その239、彼女は知らない
サブのほうもどうぞよしなに。
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「めんどくさいな。実物を見せてやったほうがハッキリするだろ?」
ダークエルフは気怠だるそうに言って、左手に持った飼育ケースに右手をかざした。
と、突然視界が変化する。
私たちは見知らぬ巨大な部屋に、突っ立っていた。
「これは……」
周囲を見渡すと何か景色が見えるハッキリしない。
まわりは、透明の壁みたいなものに囲まれていた。
「見ろ」
ダークエルフが前を指す。
そこには、拘束されて転がっているヴァルキリーたちの姿が。
全員兜型バイザーは外されているので、素顔だ。
……ってことは、ここは飼育ケースの中か?
「まさか、自分で入るとは……」
何だかあんまりいい気持のするもんではないなあ……。
「誰……?」
ヴァルキリーたちを見て、シルバは明らかに動揺したようだった。
信じがたいものを見ているという表情である。
「近くに行ってよく見てみろ。お前に馴染みのものじゃないか?」
ダークエルフは冷たく言って、シルバの背中を押す。
シルバは一瞬躊躇したが、やがて吸い寄せられるようにヴァルキリーたちに近づいて、
「え……?」
つぶやいたきり、表情を凍らせてしまった。
「どうやら何も知らんようだぞ、あの娘」
ダークエルフはつまらなそうに言って、私の肩を叩いた。
なんてこったい……。
私がそっとシルバの後ろに近づくと、後ずさりする彼女の背中がドンとぶつかる。
「こいつら、何なの……!?」
「それはこっちが聞きたいんだけどねえ……。ちょっと前にここを襲ってきたんだよ」
「……知らない。私、こんなの知らない……!」
「他人の空似じゃあないだろうね。数が多すぎるし、装備も同じだ」
「わからない……!! なに、これ!? なんなの!!」
ダークエルフの声に、シルバは叫んで頭を抱え込んでしまった。
これはもう酷なのだろうでないだろうか……。いや、残酷なことか。
私がダークエルフを見ると、赤い瞳の妖精は肩をすくめた。
そして、私たちはまたあの特別室に戻っており――
「お前は量産型のモノだったらしいな?」
ダークエルフはシルバを見て、感情の見えない声で言った。
「ちょっと……!」
「誤魔化しても始まらんだろ? これからさらに姉妹の数は増えるのかもな」
私の声にも、ダークエルフは冷めた顔だった。
「しかし、当分何かを聞くのは無理そうだな……」
ヅカテ氏は困った顔で頭を掻き、深々とため息をついた。
「あいつらの装備してたものもよく見てみるか? 見覚えがあるだろ」
ダークエルフは魔法陣から、羽根兜……型バイザーや鎧を取り出して見せる。
「あ……」
シルバはその装備品を手に取り、脂汗を流し始めた。
「それらの製造には、お前の母親が関わっているようだな?」
「……そんなこと!」
シルバはダークエルフに叫びかけるが、すぐに黙り込み、座り込んでしまった。
これは、もう何を聞いても無駄だろう。彼女は何も知らなかったのだ。
私はシルバの汗をハンカチでぬぐってやりながら、これからのことを思う……。
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