その244、奥の手を出す
「こりゃいかんわ……!」
私は全力を出すべく、鳥型ツールを召喚する。
だが――
「……!?」
召喚の魔法陣に火花が走り、秘密基地にもつながらない。
このドームのせいか……。特殊な結界になっているらしい。
おそらく、色無に有利な空間に……。
そう悟った途端、またも攻撃が来た。
腕に見えない触手が絡みついてくる……!
と、急激に腕から力、いや、魔力が失われていくのがわかった。
いかん、魔力を吸われている。まるで毒ビルだ……!
「この!」
私はほぼ直感で見えない触手を断ち切った。
だが、大した意味はないだろう。次なら攻撃がどんどん来ると思われる。
もう……いかんな。
私は脱力しながら、動かないシルバを下におろした。
もはや、自分の力だけでは打開できない。
……だから、他人の手を借りる。
私は左手に仕込んでいた小型魔法陣を発動させた。
瞬間、頭上の空間に紫の穴が開く。
「……バカな!?」
見えない色無が驚きの声をあげた。
そこへ、穴から翼を持った青い肌の女が飛び降りてくる。
ダークエルフ。
「ずいぶん遅かったな。待ちくたびれたぞ?」
ダークエルフは私に笑いかけながら、コキコキと首を鳴らす。
これが、事前に仕込んでいた奥の手だった。
最小限の人手でどうにか対応するには、それなりの人材を使うしかない。
そこで、ダークエルフから特殊な小型魔法陣を借り受けていた。
私の意思、あるいは生命の危機に際して発動するようになっている。
これによってダークエルフとつながり、呼び出すことが可能なのだ。
ただし、かなり希少な魔法陣でもあり、一回限りの使い捨てである。
「ずいぶんと愉快なことをしてるじゃないか。だが、無意味だ」
ダークエルフはドームの天井に向けて、手をかざす。
そこから紫の閃光が上に向かって飛び出し、天上を貫いた。
同時に透明のドームは崩壊していき、塵となって大気に消えていく。
「ほら、そこだ」
ダークエルフが指さすと、その先に色無の姿が現れる。
「小賢しい……! この……!!」
色無は何か踏ん張っているが、姿は消えない。
「しばらくかくれんぼはできんぞ? 残念だな? あと、小賢しいのはお前だ」
ダークエルフが笑っている横で、私は今度こそ鳥型ツールを呼び出す。
鳥型をまとって、強化型への変身だ。
「待って……!」
変身を終え、色無に向かおうとする私に、シルバが叫んだ。
「彼女を見ていてほしい」
「しょーがないな……」
ダークエルフに後を頼むと、私は急いで色無のもとに飛んだ。
「形勢逆転かな?」
「ちっ……!!」
色無は悔しそうに舌打ちすると、今度は自分が地下のほうへ潜っていった。
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