その275、音叉を落とすと
「とはいえ? 一応日本政府と契約もあるしね。契約内での手助けはするっしょ」
「それ、あてになるんですか?」
「人間と違って、魔族は契約を守るものよ」
と、サキュバスは嫌味を込めた口調で言うのだった。
「もっとも、相手が破った場合も相応の対応をするけど」
「日本の半数以上の男はサキュバスに取られるか……」
松上少年は難しい顔だった。
「そうなったらもう子孫なんて残せませんな。産まれるのは日本人の血を引いたサキュバス」
「インキュバスもありるよわよ?」
「大して違いないですな……」
「どっにみち、先細りなのは同じか」
私は気分が悪くなり、床に座り込んでしまった。
「あんたらの国はどうせ先細りだったと思うけどねー」
「まあ、長らく魔女党の一党支配だったから……」
彼女らがヒャッハーした傷跡は深かった。
男性の数は減るし、やたら外国人が増えるし、治安は悪くなるし。
とにかく、無数のサキュバスに居座れる将来なのだ。
外では、使い魔のポポバワ駆除が続いている。
「これ、いつ一段落するのかしら……」
私は映像を見ながら抑揚のない声でつぶやいた。
「転移が起こって、終わるまででしょうなあ」
同じく、ひどく淡々とした声で松上少年が応える。
「これ、何とか止まらないものか……」
「ダメだな。北の果てから南の先まで、完全にはめこまれてる。仮に術式となる魔法陣があるものとして、それを壊せるかどうか……巨大なモノなら生半可じゃ消せないし、小型のものとすれば100や1000じゃすまない……。転移を前提として、対処するしかないよ」
ヅカテ氏は肩をすくめて首を振った。
「結局鬱ENDで終わるのか。いやだあああああああ…………」
私は頭を抱えてしまった。
「何言ってんの、あんた?」
サキュバスは可愛そうな人を見るような声で言った。
実際、私は可愛そうな人なんだよ、バカヤロー!!
「いやだああああああああああ……!!」
私がさらに喚いた途端、何かを落としてしまう。
今さらどうでもいいけれど――。
「あれ? なんです、それ……」
松上少年が怪訝な顔をして指をさしてくる。
その先には、音叉のようなものが――って、これは……。
「あああ……。例の弱体化魔法に対抗するものだって。ダークエルフにね……」
結局、使わなかったけど。
「……ふむ、ちょっと失礼?」
松上少年は音叉を拾い上げ、穴が開くほど見つめていた。
それから、ヅカテ氏のもとに行き、二人で何か話し合っている。
「……うまくいけば」
「少なくとも牽制には……」
気づけば議論は白熱しているようだった。
「……なに?」
「もしかしたら、手段となるかもしれませんぞ!?」
松上少年は振り返り、喜色満面だった。
「……まさか、転移を止められるの?」
「いえ。それは無理です」
一瞬希望を持ちかけた私は、即座に膝カックンされた――
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