その240、無理な『お願い』
ちょっと違う時間帯に更新。
それからしばらくの間、シルバは何も言わなくなった。
以前なら、私が会いに行けば短くても会話は成立したのだけれど――
あの蝙蝠男のこともあり、なかなか気の抜けない日が続いたが……。
「ここを出たい」
ある日、食事を運んでいくなりシルバはだしぬけに言ってきた。
「それはまた……」
悪いけど、無理――と私が言いかけたところ、
「お母さんに会いたい」
その言葉に、私が返答できずに困ってしまった。
今さら、彼女をハイソウデスカと戻すわけにもいかない。
重大な犯罪者であるし、重要な証人でもある。
何度か政府関係者が面会に来ているが、うまくはいっていない。
彼女は何も言わなかったのだ。
「じゃあ、あなたのお母さんについて、話してくれるの?」
「……」
そう言うと、シルバは無言になってしまった。
「あなたの望みを聞くことは、私がみんなを裏切ることにもなるの」
「……ごめんなさい」
シルバはか細い声で言って、うつむいてしまった。
かわいそうだとは思う。
きっと、彼女はヴァルキリーたちを母親に否定してほしいのだろう。
自分は知らない、関わってない……と。
実際、そうかもしれない。まだ何もわかっていないのだから。
ダークエルフも何かわかっているのか、ハッタリなのか。
ある意味では、これはチャンスだろうなのかな。
うまくすれば色無トオルを逮捕できるチャンス。
だが、それはシルバを利用して、裏切ることにもなってしまう。
さすがにそれは……。しかし……。
誰かに相談するのも、裏切りになるのか。
かといって、勝手に動いてみんなを危険にさらすこともできない。
あの蝙蝠男を考えれば、私の家族が危険にさらされる可能性もある。
どうしたもんだかな……。
私は特別室を後にしてからも、考え続けた。でも、答えは出ない。
迷路みたいに思考の海をもがくだけのことだった。
「悩んでいるってツラだねえ」
気配もなく、声がしたので振り返ると、ダークエルフが空中に浮かんでいた。
「おかげさまで……」
「そうツンケンするな。場合によっちゃあ相談に乗ってもいい」
「相談ね……」
「問題は、あのガキだろ。おおかた、母親に会いに行くとでも言ったか」
「……」
まさにその通りだった。
あるいは、それを誘導するため今までの言動をしたのだろうか。
「……それであなたに何の得があるんですか?」
「面白いじゃないか」
「いや、面白いって」
「お前らが何ていったかな? ワイドショーとかそんなもんを見る感覚かな」
「ああー……」
要するに下世話な好奇心ということなのだろう。
気分の良いものではないけれど、まあ納得できるかもしれない。
さて、どうしたものかなあ……。ああ、困った……。
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