!!」
いや、そーだとは思うけど。
少年漫画の悪役じゃあるまいし、暴力に陶酔してジャンキーみたいになるのか?
だとしたら、嫌な相手である。
今さらながら思うが、暴力は嫌いだ。
モンスターを駆除して多少の充実感はあっても、それ自体に楽しさがあるわけじゃない。
それを感じるヤツもいるんだろうが、私にはない。
<プロペラ展開――>
ともかく、防御ばかりじゃやってられん。こっちからも攻撃せざる得ないな。
私は右手に魔力のプロペラを展開させ、さらに魔力を強化させた機銃を撃つ。
「ははははは! やるねえ!!」
カパーラは鎌を旋回させて、何なんか銃弾を防ぐ。
一応実態があるのに、まったく意に介さないとは……。
<魔砲ブースト――>
それなら、こっちももっと馬力を上げにゃならんのか。
今度は魔砲を応用した加速で、敵に詰め寄った。
「おっと!」
途端に鎌の柄が短くなり、鋭い斬撃が襲ってきた。
私はそれを蟹の盾で防ぎながら、プロペラパンチを食らわす。
回転する刃は、相手の装甲をいくらか砕いたようだ。
しかし、向こうの勢いは止まらず、変な咆哮から鞭のようなものが……!
いや、尻尾か!?
そういやあサキュバスには尻尾があるんだっけ。
角や翼と同様に個体ごとに違っているそうだ。
そんなことを思っていると、いきなり衝撃を喰らって吹っ飛んでしまう。
咄嗟に盾で防いだが、それでもジンジンと全身が痺れた。
単なる馬鹿力じゃない。魔力を上乗せした攻撃。
何とか体勢を立て直すと、今度は巨大な髑髏みたいな影が迫ってくる。
これは……魔力を固めて撃ち出した魔砲弾か!?
地面へ飛んだ砲弾は強固な床を噛み砕き、爆発を起こした。
「適当に流すだけのつもりなら、半殺しにするかもなあ!? 殺さなきゃいんだろ?」
……物騒なことを言いやがる。
だが、向こうの言うことも事実だ。
負荷を恐れて、後ろ向きでいっちゃあダメである。
<展開。解放――残り5:00>
私は抑えていた八郎くんの魔力波を全身に巡らせた。
青い稲妻が周辺に走り、黄金の翼と銀の蛇尾が展開する。
すぐに終わらせるわけにいかんだろうが、このままだとジリ貧だしな……。
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