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275/301

その275、音叉を落とすと



「とはいえ? 一応日本政府と契約もあるしね。契約内での手助けはするっしょ」


「それ、あてになるんですか?」


「人間と違って、魔族は契約を守るものよ」



 と、サキュバスは嫌味を込めた口調で言うのだった。



「もっとも、相手が破った場合も相応の対応をするけど」


「日本の半数以上の男はサキュバスに取られるか……」



 松上少年は難しい顔だった。



「そうなったらもう子孫なんて残せませんな。産まれるのは日本人の血を引いたサキュバス」


「インキュバスもありるよわよ?」


「大して違いないですな……」


「どっにみち、先細りなのは同じか」



 私は気分が悪くなり、床に座り込んでしまった。



「あんたらの国はどうせ先細りだったと思うけどねー」


「まあ、長らく魔女党の一党支配だったから……」



 彼女らがヒャッハーした傷跡は深かった。


 男性の数は減るし、やたら外国人が増えるし、治安は悪くなるし。



 とにかく、無数のサキュバスに居座れる将来なのだ。


 外では、使い魔のポポバワ駆除が続いている。



「これ、いつ一段落するのかしら……」



 私は映像を見ながら抑揚のない声でつぶやいた。



「転移が起こって、終わるまででしょうなあ」



 同じく、ひどく淡々とした声で松上少年が応える。



「これ、何とか止まらないものか……」


「ダメだな。北の果てから南の先まで、完全にはめこまれてる。仮に術式となる魔法陣があるものとして、それを壊せるかどうか……巨大なモノなら生半可じゃ消せないし、小型のものとすれば100や1000じゃすまない……。転移を前提として、対処するしかないよ」



 ヅカテ氏は肩をすくめて首を振った。



「結局鬱ENDで終わるのか。いやだあああああああ…………」



 私は頭を抱えてしまった。



「何言ってんの、あんた?」



 サキュバスは可愛そうな人を見るような声で言った。


 実際、私は可愛そうな人なんだよ、バカヤロー!!



「いやだああああああああああ……!!」



 私がさらに喚いた途端、何かを落としてしまう。


 今さらどうでもいいけれど――。



「あれ? なんです、それ……」



 松上少年が怪訝な顔をして指をさしてくる。


 その先には、音叉のようなものが――って、これは……。



「あああ……。例の弱体化魔法に対抗するものだって。ダークエルフにね……」



 結局、使わなかったけど。



「……ふむ、ちょっと失礼?」



 松上少年は音叉を拾い上げ、穴が開くほど見つめていた。


 それから、ヅカテ氏のもとに行き、二人で何か話し合っている。



「……うまくいけば」


「少なくとも牽制には……」



 気づけば議論は白熱しているようだった。



「……なに?」



「もしかしたら、手段となるかもしれませんぞ!?」



 松上少年は振り返り、喜色満面だった。



「……まさか、転移を止められるの?」


「いえ。それは無理です」



 一瞬希望を持ちかけた私は、即座に膝カックンされた――








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