その241、シルバ脱出
本日2回目。
「一つだけいいかな?」
私は長い沈黙の後、シルバの瞳を見た。
「あなたをお母さんの元に戻したら、どうなると思う?」
「……」
これに対して、シルバは沈黙した。多分わからないんだろう。
「あなたの母親は、日本に対してテロを仕掛けている。あなたもその片棒を担いだ」
「……」
「私たちはあなたたちを捕まえなきゃいけない。命を奪うこともありうる」
「……!」
「逆に、そちらがこっちの命を奪うかもしれない。あなたもそうなりかけた」
私が言うと、シルバは苦しそうに目を伏せた。
「それでもいいのなら、一緒に行くことを条件に戻してあげる」
「え……」
「その覚悟はある?」
「……」
シルバは唇を噛んだまま、何も答えない。答えられないのだろう。
私が同じ立場だったら……やはり、迷うだろうな。そして多分……。
「答えが出たら、また呼んで」
私はそう言い残して、特別室を出た。
これは……少人数にしか伝えられないことだな。
私は暗い気持ちのまま、部屋に戻る。
それから……。そして。
翌朝、私は定例通り食事を持ってシルバの部屋に行った。
シルバは膝を抱えたまま、身じろぎ一つしない。
やはり、答えはすぐに出ないか。
食事を置いて去ろうとすると――
「待って」
静かだが、張り詰めた硬い声が飛んだ。
振り返ると、シルバが鳶色の瞳を震わせながらこっちを見ている。
「一緒に、行ってほしい」
「じゃあ、戻るのね?」
うなずくシルバに、私は嘆息した。どっちにしろ、きついことになりそうだ。
「出る時にはこれをつけてもらうから」
私は赤と黒のリングを出し、赤いほうをシルバにつけさせた。
魔導警察が囚人の護送などに使うものである。
赤いリングは黒のリングから一定距離以上離れられない仕組みになっているのだ。
無理に逃げようとすれば、全身の自由が奪われる。
「私は離れないように。でないと、動けなくなるから」
「わかった」
そして、私たちはこっそりと『7番』研究所から抜け出した。
私は全く疑われていないので、抜け出すのはたやすい。
出ると、すぐさまワープ魔法を使うこととなった。
ワープした場所は、見たところ古い廃坑のようである。
「ついてきて」
シルバの先導を受けながら、坑道を進んでいくと何やら灯りが――
坑道の中に円陣を組んだ石がきれいに並んでいる。
石には一つ一つエルフ文字がビッシリと書き込まれていた。
シルバがそばに立ち、呪文を唱えると、エンジンの真ん中に青い渦のようなものが。
「これは……」
小規模ながら、まさか、異空間同士をつなぐ門?
驚いているところを、シルバに引っ張られ私は異空間をくぐった……。
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